【完結】黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

気が付けばもう1年の半分が終わっていた…(;^ω^)。

それではどうぞ!


~その後の高校バスケ ③~

 

 

 

第3Q、両チームのエースが遂に本格的に動き出す。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

ボールを持った陸が急発進。ウィルの横を一瞬で駆け抜ける。

 

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

そのまま陽泉選手の包囲網もお構いなしに突破し、ボールをリングに叩き付ける。

 

直後の陽泉のオフェンス…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

高精度のフェイクを織り交ぜながら翻弄し、陸をかわす。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

そのままジャンプシュートを決めた。

 

 

『うぉー、どっちも退かねえ!!!』

 

『まるで一昨年の試合を見てるみたいだ!!!』

 

かつてのキセキを冠する者達同士の試合を思い出す観客達。

 

 

「(こいつ、特に変わった所はねえ、それどころか、惚れ惚れする程の教科書通りのプレーだ!)」

 

「(今まで体験した事のないムーブだ。セオリーからかけ離れたプレー!)」

 

古武道を組み合わせ、予測の出来ない動きをする陸と、バスケの基本的なプレーをハイレベルでこなすウィル。剛のバスケの陸と柔のバスケのウィルがぶつかり合い、互いに得点を重ねていく。

 

 

「おーおー、噂になってるみてーだから遥々来てみれば…」

 

観客席の一角に、リコの父親である景虎が観戦に現れる。

 

「見た所、身体能力なら神城の弟の陸、テクニックならあのウィル(アメリカ人)が上って所か。とは言え、双方の劣ってる部分もそこまで差がある訳じゃねえ」

 

2人の分析をする景虎。

 

「つまりは互角。となりゃ、勝敗を分けんのは、それ以外(・・・・)の要素になる訳だが、さて、どうなる事やら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで、第3Q終了のブザーが鳴った。

 

 

第3Q終了。

 

 

花月 55

陽泉 57

 

 

ロースコアゲームから一転、試合は陸とウィルの点の取り合いに移行し、互いに14点もの得点を積み上げた。

 

 

「どうだ?」

 

ベンチに戻って来た陸に、上杉が尋ねる。

 

「さすが、バスケの本場出身なだけあるよ。強いね。三杉の兄ちゃんみたいだ」

 

タオルで汗を拭うを陸。絶品なテクニックを目の前に、陸は三杉と重ね合わせる。

 

「…んぐ…んぐ…ぷはぁ! けど、楽しいね。やっぱバスケはこうでなくちゃ」

 

ドリンクを口にした陸がニヤリと笑う。

 

「…よし、では第4Qもこのままで行く。全員、陸をフォローしろ」

 

『はい!!!』

 

 

「ウィル」

 

「はい。見た事ないバスケです。少し…いえ、かなり驚きました」

 

自身の目の前で膝を付く荒木。アメリカでも見た事のない陸のバスケに戸惑いの色を見せるウィル。

 

「ですが大丈夫です。必ず勝ちます」

 

「…分かった。第4Qもお前に任せる。恐らく、花月も同様だろう。全員、ウィルをフォローしろ」

 

『はい!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

第4Qが始まると、花月は陸、陽泉はウィルにボールを集め、2人を中心にゲームが進む。

 

 

――バス!!!

 

 

陸が空中でウィルをかわし、得点を決めると…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ウィルはブロックでリングを塞いだ陸の上をティアドロップで越え、得点を決めた。

 

「ハハッ!」

 

「フッ」

 

一進一退の2人の対決に、思わず両者共に笑みが零れる。ここまで1ON1で全力でぶつかれる相手がいなかった2人にとって、目の前に現れた好敵手との勝負は、心の底から沸き上がるものであった。

 

 

『すげー、どっちも譲らねえ…』

 

『どっちが勝ってもおかしくねえぞ』

 

観客も固唾を飲んで2人の勝負を見守っている。

 

2点差と4点差を繰り返しながら進む試合。この均衡はいつ崩れるのか、それともこのまま試合終了まで続くのか…。

 

しかしこの均衡は、試合時間が残り2分を切った所で崩れた。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「…っ」

 

フェイクを交えて揺さぶり、ステップバックで距離を取り、スリーを狙ったウィル。しかし、リリースされたボールを陸が叩き落した。

 

「ナイスブロックだ陸!」

 

ルーズボールを竜崎が拾った。

 

「キャプテン!」

 

着地した陸が前方を指差しながらフロントコートに駆け上がる。

 

「頼む!」

 

すかさず竜崎は速攻に走った陸に縦パスを出した。

 

 

『止めた!!!』

 

『遂に均衡が崩れた!!!』

 

 

「らぁっ!!!」

 

パスを受けた陸はそのままワンマン速攻で攻め上がると、ボールを掴んでリングに向かって飛んだ。

 

「させるか!!!」

 

