黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

214 / 228

投稿します!

夏は完全に終わり、すっかり過ごしやすい季節に。個人的には1番過ごしやすい時期ですが、やっぱり夏の終わりはそこはかとなく寂しいものですね…(;^ω^)

それではどうぞ!



第213Q~原点~

 

 

 

第4Q、残り3分2秒

 

 

花月 99

誠凛 95

 

 

試合時間が残り5分となった所で、誠凛の幻の6人目(シックスマン)、黒子テツヤがコートへと再度足を踏み入れた。

 

黒子は、自身がパスを中継し、オフェンスの起点となるのと同時に、新たに身に着けた新技、喚起のパス(ブーステッド・パス)で、火神以外の味方をゾーンの1歩手前の状態に引き入れ、力の底上げをした。

 

そして誠凛は、花月を確実に追い詰めていったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

『スゲーぞ、誠凛!!!』

 

『これで4点差、シュート2本で同点だ!!!』

 

『残り時間充分、行けるぞ!!!』

 

徐々に追い上げる誠凛を目の当たりにし、観客達は誠凛にエールを贈る。

 

『誠凛! 誠凛!!!』

 

会場のほとんどが一丸となって誠凛コールをし、会場に響き渡る。

 

 

『…っ』

 

表情が曇る花月の選手達。会場全体が誠凛の味方をしている様なこの状況。言わば、自分達が悪者の様な扱いだからだ。

 

 

「誠凛は完全に観客を味方に付けたな」

 

この会場を覆い尽くす誠凛コールを聞きながら観客席の諏佐が呟く。

 

「対して、花月はこの上なく窮地に陥っとるな。流れは誠凛に持ってかれてもうとるし、観客はもはや敵も同然や。この状況で影響が出えへん訳があらへん」

 

苦笑しながら今吉翔一が続く。

 

花月がここまでたどり着くまでに、何度も窮地に陥った。そんな花月を背中を押し、力を与えて来た観客。それが今、半ば自分達に牙を向いている。

 

「誠凛と花月。どっちもドラマチックな逆転劇を繰り広げて来たチームだけど、やっぱり、絶望的な状況から追い上げてきた誠凛に味方するかー」

 

ぼやくように葉山。

 

「…ここまで賭けて来た思いも、勝ちたいと言う気持ちも、どっちも同じでしょうに、…ちょっと同情するわね」

 

憂いた表情で花月の選手達を見つめる実渕。

 

「正直、誠凛びいきで見てはいたがよ、…これは気の毒だな」

 

同じく神妙な表情の根武谷。

 

一昨年の同じ舞台で、会場が一斉に敵に回る中で試合をした経験のある元洛山の3人。当初は、自分達と2度戦い、1度は敗北をした相手である誠凛。自分達はもちろん、後輩達が花月に敗れた事もあり、誠凛びいきで試合を見ていたが、今の会場の雰囲気を見て、かつて、同じ経験をした事を思い出し、花月に僅かに同情していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

ボールを運ぶ空。

 

「…止める」

 

目の前には新海。新海を抜きさる事自体は容易い。だが、中に切り込めば火神が待ち受け、今や神出鬼没の黒子の存在もある為、迂闊には切り込めない。

 

 

「花月はとにかく今は焦らない事だな。まだ逆転された訳じゃねえし、誠凛だって苦しくねえ訳がねえ。会場の空気に惑わさない事だ」

 

高尾が助言めいた呟きをする。

 

 

「(…チラッ)」

 

生嶋が天野に視線を向ける。

 

「(…任せぇ)」

 

この視線を受け、天野が生嶋の視線の意図を察し、動く。

 

「…っ」

 

同時に生嶋も動く。

 

 

――ピッ!

 

 

動いた生嶋にパスを出す空。

 

「…ちっ!」

 

生嶋を追いかけようとした池永だったが、天野のスクリーンに阻まれ、思わず舌打ちをする。

 

「(この距離なら僕だって!)…これで!」

 

スリーポイントラインから離れるように動いた生嶋。スリーポイントライン2m程離れた所でボールを受け取り、即座にシュート体勢に入る。

 

「行け!!!」

 

「頼む!!!」

 

ベンチの菅野、帆足が願うように叫ぶ。

 

 

「あかんやろ」

 

溜め息交じりに呟く今吉。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「…あっ!?」

 

ボールを頭上にリフトさせようとした瞬間、ボールを叩かれてしまう。

 

「ナイス黒子ぉ!!!」

 

