黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

だいぶ花粉も和らいできましたが、余裕ぶっこいて薬を飲まないとダウンする羽目に…(>_<)

それではどうぞ!



~猛威~

 

 

 

タイムアウト終了後…。

 

両チームの選手交代に伴い、試合は点の取り合いが始まった。

 

その後、暫しの間、点の取り合いをしていたが、この展開を嫌った三杉がタイムアウトを要請。

 

この展開を変える為に、空の提案で陸を再度投入。

 

試合は、新たな様相を見せようとしていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

第3Q、残り2分25秒。

 

 

花月 64

奇跡 68

 

 

「ハーハッハッハッ! 反撃返しだぜ!」

 

豪快に笑いながらコートへと足を踏み入れる陸。

 

 

「空坊も大概やったが、弟の方はそれ以上やのう」

 

半分呆れ気味に見守っている天野。

 

 

「…よし、行こうか」

 

審判からボールを受け取った三杉がスローワーとなって空にパスを出すと、試合は再開された。

 

「…」

 

ゆっくりとボールを運ぶ空。チームミラクルのディフェンスは変わらず、3-2のゾーンディフェンス。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

チェンジオブペースで一気にゾーンに飛び込んだ空。

 

「…っ」

 

切り込んで来た空に対し、赤司が距離を詰め、対応。

 

 

――ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

スティールを狙ってくる赤司。対して空は、ボールを高速で切り返しながら赤司の迫る手をかわす。

 

 

――ピッ!

 

 

赤司の手をかわすのと同時に空がパスを出す。

 

「っ!?」

 

ローポストでポジションを取っていた堀田だったが、あまりに突然、高速で、しかも頭上高くボールが飛んで来た為、咄嗟にボールに手を伸ばしたが、触れる事は叶わなかった。

 

 

『うわー、パスミスだ!』

 

『ここでのパスは痛いぞ!?』

 

観客の誰もが空のパスミスと断じた。

 

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

その時、ボールは豪快にリングへと叩き付けられた。

 

 

花月 66

奇跡 68

 

 

「イエイ!」

 

Vサインをする陸。

 

ボールは堀田の頭上を通過し、バックボードに当たって跳ね返るかと思われたが、直前にタイミング良く飛び込んで来た陸がアリウープを決めたのだ。

 

「良い所に出すじゃねえか。褒めてやるよ」

 

「誰にもの言ってんだ」

 

不遜な態度で褒める陸に、空はジト目で返す。

 

「(フッ、さすが、純血のポイントガードだな)」

 

2人のやり取りを微笑ましく見つめる三杉。

 

純粋なポイントガードではない三杉では、キャリアが浅く、癖のある動きが多い陸をパスの中継以外に生かす事が出来なかったが、空はそんな陸の動きもタイミングもバッチリなパスを出した。

 

「いつまでも浮かれてんじゃねえぞ。むしろ、こっからが本番だ」

 

ディフェンスへと戻った空が陸を引き締めさせる。

 

「わーってるよ。仕方ねえから言われた通りやってやるから、感謝しろよ」

 

ニヤリとする陸だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

チームミラクルのオフェンス、赤司がボールを運ぶと…。

 

「…っ」

 

赤司の表情が僅かに変わる。

 

 

『…おっ?』

 

観客も、チームカゲツのディフェンスの変化に気付いた。

 

 

「何か手を打って来るとすりゃ、ディフェンスだとは思っていたが…」

 

怪訝そうな表情で呟く火神。

 

チームカゲツのディフェンスが、マンツーマンディフェンスからゾーンディフェンスに切り替わったのだ。

 

「1-3-1のゾーンディフェンスか」

 

ディフェンスのフォーメーションを見た緑間。

 

ゾーンの先頭に三杉。真ん中に空・陸・大地が並び、後方には堀田が立っている。

 

「これがウチを止める秘策? てか、ど真ん中に例の神城っちの弟君スか?」

 

同じく、ディフェンスを見た黄瀬。相手の狙いが分からず、首を傾げる。

 

