黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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~未来~

 

 

 

チームミラクル劣勢で始まった第4Q…。

 

その悪い流れを、パーフェクトコピー+ゾーンに入った黄瀬が独力で圧倒し、再度流れを押し戻す。

 

そんな中、三杉と堀田がゾーンの扉を開く事で再び勢いは拮抗する。

 

黄瀬は、最後の力を振り絞り、ファールを貰いながら渾身のメテオジャムのコピーで得点を決め、同点にし、その役目を終えた。

 

全てを出し尽くした黄瀬と、同じく出し尽くした黒子に変わって、青峰と紫原がコートへと戻り、黄瀬の奮闘に応えるかのようにゾーンの扉を開き、そんな2人の呼応するように同チームの赤司、緑間、火神と、対するチームカゲツの空と大地もゾーンの扉を開き、試合は最後の激闘を迎えるのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

第4Q、残り6分29秒。

 

 

花月 84

奇跡 84

 

 

「へへっ!」

 

ニヤリとしながらボールを運ぶ空。

 

「来い」

 

立ち塞がるのは赤司。チームミラクルは紫原が戻った事でディフェンスをマンツーマンに切り替えた。

 

「言われなくとも、行くぜぇっ!!!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

意気込みと共に空がクロスオーバーで仕掛ける。

 

 

「っ!? 何てスピードだ!?」

 

一瞬でトップスピードまでに達する加速性能に加え、驚異的なマックススピードに、笠松は驚愕する。

 

 

「…」

 

しかし、赤司はこのクロスオーバーに対応する。

 

「やっぱ付いて来るか。なら、もういっちょ!」

 

直後、再度切り返す空。

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

しかし、その前に赤司の手がボールを捉えた。

 

 

「やっぱ天帝の眼(エンペラーアイ)はスゲー、あれに反応出来んのかよ…!」

 

遠目からでも分かる驚異的なキレとスピードを誇る空のキラークロスオーバー。これに止める赤司に驚きを隠せない高尾。

 

ボールが空の手から零れ、誰もが赤司の勝利を確信したその時。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

その手から零れたボールを空が間髪入れずに抑えた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「…っ」

 

するとすぐさまクロスオーバーで切り返し、赤司をかわした。

 

 

『何だそりゃっ!?』

 

あまりの空の反応の速さに観客席からも驚愕の声が上がった。

 

 

一気に中にカットインした空。

 

「…」

 

直後に視線を右コーナーへと走り込んだ大地にノールックパスを出す。

 

 

――ピクッ…。

 

 

と、見せかけ、直前でパスを中断。

 

 

――スッ…。

 

 

そのままリングに向かってステップを踏み、リバースレイアップの体勢に入る。

 

「っ!?」

 

このパスフェイクにゴール下に立っていた紫原が僅かにポジションを右方向へと釣り出されてしまうも、すぐさまブロックに向かった。

 

 

――バス!!!

 

 

しかし、空は紫原のブロックを紙一重でかわし、ボールを持った右手でスナップを利かせてリングに向かうようにボールに回転をかけてバックボードに当て、得点を決めた。

 

 

花月 86

奇跡 84

 

 

「よっしゃぁ!!!」

 

拳を突き上げながら喜びを露にする空。

 

 

「ジノビリステップからのヘリコプターシュート。…てか、何から何まで速過ぎやろ」

 

あまりの空のスピードの速さに、苦笑する今吉翔一。

 

 

続くチームミラクルのオフェンス。チームカゲツもディフェンスをマンツーマンで対抗。

 

「寄越せ!」

 

赤司がボールをフロントコートまで運ぶと、青峰がボールを要求。

 

「フッ、良いだろう」

 

この声に応え、赤司は青峰にパスを出した。

 

「ようやく本気のてめえとやれるぜ」

 

ボールを持った青峰の前に立ち塞がるのは三杉。

 

「来いよ、青峰」

 

集中力全開で三杉は構え、待ち構える。

 

「ハッ! 行くぜ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

青峰がドリブルを開始。代名詞であるストリートのバスケで翻弄する。

 

「…」

 

高速で独特のリズムでのハンドリングを繰り返す青峰。対する三杉も、これに惑わされる事無く対応。

 

 

――スッ…。

 

 

幾度となく切り返しを繰り返す青峰に対し、ボールの軌道を読み切った三杉がボールに手を伸ばす。

 

「…っ」

 

右から左へと切り返されたボールに、三杉の手がボールに触れる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

その直前、青峰は右手でボールを右方向へと大きく弾ませた。

 

 

――スッ…。

 

 

弾ませたボールに青峰がすかさず飛び付く。

 

「ちっ」

 

その体勢のままリングに向かってボールを投げつけた。三杉もすぐさまブロックに飛ぶが…。

 

 

――バス!!