誠凛ベンチから降旗が立ち上がりながら叫ぶ。

 

「…ちっ!」

 

思わず舌打ちが飛び出る空。

 

ルーズボールを拾った黒子がそのまま速攻。ドリブルを始める。

 

 

『ターンオーバー!!!』

 

『来るか、3連続!?』

 

決まればほぼ背中を捉える展開となる為、観客の期待も高まる。

 

 

「させっかよ!」

 

「行かせません!」

 

比較的、フロントコートに近い位置でボールを奪った黒子だったが、空と大地のスピードもさる事ながら、黒子自身のドリブルスピードが速くない為、スリーポイントラインの手間で2人は黒子に追い付き、先回りをした。

 

「…」

 

 

――スッ…。

 

 

黒子は目の前に2人が現れると、後ろへとボールを戻した。

 

「よし!」

 

ボールはそこへ走り込んだ新海の手に渡る。

 

 

――ピッ!

 

 

新海はボールを受け取るのと同時にパスを出す。

 

「ナイスパース!」

 

ボールは、右ウィングの位置に走り込んだ池永の手に渡る。

 

「いただき!」

 

池永はすぐさまシュート体勢に入る。

 

「させません!」

 

これに反応した大地がすぐさまチェック。距離を詰める。

 

「っと、やっぱはえーなこの野郎!」

 

シュート体勢に入る前にチェックに来られ、池永はスリーを中断。新海にボールを戻す。。

 

 

――ダムッ…!!!

 

 

リターンパスを受け取った新海は左サイドを沿うようにドリブルを始める。

 

「通さねえぞ!」

 

そんな新海に今度は空が距離を詰める。

 

「…」

 

 

――スッ…。

 

 

しかし、新海は空が近寄って来ると、ノールックビハインドパスでボールを右方向を放る。そこには…。

 

「「っ!?」」

 

思わず目を見開く空と大地。2人の視線の先には、右手を腰に引くような構えた黒子の姿があった。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

黒子は腰の付近に引いた右手を掌打に構え、手首を回転させながら叩き、前方に大きく加速させながら中継した。

 

「…くそっ!」

 

「…っ!」

 

両サイドに展開した新海と池永にそれぞれ対応してしまった結果、空けてしまった中央。その2人の間を通過させるように放った加速するパス(イグナイト・パス)廻。ボールは、2人は手を伸ばしたが2人の指先の僅か前を通過していった。

 

「っしゃぁっ!!!」

 

ボールは、ペイントエリアに走り込んだ火神の手に渡る。

 

「…っ」

 

火神がボールを掴むのと同時に松永が目の前に立ち塞がる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「くそっ…!」

 

ポンプフェイクを入れた後ドリブルをし、松永を抜きさる。

 

「おぉっ!」

 

松永を抜きさるのと同時にボールを右手で掴み、リングに向かって飛んだ。

 

「させへんわ!」

 

そこへ、松永を抜きさる合間にディフェンスに戻っていた天野がブロックに現れる。

 

「(ここは取らせんへん! 絶対にや!)」

 

「…」

 

 

――スッ…。

 

 

しかし、火神は天野が現れると、掲げたボールを下げた。

 

 

――ドン!!!

 

 

空中で火神と、天野が接触する。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

同時に吹かれる笛。

 

火神はここでバランスを崩しながらもボールを左手に持ち替え、リングに向かって放る。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールはバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

「…っと」

 

体勢を立て直して着地する火神。

 

『ディフェンス、プッシング、松永(赤8番)、バスケットカウント、ワンスロー!』

 

直後に審判がディフェンスファールをコールする。

 

「っ!?」

 

この判定を受け、目を見開く天野。

 

 

『キタァァァァァ!!!』

 

『フリースロー! 決めれば1点差!!!』

 

『これはもう決まっただろ!?』

 

コールと同時に再び沸き上がる会場。

 

 

『…』

 

言葉を失う花月の選手達。遂に1点差、シュート1本で逆転されるまでに点差が縮まってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

フリースローも落ち着いて決め、3点プレーを成功させる火神。

 

 

花月 99

誠凛 98

 

 

『誠凛!!! 誠凛!!!』

 

同時に沸き起こる誠凛コール。

 

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

『チャージドタイムアウト、花月!』

 

ここで、花月のタイムアウトがコールされた。

 

「…」

 

花月ベンチで、渋い表情の上杉。

 

両校の選手達は、それぞれのベンチへと戻っていった。

 