「へへっ!」

 

ニヤリと笑う陸。

 

 

「ここで1-3-1のゾーンディフェンスだなんて、何を考えているのかしら?」

 

顎に手を当てるリコ。

 

「(差を詰めるならオフェンスよりディフェンスにテコ入れをしてくる事は予想は出来たけれど、何が狙いなのかしら?)」

 

ゾーンディフェンスは強力ではある。だがそれは、上手く連携が取れればの話だ。これまでの個人技主体のオフェンスであったら機能出来ただろうが、今はチームミラクルには黒子がいる。光のミスディレクションはともかく、果たしてボールの中継に対して、対応出来るのか…。

 

「発案は恐らく、神城空か。ゴウがゴーサイン出した事から、ハッタリでもなけりゃ、コケ脅しでもねえ事は確かだ」

 

長い付き合いから、このゾーンディフェンスの発案者は上杉ではないと見抜く景虎。

 

「ともかく、何があるか、試してみねえと分からねえからな」

 

ここで景虎がコート上の赤司にサインを出す。

 

「(…コクリ)」

 

それを見て赤司は頷いた。

 

 

――ピッ!

 

 

赤司はパスを出し、緑間に渡ると、すぐさまパスを出した。チームミラクルはアウトサイドでボール回しをしながら仕掛ける気を窺う。

 

 

――スッ…。

 

 

幾度か外でボール回しを繰り返していると、赤司がおもむろに緩い甘いパスを出した。まるで、スティールして下さいと言わんばかりの無造作なパスを…。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

次の瞬間、ボールが軌道を変えた。

 

 

『出た、魔法のパス!』

 

 

ボールは、逆サイドに展開していた黄瀬の手に渡った。

 

「ナイスパス黒子っち!」

 

すぐさま、黄瀬がシュート体勢に入る。

 

ここまでのボール回しでゾーンが僅かに左へと偏っていた。その瞬間を狙い、黒子を介してボールを中継させた。

 

「いただ――っ!?」

 

その時、シュートモーションへと入っていた黄瀬の表情が変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

『やっぱり兄貴は分かってんな! 俺の力が必要だって事がよ!』

 

『調子に乗んなクソガキ!』

 

『あだっ!!!』

 

空からの指名を受けて有頂天に陸に拳骨を落とす空。

 

『今のお前は経験からテクニックまで何もかも足りねえ。単純な戦力を考えりゃ、このまま海兄に出続けてくれた方が全然助かるんだよ』

 

『むぅ』

 

率直な物言いに唇を尖らせる陸。

 

『だが、お前の古武道を組み合わせた瞬発力と、何より、ボールへの執着心とシュートを嗅ぎ分ける嗅覚はなかなかだ。曲がりなりにもあの緑間さんを相手に出来てたのはそれがあったからだ』

 

『…』

 

『それをディフェンスで生かす。良いかよく聞け愚弟。お前は切り込み隊長だ。他には目もくれなくていい、とにかくボールの動きを追っとけ。そして、相手が打って来る気配を感じ取ったら――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――いの一番に食らい付け!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「打たせっかオラァ!!!」

 

その時、黄瀬の眼前に、陸のブロックが現れた。

 

 

『うぉっ! スゲーたけー!?』

 

『いや、それよりもチェックが速過ぎだろ!?』

 

 

「(何スかこのチェックの速さは!? 黒子っちのミスディレクションは機能しているはずなのに!)」

 

「黄瀬!」

 

そこへ、火神が動き、ボールを貰いに向かう。

 

 

――スッ…。

 

 

黄瀬はシュートを中断し、火神へのパスに切り替えた。

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

「もらうよ」

 

火神の手にボールが収まるより早く、三杉がボールをスティールした。

 

「空、走れ!」

 

「もう走ってますよ!」

 

スティールと同時に三杉が前線に大きな縦パスを放つ。

 

「くそっ、戻れ!」

 

火神が声を出し、自陣に戻るが…。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

先頭を走る空に追い付ける者はおらず、そのまま空がダンクを叩き込んだ。

 

