黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

早く終われ、花粉症シーズン…(>_<)

それではどうぞ!



~sky~

 

 

 

後半戦が始まり、チームミラクルのオフェンスは、陸がマッチアップをする緑間から仕掛けるも、古武術を駆使したディフェンスで翻弄。

 

緑間もこれを何とかかわすも、その際の隙を大地に突かれ、ボールを奪われてしまう。

 

その後、三杉のスリーを何とか青峰が防ぎ、リバウンドボールを陸が紫原を押し退けて奪取。その後、陸からのパスを受けた堀田が得点を決めた。

 

試合は、陸と言う伏兵によって、新たな動きを見せるのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

スキール音が響き渡る会場。

 

 

――ピッ!

 

 

黄瀬からパスが出される。

 

「っしゃ!」

 

パスを受けたのは火神。ボールを掴んだ火神はそのままダンクを狙う。

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

「がっ!?」

 

「させないよ」

 

しかし、ボールがリングに叩き付けられる直前、三杉によってボールはその手から掻きだされてしまう。

 

「…っ、これでもダメッスか!」

 

ゴール下の要である堀田を充分に引きつけてから火神にパスを出したが、三杉のヘルプが一足早かった。

 

「(ダンクに行く前に三杉(こいつ)のポジションは把握していた。…ちくしょう、リングに意識を向けた瞬間に…!)」

 

火神は三杉を警戒していた。もし、三杉がヘルプに来れば、即座にパスに切り替えられるように。だが、三杉は青峰からマークを外す気配がなかった為、警戒を解いた。しかし、三杉はその警戒を解いた瞬間にヘルプに飛び出し、火神のダンクを防いだ。

 

「ふぅ、間一髪だ」

 

ほくそ笑む三杉。

 

無作為にヘルプに飛び出してしまえば、みすみす青峰をフリーにする事になり、火神もパスに切り替える。三杉はこれを理解している為、不用意にはヘルプに出なかった。しかし、ヘルプに行かないあるいは遅れれば、みすみす得点を許す事になり、三杉は、火神がパスに切り替えられず、かつ、自身のヘルプが間に合うドンピシャのタイミングで向かったのだ。

 

 

「百戦錬磨やな。人間の心理をよー理解しとるわ」

 

一連の三杉の動きを称賛する今吉翔一。

 

「もしかして、翔兄より?」

 

「比較にならんわ。ワシじゃ、相手にならへんやろな」

 

今吉誠二の問いに、苦笑気味に頷いた。

 

 

「もーらい、速攻!」

 

ルーズボールを拾った陸がそのまま速攻を仕掛ける。

 

「させないのだよ」

 

だが、スリーポイントライン目前で緑間が陸を捉え、立ち塞がる。

 

「かー! この眼鏡あんちゃんしつこ過ぎだろ!」

 

緑間に速攻を止められ、思わず愚痴る陸。

 

「じゃ、頼んます!」

 

ここは仕掛けず、陸は最小限の腕の動きでパスを出した。

 

「…っ、またあのパスか…!」

 

モーションがないパスに、緑間もカットが出来ず。

 

「よし!」

 

逆サイドでボールを受け取ったのは堀田。ボールを受け取った堀田はそのままリングに向かってドリブルをし、リングに向かって飛んだ。

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

「調子に乗るなよ!」

 

追い付いた紫原がブロックに割り込んだ。

 

「ほう?」

 

ダンクが防がれるも、感心するような声を上げる堀田。

 

「速い。それに、健のダンクをブロックとは、やるね」

 

続くように感心する三杉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

「…っ」

 

大地のお家芸、バックステップからの片足フェイダウェイによるスリーを放つも、横から飛んで来た青峰によってブロックされる。

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

「…っ」

 

攻守が切り替わり、チームミラクルのオフェンス。ボールを運ぶ黄瀬自ら仕掛けるも、お返しとばかりに大地がブロック。

 

 

第3Q、残り7分52秒。

 

 

花月 40

奇跡 47

 

 

試合は、互いに1本ずつ決めた後、互いに相手のオフェンスを防いでおり、膠着状態の様相を見せようとしていた。

 

 

「てっきり、あの(中坊)が入って派手な試合になるかと思ったが…」

 