 

「1手、遅かったな」

 

赤司がベンチに戻る選手達を見ながら呟く。

 

「火神にスリーを決められた時点でタイムアウトを取るべきだった。あの時点で取っていれば、今の失点は防げたかもしれない。…もっとも、結果論ではあるが」

 

『…』

 

赤司の分析に、周囲の者達は口を挟む事はなかった。

 

 

「おいおいマジかよ…」

 

「Oh NO…」

 

頭を抱えるアレンとニック。

 

「(流れは最悪、その上、動揺して浮足だってるとなりゃ、99%、(サル)達の負けは決まったようなものだが…)」

 

頬杖を掻きながら胸中で断言するナッシュ。その視線の先には、空の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

誠凛ベンチ…。

 

「よっしゃよっしゃー! 勝てるぞ!」

 

ベンチに戻るや否や、はしゃぐ池永。

 

「あぁ、行けるよ!」

 

「あと一息だ!」

 

同調するように福田と河原。

 

「浮かれてないで座って呼吸を整えなさい!」

 

はしゃぐ選手達に対し、リコが大声で制する。

 

「良い? まだ逆転した訳じゃないのよ。まだ時間も残ってる。最後まで集中しなさい」

 

「監督の言う通りだ。花月がこのまま終わる程、柔な相手な訳がねえ。試合終了のブザーが鳴るまで、気を抜くんじゃねえぞ」

 

続いて火神も檄を飛ばす。

 

『…』

 

2人の言葉を受けて、他の選手及び控えの選手達は表情を改めた。

 

「(確かに、状況的なものだけを見ればウチが優勢だけど、こっちもそんな余裕はないわ…)」

 

胸中で弱音を吐くリコ。

 

一見、試合の流れを掴み、会場を味方に付けた誠凛が圧倒的に優勢に見える。しかし、リコの考えている通り、誠凛にも余裕がない。軽口を叩いている池永にしても、試合開始からここまで出ずっぱりである為、表面上は問題なさそうに見えるが、いつ失速するか分からない。同じく田仲も出ずっぱりであり、ここまで格上相手にインサイドを支えてきた事もあり、本人に自覚がどれだけあるか分からないが、確実に限界は目の前の為、何がきっかけで表面化するか分からない。1度ベンチに下げ、スタミナの温存をさせた新海にしても、決勝の大舞台でゲームメイクを務めている事と、途中からゾーンディフェンスに切り替えたとは言え、空の相手をする事が多かった事もあり、確実にスタミナは削られている。火神もベンチに下げているが、常に大地にマークされていた事と、途中からは空も加わってダブルチームを受け、試合を繋ぐ為にゾーンにも入っている為、スタミナの残量に余裕はない。黒子も、新技である喚起のパス(ブーステッド・パス)で今の状況を作り、追い上げる事が出来たが、ミスディレクションの稼働時間の事もそうだが、新技にしても、今日初めて使う技である関係上、試合終了まで効果を発揮出来るか未知数な点もある。

 

「(何事もなくこのまま突き進めるのが理想的ではあるけど、…花月がそんな甘い展開を許す訳ないわ。状況に変化があった時、いつでも対応出来る様にしておかないといけないわね)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

花月ベンチ…。

 

『…』

 

戦勝ムードだった誠凛ベンチと違い、お通夜のように静まり返っていた。

 

「オラオラ! 何シケた面してんだコラ! まだ逆転された訳じゃねえんだぞ! 気合い入れやがれ!」

 

この空気を嫌った菅野が声を張り上げ、喝を入れる。

 

「…分かっとるわ。少し静かにしいや」

 

苛立ち交じりに返す天野。

 

「うるせえ! コートで唯一の3年のお前が言わなきゃなんねえ事だろが! まさかもう諦めた訳じゃねえだろうな!?」

 

「んな訳ないやろ! オフェンスは止められへん、ディフェンスは固い、気合いや根性でどうにかなる状況ちゃうねん! 今必死に頭回転させとんねんこっちは。少し黙っとれや!」

 

尚も食って掛かる菅野に怒りを爆発させた天野が立ち上がりながら返した。

 

「静まれ!!!」

 

「「…っ」」

 

掴みかかろうとした2人を、上杉が一喝して黙らせる。

 

「後輩の前でつまらん喧嘩をするな」

 

「…すんません」

 

「…うす」

 

上杉の言葉に2人は頭をクールダウンした。

 

