黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

暑い……と思ったらそんなでもない? …梅雨開けたらやっぱり暑い…(;^ω^)

それではどうぞ!



~祭り~

 

 

 

――ティップオフ!!!

 

 

審判によってボールが高く上げられ、大注目の試合の火蓋が切って落とされる。

 

「「…っ!」」

 

センターサークル内のジャンパーの2人が同時にボールに飛び付く。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

ボールが最高到達点に達した瞬間、ボールが叩かれる。

 

「…ちっ」

 

思わず舌打ちをする堀田。先に紫原がボールに触れ、ジャンプボールを制した。

 

「よし。よくやった紫原」

 

ボールは赤司の手に渡り、TEAM MIRACLEボールで試合は開始される。

 

「…」

 

ゆっくりとボールを運ぶ赤司。

 

「今日こそ、あんたを超えるぜ」

 

その赤司の前に、不敵な笑みを浮かべた空が立ち塞がる。

 

チームカゲツのディフェンスはマンツーマン。緑間に天野、黄瀬に大地、青峰に三杉、紫原に堀田がマークに付いている。

 

「…」

 

「スー…フー…、来い」

 

スリーポイントライン手前、中央付近でボールをキープする赤司。空は表情を真剣なものとし、集中力を高めて赤司に対峙する。

 

 

――ピッ!

 

 

赤司は暫しボールをキープした後、パスを出した。

 

「ハッ! 分かってるじゃねえかよ」

 

ボールが青峰の下に渡り、ニヤリと笑う青峰。

 

「あれからどれだけ成長したか、見せてもらおうか」

 

同じく、笑みを浮かべるのは青峰をマークする三杉。

 

「…」

 

右45度付近のスリーポイントラインの外側で対峙する2人。青峰は小刻みボールを動かし、右足でステップを踏みながら三杉を揺さぶる。

 

「(…さてと、確か、今の青峰には外もあるんだったな)」

 

対して、三杉はデータを思い出しながら青峰の一挙手一投足に合わせて動き、次の動きに備える。

 

「(…行くぜ)」

 

 

――スッ…。

 

 

胸中で青峰が呟くのと同時に青峰がボールを頭上にリフトさせる。

 

「(スリー…いや――)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

青峰がボールを胸の位置にまで掲げた所で、ボールを止め、ドライブを仕掛ける。

 

「(――なるほど、速い!)」

 

スリーのフェイクを読み切った三杉。胸中で青峰のスピードに驚きつつもすぐさま追いかける。

 

 

――キュッキュ!!!

 

 

次の瞬間、青峰が急停止しする。

 

「…っ」

 

この動きに合わせ、三杉も停止する。

 

「(…チラリ)」

 

急停止と同時に青峰は視線をリングに向ける。

 

「(来るか? …いや、違う!)」

 

視線をリングに向けるも、青峰はボールを保持しておらず、三杉はこれもフェイクと読み切る。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

直後、青峰は再度急発進。再度仕掛ける。

 

「っ!?」

 

読み通り、青峰のリングに視線を向けたのはフェイクであり、ドライブに対応しようとした三杉の目が見開かれる。青峰は、リングにではなく、コートの右隅、リングから遠ざかるようにドライブをしたからだ。

 

「…ちっ」

 

一瞬、虚を突かれるも、青峰の狙いに気付いた三杉は青峰を追いかける。

 

「もう遅ぇーよ」

 

ニヤリと笑った青峰がボールを右手で掴み、リングから遠ざかるように飛んだ。

 

 

――バス!!!

 

 

そこから右手で持ったボールを放り投げるようにリングに向かって投げ、ボールはバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

 

『うぉぉぉぉぉーーーっ!!! 決まったぁっ!!!』

 

『あの三杉からいきなり先制点を奪いやがった!!!』

 

『いつ見てもスゲー! 何であれが決まるんだよ!!!』

 

この試合、初の得点に観客が沸き上がる。

 

 

「まずは挨拶代わりだ」

 

不敵な笑みを浮かべながら青峰が三杉に告げる。

 

「…フゥ」

 

思わず一息吐く三杉。

 

僅かに引き剥がされた時点でこの勝負は青峰に軍配が上がっていた。スピードとアジリティで勝る青峰ならば、僅かでも引き剥がせれば追い付かれる前に決める事が出来るからだ。

 

「(おまけに、飛ぶ前に紫原に視線を向ける事で健のヘルプを瞬間的に躊躇わせる気配りも見せた)」

 