 

 

間に合わず、ボールはバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

 

花月 86

奇跡 86

 

 

「黄瀬を止めたくれーで、俺を止められると思うなよ。オリジナル()は一味違うぜ」

 

ニヤリとする青峰。

 

「面白れぇ」

 

三杉も不敵に笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「空、こっちだ!」

 

続くチームカゲツのオフェンス。空がフロントコートまでボールを運ぶと、三杉がボールを要求した。

 

「んじゃ、頼んます!」

 

躊躇わず空は三杉にパスを出した。

 

「そう来なくちゃな、来いよ!」

 

左ウィング付近でボールを受け取った三杉に対し、青峰がニヤリとさせながら立ち塞がる。

 

「…行くぜ」

 

宣言と共に三杉が仕掛ける。

 

「っ!?」

 

その時、青峰の目には、左右に仕掛ける三杉と、その場からジャンプシュートを打つ三杉の姿を捉えた。

 

 

『…ッ!?』

 

高精度かつ高練度の動きから織りなす三杉のフェイクを見て、観客からは三杉が複数に増えたかのような錯覚に陥る者もおり、思わず息を飲んでしまう。

 

 

右か左か、あるいはシュートか。青峰は――。

 

「バックステップだろ?」

 

そう呟き、前へと走った。そこには、距離を取ってスリーの体勢に入った三杉の姿があった。

 

 

「読み切った!?」

 

「いえ、嗅ぎ分けたんだわ!」

 

フェイクを見抜いたと判断した葉山だったが、実渕は持ち前の野生で感じ取ったものだと断じた。

 

 

圧倒的なアジリティとスピードで瞬く間に距離を詰め、ブロックに飛ぶ青峰。リリースされたボールを、青峰が叩き落す――。

 

 

――スッ…。

 

 

と、思われた次の瞬間、ボールが青峰の手を擦り抜けて通過していった。

 

「っ!?」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

青峰が振り返ると、ボールはリングを潜り抜けていた。

 

 

花月 89

奇跡 86

 

 

「っ!?」

 

思わず立ち上がってしまう氷室。

 

「おいおい、今のは氷室の…」

 

今のは氷室のシグネチャームーブとも言える、陽炎(ミラージュ)シュートであり、それを思い出した福井。

 

「それも、今のはスリーアル」

 

劉の言う通り、それを三杉はスリーでやってのけてしまったのだ。

 

「…っ」

 

歯をきつく食い縛りながら席に座る氷室。自身の技をただ真似られただけでなく、上回る形で披露された事に悔しさを隠せなかった。

 

 

「以前に試した技だったが、かなり有用だったのでね。改良させてもらった」

 

「…っ」

 

三杉の言葉に、思わず振り返りながら睨み付ける青峰。

 

「開いたぜ。さあ、どうする?」

 

したり顔で三杉が告げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

赤司がボールを運ぶと…。

 

「オラオラオラァ!!!」

 

フロントコートまでボールが運ばれた段階で空が激しくボールを持つ赤司に対してプレッシャーをかけ始めた。

 

「…」

 

赤司は空のプレッシャーに晒されながらもボールをキープしている。

 

「だったら、3点で返せば良いだけの話なのだよ」

 

「させると思いますか?」

 

意気込む緑間に対し、マークする大地はボールすら持たせないよう、激しくプレッシャーをかけていた。これでは仮にボールを掴めてもスリーを打つ事は至難の業。

 

「赤司!」

 

その時、緑間がコーナー付近を指差しながら走り出した。

 

 

――ピッ!

 

 

赤司は一瞬の隙を突いてパスを出した。

 

 

『パスミスか!?』

 

 

ボールは右コーナー付近に高く出された。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

緑間は右コーナーまで走り込む。

 

「なっ!?」

 

そこから光景を見て、大地は思わず声を上げてしまう。

 

緑間は右コーナーに走り込むと、瞬時にリングの方へ向き変えりながらジャンプし、ボールをキャッチすると、そのままリングに向かってシュートを放ったのだ。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放たれたボールは、リングの中心を射抜いたのだった。

 

 

花月 89

奇跡 89

 

 

「こんなのデタラメ…いや、反則だろ」

 

苦笑する日向。

 

今のは空中装填式(スカイ・ダイレクト)3Pシュート。だが、従来のものとは違い、緑間に対してパスを合わせるのではなく、出されたパス(・・・・・・)に緑間が合わせたのだ。

 

 

「これでイーブンなのだよ」

 

メガネのブリッジを押し上げながら告げる緑間。

 

「やはり、一筋縄では行きませんね」

 

大地はフッと笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「やり返してやれ!」

 

ボールを運んだ空が大地にパスを出した。

 

「お前とやり合うのは一昨年のウィンターカップ以来か。相手になるのだよ」

 

「かつては歯が立ちませんでしたが、ここで超えさせてもらいます」

 

右ウィング付近で大地と緑間が対峙する。

 

「…」

 

「…」

 

小刻みに右足でジャブステップを踏み、ボールを動かしながら機を窺う大地。

 

「…っ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

機を見て大地が仕掛ける。

 

「…っ」

 

対する緑間もタイミングを読み切り、対応する。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

直後に大地は急停止、フルドライブの勢いを一瞬で0にし…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

フルドライブと同スピードでバックステップし、元の位置より僅かに後方まで下がった。

 

「(スリーか!?)」

 

大地のシグネチャームーブである片足フェイダウェイによるスリー。これを警戒して緑間はシュートチェックに向かう。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

しかし大地はそこからさらに急発進した。

 

「っ!?」

 

シュートチェックの為に前に出た緑間の横を高速でカットインで駆け抜ける大地。緑間は自身の横を抜ける大地のキープするボールに手を伸ばすが…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ボールにその手が触れるより早く駆け抜けた。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

緑間をかわしたのと同時に急停止し、ジャンプシュートを決めた。

 

 

花月 91

奇跡 89

 

 

「忘れていませんか? 元々はドライブ(こっち)で勝負をしていたのですよ」

 

ディフェンスへと戻る大地が緑間の横で話しかける。

 

「返させていただきました」

 

ニコリと笑みを浮かべる大地。

 

「望むところなのだよ…!」

 

これに対し、緑間も笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ピッ!

