黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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第21Q~全中終結~

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

 

 

試合終了を告げるブザーが会場に鳴り響く。

 

 

星南 84

帝光 81

 

 

空と大地が拳をそっと突き上げる。

 

 

 

 

――おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!

 

 

 

 

会場を揺るがす程の歓声が轟く。

 

空と大地がゆっくり歩み寄っていき…。

 

 

――バチン!!!

 

 

ハイタッチを交わす。

 

『うおぉぉぉぉぉぉっ!!!』

 

田仲、森崎、駒込が歓喜の表情で2人に飛び込んでいき、それに続いてベンチメンバー涙を流しながらその場から飛び出し、2人の下に駆け込んでいく。

 

長い長い激闘についに終止符が付く。

 

一度は点差も付き、絶望すらも頭にちらついたりもした。だが、最後まで諦めず、1人1人が死力を尽くした結果、栄光を手にした。

 

ベンチにただ1人残っている監督、龍川も、普段は一切見せることない笑顔を選手達に向けている。

 

『…』

 

対する帝光中。

 

応援席の選手達は一様にまだ現状を理解出来ていないのかのように茫然としている。

 

コート上で戦った選手達は、ある者は茫然とし、ある者は俯き、深く目を瞑っており…。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

池永は、コート上の選手の中でただ1人、床を叩き付けながら絶叫を上げ、涙を流している。そんな彼の下に新海が歩み寄って手を差し出す。

 

「……整列だ」

 

同じく悲痛の表情の新海が何とか声を搾りだしていく。

 

「うるせぇ! …うるせぇ…」

 

池永はその手を払い除ける。

 

「っ!」

 

新海は池永の腕を掴んで無理やり立たせ、中央へと引っ張っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

両校が中央に整列する。

 

「84対81で星南中学校の勝ち!」

 

『ありがとうございました!!!』

 

整列を終え、向かい合う星南と帝光の選手達。

 

『…』

 

『…』

 

悔しさをにじませる帝光に対し、星南は勝利という結果で試合が終えることが出来てほっとしている。

 

「……ラスト8分間はなかなか楽しめた。またやり合う機会があったらその時は始めから全力で来いよ」

 

「っ! ……次は負けない。絶対にだ。来年、高校でこの借りは返す」

 

目線を合わせずに淡々という空に対し、新海は睨み付けながら宣言する。

 

「あなたは選手としては優秀です。ですが、スポーツマンとしては最低です。これからは、もっと相手に敬意を持ってくれることを希望します」

 

「…覚えてろ、今度コート会ったらぶっ潰してやる…」

 

冷めた表情で告げる大地に対し、池永は涙を流し、嗚咽交じりに告げていった。

 

両選手達が退場していく。

 

 

 

――パチパチパチパチパチ…!!!!

 

 

 

会場の観客達はそんな彼らに惜しみない拍手を送る。

 

『すごかったぞーっ!』

 

『ナイスファイトーっ!』

 

次々に賛辞の言葉をかけていく。そんな言葉の数々を両選手達が各々噛みしめながら退場していく。

 

「…終わったな」

 

「…終わりましたね」

 

空と大地が退場しながら会話している。

 

「全中は予定通り、優勝で終わった。これで中学でやり残したことはない。次は――」

 

「ええ。次は――」

 

空と大地が観客席…、最上段にいるキセキの世代の5人を指差し……。

 

「「次は、お前(あなた)達だ(です)!」」

 

来年の宿敵、目標であるキセキの世代の5人に宣戦布告を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「負けたか…」

 

緑間がボソリと呟く。

 

「情けねぇ。あの程度の相手によぉ」

 

青峰が後輩達を蔑むような表情で見下ろしながら言う。

 

「あれー? あの2人、何かこっち指差してない?」

 

紫原がこっちを指差す空と大地に気付く。

 

「ホントッスね。さしずめ、『次はお前達だ!』とでも言ってそうな顔ッスね」

 

黄瀬が笑いながらそれに続く。

 

「…」

 

赤司がジッと無表情で後輩達を見届けると、そのまま踵を返して出口へと歩き出した。

 

「後輩を…新海を洛山にスカウトしていたのだろう? 会っていかなくてもいいのか?」

 

それに気付いて緑間が赤司の背中に声をかけた。赤司はその場で立ち止まり…。

 

「…もともと、今年で引退してしまう僕のバックアップのポイントガードの代わりの1人として声をかけていたに過ぎない。ここで勝利を逃す程度なら必要ない。もう用済みだ」

 