堀田は青峰に対し、ヘルプに向かおうとしたが、青峰が紫原へのパスを匂わせた事で一瞬、足を止めてしまった。もし、ヘルプに向かい、青峰がパスに切り替えたなら、まず間違いなく得点されてしまうからだ。

 

「以前は良くも悪くも素直過ぎた面が目立っていたが、しっかり駆け引きも出来るようになった。テクニック以外もしっかり成長したようだな。…面白い」

 

青峰の成長を目の当たりにした三杉は、ニヤリと笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

試合はチームミラクルの紫原がジャンプボールを制し、青峰の得点から始まった。

 

 

――ピッ!

 

 

ボールを運ぶ空が、堀田にパスを出す。

 

「むん!」

 

ローポストでボールを受け取った堀田がゴール下まで侵入し、そのままダンクを狙う。

 

「はぁ? 舐めてんの?」

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

ボールがリングに叩きつけられる直前、突如として伸びて来た紫原の手によってブロックされる。

 

「むっ!」

 

このブロックに思わず唸り声を上げる堀田。

 

「ナイスブロック紫原っち!」

 

零れたボールを黄瀬が拾い、攻守が切り替わる。

 

 

『スゲーブロック!!!』

 

『あの堀田を止めたぞ!!!』

 

紫原のブロックに沸き上がる観客。

 

 

「スゲーな。青峰に紫原。三杉と堀田相手に優勢にやり合ってやがる」

 

2人の大健闘に驚く元桐皇の若松。

 

「確かに押しとるのはあの2人や。せやけど…」

 

元桐皇の今吉翔一。頷きつつも意味深に言葉を残す…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

――ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

チームミラクルのオフェンス、赤司がボールを運ぶ。

 

「…」

 

その赤司の前に空が立ち塞がる。

 

「…」

 

赤司は暫しその場で足を止め…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ここで加速。チェンジオブペースで仕掛ける。

 

「…甘い!」

 

空はこれに反応。すぐさま対応する。

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

赤司は空が反応したのと同時に再び足を止め、その場でレッグスルーで数度左右に切り返す。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「…っ!」

 

左右の切り返し時に空の体重が右足に乗った瞬間、再度切り込む。空は重心が右足に乗った直後の為、反応は出来ても対応は出来ず、抜かれてしまう。

 

「むっ!」

 

そのままリングへと突き進む赤司に対し、堀田が飛び出し、距離を詰める。

 

 

――ピッ!

 

 

赤司は堀田を充分に引きつけた後、ボールを左へと放る。

 

「ナイスパス、赤司っち!」

 

ボールはそこへ走り込んだ黄瀬に渡る。

 

「頂き!」

 

黄瀬はボールを掴んでそのままリングに向かって飛ぶ。

 

「させません!」

 

そこへ、大地がブロックに現れる。

 

「さっすが綾瀬っち、来るのが速いッスね!」

 

マークを引き剥がした黄瀬だったが、ダンクを決める前に追い付いた大地に思わず賛辞の言葉を贈る。

 

 

――スッ…。

 

 

黄瀬は、大地が現れるのと同時にボールを下げ、腕を回してボールを投げ、パスに切り替える。

 

「お前にしては、良いパスなのだよ」

 

ボールは、右隅に移動していた緑間の手に渡る。

 

「っ!? アカン!」

 

すぐさまスリーの体勢に入る緑間。これを見た天野が慌ててブロックに飛ぶ。

 

「あっ!?」

 

しかし、緑間は頭上に掲げようとした所でボールを止める。ブロックに飛んだ天野はそのまま空中で緑間の横を通り抜け、天野がいなくなるのと同時に改めてシュート体勢に入る。

 

「…ちっ!」

 

これを見て空がすぐさま緑間の下へ向かい、ブロックに飛ぶが…。

 

 

――ピッ!