 

花月 68

奇跡 68

 

 

『とうとう追い付いたぞ!』

 

 

「っしゃぁっ!!!」

 

ガッツポーズで喜ぶ空。

 

『…っ』

 

遂に背中を捉えられ、表情が曇るチームミラクルの選手達。

 

ここから、チームカゲツの進撃が始まる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

チームミラクルのオフェンスに切り替わったが、再び、三杉のスティールされてしまう。

 

「っ!?」

 

ボールを回した後、黒子の加速する(イグナイト)パス・廻で火神に中継し、火神がシュートを打とうした所、それより早く陸がチェックに入った。火神はシュートを打たず、陸を抜きさったが、その瞬間を三杉に狙われてしまった。

 

「(ちくしょう、三杉も厄介だが、それ以上に厄介なのが…)」

 

苦々しい視線を陸に向ける火神。

 

ボール回しでゾーンディフェンスを崩し、その瞬間、黒子にパスを中継させ、シュートチャンスを作るも、間髪入れずに陸が飛んで来る。陸をかわす事自体はそれほど難しくはないが、その際、パスを選択するにしろドリブルを選択するにしろ、それは咄嗟に切り替え、選んだプレーであり、そこを狙われてしまう。

 

 

「(黒子君のミスディレクションは間違いなく機能している。()はとにかくボールだけを追ってそれ以外は目もくれてない。異常なまでのボールへの執着心と集中力。ディフェンスをゾーンに切り替え、彼を真ん中に置いたのは、いの一番にチェックに向かわせ、先手を取ってこっちを後手に回させる為だったのね!)」

 

シュートを放つ前に陸がチェックに来れば、どうしても陸をかわす為にパスなりドリブルに切り返せざるを得ない。だがそのプレーは、意図して選んだのではなく、咄嗟のプレーであり、そう言ったプレーは読みやすく、スティールを狙いやすい。

 

「(あの悪童の蜘蛛の巣が可愛く見える程に厄介なディフェンスね)」

 

思わず爪を噛むリコ。

 

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールを奪ったチームカゲツは、再び得点を決めた。

 

 

「(ならば…!)」

 

再びチームミラクルのオフェンス。これまで同様、ボール回しでチームカゲツのゾーンディフェンスを揺さぶりをかける。しかし…。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

黒子の加速する(イグナイト)パス・廻でボールが加速。ボールは、コーナーに立った緑間の手に渡った。

 

 

「そこは!?」

 

「ゾーンディフェンス攻略のセオリーであるスリー! しかも、1-3-1ゾーンの最大の弱点コーナースリー!」

 

ゾーンの弱点を狙うべき、動いた緑間を見て声を上げる笠松と森山。

 

 

「…っ」

 

さすがの陸も、コーナーは距離がある為、対応出来ない。

 

「このゾーンに弱点は百も承知だよ。いったい何の為に、ゾーンの両翼に俺と大地が立ってると思ってんだ?」

 

「っ!?」

 

スリーを放とうした緑間だったが、それよりも早く、大地が緑間の膝下に入り、これを阻止した。

 

「…っ」

 

緑間の膝下にて、思わず身体がぶつかり合う音が聞こえて来そうな程に密着してディフェンスをする大地。さすがの緑間であっても、足元入られてしまっては膝を曲げられず、スリーを打つ事さえままならない。

 

「…っ、舐めるな!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

僅かな隙を突き、緑間は大地をかわして中に切り込んだ。

 

 

『うおっ、緑間上手い!』

 

 

「さっすが緑間さん、大地のフェイスガードを突破するかよ。…けど」

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

「突破した先には、強力な門番が待ってるぜ」

 

ニヤリとする空。大地を抜いたのと同時にシュート体勢に入った緑間だったが、リリースと同時に堀田にボールを叩き落とされてしまう。

 

「くっ!」

 

緑間とて、堀田の事は考慮していた。故に、大地を抜いた後、間髪入れずにジャンプシュート、それもクイックリリースで放った。だが、そこまでの気配りをしたにも関わらず、堀田のブロックからは逃れられなかった。