これまで両チーム安定して得点を重ねていたが、すっかり得点が伸び悩む展開になった事に不気味さを覚える高尾。

 

「こういう時、いつも流れを変えてたのがキセキの名を冠する奴らだった…」

 

ぼそりと呟く大坪。

 

これまでの試合は、キセキの名を冠する者達が圧倒的な個の力で現状を打開してきた。だが、この試合はコート上にいる者全てが圧倒的な個を持つ選手達。現状を打開出来ずにいた。

 

「この手の展開は、どっちかがミスをするか、あるいは突破口を開くか、だがよ」

 

「そうなると兄貴、チームミラクルの方が有利か?」

 

宮地の言葉に、弟の裕也が尋ねる。チームカゲツは、不安定要素とも言える陸がいる為、そう断じたのだ。

 

「そうとも言えないぞ。あいつ、第3Q入ってディフェンスの仕方を変えてから、緑間も攻めあぐねるようになってる。周りも上手くフォローしているしな」

 

しかし、支倉がこれを否定。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

「…っ、来いや!」

 

ボールを持った緑間に対し、ディフェンスに入る陸。

 

「…っ」

 

思わず舌打ちをする緑間。陸は先程と同様、距離を取ってディフェンスをしている。それにプラス、仕掛ける方向を限定させている。スリーを打とうとすれば、シュートモーションに入る前に捕まる。抜き掛かれば、味方のヘルプがすぐさま飛んで来る。その為、緑間は迂闊に仕掛けられない。

 

「ちっ」

 

仕方なく、緑間はボールを黄瀬に戻した。

 

 

「しばらく膠着状態が続くか?」

 

「…いや」

 

小堀の予想に、笠松が首を横に振り…。

 

「恐らくは、すぐに崩れる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

ローポストでボールを掴んだ紫原。その背中に張り付くようにディフェンスに入る堀田が激しく激突。

 

「…来い」

 

ドリブルをしながら激しく背中をぶつけ、ゴール下まで押し込もうとする紫原。

 

「…っ」

 

しかし、堀田の身体は1ミリも動かず、その場で紫原を押し止めていた。

 

 

『すっげ、ビクともしねえ…!』

 

 

――ダムッ!!!

 

 

機を見て紫原はスピンムーブで堀田の背後に進み、直後にボールを掴み、リングに向かって飛ぶ。

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

「その程度か!」

 

しかし、リングにボールが叩き込まれる直前、堀田のブロックによってボールは叩き落されてしまう。

 

 

『うわー! やっぱり突破出来ない!』

 

悲鳴のような歓声を上げる観客。

 

 

「速攻!」

 

ルーズボールを拾った堀田がすぐさま前線にパスを出した。

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

直後のチームカゲツのオフェンスは、三杉→大地を経由し、ローポストに立った堀田にボールが渡り、背中に張り付く紫原に対し、仕掛ける。

 

「…っ」

 

腰を落とし、歯を食い縛りながら堀田をその場に押し止める紫原。

 

 

『おー! 紫原も負けてねえ!』

 

 

――ダムッ!!!

 

 

暫しの競り合いの後、先程の紫原と同様、スピンムーブで背後へ進み、リングに向かって飛ぶ。

 

「っ、舐めんな!」

 

紫原は即座に反応、堀田とリングの間にブロックを割り込ませる。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

ブロックに飛んだ紫原の右手がボールにぶつかる。

 

「ぬぅん!!!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「っ!?」

 

しかし、その右手は堀田のパワーの前に弾き飛ばされてしまった。

 

 

花月 42

奇跡 47

 

 

『うおー!? また紫原が吹き飛ばされた!!!』

 

 

「くそっ、くそっ!」

 

止めきれず、悔しさを露にする紫原。

 

 

「…この眼で見ても信じられないアル。あの紫原をパワーで捻じ伏せるとは」

 

元チームメイトである劉が思わずぼやく。自身もインサイドを主戦場とするプレイヤーであり、共に2年間同じチームでプレーした事もあり、紫原の恐ろしさはよく理解している。

 

「かつてはセンス任せだった紫原のフォームも、今では理想のフォームがかなり練度で染みついておる。…それでもあの男は容易に跳ね返すか」

 