 

 

ボールを運んだ赤司が中にボールを入れる。

 

「捻り潰す」

 

「かかって来い」

 

ローポストでパスを受けた紫原。背中には堀田が張り付くようにディフェンスに入った。

 

「…っ」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

圧倒的なパワーによるポストアップで押し込みにかかる紫原。

 

「フン!」

 

対する堀田も圧倒的なパワーで受け止め、押し止める。

 

 

『中に押し込めない! パワーでは堀田が上か!?』

 

『いやまだ、紫原にはスカイフックがあるぜ!』

 

 

紫原は身体をぶつけるのと同時にリングから離れるようにステップを踏んだ。

 

「…っ」

 

すかさず堀田はスカイフックを打たせない為に距離を詰め、紫原に身体を当てる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

直後、紫原はスピンムーブで堀田の背後へと抜け、ボールを掴むと回転しながらリングに向かって飛んだ。

 

「させん!」

 

これを見て堀田がブロックに飛ぶ。

 

「おぉっ!!!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

紫原は堀田のブロックの上からダンクを叩き込んだ。

 

 

花月 91

奇跡 91

 

 

「っしゃぁっ!!!」

 

着地した紫原が堀田に見せつける様に拳を握る。

 

「ほう?」

 

それを見た堀田がニヤリとするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

直後のチームオフェンスはやはり、やり返すかのように堀田と紫原が激突する。

 

「…っ」

 

激しい堀田の圧力を一身に受け、紫原の表情が歪む。

 

「フン!」

 

勢い良く背中をぶつけた後、ターンでゴール下まで進み、そのままボールを右手で掴んでリングに向かって飛んだ。

 

「ハァッ!? 舐めんな!」

 

即座に紫原がブロックに飛び、リングと堀田の間に割り込む。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

リングに振り下ろされたボールに、紫原の伸ばした手がぶつかる。

 

「ぬぉっ!!!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「っ!?」

 

しかし、堀田はブロックなどお構いなしにリングにボールを叩き付けた。

 

 

花月 93

奇跡 91

 

 

「これがパワーだ」

 

「…っ、ぜってー負けねえ!」

 

不敵に笑う堀田に、紫原は睨み付けながら返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「さて、俺もそろそろ返そうか」

 

「ハッ! ようやくかよ」

 

ボールを運んだ赤司が呟き、それを聞いた空が待ってましたとばかり笑みを浮かべる。

 

「君に見せてあげよう。天帝の眼(エンペラーアイ)には、こういう使い方もある」

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

そう告げると、赤司は左右に連続で切り返し始めた。

 

「俺にはアンクルブレイクは効かね――」

 

時空神の眼(クロノスアイ)を発動させた空。

 

「(――あれ? 俺、今何で動いて…)」

 

空に奇妙な感覚に襲われる。気が付くと、空は赤司の持つボールに手を伸ばしていた。

 

「今まで俺がしてきたのは、未来を視る(・・)事。これは、未来の誘導(・・)だ」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

赤司は空を抜きさり、カットインした。

 

「やるな。俺が使う無条件反射を利用した誘導と同じ原理を利用したか。天帝の眼(エンペラーアイ)を持つお前なら、俺と同じ…いや、それ以上の事も…!」

 

空が抜かれたのを見て三杉がヘルプに飛び出す。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

ローポストまで侵入した赤司がボールを右手で構えて飛んだ。

 

「(来る。フローターか!)」

 

構えを見てブロックを越えるシュートであるフローターと見て三杉がブロックに飛ぶ。

 

 

――スッ…。

 

 

次の瞬間、赤司はリングに向かってではなく、真上にフワリと浮かせた。

 

「ちっ」

 

これを見て三杉の口から舌打ちが出た。

 

「ナイスパス赤司!」

 

フワリと浮かせたボールを、フリースローラインから踏み切った火神が空中で右手で掴んだ。

 

「させん!」

 

リングへと向かう火神に。そこへ堀田がブロックに現れる。

 

 

――スッ…。

 

 

「…っ」

 

堀田の手がボールに触れる寸前、火神がボールを下げ、その手をかわす。

 

「おぉっ!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

直後に再度ボールを掲げ、リングにボールを叩き付けた。

 

 

花月 93

奇跡 93

 

 

『何だそりゃぁっ!?』

 

『スゲー! レーンアップからの、ダブルクラッチダンク!?』

 

『どんだけ飛んでんだよ!!!』

 

飛び出た大技に観客も大興奮。

 

 

「壊せねえブロックなら避けるまでだ」

 

ニヤリとする火神だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

「何だよ、これ…」

 

呆然と眺めているのは陸。

 

「これが、兄貴達の本気…」

 

ここまでも陸からすれば未だかつて味わった事のない領域だった。しかし、今、陸の目の前で繰り広げられているのは、そんな領域すら超えるものであった。

 

 

「…」

 

多くの観客がキセキの領域の者達に魅了、注目する中、ただ1人、そんな陸に視線を向ける者がいた。

 