 

『アウトオブバウンズ、チームミラクル()ボール!』

 

「むっ? アウトにしてしまったか」

 

マイボールに出来ず、少々残念がる堀田。

 

『…っ』

 

ターンオーバーこそ免れたが、此度のオフェンスの失敗にチームミラクルの選手達の表情が曇る。

 

 

「ふはっ! まさか、キセキの世代に同情する日が来るとはな」

 

吹き出す花宮。

 

「無茶苦茶に見えて、実に合理的なディフェンスだよ」

 

「合理的?」

 

言葉の真意が分からず、聞き返す原。

 

「あの(10番)。実力はともかく、ディフェンスエリアは広い。何より、相手のシュートの気配を嗅ぎ分ける嗅覚が異常だ。まず、こいつを突っ込ませる。ボールを奪えなくてもいい。狙いは、シュートを打たせない事だからな」

 

『…』

 

「そこでパス、ドリブルのどっちを選択してもいい。何せ、スティールされない為に咄嗟に選んだ行動だからな。咄嗟の動きは単調で読みやすい。あの三杉(4番)なら簡単に奪える」

 

フン、と鼻を鳴らす花宮。

 

「ゾーンディフェンスの弱点であるコーナースリーを狙って来た場合、ゾーンの両翼に立つ(8番)大地(9番)が打つ前に飛んで来る。仮に中に切り込めたしても、見ての通りだ」

 

「じゃあ、ディープスリーとか打っちゃえば良いんじゃね?」

 

フーセンガムを膨らませながら呟く原。

 

「同じだ。その場合、ボールを奪う役が三杉(4番)に変わるだけだ」

 

コーナースリーでツーポイントエリアに切り込まれた場合堀田。ディープスリーで外から切り込んだ場合は、三杉がスティールを狙って来ると花宮。

 

「ほれぼれするよ。常識外の身体能力とディフェンスエリア、相手の動きの先を限定、読みを最大限に生かした、実に合理的(・・・)

で、理不尽(・・・)なディフェンスだよ」

 

苦笑する花宮。

 

「ならいっその事、個人技で突破を試みるってのは?」

 

「無理に決まってんだろ。揺さぶりもなしにゾーンに切り込んでみろ。如何にキセキの世代が化け物でも、中で同格の奴等複数人に囲まれりゃ、身動き出来なくなって詰みだ」

 

古橋のアイディアを一蹴する花宮。

 

「…えっ? これ、打つ手なくね?」

 

そう結論付けた山崎だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

ゲームメイクをする赤司だったが、攻め手を定められずにいた。黒子に中継を頼んでも、空・大地・陸の何れかがシュート前にチェックが入り、シュートまで持っていけない。

 

「…」

 

天帝の眼(エンペラーアイ)を使ってマークを外した瞬間を狙おうにも、マンツーマンとは違い、マークが不特定多数のゾーンディフェンスの為、同じくシュートまで持って行けない。

 

「…」

 

 

――ピッ!

 

 

止む無くボール回しをする赤司。

 

「(…ピクッ)」

 

パスを受けた火神がシュートフェイクを入れるが…。

 

「(っ、あいつ、フェイクには欠片も反応しやがらねえ!)」

 

陸を誘い出そうとしたが、陸はフェイクの気配を嗅ぎ分けたのか、チェックには行かなかった。

 

「(くそっ、時間がねえ!)」

 

気が付くと、シュートクロックが残り僅かとなっていた為、仕方なく火神がシュート体勢に入る。

 

「らぁっ!」

 

すると、陸が縮地法で瞬時に距離を詰めてきた。

 

「(打ちに行くと…! こいつに赤司のような眼や三杉のような読みが出来るはずがねえ。確信したぜ)」

 

何故こうもシュート気配を嗅ぎ分けられるのか。何故、百戦錬磨の緑間をあそこまで手こずらせる事が出来たのか…。

 

「(こいつも兄同様、野生持ちか!)」

 

 

――ピッ!