そこへ、ウィルがブロックに現れた。

 

 

『うぉっ、はえー!?』

 

『止めるか!?』

 

 

「関係…あるかぁっ!!!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「っ!?」

 

陸はウィルのブロックもお構いなしにダンクを慣行。ブロックを吹き飛ばした。

 

 

『ピピーーーーーー!!!』

 

 

『ディフェンス、ウィル(白10番)、バスケットカウントワンスロー!』

 

 

『キタァァァァァァァァ!!!』

 

『しかもバスカン!!!』

 

ファールのコールと同時に観客が沸き上がる。

 

 

「っしゃぁっ!!!」

 

着地をすると同時に陸は拳を突き上げた。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

フリースローも成功させ、3点プレーを成功させた。

 

 

第4Q、残り1分46秒。

 

 

花月 78

陽泉 77

 

 

「やった、逆転だ!!!」

 

「良いぞ陸!」

 

遂に逆転を果たし、チームメイトが陸を労う。

 

 

直後の陽泉のオフェンス、早々にウィルにボールを託したが…。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

フェイクを織り交ぜながらジャブステップを踏み、翻弄するウィル。

 

「…っ」

 

だが、目の前で対峙する陸は惑わされる事無く対応していく。

 

 

『全くフェイクにかからない!?』

 

『マジか! こっから見てても区別付かねえのに!?』

 

「ほう、やりますね」

 

「…おー、カッちゃんじゃねえかよ」

 

2人の対決を注目している景虎。するとそこへ、桐皇の監督であり、旧友である原澤がやってきた。

 

「来てたのかよ」

 

「えぇ。何せ、次のウィンターカップに出場した暁には、避けて通れない相手ですので」

 

そう言い、景虎の横の席に座った。

 

「遂に均衡が崩れた。…どう見る?」

 

「そうですね。…恐らく、経験値の差、でしょうか」

 

「ほう」

 

この返答に、景虎がニヤリとする。

 

()はかつて、キセキの世代との対戦経験がありますし、三杉誠也さんのプレーも目の前で見ています。その経験が、ここに来て生きて来たのでしょう。対して、ウィリアム・ガルシアさんは、単純な技量はともかく、古武道を交えたトリッキーなバスケはアメリカでは体験出来ないでしょうから」

 

「俺も同感だ」

 

原澤の解説に、景虎が頷いた。

 

 

「(くそっ、抜けない!)」

 

どれだけフェイクを織り交ぜても陸を抜く事が出来ず、焦りの色を出すウィル。

 

「(負けられない。わざわざ日本にまで来て、負ける訳には行かない!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

意を決してウィルが強引に突破を図る。

 

「…っ」

 

陸に肩が触れる程のドライブ。接触すればファールを取られるが、これはファールギリギリ、審判は笛を吹かなかった。

 

「おぉっ!」

 

フリースローラインを越えた所でボールを掴んだウィルはリングに向かって飛ぶ。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「忘れたのか? パワーなら、俺の方が上だ!」

 

「っ!?」

 

ボールがリングに叩き付けられる直前、陸が叩き出した。

 

ルーズボールを花月が拾い、パスでボールを繋ぎそして、陸の手に渡る。

 

「(くそっ、彼の動きが読めない…!)」

 

ウィルの目の前のゆらゆらと身体を揺らす陸。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

次の瞬間、まるで時間が飛んだかのように陸が自身の横におり、そのまま駆け抜けた。

 

 

「混乱してるな。だが、無理もねえ」

 

コート上のウィルの心情を察する景虎。

 

「古武道の基本的な概念として、捻らない、溜めない、蹴らない、踏ん張らない。バスケの基本的なテクニックの常識とは真逆ですからね」

 

解説する原澤。

 

ドライブを仕掛ける為に身体を『捻り』ながら必要な力を足に『溜め』、充分な加速を得る為に地面を『蹴り』、相手を抜きさる為の方向転換に為に足を『踏ん張る』。これが一般的なバスケであり、ウィルはこれをハイレベルで実行している。しかし、陸はこれらの4つの要素を行わず、一般的なバスケの常識から外れている。

 

「相手を抜く為にはいくつかの工程がいる。一部の例外の選手を除いて、その工程を読み取ってディフェンスをして相手を止めるんだが、(あの坊主)の場合、その工程を限りなく省かれてる。基本的なバスケのムーブに慣れてる奴ほど動きが読み切れず、消えたような錯覚に陥っちまう」

 

ウィル()のプレーはかつて陽泉に在籍していた氷室君に近い。うちにいた青峰君とは対極と言える選手ですが、神城陸君もある種、対局に近い選手と言えるでしょうね」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ウィルを抜いた陸がジャンプシュートを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

遂にエース対決の均衡が崩れ、花月に流れが傾いた。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

「やった!」

 

陽泉選手の放った起死回生のスリーが決まり、再び同点に追い付くも…。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