「…さて、状況は芳しくないな。点差は1点。会場は実質誠凛の味方だ」

 

現状を口にする上杉。

 

『…っ』

 

最悪の現状を再確認させられ、表情が曇る選手達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――最高ですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、空はそう返し、ニヤリと笑った。

 

「ようやく楽しくなってきた。やっぱり、試合はこうでなくちゃな」

 

「楽しなってきたって、楽しめる状況ちゃうで。…それとも、何かええ考えでも浮かんだんか?」

 

「いや、全然」

 

「ないんかい!」

 

この返事に天野がガクッと肩を落としながらツッコむ。

 

「綾瀬も何か言うたれや」

 

「フフッ、空らしいですね」

 

促された大地。だが、大地もまた、空と同じように笑っていた。

 

「…くーもダイも、よく笑ってられるね」

 

「とてもじゃないが、そんな状況ではないぞ」

 

そんな2人を見て呆れる生嶋と松永。

 

「ここまで来たら、理屈じゃねえよ。ただガムシャラに戦うだけだ」

 

首を鳴らしながら空が続く。

 

「ハッハッハッ、そうかそうか!」

 

空の言葉を聞いて愉快そうに笑う上杉。

 

「…よし、ここからの方針を伝える。まずはディフェンス。ディフェンスはこの2点だけ守れ。まずは1つ目、相手のスリーを全力で阻止だ。中に切り込まれても構わん」

 

そう言って、人差し指を1本立てる。

 

「2つ目、ノーファールだ。相手が打ちに来ても、ファールのリスクがあるなら無理にチェックに行くな。最悪、決められても構わん」

 

2本目の中指を立てた。

 

「…っ、決められてもって」

 

その言葉に思わずギョッとする竜崎。

 

「現状、誠凛のオフェンスを止める事は至難の業だ。無理に満遍なく止めようとすれば、先の2本のように、スリーを打たれるか、フリースローを打たれてしまう。だったら、始めから2点等くれてやれ」

 

胸の前で両腕を組み、真剣な表情で上杉が続けた。

 

「ディフェンスは捨てて、失点を最小限に抑える。ここからはオフェンス重視…いや、オフェンス特化で攻め立てろ」

 

上杉が、これから先の大方針を指示した。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで、タイムアウト終了のブザーが鳴った。

 

「っ!? アカン、タイムアウト終わってもうた。監督、具体的にはどないして点取るんですか!?」

 

ブザーが鳴った事で慌てて天野が上杉に尋ねる。

 

『…っ』

 

天野が指示を仰ぐと、他の選手達も固唾を飲んで耳を傾ける。

 

 

 

 

 

「――走れ」

 

 

 

 

 

 

上杉の口から出たのは、それだけだった。

 

「ハッハッハッ! 良いねえ。馬鹿な俺にはシンプルで助かるぜ」

 

この指示に空は豪快に笑った。

 

「っしゃ、全員集まれ」

 

その後、空はベンチの前で全員を集め、円陣を組むように集まった。

 

「そんじゃ、言われた通り、走って走って走りまくろうぜ」

 

円陣を組むと、空が口を開いた。

 

「思えば、我々はどんな時も、走っていましたね」

 

思い出しながら大地が続く。

 

「走れか、花月(ここ)来て俺、どんだけ走ったかのう」

 

「何百…いや、何千キロ走ったかもしれないね」

 

基礎練習を重視する花月は、他の強豪校と比べても走らさせれる量が桁違いに多い。花月のバスケ部に入部してから今日まで、練習はもちろん、試合でも走り続けた事を思い出す天野と生嶋。

 

「始めてこのメンバーで試合をした時も俺達は走って活路を見出した。ここで改めて原点に戻るも悪くはないかもしれんな」

 

フッと笑みを浮かべる松永。

 

「っしゃ、覚悟が決まった所で、…花月ー、ファイ!!!」

 

『応ーっ!!!』

 

空の号令を合図に、選手達が大声で応え、選手達はコートへと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『キタァァァァァ!!!』

 

『待ってました!!!』

 

両校の選手達がコートに現れると、待ちわびた観客がここぞとばかりに声を上げた。

 

『誠凛、点差は後1点だ、行けるぞ!』

 

『また奇跡を見せてくれ!!!』

 

相も変わらず、観客は誠凛にエールを贈る者が多く、会場は誠凛のほぼ一色で声援を贈った。

 

 

審判からボールを受け取った生嶋が空へパスを出し、試合が再開された。

 

 

『おぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

 