「…そうか」

 

その言葉を聞いて緑間は深く目を瞑り、ただ納得するように頷いた。

 

「5人揃ったら確認しておきたいことがあったが、それは別の機会にしよう。どのみち、冬に僕達は再び顔を合わせることになる。その時に、…今度はテツヤも交えて聞くことにしよう。では、冬に会おう」

 

そう告げて、赤司は会場を後にした。

 

「…ふん」

 

緑間もそれに続いて会場の出口に向けて歩き出した。

 

「緑間っちも帰るんスか?」

 

「ウィンターカップの予選まで時間は限られている。こんなところで時間を無駄にしている場合ではないのだよ」

 

緑間は振り返らずにそれだけ告げて赤司に続いて出口へと向かっていった。

 

「俺もお菓子なくなっちゃったから帰るね~。それじゃ、また冬にね~」

 

紫原もお菓子の空き袋を折り畳み、ゴミ箱に投擲しながら去ってゆく。

 

「皆、淡泊ッスねー。せっかく偶然にも再開したって言うのに。…にしても、来年はあの2人が高校に上がってくるんスよね。来年も楽しくなりそうッス」

 

「ハッ。ありえねぇーな。あいつらは『まだ』こっち側じゃねぇ。遊び相手にもならねぇよ。……俺に勝てんのは俺だけだ」

 

それだけ言って会場を去っていく。

 

「ちょっと青峰君! それじゃ、キー君、またね!」

 

そんな青峰を桃井が追いかけていく。

 

「『まだ』ッスか…」

 

青峰は無意識に『まだ』という言葉を付けた。それは、いずれあの2人が自分達と同じところに来ることを示唆しているかのように。

 

「さてと。俺も帰るとするッスかねー。あー無性にバスケがしたくなったッスー!」

 

黄瀬も会場を後にしていった。

 

彼らキセキの世代はそれぞれのチームメイトの下に帰っていき、後に控えるウィンターカップに向けて歩みを進めていき、空と大地のことは記憶の片隅へと追いやっていく。

 

だが、彼らは翌年、再び2人の名を記憶から呼び戻すことになる。2人が巻き起こす新たな旋風によって……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「帝光の王朝が、ついに崩壊したね」

 

「あー、まさにそんな感じだな」

 

決勝を見届けていた城ケ崎中の生嶋と小牧が試合の興奮そのままに感想を言い合っている。

 

「来年からは全中、どうなるのかな?」

 

「さあな。少なくとも、星南はあの2人が抜けたら県の中堅レベルになっちまうだろうから、精々、全中に行けるかどうかってところだろうから、来年は今年以上に荒れるかもな」

 

「ハハハッ、来年も大変そうだ」

 

そんな感想を言い合う。するとそこへ…。

 

「来年の全中のことを考えるなんざ、随分と余裕だな、生嶋」

 

「っ! 君は、照栄中の松永透」

 

「よう」

 

偶然近くまで来ていた照栄中のセンター、松永が生嶋に声を掛けた。

 

「お互い、準決で負けちまったな」

 

「うん。でも、君は帝光相手に1人でよくあそこまでやり合えたね。負けて名を上げるとはこのことだと思うよ」

 

「俺の名が上がったところでチームが負けたら意味ねぇよ」

 

生嶋の賛辞の言葉に松永は複雑そうな表情で返す。

 

「ま、そんなことより、来年、俺達は高校に上がる。それはつまり、あいつらに加え、あいつら以上のバケモノが待ち受けているっていうことだ。来年の全中のことなんか気にかけてる場合じゃないんじゃねぇか?」

 

「っ! …そうだったね。高校にはキセキの世代がいる。僕も一度だけだけど、戦ったことがあるからよく理解しているよ」

 

「ああ。俺も一度だけやったけど、俺の尊敬している鉄平さんですら、あいつらには歯が立たなかった」

 

鉄平…、それは、無冠の五将と呼ばれる、キセキの世代と唯一渡り合う事ができた5人の1人である、『鉄心』木吉鉄平のことである。

 

彼らはかつて一度だけ対戦を経験し、その実力と絶望を肌で体験していた。

 

「俺は絶対奴等ともう1度戦う。そして、次こそは勝つつもりだ」

 

「僕も、同じだよ。彼らともう1度戦いたい。今度は勝ちたい…」

 

2人は静かに闘志を震わせていた。

 

「ふっ、聞くだけ野暮だったな。…それじゃ、チームメイトが待ってるから俺は行く。では、来年にな」

 