険しい表情の岡村。

 

「確か、紫原って普段はリミッターみたいのをかけてんだろ? それを外せりゃ、勝機はあるんじゃねえか?」

 

福井の言う通り、紫原はその持て余すパワーの為、普段は相手を怪我をさせないように無意識にパワーをセーブしている。

 

「残念ですが、そのリミッターはとうに外れています。そもそもの話をすれば、アツシはこの試合、最初からリミッターはかけていません」

 

『っ!?』

 

氷室から告げられた事実に、元陽泉の者達の表情が凍り付いた。

 

「マジかよ…、それがホントなら、チームミラクルはかなり不利だぞ」

 

福井の言う通り、紫原が堀田に対抗出来なければ、インサイドはチームカゲツに制圧される事を意味し、戦況はかなり不利だ。

 

「ディフェンスはある程度、紫原も止めとる。問題はオフェンスじゃ。見てみい」

 

岡村に促され、コートに視線を向ける面々。

 

「かつてのワシらと同じじゃ。紫原がインサイドを支配しとるから、ワシらは強気に前面に圧力をかけられた」

 

チームカゲツは、各マッチアップ相手に対し、陸を除いて前へ、前と圧力をかけている。チームミラクルは、緑間以外も、紫原を除いてそれなりにスリーを打てる。だが、各マッチアップ相手のプレッシャーが強い為、スリーを打てずにいた。

 

「最悪、切り込まれても構わねえって事か」

 

堀田への絶対的な信頼。仮に止めきれずとも、堀田がインサイドに陣取っていれば、誰かしらのフォローなりヘルプが間に合ってしまう。

 

「見た所、スピードと高さなら紫原が上ですし、パワーにしても、対抗は出来ていますから、岡村先輩、どうにかならないもんですかね?」

 

永野が尋ねる。

 

「新型の破壊の鉄槌(トールハンマー)にしても、インサイドのバリエーションの1つに過ぎん。せめて、ミドルレンジで勝負出来る何かがあればのう」

 

顎に手を当てながらそう語る岡村。

 

「ミドルレンジか…。あいつの得点パターンは、フリースローを除けば、ほぼゴール下からだったからなあ」

 

ローポストにポジションを取り、そこからポストアップでゴール下まで押し込み、そこから得点。これが紫原の王道パターンであった。圧倒的とも言える、紫原の高い身長とパワーがあれば、これだけで充分であり、そのパターンを止めた堀田対策に産み出したのが新型の破壊の鉄槌(トールハンマー)であったが、これも堀田に対応されてしまっている。

 

「…」

 

コート上で堀田を相手に苦戦を強いられている紫原を、氷室は真剣な表情で見つめるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

大地を抜いたと同時にストップ&フェイダウェイで得点を狙った黄瀬だったが、堀田に放たれたシュートは叩き落されてしまった。

 

「良いぞ健、速攻だ」

 

ルーズボールを拾った三杉がそのままボールを運ぶ。

 

「…っ、戻れ!」

 

これを見て火神が叫び、急いでディフェンスに戻る。

 

「これ以上、良い様にさせっかよ」

 

スリーポイントライン目前で青峰が三杉を捉え、立ち塞がる。

 

「…フッ」

 

三杉が薄くを笑みを浮かべると。

 

 

――ピッ!

 

 

左方向に浮き球のようなパスを出した。

 

「たっは! きついパス!」

 

そこへ駆け込んだ陸がジャンプし、右腕を伸ばしてボールを掴み。

 

「ふん!」

 

その体勢からパスを出した。

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

「…っ」

 

ボールはローポストに立った堀田に渡り、背中に張り付いた紫原を押し込み始めた。

 

「っ! 舐めんな!」

 

紫原は、歯を食い縛って堀田をその場に押し止める。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

直後、堀田はボールを掴み、その場で左右にステップを踏み、揺さぶりをかけた後、フックシュートを狙った。

 

「打たせるか!」

 

そこへ、ヘルプに飛び出した火神がブロックに現れた。

 

 

――スッ…。

 

 

しかし、堀田はフックシュートを中断、パスに切り替えた。

 

「っ!?」

 

目を見開く火神。ボールはコーナーに移動していた大地の下へ。

 

 