「(そうだ。だからこそ俺は…)」

 

氷室である。コート上でただ1人、蚊帳の外にいる陸に、同情の目を向けていた。

 

今日のエキシビジョンマッチ、氷室もチームミラクルへの参加要請が来ていた。だが、氷室はその誘いを断った。

 

「(こうなる事が分かっていたから、俺は…)」

 

かつて弟分である火神擁する誠凛と試合をした時、自身の才能の限界を知った。だが、それでも氷室は努力を欠かす事無く、自身を磨き続けた。だがそれでも、自分とキセキを冠する者達は縮むどころか、更に開いている事を実感していた。もし、目の前で才能の違いを見せつけられれば、今度こそ、自分の心を折れてしまうかもしれない。

 

故に、氷室は陸に同情の目を向けた。自分の才能に自身がある者ほど、それが崩壊した時のショックは計り知れない。ましてや、陸はまだ中学生。それを知るにはあまりに速過ぎる。

 

 

「……ハハッ!」

 

だが、次に陸が見せたのは、満面の笑みであった。

 

 

「っ!?」

 

予想外のリアクションに氷室の表情が驚愕に染まる。

 

 

「何だよ何だよ。バスケには、こんな世界があったのかよ!」

 

陸の胸中を占めていたのは絶望でも恐怖でもなく、歓喜だった。バスケがこんなにも面白く、凄いものである事を教え、味合わせてくれた事による歓喜。

 

「俺も混ぜろ!!!」

 

嬉々として陸はボールをキープしていた青峰目掛けて突っ込んでいった。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

しかし、青峰はそんな陸を難なくかわしてしまう。

 

「すっこんでろ。もうてめえの時間は終わってんだ」

 

一瞥もくれる事もなく陸の横を駆け抜けていった。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

堀田を引き付けた後、フォームレスシュートをパスに変え、パスを受けた紫原がそのままダンクを叩き込んだ。

 

「スゲースゲースゲー! もっと見せてくれよ!」

 

陸はくじけるどころか、更に歓喜していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

その後も陸は嬉々としてチームミラクルの選手達に挑む。だが、当然ながら相手にもならない。

 

 

『無駄な事はやめろって!』

 

『邪魔すんじゃねえよ!』

 

一部の観客からは心無いヤジも飛ぶ。だが…。

 

 

「ハハッ!」

 

そんな野次はもはや、陸の耳に入らず、ただただ試合を楽しんでいた。

 

 

「……そうか」

 

何かを悟った氷室はおもむろに下を向き、両手で自身の顔を覆った。

 

「氷室?」

 

そんな氷室に気付いた劉が声を掛ける。

 

「…っ」

 

込み上げるもの必死に堪える氷室。

 

今日程、自分の矮小さに嫌気が差した日はない。自分を守る為にあのコートに立たなかった自分に…。

 

「ああ。大丈夫だ」

 

顔を上げた氷室はそう返した。

 

「……そうか」

 

何があったかは分からなかったが、今日1日、何処か影を差していた氷室の表情が晴れやかなものへと変わったのを見て、劉は薄く笑みを浮かべ、追及はしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「…っ」

 

ダンクを狙った陸が紫原にブロックされる。

 

「速攻だ!」

 

ルーズボールを拾った赤司がそのままドリブルを始める。

 

 

『止められた!』

 

『均衡が崩れた!?』

 

 

――ピッ!

 

 

センターライン目前で空が立ち塞がると、赤司は直後に横を走り込んだ緑間にパス。

 

 

――ピッ!

 

 

スリーポイントライン目前で大地が回り込むと、すかさず緑間はパス。

 

「よっしゃ! おぉっ!」

 

ボールを受け取った火神がフリースローラインから踏み切り、リングに向かって飛んだ。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

右手で掴んだボールがリングに叩き付けられる直前、突如として現れた1本の手がそれを阻んだ。

 

 

(10番)だ!』

 

『最後尾にいたのにもう追いついたのか!?』

 

 

「…っ」

 

何とかダンクを阻んだが、少しずつリングへとボールが押し込まれていく。

 

 

『あぁ、やっぱりあいつじゃ無理だ!』

 

観客はこの攻防の結末の予想が立ち、頭を抱える。

 

 

「この俺様を、舐めんじゃねえぇぇぇぇーーーっ!!!」

 

 

――バチィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

咆哮と共にボールを火神の右手から叩き出した。

 

 

『なにぃぃぃぃっ!?』

 

予想を見事に裏切られた観客から驚きの声が出る。

 

 

「やりゃ出来んじゃねえか」

 

ルーズボールを拾った空がお返しとばかりに速攻を仕掛ける。

 

「…っ」

 

フロントコートまでボールまでボールを進めた所で緑間が立ち塞がる。

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

「(キラークロスオーバー! だが、来るを分かっていれば、止められ――)…っ!?」

 

緑間の目前で右から左、そこからさらに右へと切り返した空。再度左へ切り返した空の姿を追おうとしたその時!

 

「(消えた!?)」

 

緑間の視界から空の姿が消えた。

 

「右だ!」

 

赤司の怒号のような声に反応した緑間が視界を右に移す。そこには…。

 

「いつまでも同じ技ばっかじゃ芸がねえからな」

 

反転して背中からコートに倒れ込もうとしている空の姿があった。

 

「インビジブルドライブ、Ver.2」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

空はキラークロスオーバーの直後、腰を浮かせたままスリッピンスライドフロムチェンジで切り返し、緑間を抜きさった。

 

 

――ブォン!!!