 

 

緑間はそれよりも速く、クイックリリースでスリーを放つ。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングに掠る事なくその中心を潜り抜けた。

 

 

「よーし!!!」

 

得点と同時にベンチの火神が拳を握りながら喜びを露にする。

 

 

「相変わらずの精度ッスね」

 

「当然なのだよ。俺は常に人事は尽くしている。俺のシュートは落ちるはずがないのだよ」

 

パチン! と、黄瀬と緑間がハイタッチを交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビ―――――――――――!!!』

 

 

ここで、第1Q終了のブザーが鳴った。

 

 

第1Q終了

 

 

カゲツ  12

ミラクル 19

 

 

『第1Q終了! いきなりスゲー10分だぜ!!!』

 

『さっきのプロ並みにスゲー!!!』

 

『いや、それ以上だろ!』

 

最初の10分間が終わり、その試合内容に観客は大盛り上がりであった。

 

 

「…確かに驚いた。噂は聞いていたが、それ以上だな」

 

同じく試合を観戦していたプロ選手達も同様の感想を抱いていた。

 

「個々の実力はBリーグのトップレベルの選手と同等以上」

 

「だが、彼らはまだ皆10代、伸びしろは計り知れない」

 

次々とコート上の選手達を評価していく。

 

「強いて足りない点を挙げるなら、若さ故にプレーが素直過ぎる事と、駆け引きに疎い所かな?」

 

「だがそれも、これから学べる時間は十二分にある」

 

さらにプロ目線から見えた彼らの欠点も挙げていく。

 

「(見つけた。日本の悲願、夢、日本の未来を託せる逸材達を…。そして、俺の最後の仕事が…)」

 

彼は東京ホーネッツの司令塔であり、かつては全日本代表の司令塔を務めた実績もある選手。夢と誇りを胸に抱いて世界と戦うもその高き壁に阻まれ続けた経験を持つ。今では最盛期を過ぎた彼は代表を引退し、満を持して開幕したBリーガーの選手として、リーグを盛り上げる為に残り現役生活を費やしている。だがそこへ、キセキと称される逸材が現れた。彼らは、かつて自分達を阻んだ世界を相手に堂々と戦える才能と資質を有していた。そんなキセキ達を見て、彼は決めた。

 

「(全盛期は過ぎ、後は枯れ行くだけだったが、そうなる前に、残さなければな。希望の逸材達に、俺のバスケ人生で培ったものを…。彼らが世界一に挑戦するその時に、少しでも支えになる事を信じて…)」

 

残りのバスケ人生を、自分が世界と戦い続けた事で学んだ、世界を相手に勝つ為に必要な事をキセキ達に伝え、キセキ達を世界を相手に勝てる逸材にまで押し上げる為に、残りの現役生活を費やす事を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

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・・・・

 

 

観客席の一角。通路の手摺の前で試合を観戦している1人の人物がいた。

 

「…」

 

その男の名はナッシュ。今日の試合の告知は、巡りに巡ってアメリカにも届き、偶然にもナッシュの耳にも届いていた。昨年、同じストリートバスケチームのチームメイトに誘われ、ウィンターカップの決勝戦を観るために(渋々)日本を訪れたのだが、今日の試合の告知を見て、ナッシュは1人、来日していた。

 

「……ふん」

 

ベンチへと下がる選手達を見て、ナッシュは鼻を鳴らした。

 

「よう。隣、良いかい?」

 

その時、ナッシュが声を掛けられる。

 

「あぁ? 好きにすりゃいいだろうが――っ!?」

 

1人静かに観戦している所に水を差され、苛立ち交じりに返事をしながら振り返ったナッシュが思わずギョッとした表情になる。

 

『へへっ』

 

振り返ったそこには、自身が所属するストリートバスケチーム、ジャバウォックのチームメイトであるニック、アレン、ザック、シルバーの4人がニヤニヤしながら立っていたからだ。

 

「てめえら、何でここにいやがる…!」

 

「それはこっちのセリフだぜ。お前が突然、数日出かけるって連絡してきたからもしやと思ったら、ビンゴだったぜ」

 

苛立ちを醸しだしたまま尋ねるナッシュ。アレンはニヤニヤしたまま答える。

 

今日の試合の告知は、ナッシュだけではなく、アレン達の耳にも入っていた。そんな折、ナッシュからの連絡を受けた事で、ナッシュもこの試合を見に行くと考え、すぐさま日本行きのチケットを抑え、やってきたのだ。

 

「ハッハッハッ! お前、普段は口を開けば(あいつ)の悪口ばかり言ってやがるのによ、お前らホントは愛し合ってんじゃねえのか?」

 

「…殺すぞてめえ…!」

 

豪快に笑うシルバーに、ナッシュはブチギレ寸前にまでボルテージを上げる。

 

「シルバー、その辺にしとかないと後でどうなっても知らねえぞ。…まあ、それはさておき、やっぱ、気にはなっちまうよな」

 