『あっ!?』

 

思わず声を上げる観客。

 

 

コーナーでフリーでボールを掴んだ大地。

 

「…っ」

 

マークをしていた黄瀬は三枝のスクリーンに阻まれ、チェックが遅れる。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ノーマークの大地は悠々とコーナースリーを沈めた。

 

 

花月 45

奇跡 47

 

 

『来た、スリー!!!』

 

『とうとうワンゴール差だ!!!』

 

「…っ、上手いな、ここで外か」

 

堀田の機転に、小堀も脱帽。

 

 

「悪い、迂闊だった」

 

「今のは仕方ない。お前だけの責任ではないのだよ」

 

「…っ、申し訳ないッス」

 

謝罪する火神に、そんな火神を緑間が制し、大地をフリーにした黄瀬が申し訳なそうに謝罪。

 

「向こうは中に外にと完全に良いリズムが生まれてる。対してこっちはこのままじゃジリ貧だ。ここからは俺も堀田をマークする。良いよな?」

 

チームカゲツに良いリズムを生み出している堀田を止めるべく、ダブルチームを提案する火神。

 

「はぁっ!? 必要ねえし」

 

だが、この提案に対し、紫原は反発をする。

 

「我が儘を言うな紫原。このままでは逆転されるのは時間の問題なのだよ。三枝は……俺が代わりにマークするのだよ」

 

反発する紫原を窘めた緑間。空いた三枝を青峰に任せようと一瞬、視線を向けたが、青峰が三杉のマークを代わる訳がないと瞬時に判断し、自身が買って出た。

 

「待てよ! あいつは俺が絶対に捻り潰して――」

 

 

 

 

 

「負けるな、アツシ!!!」

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

その声に反応し、反射的に声がした方向へ身体を向ける紫原。そこには、かつてのチームメイトである氷室と、それだけではなく、共に戦った陽泉の選手及び先輩達の姿もあった。

 

「室ちん…」

 

自身を呼んだ氷室。その表情は、何かを伝えようしているように紫原は感じた。

 

「タツヤ? …まあいい、勝つ為だ、文句は後でたっぷり聞いてやるからよ」

 

同じくその声を聞いた火神だったが、時間がない為、話を強引に切り上げ、その場を後にする。

 

「…」

 

熱くなりかけていた頭は冷え、何かを考える紫原。そして…。

 

「ちょっと待って」

 

『?』

 

呼び止められた面々が振り返る。

 

「次の1本、俺にボール回してくんない」

 

「…まさか、堀田と1ON1でも仕掛けるつもりか?」

 

「そうだけど?」

 

火神の問いに、紫原は当然とばかりに答える。

 

「君達、早く試合を再開して」

 

時間を掛け過ぎた為、審判から注意が入る。

 

「じゃ、任せるわ」

 

「だな」

 

「分かったのだよ」

 

青峰、火神、緑間が頷き、散らばっていった。

 

「ちょちょ、良いんスか!?」

 

慌てて黄瀬が散らばる面々に尋ねる。

 

「多分な。タツヤのおかげか、頭は冷えてるみたいだしよ。何よりあの様子だと、何か考えもありそうだしな」

 

先程までの様子とは打って変わった事を感じ取った火神は黄瀬の問いに頷いた。

 

「これでダメなら俺が仕掛けるまでだ」

 

意気込む青峰。

 

「現状インサイドで堀田とやり合えるのは紫原だけだ。勝負を避けるにしてもいつまでも避けられるものではない。ベンチも動いている。今は任せるのだよ」

 

視線をベンチに向ける緑間。そこには、タイムアウトの申請に向かう景虎の姿があった。

 

「…そうッスね」

 

納得した黄瀬だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『来た!!!』

 

試合が再開され、ボールはローポストに立つ紫原に渡った。

 

『これで何度目だ!?』

 

『けどよ、勝算はあるのか!?』

 

ここまでの2人の激突は堀田の優勢であり、勝機を見出せない観客。

 

 

「来い」

 

静かに、それでいて、力強い声で背中に張り付く堀田が告げる。

 

「…」

 

リングに背を向けたままボールを掴む紫原。

 

「…っ」

 

一瞬、視線をリングに向け、何かを決意した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「紫原にボールが渡った!」