 

 

緑間を抜いたの同時に身体を回転させ、その反動でボールを勢いよく投擲。

 

「っ!?」

 

緑間の後ろで待ち受けていた赤司が投げられたボールに手を伸ばすも紙一重で間に合わず。

 

 

『スゲーパス!』

 

『けど、何処に出してんだ!?』

 

リング付近に勢いよく投げられたボール。だが、まだそこには誰もおらず、疑問の声が上がる。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

その時、1つの影が現れ、ボールをリングに叩き付けた。

 

「お前らばっか楽しんでじゃねえよ。俺も混ぜろ」

 

着地し、振り返ると、不敵な笑みを浮かべながらそう言った。

 

「ハッ! ガキはガキでも、お前と同じバカって訳か」

 

それを見た青峰がニヤリと笑いながら空に言い放つ。

 

「そうだろそうだろ! けど、1つ言わせてもらうなら。このコートにはバカしかいねえだろ」

 

空はニヤリとしながら言い返す。

 

「違いねえ」

 

これを聞いていた火神も笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――コート上の選手達の視線の先、そこには、ゾーンの扉を開いた、(新たなキセキ)の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『おぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

クライマックスに突入したこの試合、その熱は、さらに上がっていく。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「…っ」

 

青峰が三杉を抜きさる。

 

「ちぃっ!」

 

中に切り込んだ青峰に対し、堀田がヘルプに飛び出す。

 

 

――バス!!!

 

 

直後に青峰がボールを掴み、大きく真横に飛ぶようにステップを踏み、その体勢のままリングに向かってボールを放り投げ、決めた。

 

「らぁっ!」

 

拳を握る青峰。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

お返しとばかりに三杉が青峰を抜きさり、中に切り込む。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

直後に急停止し、ジャンプシュートを決めた。

 

「っしゃぁっ!!!」

 

拳を握って咆哮する三杉。

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

ボールを受けた紫原が背後に立つ堀田に激しく背中をぶつける。

 

「おぉっ!」

 

「…っ」

 

 

――バス!!!

 

 

激しく背中をぶつけるのと同時にリングから離れるようにステップを踏み、スカイフックで得点を決めた。

 

「どうだ!」

 

見せつけるように拳を握る紫原。

 

 

「おぉっ!」

 

ボールを持った火神がフリースローラインから踏み切り、リングに向かってジャンプ。

 

 

――スッ…。

 

 

空中でブロックに来た堀田をかわし、再びボールを掲げる。

 

「させっかよぉっ!!!」

 

するとそのタイミングを狙い済ませたかのように陸がブロックに現れた。

 

 

――スッ…。

 

 

しかし、火神は再びボールを下げ、陸のブロックをかわし…。

 

 

――バス!!!

 

 

再度ボールを掲げ、バックボードに当て、トリプルクラッチで得点を決めた。

 

「おっしゃ!!!」

 

拳を突き上げる火神。

 

 

「…」

 

堀田がローポストから離れ、リングから離れるように移動する。

 

「あっ?」

 

その行動に疑問に感じながらマークしている紫原が追いかける。

 

 

――スッ…。

 

 

紫原が追いかけたその時、堀田はロールしながら反転、空いたゴール下のスペースに侵入。

 

「っ!? ふざけんな――」

 

追いかけようとした紫原だったが…。

 

「がっ! にひ♪」

 

陸がスクリーンをかけて足止めをする。

 

そこでパスを受けた堀田がボールを右手で掴み、リングに向かって飛ぶ。

 

「まだだぁっ!!!」

 

その時、火神がヘルプに飛び出し、ブロックに現れた。

 

「火神が1人じゃねえぞ!」

 

さらにもう1人、青峰も同時にブロックに現れた。

 

 

『うぉぉっ!!! 火神と青峰のダブルブロック!!!』

 

 

「フン!!!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「ぐっ!」

 

「がっ!」

 

だが、堀田はそのダブルブロックすらも力で粉砕した。

 

 

「おぉっ!」

 

緑間がボールを掴むと、大地が激しく当たる。スリーは勿論、ドリブル、パスすらもさせないとばかりに激しく当たっている。

 

「…っ」

 

緑間はリングから離れるようにドリブルを開始する。

 

「おぉっ!」

 

センターライン目前までドリブルで下がるのと同時にボールを掴み、飛びながらリングの方へ反転しながらクイックリリースでスリーを放つ。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールは、リングの中心を的確に射抜いた。

 

「俺は人事を尽くしている。当然なのだよ」

 

メガネのブリッジを押す緑間。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ボールを運ぶ空が赤司を抜きさり、カットイン。

 

 

――ピッ!