 

 

「(くそっ、指がかかり過ぎた!)…リバウンド!」

 

陸に距離を詰めらる前にフェイダウェイをしながらクイックリリースでジャンプシュートを放った火神。しかし、指がかかり過ぎて僅かにショートしてしまう。

 

 

――ガン!!!

 

 

言葉通り、ボールはリングに弾かれた。

 

「フン!」

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

リバウンドボールを堀田が抑えた。

 

ここから、チームカゲツの猛襲が始まった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

「がっ!?」

 

ローポストでボールを掴んだ堀田がポストアップ、火神がディフェンスに入った。

 

「(何だこのパワーは!? 紫原はこんな奴を今まで相手してたのか!?)」

 

背中越しに伝わる圧倒的な堀田のパワーを前に、火神は押し返そうと試みるも、みるみるゴール下まで押し込まれてしまい…。

 

 

――バス!!!

 

 

そのまま得点を決められてしまう。

 

その後も、ディフェンスは陸を主軸としたゾーンディフェンスに阻まれ、オフェンスは堀田のパワーオフェンスに翻弄され、人数をかけようとすればパスを捌かれ、決められてしまう。

 

 

『点差が開いて来たぞ…!』

 

観客のどよめきの通り、点差は着実に開いていく。そして…

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで、第3Q終了のブザーが鳴った。

 

 

第3Q終了。

 

 

花月 76

奇跡 68

 

 

『…っ』

 

ベンチへと下がるチームミラクルのメンバー。しかし、その表情は暗い。

 

 

「開いたな」

 

試合を見守っていた陽泉の監督、荒木が呟く。

 

「ディフェンスは度外視で、ある程度は覚悟の上だったのだろうが、ここまで開いたのは計算外だろう」

 

「スゲーディフェンスでしたね。あんなの出来るなら、始めからやりゃ良いのによ」

 

ここまでの感想を述べる福井。

 

「そう簡単な話ではない。いくら条件が揃っているとは言え、あの(坊や)の能力が不確定過ぎる上、相手は10年に1人の化け物揃いだ。ある程度の慣れや見極めがいる。何より…」

 

ここで荒木が視線をチームミラクルのベンチに向ける。

 

「ここまであのゾーンディフェンスがハマった1番の要因は、堀田とインサイドでまともに相対出来る者がいないからだ」

 

一見、陸に目が行きがちだが、1番の功労賞は堀田だ。堀田がインサイドを制圧している為、他のメンバーは安心してアウトサイドシュートの対応やスティールを狙って行けるのだ。

 

「となると、紫原をコートに戻せば解決って事ですか?」

 

「ああ。堀田とインサイドで対等に渡り合える唯一の選手だからな。あいつが中から点が取ってディフェンスを収縮させれば、外も決まるようになる」

 

岡村の質問に、荒木が答えた。

 

「(とは言え、紫原(あいつ)を戻すのも考えものだ。まだ試合は丸々1Qも残っている。恐らく、試合終盤の勝負所までもたない)」

 

スタミナ疲労はある程度休ませれば回復出来るが、肉体疲労はそうは行かない。紫原を下げたのは、回復目的と言うよりも、温存と言う意味合いの方が大きい。

 

「(どうする景虎。ここで何かを手を打たなきゃ、ズルズル放されるだけだぞ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

「っしゃぁっ! 俺様、大活躍!」

 

胸を張りながら喜びを露にする陸。

 

「じゃーかしい、座っちょれ!!!」

 

「…はい」

 

そんな陸を龍川がどやしつけ、陸はシュンとした表情で座った。

 

「このまま行けたら苦労はねえよな」

 

「ですね」

 

空の問いかけに、大地が同意した。

 

「紫原を戻してきますかのう?」

 

「だったら楽ではないが、こっちとしては助かるかな」

 

三枝の疑問に、三杉が汗を拭いながら返した。

 

「第4Qもこのまま行く。向こうに動きがあれば、必要に応じてテコ入れはする。今はゆっくり呼吸を整え、備えておけ」

 