 

観客席の福井が前のめりで注目する。

 

「仕掛ける気か?」

 

「だが、勝算があるとは思えないアル」

 

神妙な表情の岡村と劉。それは、他の陽泉の者達も同様であった。

 

「あります」

 

だが、氷室だけは確信したかのような表情で断言した。

 

「(そうかアツシ、あれ(・・)をやるんだな)」

 

氷室だけが、これから紫原が何をしようとしているか、理解していた。

 

「氷室、あいつ、何をしようってんだ?」

 

福井が尋ねる。

 

「…」

 

だが、氷室は答えず、ただただ紫原に視線を贈るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…っ」

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

ドリブルを始めた紫原は背中を激しく堀田にぶつける。

 

 

『仕掛けた!』

 

『けど、それはさっきもダメだったろ!?』

 

『同じ事の繰り返しじゃ崩せないって!』

 

観客の一部から、紫原に対して、懐疑的な声が飛び出す。

 

 

「(なんだ、プレッシャーが薄い?)」

 

ポストアップを受け止めている堀田は、違和感を感じていた。さっきまでより、僅かに紫原からの圧力が薄いのだ。

 

「…っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

遡る事、1年程前の事…。

 

『良いかアツシ。俺が形とイメージを伝える。良く見ていてくれ』

 

陽泉高校の体育館にて、リングの近くでボールを持った氷室。

 

『ねー、ホントにやるの? ちょーめんどいんだけど』

 

めんどくさそうな表情の紫原。

 

自身の高校最後の大会であるウィンターカップが終わり、3年生は後は引退を待つばかりなのだが、氷室はその前に紫原に対し、最後の指導を申し出たのだ。

 

『そう言うなアツシ。去年、先輩達がアツシに置き土産の残したって聞いたからね。俺も何かを残そうと思ったのさ』

 

『…はー、もうそう言うの別に良いし』

 

『堀田に勝ちたいんだろ? そうでなくてもこれから先、バスケを続けるなら、彼と同等、あるいはそれ以上の選手も現れる』

 

『…』

 

これは(・・・)、必ずその時に役に立つ。これをマスター出来ればアツシ、お前に敵はいなくなるよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「…っ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

今一度背中をぶつけた後、紫原はボールを掴み、ステップを踏み始める。

 

「おぉっ!!!」

 

そして、咆哮と共に紫原が飛ぶ。

 

「(来るか! …っ!?)」

 

ダンクに備える堀田だったが、次の瞬間、両目が大きく見開かれる。右手でボールを掴み、頭上に大きく掲げた紫原はリングに向かってではなく、リングから離れるように飛んだのだ。

 

「ちぃっ!」

 

ブロックに飛んだ堀田。

 

 

――バス!!!

 

 

しかし間に合わず、右手に掴んだボールを頭上に大きく掲げた状態で放たれたボールは、バックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

 

花月 45

奇跡 49

 

 

ドスン! と音と共にコートに着地をする紫原。

 

 

『今の、フックシュートか?』

 

『いや、それにしては…』

 

『と言うか、今のって…!』

 

徐々に騒めき出す観客。

 

 

「なるほど、スカイフックか」

 

技の正体を呟く堀田。

 

 

『おぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

直後、会場が割れんばかりの歓声に包まれた。

 

『マジかよ!? NBAの伝説の技が飛び出しやがった!』

 

同じく技の正体が伝わった観客が大歓声を上げる。

 

「ワオ! スカイフックまで飛び出しちゃったよ!」

 

頭を抱えるニック。

 

「ハッ! いちいち騒ぎ過ぎなんだよ。たかがフックシュートだろうが」

 

鼻で笑うシルバー。

 

「たかがって、お前以前に試合であれやって外しまくってナッシュにキレられてただろうが」

 

そんなシルバーに呆れるアレン。

 

「…ふん」

 

シルバー同様、鼻を鳴らすナッシュ。だが、その表情は真剣なものであった。

 

 

「紫原っち! いつあんなの覚えたんスか!?」

 

「別にー、前に室ちんに教わって、暇な時に練習してただけだし」

 

大興奮の黄瀬に対し、紫原は淡々と答えた。

 