 

 

「空!」

 

同じく中に走り込んだ大地がパスを要求。空はパスを出す……が。

 

「っ!?」

 

ボールは大地を背後から追いかけた緑間の顔の横を抜ける。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

そのボールは、空がパスを出すのと同時に急停止、その体勢のままスリーポイントラインの外側まで高速でバック走行した大地が掴んだ。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

すぐさま振り返り、ブロックに飛んだ緑間だったが、大地は得意の片足フェイダウェイからのスリーでかわし、決めた。

 

「よし!」

 

控えめに腰付近で拳を握る大地。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ボールを運んだ赤司が中に切り込む。

 

「何度も抜かせ――っ!?」

 

追いかけようとした空だったが…。

 

「ったくよ、決めろよ、赤司!」

 

スクリーンをかけた青峰に阻まれてしまう。

 

「助かる、青峰」

 

礼を言った赤司がそのままリ突き進み、リングに向かって飛んだ。

 

「似合わない事をするな」

 

「止める!」

 

そんな赤司を待ち受けるのは三杉と堀田。

 

 

――スッ…。

 

 

2人のブロックが現れると、赤司は2人に背を向けるように反転し、リングに背中を向けた体勢でボールをブロックを越えるように放る。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはブロックの上を弧を描くように越え、リングを潜り抜けた。

 

「フッ」

 

赤司は薄く笑みを浮かべながら拳を握った。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ゆっくりボールを運んでいた空が突然急発進。

 

「…っ」

 

赤司の眼とディフェンスをかわし、中に切り込んだ。

 

「行け、空!」

 

「見せ場作ってやる、感謝しろよ!」

 

「「…っ」」

 

堀田が紫原、陸が火神にスクリーンをかけ、空の進路を確保する。

 

「サンキュー堀田さん! ついでに陸!!!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

2人によって確保された進路を突き進んだ空がそのままボールをリングに叩き付けた。

 

「おらぁ!!!」

 

咆哮を上げながら空が拳を突き上げた。

 

 

『スゲー! 何だこの試合!?』

 

『どいつもこいつもレベルが高過ぎる!!!』

 

『こんな試合が日本で見られるなんて…!』

 

白熱する試合に、熱狂する者、感動する者で会場は耳を劈く程の歓声が轟いた。

 

 

「凄い…」

 

言葉を失う程に目を奪われている姫川。

 

「ハァー、分かっとったけど、(あの坊主)もそっち側かい」

 

「ハッハッハッ! ワシの見込んだ通りじゃのう!」

 

呆気に取られる天野と豪快に笑う三枝。

 

「楽しみだな。これからが」

 

「同感ですわ」

 

上杉と龍川が頷いた。

 

 

「ホントに、あの子達は…」

 

「大ちゃんも…、大ちゃんだけじゃない、皆楽しそう」

 

苦笑するリコと、目に涙を浮かべながら微笑む桃井。

 

「何スか何スか!? 皆だけ楽しんで、ズルいッスよ!」

 

ベンチに座る黄瀬が文句を口にする。

 

「そう言うな。さっきまではお前の1人舞台だったんだからよ。胸を張れ、これはお前が作り上げた舞台だ」

 

そんな黄瀬をフォローする景虎。

 

「羨ましいです。僕には参加資格はないでしょうから」

 

表情には出さないが、何処か哀愁が漂わせながら呟く黒子。

 

「そんな事はねえ。光が強けりゃ、それだけ影は存在感を無くす。そうなれば、お前にも奴らとは違う形で参加資格を得るさ」

 

背中をポンと叩きながら景虎が黒子をフォローした。

 

 

「ったく、前座の俺達、プロの試合に飲まれるか、あるいは逆に飲み込むか。こんな事、上から目線で言った自分が恥ずかしいよ」

 

ここまで試合を観戦していたプロ選手の1人が苦笑する。

 

「多分、俺達の試合を覚えてる奴はもういないだろうな」

 

同じく苦笑するプロ選手。

 

「だが、確信した。あいつらが、日本のバスケに新しい風を吹かせてくれる。日本のバスケを、世界のトップへと導いてくれるって」

 

「同感だ。会長から受け取った夢はあいつらに託す。これまで託してくれた先人の夢と共に」

 

プロ選手達は、新たな可能性(キセキ)達に、自分達の夢を託し、彼らを全力でサポートをする事を心に決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

第4Q、残り16秒。

 

 

花月 108

奇跡 108

 

 

白熱した試合も、残り時間は僅かとなっていた。

 

「…」

 

ボールをキープするのは空。ここを失敗すれば試合の勝敗に左右する為、慎重にボールを運んでいる。

 

「スー…フー…」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

深呼吸をした後、空は加速。一気に仕掛ける。

 

「…っ」

 

天帝の眼(エンペラーアイ)でタイミングを読み切った赤司は同時に動き、並走するように追いかける。

 

「んなろぉっ!!!」

 

抜ききれないと見た空はボールを掴み、赤司から離れるように横っ飛び。

 

 

――ピッ!

 

 

その体勢のまま身体を捩じってリング付近にボールを勢いよく放り投げる。

 

 

『っ!?』

 

 

そこへ、狙い済ませたかのように大地が既に飛び込んでいた。

 

「おぉっ!」

 

右手に収まったボールを、大地がリングに振り下ろす。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「決めさせるかよ!」

 

ギリギリの所で青峰がブロックに伸ばした手の指が僅かにボールにかかる。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

渾身の力を込めて青峰は大地の右手からボールを掻きだした。

 

「まだだっ!」

 

リバウンドボールに三杉が飛び込む。

 

 

――ポン…。

 

 

「頼んだのだよ!」

 

「ちぃっ!」

 

緑間が必死に左手を伸ばし、三杉がボールを確保するより早くチップアウトする。

 

「走れ!」

 