茶化すシルバーを宥めつつ、ニックがコート上に視線を向ける。

 

「俺達も同じだ。ソラもそうだが、ソラと同等の資質を持つジャパンの逸材同士の試合。気にならない訳がない」

 

彼らにとって日本人は、かつては軽視し、差別の対象でもあったが、最初の来日時のエキシビションマッチでの敗北と、その後、渡米した空との交流を経て、考えを改め、今では認めてさえいる。そんな彼らの下に、今回の試合の話が耳に入れば、気にならない訳がない。

 

遠くない未来、目の前のコートに立つ逸材達が、アメリカの前に、最大の敵として立ち塞がるかもしれないからだ。

 

「…ちっ」

 

ナッシュも同感ではあるのだが、認めたくないので舌打ちをする。

 

「それはさておき、試合の方は、ソラのチームは7点ビハインドか。押されてるように見えたが、意外と開かなかったな」

 

「要所要所できっちり決めてたからな」

 

「しかしまあ、ソラのチームは随分と大人しいな。俺達と戦った時は第1Qからもっとガツガツ来てたんだがな」

 

「完全に様子見だな。オフェンスもディフェンスも、気持ちがいいくらいにボールが散ってたからな」

 

「来るとしたら間違いなく――」

 

「第2Qからだろうな。カゲツにしても、これ以上は点差は広げたくないだろうからな」

 

アレン、ニック、ザックがそれぞれここまでの試合の感想を口にしていく。

 

「(まず間違いなく、カゲツの方が第2Qの頭から動くだろう。何せ、司令塔が(サル)だからな。あの(サル)が、いつまでもあんなお行儀が良いバスケ出来る訳ねえ)」

 

ナッシュも3人と同様の展開予想をしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

チームミラクルベンチ…。

 

試合に出場した選手達がベンチに座る。

 

「出だしは…まずまずと言った所か」

 

監督の景虎が胸の前で腕を組みながら選手達の前に立つ。

 

「このメンツで押し切れないとか、予想はしてたけど、やっぱりやるッスね」

 

タオルで汗を拭いながら黄瀬が言う。

 

「…ちっ、あの野郎、底を全然見せやがらねえ。前にやった時はこんなもんじゃなかった」

 

攻守で三杉を相手にしている青峰が不快感を露にしていた。

 

「同感ー。舐められてるみたいでムカつくー」

 

堀田のマッチアップをしている紫原も、同じく機嫌を損ねていた。

 

「この第1Qは様子見って所だろうな。あの2人…と言うか、三杉誠也だな。あいつは序盤…特に、相手が情報未知数な場合、いつも最初の10分は情報収集に徹する傾向があるからな」

 

相手の思惑を口にする景虎。

 

『…』

 

試合に出場していた5人がそれぞれ汗を拭い、水分補給をしながら呼吸を整えている。

 

「(まだ第1Qは終わっただけなのにこの汗の量…。あの2人が加わった花月はキセキの世代(この5人)が揃ってもこれだけ消耗させられる相手なんだわ)」

 

かつて帝光中時代にこの5人を3年間見て来た桃井。この5人を相手に、たった10分でここまで消耗させた事に驚いている。

 

「まあそうカッカするな。第2Qはまず間違いなく、仕掛けてくるだろうからな」

 

苛立つ青峰と紫原を窘めるように景虎が声を掛ける。

 

「私も同意見だわ。これ以上の様子見は流れを持って行かれて点差を不要に広げるだけだもの。そして何より――」

 

「――あの神城が、いつまでもあんな教科書通りのバスケで我慢出来る訳がねえからな」

 

賛同するリコ。景虎が続いて同意する。

 

「…そう言えば、あいつ、随分とらしくねえゲームメイクしてたな」

 

ベンチで試合を見ていた火神も、ボール運びをしていた空に違和感を感じていた。普段ならいつもガンガン仕掛けて流れとリズムを作る空がパスを中心にゲームを作っていたからだ。

 

「恐らく…、三杉の指示だろうな。より、詳細な情報をいち早く集めさせる為にな」

 

第1Q、チームミラクル、花月共に、奇妙な程にボールが散っていた。その結果、得点が特定の選手に偏らず、均等となっていたのだ。

 

「とは言え、流れは悪くねえからな。とりあえず、第2Qもこのメンツのままで行く。だが、状況に応じてメンツも変えていく。…火神、黒子はいつでも試合に出られる準備はしておけよ」