「(スカイフック。210㎝オーバーの身長に長いウィングスパンとジャンプ力を持つ紫原にはおあつらえ向きの技じゃねえかよ!)」

 

目の前でかのNBAの伝説とも言える選手のシグネチャームーブが見れて興奮が隠せない火神だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

直後のチームカゲツのオフェンス…。

 

「来いよ」

 

ローポストでリングに背を向けた状態でボールを受けた堀田に対し、背後から迎え撃つ紫原。

 

「…」

 

堀田はこれまでのように仕掛けず、ボールを三杉に戻した。

 

 

「退いた?」

 

「派手に決められた後だからな。もしここで止められでもしてターンオーバーで決められたら、流れを渡しかねない」

 

日向の呟きに、伊月はそう結論付ける。

 

 

「(いつもの健なら、それでも仕掛けていくが。…そうか)」

 

敢えて退いた堀田を見て、何かを感じ取る三杉。

 

そこからチームカゲツはボールを回しながら機を窺う。

 

 

――ピッ!

 

 

中に外にとボールは動き、やがて、トップの位置に立つ三杉の手元にボールが戻る。

 

 

――スッ…。

 

 

その時、ローポスト付近にいた堀田が動き、三杉をマークする青峰にスクリーンに立つ。同時に三杉が切り込む。

 

「青峰っち、行ったッスよ!」

 

「分かってるよ!」

 

青峰は堀田のスクリーンをロールでかわして三杉を追いかける。だが…。

 

「っ!?」

 

スクリーンをかわした先に、三杉の姿はなかった。

 

「ちっ!」

 

慌てて振り返ると、三杉は先程の所から動いてはおらず、高精度のフェイクで青峰を引っ掛けたのだ。

 

三杉は悠々とスリーの体勢に入る。

 

「させな――っ!?」

 

ヘルプに飛び出し、ブロックに飛んだ黄瀬だったが…。

 

「(飛んでない!? これもフェイクッスか!?)」

 

三杉は飛んでおらず、これもフェイク。

 

 

――ピッ!

 

 

ここで三杉はパスを出し、ボールを中に入れる。

 

「ナイスパース!」

 

ボールは中に走り込んだ三枝の手に渡る。

 

「ふん!」

 

直後、三枝はそのままリングに向かって飛んだ。

 

「させるかよ!」

 

そこへ、紫原のブロックが現れる。

 

「来よったか! 相変わらず早いのう!」

 

しかし、三枝はお見通しとばかりにボールを下げ、パスに切り替える。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールを受けた堀田が悠々とゴール下から得点を決めた。

 

 

花月 47

奇跡 49

 

 

「上手いな…」

 

一連のプレーを見て呟く森山。

 

「総合的な戦力はチームミラクルの方が僅かに上だろうよ。だが、個人技主体のチームミラクルと違い、チームカゲツはしっかり連携が出来ている」

 

戦力差はあれど、均衡を保っていられる理由をチームの練度と見る笠松。

 

 

「ああもう!」

 

「…ちっ」

 

黄瀬は頭を抱えて悔しがり、青峰を舌打ちをする。

 

「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

次のチームミラクルのオフェンス。紫原にボールが渡り、再びスカイフックを決めた。

 

 

花月 47

奇跡 51

 

 

『出た、スカイフック!!!』

 

『2発連続って事は、まぐれじゃないぞ!?』

 

 

「…」

 

神妙な表情で紫原を睨む堀田。

 

「(健でも手を焼くあの打点の高さ、厄介だな…)」

 

同様に、三杉も脅威に感じていた。

 

 

続くチームカゲツのオフェンス…。

 

「来いよ。捻り潰してやる」

 

ローポストでボールを掴んだ堀田。背中に張り付く紫原が話しかける。

 

「…良いだろう、受けて立つ!」

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

宣言直後、堀田が背中をぶつけ、ゴール下まで押し込みにかかる。

 

「…っ」

 

紫原は歯を食い縛り、堀田をその場で釘付けにする。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

これ以上、押し込めないと見て堀田はボールを掴み、ステップワークで翻弄する。

 

 

――スッ…。

 

 

ゴール下に進んでダンク…と見せて、リングから距離を取って、お返しとばかりにベビーフックを撃った。

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

だが、紫原は放られた直後のボールを叩き落とした。

 