現状維持を指示した上杉。

 

「(さてトラ。どうする)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

『…』

 

チームカゲツとは対照に、チームミラクルのベンチは暗い。2分半もの間、やられ放題だったからだ。

 

「桃っち、準備するからちょっと手伝ってー」

 

立ち上がった紫原が来ていたシャツを脱いだ。

 

「出るのか?」

 

「当たり前じゃん。これ以上、好き勝手やられるのは我慢ならないし」

 

火神の問いに、紫原は淡々と答えた。

 

「…」

 

景虎は顎に手を当てながら考える。

 

紫原がいない以上、ある程度、やられるのは覚悟していた。故に、黒子と言う切り札まで切った。だが、ここまで一方的になる事は想定外だった。

 

「(やむを得ないか…)」

 

もう少し温存しておきたかったが、これ以上、点差を付けられたら元も子もない。

 

「紫原――」

 

「――ちょっと待った」

 

景虎が交代を告げようとした時、とある選手が待ったをかけた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

インターバル終了のブザーが鳴り、選手達はコートへと戻って来た。

 

メンバーチェンジ無しのチームカゲツに対し…。

 

「(そう来たか)」

 

横目で相手ベンチを見る上杉。

 

チームミラクルもメンバーチェンジは無し。

 

 

『おいおい、まだ紫原戻さないのかよ!』

 

『またやられまくるだけだぞ!』

 

この対応に一部の観客からブーイングが飛び出す。

 

 

「…」

 

神妙な表情で立っている景虎。

 

「…」

 

審判からボールを受け取った三杉が空にパスを出し、第4Qが開始された。

 

「(さて、何をして来るのやら…)」

 

ゆっくりボールをキープする空。このインターバルの間、何の指示も出して来ないなどあり得ない。

 

「(種明かしは、速い方が良い)」

 

 

――ピッ!

 

 

空が左ウィング付近に立った大地にパスを出し、同時に大地の方へ走り出した。空が走りながら手を出し、ボールを手渡しで受け取る――と見せて、直前に手を引っ込め、そのまま走り抜けた。

 

 

――ボムッ!!!

 

 

直後、大地はボールを中へと弾ませながら入れると、ローポストに立った堀田へと渡った。

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

「ぐっ!?」

 

背中に張り付いた火神に、堀田の圧倒的な圧力がのしかかる。

 

「がっ…おらぁっ!!!」

 

火神は歯を食い縛り、全力で堀田の圧力に耐える。

 

「(ほう、こいつもなかなかのパワーだ。だが…)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「俺を押し返すのに全力を注いで、これに対応出来るか!?」

 

スピンムーブで反転。火神の裏に抜けた。

 

「…っ」

 

堀田を押し返すのに全力を注いでいた火神は、このターンに対応出来なかった。

 

同時にボールを右手で掴んだ堀田がリングに向かって跳躍。その時。

 

「むっ?」

 

そこへ、1人の選手がブロックに現れた。

 

 

『黄瀬だ!』

 

 

ブロックに飛んで来たのか黄瀬。だが…。

 

「フン!」

 

堀田はお構いなしにボールをリングに叩き付けた。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

堀田の掴んだボールに、ブロックに伸ばした黄瀬の手がぶつかる。

 

だが、体格、パワーに差がある両者の激突に、誰もがこのブロックは突破されると思われた。

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

次の瞬間、黄瀬の手が堀田の手に収まるボールを叩き落とした。

 

 

『嘘だろ!? あの体格差で!?』

 

このブロックに、観客の誰もが驚きを隠せなかった。

 

 

ルーズボールを拾った火神が赤司にパスを出すと…。

 

「速攻だ!」

 

号令と同時に赤司がボールを運び、他のチームミラクルの選手達が続いた。

 

「…ちっ」

 

いち早くディフェンスに戻った空が赤司の前に立ち塞がり、足を止めさせる。その合間に、他のチームカゲツの選手達が自陣に戻り、ゾーンディフェンスを敷く。

 

 

――ピッ!