 

「「はい!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

チーム花月ベンチ…。

 

『…フゥ』

 

ベンチに戻った5人は、それぞれ汗を拭い、水分補給をしながら呼吸を整えていた。

 

「おいおいおい! 負けてんじゃねえかよ! 何やってんだよ!?」

 

ここまでの展開に、空の弟である陸が文句を口にする。

 

「おい兄貴、聞いてんのかよ! あんな小さいのにあっさり抜かれやがってよ。やる気あんのか――痛ぁっ!!!」

 

「喧しい! 耳元でギャーギャー騒ぐんじゃねえ!」

 

空の肩を揺すりながら騒ぐ陸を、空が頭を叩いて黙らせる。

 

「まだ最初の10分が終わっただけ、点差もたった7点だ。オタオタするような展開じゃねえだろうが」

 

やれやれと言った表情で空が陸を窘める。

 

「どうだ? 三杉、堀田」

 

選手達の前に立った上杉が2人に尋ねる。

 

「想像以上に伸びていて、嬉しい限りですよ」

 

「前に戦った時とは別人と言ってもいい程にパワーアップしていました。…相手にとって不足はありません」

 

尋ねられた2人は、ニヤリと笑いながら返事をした。

 

「三杉さんに言われて、極力ボールは双方に散るように動きましたけど、もう飽きて来たんですけど?」

 

自分の好むバスケとは真逆の窮屈なバスケをやらされ、不満顔の空。

 

「心配するな。ここからお前の好きなようにさせる。三杉もそれでいいな?」

 

「はい。ある程度の必要なデータは揃いましたので。…空、ここまで我慢させて悪かったな。ここからは存分にやってやれ」

 

「そう来なくちゃ!」

 

上杉と三杉の言葉に、空は満足気に喜んだ。

 

「引き続き、第2Qもこのメンバーのままで行く。メンバーチェンジは無しだ。細かい指示も今は出さん。派手に行け」

 

『はい!!!』

 

上杉の指示に、5人は頷く。

 

「えー、俺の出番はー?」

 

試合に出られない事に不満顔の陸。

 

「お前の出番はまだじゃ。今は大人しゅー座っちょれ。…ええな?」

 

「…うす」

 

龍川に睨まれながら窘められ、渋々陸は頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビ―――――――――――!!!』

 

 

ブザーが鳴り、インターバルが終わると、両ベンチから選手がコートへとやって来る。

 

 

『待ってました!!!』

 

『また派手なの頼むぜ!!!』

 

観客は待ってましたとばかりに歓声を上げる。

 

 

審判から三杉がボールを受け取り、空にパスを出し、第2Qが始まる。

 

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

 

「さてさて、監督からの許可は出たし、ここからはテンション爆上げで行くとしますか!」

 

不敵な笑みを浮かべながら空がボールを運ぶ。

 

「(…来る。…相変わらず分かりやすい奴だ)」

 

空の前に立ち塞がる赤司。空の様子から、ここからは空の得意のスタイルで仕掛けて来る事を悟る。

 

「(まず間違いなくパスはない。スリーも捨てていい。神城は間違いなく俺を抜きに来る)」

 

赤司は集中力を高め、空を迎え撃つ。

 

「(神城の雰囲気が変わった。それを感じ取った赤司の集中力が増した)」

 

横で見ていた緑間が、空、赤司の双方の変化に気付いた。

 

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

「…」

 

「…」

 

ゆっくりとボールを運ぶ空。待ち構える赤司。

 

「(……行くぜ!!!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

意気込みと同時に空がクロスオーバーで仕掛ける。

 

「(…来た。だが本命は――)」

 

空のクロスオーバーに付いていく赤司。

 

「(2つ目、キラークロスオーバー!!!)」

 

右から左へと切り返し、直後に空は再度切り返す。そこへ、赤司の手が伸びる。

 

「(タイミングドンピシャ、赤司っちの勝ちだ!)」

 

第2Q、最初の空と赤司の激突。赤司の勝利を確信する黄瀬。

 

赤司の伸ばした手が、グングンボールへと迫り、ボールを捉える――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ダムッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、赤司の手がボールに触れるより速く、空はボールを切り返し、赤司の手が空を切った。

 

「っ!?」

 

この結果に赤司の目が大きく見開かれる。

 

 