ルーズボールを抑えた赤司が檄を飛ばし、チームミラクルの選手達はフロントコートに一気に雪崩れ込む。

 

 

――残り時間6秒…。

 

 

『(誰で来る!?)』

 

これが西郷の攻防。チームミラクルの全ての選手がこの大一番で決められるだけの実力を有している為、選択肢は絞れない。

 

「…」

 

ボールを運ぶ赤司が何を選択するか。

 

 

――パスか…、自ら仕掛ける…。

 

 

赤司の選択は――。

 

「――ハッ?」

 

思わず空は声を上げてしまう。

 

赤司が選択したのはパスでもドリブルでもなく、……その場でスリーを放った。

 

「っ!?」

 

驚愕に染まった形相で振り返る空。

 

赤司の立ち位置はスリーポイントライン2メートル以上離れていた。その位置からクイックリリースでスリーを放ったのだ。

 

「(マジか、ここまで1度見せてなかったじゃねえか! 隠してたのか!?)」

 

この土壇場で見せた赤司のスリー。

 

「無論、そんな事はない。もはやこの状況、計算や読みなどあてにならない。入るならそれでいい。入らないのであれば――」

 

 

――ガン!!!

 

 

「――仲間が取ってくれる」

 

ボールはリングに弾かれた。

 

 

「「リバウンド!!!」」

 

両ベンチに監督から怒号のような檄が飛ぶ。

 

『…っ』

 

ゴール下に入った陸と堀田、火神と紫原がリバウンド争いを始める。

 

「(俺じゃ、この火神(兄ちゃん)とジャンプ勝負したら勝てねえ! だったら…!)」

 

「くっ! こいつ…!?」

 

火神とリバウンド争いをする陸は、勝てないと見て両手を胸の前で束ね、フルフロントで火神を外へと追い出した。

 

「「…っ」」

 

リバウンド勝負は堀田と紫原に託された。だが、堀田がスクリーンアウトで絶好のポジションを確保していた。

 

「おぉっ!」

 

弾かれたボール目掛けて飛び付く堀田と紫原。

 

 

「ダメ! ポジションを奪われた!」

 

ベンチのリコが叫ぶ。

 

 

同時に飛んだ両者だったが、堀田の方がボールに近く、もはや、勝負は付いたも同然。

 

「バカ野郎が! いつまでも負けてんじゃねえぞ!」

 

その時、青峰が怒号を飛ばした。

 

「いつまでも調子に……乗るなよ!!!」

 

 

――バチィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

堀田の両手にボールが収まる直前、紫原が右手をボールに伸ばし、そのまま片手で掴んでしまった。

 

 

「おぉっ!」

 

まさかのバイスクローに本家の使い手である木吉が思わず声を上げる。

 

 

リバウンド争いを制した紫原が着地。

 

 

――残り時間2秒…。

 

 

「おぉっ!!!」

 

同時に紫原がリングに向かって飛んだ。

 

「させるか!!!」

 

これに反応した堀田がブロックに飛んだ。

 

「っ!?」

 

振り下ろしたボールがブロックにぶつかる直前、紫原はとある確信がよぎった。

 

 

――このダンクはブロックされると…。

 

 

先のリバウンド争いは制したものの、純粋なパワー勝負なら、同条件なら堀田に軍配が上がる。

 

「下だ!」

 

その時、紫原の耳にそんな声が届く。

 

 

――スッ…。

 

 

この声に反応した紫原はダンクに向かった手を捻り、真下にボールを落とすように放った。

 

「っしゃぁっ!」

 

そこには火神がおり、ボールを掴んだ火神はすぐさまリングに向かって飛んだ。

 

 

――残り時間、0.5秒。

 

 

「させるか!!!」

 

そこへ、割り込むように空がブロックに現れた。

 

「(もう時間はねえ! こいつのブロックなら強引に突破出来る!)」

 

体格差がある両者。火神は空が相手なら勝てると見てそのままボールをリングに振り下ろす。

 

 

――スッ…。

 

 

その時、空の後ろから、もう1本の手が現れた。

 

「兄貴1人じゃ頼りならねえからよ、手伝ってやるぜ!」

 

僅かに遅れて現れた陸が空の手に重ねるようにブロックに現れた。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

火神の持つボールに、空と陸の手がぶつかる。

 

「「「おぉぉぉぉぉーーーっ!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合終了のブザーが鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『っ!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ボールの行方は…試合の行方はどうなったのか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ボムッ…ボムッ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボールは、コートを点々弾んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合終了

 

 

花月 108

奇跡 108

 

 

『引き…分け…?』

 

『えっ? これどうなんの?』

 

『延長戦だろ』

 

『いや、だってこれ公式戦じゃねえし…』

 

両チーム、同スコアで試合は終わり、会場はどよめく。

 

 

『何と何と! 試合結果はまさかのドロー!!! こんな結末を用意するなんて、バスケの神様はにくい演出をするぜ!!!』

 

そこへ、司会進行をしていたDJのアナウンスが入る。

 

『以上を持ちまして、このチームカゲツVSチームミラクルの試合は終結! 会場の皆! このコートにいる、最高の選手達に、盛大に拍手を!!!』

 

 

『て事は、これで終わりか…』

 

『スゲー試合だったよな』

 

『ああ。こんな試合、次はいつ見られるか…』

 

『凄かったぞ!!!』

 

『見に来て良かった!』

 

『最高だったぞ!!!』

 

そこから弾けるように称賛の言葉と共に盛大な拍手が激戦を行った選手達に贈られた。

 

 

――パチパチパチパチ…!!!