 

 

すると、赤司はノールックビハインドパスを出した。ボールは、右ウィング付近まで走り込んだ黄瀬の手に渡った。

 

「今度はあのイケメンの兄ちゃんか! 来いよ!」

 

ゾーンディフェンスのど真ん中に陣取る陸が意気込みながら待ち受ける。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

黄瀬はシュートでもパスでもなく、ドリブルを選択。

 

「あっ? 真正面から突破するつもりか? 上等だ。かかって来いや――」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「――はっ?」

 

呆気に取られる陸。

 

黄瀬は急加速すると、一瞬で陸を抜きさった。

 

「っ!?」

 

「これは!?」

 

包囲にかかった大地と三杉だったが、黄瀬はお構いなしに突破した。

 

「今の動き、青峰さんの…!」

 

今の動きは、完全に青峰のそれであり、大地は思わず声を上げた。

 

「堀田さん気を付けて! さっきまでとは違いますよ!」

 

空が檄を飛ばす。

 

「おぉっ!」

 

ゴール下まで突き進むのと同時に黄瀬はボールを掴み、リングに向かって飛んだ。

 

「これがパーフェクトコピーと言う奴か。…面白い、受けて立つぞ!」

 

堀田もブロックに飛び、リングと黄瀬の間に割り込んだ。

 

「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

『少しの間、俺に任せてもらえないッスか?』

 

交代を告げようとした景虎を制止した黄瀬が提案する。

 

『任せるって、お前何をするつもり――っ!?』

 

聞き返そうとした火神だったが、すぐに黄瀬の真意に気付いた。

 

『監督も、まだ紫原っちを温存しておきたいんでしょ?』

 

『……任せて良いんだな?』

 

尋ねる景虎。これは、黄瀬を信頼してるかしてないかの意味ではなく…。

 

『当然じゃないスか!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「(結局、こうなっちゃうんスよね…)」

 

胸中で苦笑する黄瀬。

 

「(けどま、良いッスよ。それでこの試合に勝てるなら。喜んでやってやるッスよ!)」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「っ!?」

 

黄瀬が堀田のブロックを吹っ飛ばしながらダンクを叩き込んだ。

 

 

『おぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

『スゲー! あの堀田を吹っ飛ばしやがった!!!』

 

 

「おいおい嘘だろ。今の、健の体勢は決して悪くはなかったぞ…」

 

今のプレーを見て、三杉が驚愕する。

 

「…っ」

 

堀田は自身の弾かれた手を見つめた後、自身を吹き飛ばした黄瀬に視線を向けた。

 

「今のコピーは本家のものと同等…いえ、それ以上…!」

 

陸と同様、あっさりと大地と三杉を抜きさった黄瀬に、驚愕を隠せない大地。

 

「ハハッ! いつかは来ると思ってたけどよ、とうとう来やがったかよ!」

 

苦笑する空。

 

「恐れ入るな。これが君の、ゾーンか」

 

呟く三杉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――黄瀬が、ゾーンの扉を開いた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

試合は、陸の再投入と同時に、5人の能力を最大限生かしたディフェンスにてチームミラクルのオフェンスをシャットアウトした。

 

僅かにあったチームミラクルのリードもたちまち無くなり、第3Q終了時にはチームカゲツが8点ものリードを積み上げた。

 

この状況を打開すべく、景虎が止む無く紫原を投入しようとしたその時、黄瀬が待ったをかけた。

 

始まった第4Q、開始早々、黄瀬が堀田をブロックし、その直後には堀田のブロックを粉砕した。

 

チームカゲツ優勢で始まった第4Q。

 

パーフェクトコピー+ゾーンに入った黄瀬が、立ち塞がるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





話全然進まんなー…(;^ω^)

本当は全話時点でここまで進ませたかったのですが、文才の無さを補う為に無駄にダラダラ書く癖がもう治せない為、無駄にボリュームが膨らむ事に…(>_<)

この二次を書くのが嫌な訳ではないのですが、早く締めたいかな…(゚Д゚;)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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