再会と同時に観客の大歓声に会場が包まれた。

 

『誠凛!!! 誠凛!!!』

 

「…相変わらず、誠凛一色か。…笠松、お前が花月の司令塔だったらどうゲームメイクする?」

 

試合を見ている小堀が横の笠松に尋ねる。

 

「…慎重にボール回して確実に行くだろうな。ここを取りこぼして逆転されちまったらもう終わりだ。時間をたっぷり使って――」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

笠松の言葉とは裏腹に、ボールを受け取った空は早々に仕掛ける。目の前の新海を抜きさって中に切り込んだ。

 

「正気か? まあ、こっちとしては好都合だ。…来い!」

 

笠松と同じ、時間をかけて確実に攻めてくると予想していた火神は、一瞬、空の行動に驚くも、すぐに迎え撃つ体勢を取る。

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

火神の目の前まで突き進んだ空は眼前で左右にクロスオーバーで揺さぶりをかけた。

 

「(はえー!? だが、この程度ならまだ!)…止めてやる!」

 

目の前で右から左へと切り返した空を追いかける火神。

 

 

――スッ…。

 

 

2度目の切り返しの直後、ボールを掴んだ空はそのまま右方向へと飛び、ボールを下から思いっきりリング目掛けて放った。

 

「ちっ!」

 

これに反応した火神が放ったボールに手を伸ばすも、僅かに届かなかった。

 

「(外れ――いや違う!?)」

 

ボールの軌道から外れると見た火神だったが、すぐに考えを改めた。これはシュートではなく…。

 

 

――バキャァァァァッ!!!

 

 

リング付近に勢いよく投げられたボールを、ドンピシャのタイミングで飛び込んだ大地がアリウープでリングに叩きこんだ。

 

 

花月 101

誠凛  98

 

 

「よっしゃ!!!」

 

パチンとハイタッチを交わす空と大地。

 

 

「あれは、桐皇戦で見せた正確無比なパスとコンビネーション!」

 

ウィンターカップ2回戦にて、2人が見せた奇跡のコンビネーションを思い出した高尾。

 

 

「……あっという間に決めちまったな」

 

笠松の予想違い、たっぷり時間を使う所か、時間をかけずに決めてしまった花月に言葉を失う森山。

 

「…何考えてやがんだ。しくじればほぼ負けのこの状況で普通やんねえぞ。…あり得ねえ」

 

森山と同様の笠松。あまりに無謀とも言える空の選択、セオリーから外れた選択に驚きを隠せなかった。

 

 

直後の誠凛のオフェンス…。

 

「…っ」

 

ボールを運ぶ新海。花月のディフェンスに違和感を覚える。

 

花月のディフェンスは変わらず2-3ゾーンディフェンス。だが、選手全体が外寄りにポジション取りをしている。

 

「(スリーを警戒しているのか? だがこれでは…)」

 

こうも前に出て来られるとスリーは打ちづらい。だが、これではインサイドの守りが薄くなる。

 

「(何が狙いだ。何を考えている…)」

 

必死に相手の狙いを考える新海。

 

「…っ、新海!」

 

「っ!?」

 

声を荒げる池永。空が前に出て激しくプレッシャーをかけてきた。

 

「…くっ!」

 

ガンガン前に出てボールを奪おうとする空。新海はその場でボールを止めてしまい、キープするので精一杯になる。

 

「(…くっ! 俺では神城相手ではいつまでもボールをキープ出来ない。…仕方ない!)」

 

 

――ピッ!

 

 

意を決して、新海はボールをローポストに立つ田仲に入れる。

 

「よし!」

 

ローポストでリングに背を向ける形でボールを受けた田仲。直後に背中に張り付くようにディフェンスに入る松永。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

そこからポストアップで押し込むようにドリブルを始める田仲。

 

「…っ」

 

歯を食いしばってその場で押し止める松永。

 

 

――スッ…。

 

 

ゴール下まで押し込むのが無理と判断した田仲は、ボールを掴んでフェイクを織り交ぜ、ステップワークを駆使して松永をかわしにかかる。

 

 

――バス!!!