 

 

会場を包み込む観客達の拍手。

 

キセキを冠する者達が集まったエキシビジョンマッチは、これで終結――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――納得行かねえ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、拍手をかき消すかのように空が怒声を上げた。

 

「こんな結果で納得出来る訳ねえだろ!!! 俺はチームミラクル(あいつら)を倒しにここに来たんだよ! このまま白黒付けずに終われるかよ!」

 

そう叫び、空は実況席まで駆け寄り…。

 

「それ貸して?」

 

マイクを指差す空。

 

『えっ? あっ…』

 

DJは戸惑いの表情で言われるがままマイクを渡した。

 

「こんな不完全燃焼で終われねえ。って事で、延長戦だ! 皆も、見てえよなぁっ!!!」

 

観客を煽るように叫ぶ。

 

 

『見たい見たい!!!』

 

『もっとお前達のプレーを見せてくれ!!!』

 

『延長戦だ延長戦!!!』

 

空の煽りを受けた観客達の熱が再燃した。

 

 

「てな訳で、チームミラクルの皆さん、どうします? こんなに盛り上がっちゃいましたけど?」

 

ニヤニヤしながらチームミラクルの選手達の方に振り返る。

 

「んなもん、決着付くまでやるに決まってんだろ」

 

空の煽りを受けた青峰が最初に反応した。

 

「断る理由がねえな。やろうぜ!」

 

「全くお前達は。…まあ、いいだろう」

 

「あーあ、暑苦しい。けどまあ、ここで終わったら次はいつ捻り潰せる機会があるか分からないし、いいよー」

 

「もちろん、俺は構わない」

 

「賛成賛成! 今度は俺も出るッスよ!」

 

「僕も賛成です。…役に立てるか分かりませんが」

 

チームミラクルの選手達は全員が賛同した。

 

 

「皆も良いよな?」

 

今度はチームカゲツの選手達に尋ねる空。

 

「当然! やるに決まってんだろ!」

 

「ええ、もちろんです!」

 

「良いぞ。断る理由がないからな」

 

「無論だ。決着は付ける」

 

「……ホンマにやるの? ハァ、しゃーないな」

 

「ガッハッハ! 相変わらず空は愉快な奴じゃ!」

 

チームカゲツの選手達も賛同した。

 

「てな訳だ。やろうぜ! あっ、マイクありがと」

 

マイクを返した空がコートへと戻ろうとすると…。

 

『……ハッ!? しょっ、少しお待ちください! 今から確認を取りますので』

 

正気に戻ったDJが空を制止し、耳に取り付けたインカムで運営本部に連絡を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『はい…はい…分かりました。……ええ皆様、大変お待たせしました!』

 

連絡を終えたDJがインカムから手を放し、マイクに向けて発表を始めた。

 

『運営本部からの返答がありました。延長戦続行の許諾を頂きました!!!』

 

 

『おぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

この決定に、観客が盛大に沸き上がった。

 

 

『10分のインターバルの後、試合時間5分の延長戦を行います。尚、それでも決着の付かない場合は、その都度2分のインターバルを挟んで――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

10分が経つと、各ベンチから選手達がコートへと足を踏み入れた。

 

 

『おぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

『待ってました!!!』

 

『勝てよチームカゲツ!!!』

 

『チームミラクルも負けんな!!!』

 

 

観客の大歓声を背に、チームカゲツは空、三杉、大地、陸、堀田が、チームミラクルは赤司、黄瀬、青峰、火神、紫原がコートの中央へとやってきた。

 

『…』

 

『…』

 

集結した選手達は心なしか待ちわびたとばかりに笑みを浮かべている者もいる。

 

「そんじゃ、ケリ、付けようぜ!」

 

不敵に空は笑ったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

――なあ、今日のバスケの試合見たかよ!?

 

 

――例のエキシビジョンマッチだろ? 俺、用事があって見られなかったんだよな!

 

 

――うわ、もったいねえ。メチャメチャ熱かったぜ!

 

 

――マジで!? ……うぉっ!? メチャメチャバズってんじゃん! …で、どっちが勝ったの!?

 

 

――それはだな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――After story…。LAST GAME編……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ 完 ~

 

 





と言う訳で、LAST GAME編はこれにて完結です…(^_^)v

当初のプロットより一部変更した点もあるですが、結末に関しては当初のプロット通り、このような終わり方としてました。どっちが勝ったかは、この話を読んでいただいてくれた方達の想像にお任せ致します…という事で…(>_<)

本来は2025年度の内に終わらせたかったのですが、資料が集まらなかったり、モチベーションの問題などがあり、途中1年以上も空けてしまいましたが、何とか完結まで漕ぎつける事が出来ました…(^_^)v

という事でこの二次もここいらで……と、思ってたんですが、後もう1話だけ書きたい話が出来たので、それを書き終わり次第、完全完結にする予定です…m(_ _)m

もしかしたら投稿しないかもしれませんが…(;^ω^)

ここまでこの二次に時間を割いて頂き、誠にありがとうございました!

感想アドバイスお待ちしております。

それでは……また!!!
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