「っ!?」

 

このブロックに、堀田は大きく目を見開いた。

 

 

『うわー! 紫原止まんねえ!!!』

 

 

「絶好調じゃねえか紫原!」

 

ルーズボールを拾った火神。そのまま黄瀬にパスを出した。

 

ボールを運んだ黄瀬は、迷う事無く紫原にボールを託した。

 

「…」

 

「…」

 

これまで同様、ローポストに立った紫原と堀田。

 

 

『これで何度目だ!? 2人の勝負は!?』

 

両者の激突に、観客も釘付けになる。

 

「でもさあ、いくらスカイフックが強力な武器だって言っても、いつまでもあの堀田相手にやり合えるのかな?」

 

懸念する小金井。

 

「大丈夫さ」

 

そんな懸念を一蹴する木吉。

 

「ここまで紫原のオフェンスが通用しなかったのは、ダンク一辺倒だったからだ」

 

『…』

 

「今、堀田の脳裏には、確実に2本のスカイフックが刻み込まてる。つまりは、布石になっている。迷いが生じれば、それだけディフェンスもし辛くなる。つまり、今の紫原は堀田と――」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「――対等以上に戦える」

 

 

今度はスカイフックではなく、ゴール下に潜り込み、新型の破壊の鉄槌(トールハンマー)を仕掛けた。

 

「ちぃっ!」

 

僅かに反応が遅れるも、堀田が即座にブロックに飛んだ。

 

「おぉぉぉぉぉーーーっ!!!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「っ!?」

 

しかし、紫原はそのブロックを跳ね飛ばし、リングにボールを叩き付けた。

 

 

花月 47

奇跡 53

 

 

『おぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

 

「っしゃぁっ!!!」

 

珍しく感情を露にする紫原。

 

 

「さすがの堀田も、体勢が不安定なあの状態じゃ、ブロックは出来ないか」

 

辛うじてブロックには間に合ったが、反応が遅れた為、体勢が不十分だった事を確認した小堀。

 

「次の1本が正念場だ。もし仮に、次もターンオーバーになって失点すれば、勢い流れ共に、確実にチームミラクルに傾く。そしてそれは、簡単に途切れる事はねえ。残り時間を考えりゃ、下手すれば勝敗が決まるぜ」

 

そう断言した笠松であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「(このままじゃやべー…)」

 

今の状況に危機感を抱く陸。ボールが陸の下にやって来ると…。

 

「(堀田のオッサンがダメなら、俺がやってやる!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ここで陸が仕掛け、緑間を抜きさった。

 

 

『おっ、抜いたぞ!』

 

 

「(思った通りだ。ここまでボール回しに徹した俺が仕掛けるなんざ誰も予想してねえ。このまま俺が決めてやる!)」

 

そのままリングに向けて突っ込む陸。

 

「っ!? 陸さん、止まって下さい!」

 

決死の表情で制止をかける大地。

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

「あっ!?」

 

だがしかし遅く。悪い流れに焦り、強引に仕掛けた陸だったが、紫原のブロックに阻まれてしまう。

 

 

「バカ野郎、焦りやがって!」

 

迂闊な陸のプレーにベンチから空が怒声を飛ばした。

 

緑間は陸が悪い流れに焦っている事を気付いており、わざと陸を抜かせたのだ。確実にボールを奪う為に。

 

 

『またターンオーバーだ!』

 

『チームミラクル止まんねえ!』

 

「アカン…アカンわ。これは痛い失態やで。…ここ止められへんかったら、点差開くでー」

 

そう確信する今吉翔一。

 

 

オフェンスが切り替わり、速攻をかけるチームミラクル。

 

 

『アウトナンバーだ!』

 

 

「…っ」

 

ディフェンスに戻れたのは大地のみで、黄瀬がボールを運び、さらに緑間もおり、2対1のオフェンス有利の構図になった。

 

「(何としてでもここは…!)」

 

ここを取られると完全に流れを相手に渡しかねない為、覚悟を以ってディフェンスに臨む大地。

 

「(パスか、それとも…)」

 

ボールを運ぶ黄瀬をチェックしつつ、緑間への警戒も取る大地。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