『赤司を抜いたぁぁぁぁっ!!!』

 

 

「赤ちん!? …ちぃ!」

 

赤司を抜き、中に切り込む空。赤司が抜かれた事に紫原が驚きつつもヘルプに出る。

 

「っ!?」

 

その直後、紫原の目も大きく見開かれる。空は赤司を抜いた直後、ボールを掴んで前方へと勢いよくぶん投げる。ボールは、紫原の顔面スレスレの僅か横を通り抜ける。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

ボールは、紫原の後方の堀田の手に渡る。

 

「よし!」

 

パスを受けた堀田はボールを右手で掴み、リングに向かって飛ぶ。

 

「この…!」

 

即座に反応した紫原はすぐさま反転し、ブロックに飛んだ。

 

 

――バチィィィィィィッ!!!

 

 

堀田が右手で掴んだボールに、ブロックに飛んだ紫原の右手がぶつかる。

 

 

『うぉぉぉぉぉーーーっ!!! 紫原はえー!?』

 

 

――グググッ…!

 

 

「っ!?」

 

ダンクを阻んだ紫原の右手が、徐々にリングへと押され始める。

 

「フン!!!」

 

 

――バキャァァァァッ!!!

 

 

「…ぐっ!?」

 

堀田は、そのまま押し切り、紫原を弾き飛ばしながらボールをリングに叩きつけた。

 

 

『うぉぉぉぉぉーーーっ!?』

 

『マジかよ!? あの紫原を吹っ飛ばしやがった!!!』

 

紫原をも圧倒したその堀田のパワーに、観客が驚きの歓声を上げる。

 

 

「良くぞここまで強くなった。見違えたぞ。…だが、それは俺とて同じだ」

 

賛辞の言葉を贈りながら堀田がコートに座り込んだ紫原の前に立ち、手を差し出した。

 

「…っ!」

 

紫原はその手を取らず、自分1人で立ち上がると、堀田の前に立ち、近距離で堀田を睨み付ける。

 

「だが、こんなものではないのだろう? もっと楽しませてくれ」

 

そんな紫原に意にも介さず、不敵な笑みを浮かべながら告げる堀田。

 

「…っ」

 

この言葉に、思わず紫原の右手が強く握られる。

 

「ちょっ、紫原っち!?」

 

険吞な雰囲気を感じ取った黄瀬が思わず紫原と堀田の距離を空けるように間に入る。

 

「心配はいらん。ただの挨拶だ」

 

慌てる黄瀬に、堀田は問題とばかりにそう告げ、ディフェンスへと戻っていった。

 

「つうか赤司。(あいつ)が抜きに来るなんざ、傍から見ても明らかだっただろ。眼ぇ使ってでも止めろよな」

 

そこへやってきた青峰が同じくやってきた赤司に抗議する。

 

「バカを言うな」

 

そんな青峰に対し、赤司が一言そう返し…。

 

「眼を使っても尚、この結果だ」

 

「っ!?」

 

赤司のこの言葉に、集まった青峰の目が大きく見開かれた。

 

相手の動きの未来が視える赤司の天帝の眼(エンペラーアイ)。相手に何もさせる事なく仕留めた来た赤司の眼。それを使っても尚、止められなかったと言う事だからだ。

 

「フー、ようやく窮屈なバスケから解放されるぜ」

 

そこへ、空の声がチームミラクルの選手達の耳に入る。

 

「こっからが楽しい祭りの始まりだ。覚悟しろよ、キセキの世代!」

 

チームミラクルの選手達が振り返るとそこには、不敵な笑みを浮かべる空と、4人のチームカゲツの選手達がいた。

 

「上等だぜ!」

 

「そうでなくちゃ、面白くないッスよ!」

 

「お前達こそ、覚悟するのだよ」

 

「捻り潰す!」

 

「面白い」

 

対して、チームミラクルの5人も、目の前の好敵手を前に、笑うのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





気が付けば2ヶ月半、最後に投稿したのはゴールデンウイーク。…うわぁ、空けちまったなぁ…(;^ω^)

ホントにすみません…m(_ _)m

今年はネタ探しやモチベーションなど、諸々の問題で超亀投稿、不定期更新です。気長にお待ちして頂ければと思います…(>_<)

…もう少し先まで執筆するつもりだったのですが、想像以上に長くなった事が理由で文章を分けたので、次話の投稿はもしかしたら早いかもしれません…(^_^)v

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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