「うん。今度はコートの上で」

 

軽く挨拶を交わし、松永は去っていった。

 

 

星南を苦しめた生嶋奏…。

 

帝光を1人で追いつめた松永透…。

 

 

彼らもまた、次のステージへと進んでいく。この2人にもまた、思いもよらない旋風が吹き荒れることなるのだが、この時はまだ、知る由もなかったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

星南の選手達は控室に戻り、興奮冷めやらぬ者、疲れ切ってベンチに突っ伏す者、マッサージ受ける者など、様々見受けられる。

 

そんな中、監督の龍川は控室からただ1人抜け出し、控室を後にしていく。

 

ゆっくりと歩みを進め、会場の外を出て少し歩いていくと、そこには…。

 

「…久しぶりじゃのう、真田」

 

「…お久しぶりです、龍川先輩。卒業以来ですね」

 

そこには、帝光の現監督である真田がベンチに腰掛けていた。

 

彼らはかつて、先輩後輩の間柄であった。

 

龍川は真田の横まで行くと、ゆっくり腰を下ろした。

 

「…」

 

「…」

 

2人は何を話すでもなく、無言でベンチに腰掛けている。1分程すると、龍川が口を開いた。

 

「今回の試合――」

 

「ええ、分かっています。敗因は全て、私にあります」

 

「そのとおりじゃ。全く、帝光もつまらん学校になったもんじゃ。白金さんが率いていた頃は、まだ見栄えがあったんじゃがのう」

 

「…返す言葉もありません」

 

真田はその言葉をただ受け止めていた。

 

「昔っからお前は余計なことを難しく考えすぎなんじゃ。やからチームも……才能も壊してまうんじゃ」

 

「…」

 

「ま、今回はええ勉強になったじゃろう。次からはもっとマシなチーム作りをせい」

 

「次…ですか…」

 

真田はフッと自嘲する。

 

「なんや? やっぱり、責任取らされるんか?」

 

「…責任は取らされるでしょう。理事長は帝光中が全国優勝すると信じてやみませんし、監督が変わり、キセキの世代が卒業直後の敗退です。解任は免れないでしょう。ですが――」

 

真田がスッと立ち上がる。

 

「――私は、帝光中を辞そうと思っています」

 

「…それは、責任逃れやないんか?」

 

「かもしれません。…ですが、今回の敗北をきっかけに、帝光中はまたあの頃の輝きを取り戻すと思っています。白金先生が率いていた頃のように。そして――」

 

真田が龍川の方に向き直る。

 

「龍川先輩が主将をしていた、あの頃のように…」

 

「…辞めてどうするんじゃ?」

 

「地元に、ミニバスのチームがあるのですが、そこが今コーチを募集していまして、それを受けようかと思います。私のバスケの原点であるミニバスのコーチとなれば、私は前に進めると思っています。そこで今一度学んで、いずれは龍川先輩、あなたに受けた今日の借りを返しにいきます」

 

「…フッ。そこで決めとるんなら言うことはないわ。ま、しっかり勉強してこいや。そんで、また戦ろうや」

 

「はい。…では、その時まで…」

 

真田がそっと手を差し出す。

 

龍川はその手を握り、握手を交わした。

 

「じゃあのう」

 

握手を交わすと、真田は去っていった。

 

「…去年までは難しい顔しかしとらんかったあいつも、随分ふっきれたもんや。…帰ってこいよ」

 

龍川は空に向かって語りかけた。

 

 

真田は帝光中に戻ると、理事長からの叱責よりも先に辞表を提出した。周りのコーチは根気よく説得をしたが、真田の決意は固く、考えは変わらなかった。

 

彼は原点に立ち返り、再び、同じ舞台へと戻ってくることになるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

閉会式……。

 

それは粛々と行われた。

 

優勝旗が星南中に渡される。

 

 

――パチパチパチパチ…!!!

 

 

惜しみない拍手が彼らに送られる。

 

 

 

優勝

 

星南中学校

 

準優勝

 

帝光中学校

 

 

ベスト5

 

 

神城空  PG 星南中学校

 

生嶋奏  SG 城ケ崎中学校

 

綾瀬大地 SF 星南中学校

 

池永良雄 PF 帝光中学校

 

松永透  C  照栄中学校

 

 

得点王

 

綾瀬大地 星南中学校

 

 

MVP

 

神城空 星南中学校

 

 

 

長い長い激闘。地域予選から始まった全国中学生総合体育大会、通称全中が、今、閉幕した……。

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

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