黄瀬は大地の目前でボールを切り返し、クロスオーバーで抜きさりにかかった。

 

「(これは!?)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

右から左に切り返すと、すぐさま逆に切り返す。キラークロスオーバーを仕掛けた。

 

「っと、さすがに甘くないッスか」

 

しかし、大地はこれに対応。左腕を伸ばして黄瀬の進路を塞いだ。空の得意技をコピーした黄瀬だったが、それが逆に、普段練習で嫌と言う程見ていた大地に対応される結果となった。

 

直後、黄瀬はボールを掴み、左方向を走る緑間へのビハインドバックパスを選択。

 

「渡さねえぞコラァ!!!」

 

その時、2人のパスコースに陸が割り込んだ。

 

 

『おっ、止めたか!?』

 

パスが出されるより早く、陸がパスコースに割り込み、スティールを確信する観客。

 

「…えっ?」

 

陸が戸惑いの声を上げる。来るはずのボールが飛んで来なかったからだ。

 

「これ、1度やって見たかったんスよね」

 

黄瀬は、ビハインドバックパスを出すのと同時に逆の腕を後方に突き出し、突き出した腕の肘にボールをぶつけ、逆方向へと進路を変えさせたのだ。

 

「(今欲しいのは3点じゃない、確実に流れを掴み取る強烈な1発っスよ!)」

 

逆方向へと飛んでいったボールは、そこへ走り込んだ紫原の手に渡った。

 

「なっ!?」

 

「っ!?」

 

これには陸も驚き、大地もエルボーパスにかかり、対応出来ず、目を大きく見開いた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

紫原がゴール下まで突き進む。

 

「ぶちかませ、紫原!!!」

 

叫ぶ火神。

 

 

 

 

 

――ドン!!!

 

 

 

 

 

次の瞬間、ゴール下で紫原がディフェンスに激突した。

 

「えっ?」

 

 

『ピピーーーーーー!!!』

 

 

『オフェンス、紫原(白8番)!』

 

審判が拳を突き出しながらオフェンスファールをコールした。

 

 

『うわー、オフェンスファールだ!!!』

 

まさかのオフェンスファールに大熱狂で頭を抱える観客。

 

 

「ふはっ! まさかコート内であの人以上に性格悪い奴がいるとはなあ」

 

一連のプレーを見て思わず称賛? の言葉を贈った花宮。

 

 

「く…くそっ…!」

 

思わず目の前を睨み付ける紫原。

 

「フッ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そこには、したり顔で両腕を万歳するかのように広げたままコートに倒れ伏した三杉の姿があった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





4話くらいで終わらせる予定だったこの試合、気が付けば5話目か…(>_<)

紫原に技巧的な技の極致の1つであるスカイフックを覚えさせた事には賛否両論あるかと思います。ただ、現状、213cmの身長に長いウィングスパン、最高到達点は火神以上の触れ込みがある紫原なら打てる土台は出来ていると思ってます。もちろん、現状で本家並みに打てる訳でも決められる訳ではありませんのでそこはあしからず…m(_ _)m

ただ、紫原が身体能力だけで今後特に国際試合やプロリーグで無双出来てしまうのもそれはどうかと思っており、某リングを2回も壊したあの化け物選手も、NBA入りした後はある程度技術の有効性必要性は実感し、ある程度取り入れてはいるので、紫原もその一環でダンク一辺倒の選手ではなく、その長い身長と手足を活かしたスカイフックを新たな武器にする選手にしました。

ただ、紫原は原作で、アメリカですら神に選ばれし躰と称されるシルバーを圧倒しているので、実際の所、どうなのかなーとも思ったのですが、シルバーは大の練習嫌いで、スキルアップのトレーニングはもちろんフィジカルトレーニングも一切してないですし、じゃあシルバーが原作で時点でNBA入りしたら圧倒出来るのかと考えた時、そうとも思えないので、シルバーの評価は、将来性込みでの評価と思っています。黒バスの上澄み選手は基本、バグってますが、恐らくNBAのスター選手はそれ以上にバグってる思われますので…(;^ω^)

長々と言い訳染みた持論を失礼致しました…m(_ _)m

と言うか、何気にこの二次で花宮登場させたの始めてだな(笑)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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