 

 

松永をかわし、フックシュートで田仲が得点を決める。

 

 

花月 101

誠凛 100

 

 

『おぉっ! 誠凛も返した!』

 

田仲の得点に沸き上がる観客。

 

 

「(おかしい…)」

 

得点を決めた田仲だったが、違和感を覚えた。あまりに呆気なさ過ぎる。松永がこの程度のはずがない。

 

「(ファールを恐れて?)」

 

先程フリースローを与えてしまった影響かと考える田仲。だが、次の瞬間…。

 

「走れ!」

 

素早く松永がボールを拾い、空にパスを出し、リスタート。空が声を出すと、花月の選手達は一斉にフロントコート目掛けて走り出した。

 

『っ!?』

 

突然の花月の行動に目を見開く誠凛の選手達。

 

「…っ、戻れ!」

 

素早くこれに反応した火神が指示を出し、ディフェンスへと戻る。

 

「…くそっ!」

 

「速い!」

 

慌ててディフェンスに戻る池永と田仲。

 

「行かせん!」

 

バックコートに近かった新海。いち早くディフェンスに戻り、空を迎え撃つ。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

新海の目の前でドリブルで突き進むと、手前で減速。バックチェンジでボールを背中から新海の前にボールを出し、同時に新海の横を走り抜け、抜きさった。

 

「やらせるか!」

 

新海をかわし、スリーポイントラインを越えた直後、今度は火神が目の前に現れた。新海を抜きさる際、僅かにスピードを緩めた隙に先回りしていたのだ。

 

「…」

 

火神が現れても構わず突っ込む空。

 

「…っ」

 

フリースローラインで空がボールを掴み、飛ぶ。

 

「(また例のミドルレンジからのフィンガーロールで来るか!? だがもうタイミングは掴んだ。次は止める!)」

 

フリースローラインから飛ぶとなると例のフィンガーロール以外あり得ない。既にタイミングを掴んでいた火神がそれに合わせてブロックに飛ぶ。

 

 

――スッ…。

 

 

「っ!?」

 

火神がブロックに現れると、空は火神に背を向けるように反転。直後、ボールを右下へと放る。

 

「ナイスパス!」

 

そこへ走り込んだ大地がボールを掴み、そのままドリブル。リング目前でボールを掴み、跳躍。

 

「させっか!」

 

そこへ、池永がブロックに現れる。

 

 

――スッ…。

 

 

池永が現れると、ボールを下げ、パスに切り替える。

 

「なっ!?」

 

 

――バス!!!

 

 

大地からボールを受け取った松永がそのままゴール下から得点を決めた。

 

 

花月 103

誠凛 100

 

 

『うわぁぁぁっ!!! 何だこのスピードは!?』

 

『はえー!!! あっという間に決めたぞ!?』

 

失点直後に素早いリスタート。花月の選手達があっという間に攻め上がり、あっという間に得点を決めた。そのあまりの速さに度肝を抜かれる観客。

 

 

「そう言う事かよ…!」

 

ここで火神は花月の狙いに気付いた。

 

「どおりでディフェンスに歯応えがなかったはずだ」

 

「この状況で俺達はチマチマ作戦実行出来る程器用じゃねえし、守りを固める程柔でもねえ」

 

火神に向かって告げる空。

 

「私達のバスケはいつでも走って走って走りまくって攻め立てる超攻撃型バスケです。日本一の機動力を誇る花月のバスケの神髄、最後までお見せしますよ」

 

続けて大地が告げるように言った。

 

「…ハハッ、おもしれー! ディフェンスは捨てて、オフェンスオンリーか。良いぜ、俺達だってオフェンス型のチームだ。その勝負、受けて立つぜ」

 

2人の宣言に笑みが零れる火神。

 

「ええ。ボク達もあなた達にお見せします。誠凛(ボク達)のバスケを」

 

横に立つ黒子が続けて宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

遂に1点差まで詰められ、窮地に陥った花月。

 

たまらずタイムアウトを取った花月。そこで上杉が出した指示は、『走れ』。

 

すなわち、ディフェンスを捨てて、オフェンスに全て注ぎ込んで攻め立てろ、と言う事であった。

 

この言葉で、花月の選手達は原点に立ち返り、機動力で誠凛を攻め立てる。

 

これを受け、誠凛も受けて立つ選択をする。

 

ウィンターカップ決勝、残り時間僅か、花月と誠凛が、残る力、体力、そして、ここまで積み上げ、培った全てを賭け、ぶつかるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





ほとんど会話文ばかりで、試合が進みませんでした…(;^ω^)

試合も残り僅か、後味良く締められるか。…正直、前話の投稿の大失態がトラウマで、この二次を投稿し始めて今一番、投稿するのが怖い…(T_T)

感想アドバイスお待ちしております。

それではどうぞ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。