経験豊富な竜崎が落ち着いてボールを運び、陸を囮に使い、室井にパス。パス受けた室井が豪快にボースハンドダンクを叩き込んだ。

 

「んだよ、俺に回せよなー」

 

不貞腐れる陸。

 

もはや、花月が流れを手放す事はなく、荒木がタイムアウトを取るも、それでも揺るがなかった。そして…。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

試合終了

 

 

花月 84

陽泉 80

 

 

「やった、優勝だ!!!」

 

「うぉぉぉぉーーーっ!!!」

 

コート上で歓喜の表情で抱き合う花月の選手達。

 

 

『…』

 

対象に、陽泉の選手達は涙を流す者、呆然とする者、悔しがる者と、敗北の味を噛みしめていた。

 

「負け…た…?」

 

呆然とするウィル。未だ、敗北の事実を理解出来ずにいた。

 

 

――スッ…。

 

 

その時、荒木がウィルの頭にタオルをかけた。

 

「監督…?」

 

「引き上げるぞ。敗者がいつまでもコートに立つべきではない」

 

「…っ!」

 

敗者と言う言葉を聞き、ウィルは少しずつ、確実に敗北したと言う事実を実感してしまう。

 

「次は勝つぞ。必ず」

 

「…っ」

 

ぼやける視界。涙を流しながら、ウィルはただただ頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

インターハイはヶ月が3年振り2回目の優勝で幕を閉じ、暫しの時が過ぎたある日…。

 

「国体?」

 

「ああ。国民体育大会。通称国体だ。そのメンバーに俺と室井、お前も選ばれたんだよ。ほら」

 

「……ホントだ」

 

竜崎に差し出されたプリントを受け取り、確認。メンバーリストに陸の名前がある事を確認した。

 

「俺と室井は参加する。お前はどうする? 空先輩と綾瀬先輩は辞退してトレーニングに専念してたけど。お前もそうするか?」

 

「うーん」

 

顎に手を当てて考える陸。

 

「あのヨーセンのアメリカ人も出るの?」

 

「陽泉の? …ああ、ウィリアム・ガルシアの事か? どうだろうな。間違いなく選考メンバーには選ばれるだろうが…」

 

「出るぞ」

 

そこへ、上杉やってきて、口を挟む。

 

「陽泉の監督の共通の知人に会ってな。奴も参加するとの事だ」

 

「じゃー出るよ。あいつとの勝負はスゲー楽しいからな」

 

参加と聞いて、陸はニヤリとしながら自身の参加を決めた。

 

「確か、兄貴達や、キセキのなっちゃらって奴らも、夏と秋と冬の3連覇って出来てないんだよな?」

 

「まあな」

 

「だったら、俺が成し遂げて、それを手土産にアメリカに殴り込んでやるぜ!」

 

したり顔で宣言する陸。

 

「お前は相変わらずだな…」

 

「けど、お前ならやれそうだよな」

 

自信満々な陸に半分呆れる竜崎。陸の実力を理解しているチームメイトは大言壮語とは考えなかった。

 

「…」

 

盛り上がる中、上杉は言葉を発さず、真剣な表情で陸を見つめていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

10月に入り、猛暑も落ち着き、秋の国体が始まった。

 

「オラオラオラァ!!!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

静岡県選抜は、陸を始めとした、花月の選手を主軸に、危なげなく決勝まで勝ち上がった。

 

「へへっ、来たな」

 

決勝の相手は、同じく圧倒的な強さで勝ち上がった、陽泉の選手が主軸の秋田県選抜。その中の1人、ウィルを見てニヤリとする陸。

 

「また会ったな! 今日も楽しませて――」

 

軽口で声を掛ける陸だったが…。

 

「…」

 

ウィルは返事をする事無く、陸の横を素通りしていった。

 

「んだよ、前の時とは全然違うじゃねえかよ」

 

インターハイの時は陸と同じく、戦うのを待ちわびたのか、笑みを浮かべていたが、今日のウィルは無表情…正確には、集中し切っていた。

 

「へっ、気合い充分って訳か。なら、今日も返り討ちにしてやるぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

両県のスタメン5人がセンターサークル内で礼を済ませ、ジャンパーを残して周囲に広がっていく。

 

 

 

『待ってました!』

 

『この試合を楽しみにしてたんだ!』

 

『またスゲー対決見せてくれよ!』

 

夏に話題を呼んだ陸とウィルの対決。再び見られる事に観客も沸き上がる。

 

 

『…』

 

審判がジャンパーの間に入り、交互に視線を交わし、ボールを構え、そして…。

 

「「…っ」」

 

ボールが高く上げられ、ティップオフ。試合が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

試合が始まり、間もなく、試合の半分が終わろうとしている。

 

「…ちっ」

 

そんな中、陸は苛立ち交じりに舌打ちをしている。

 

 

第2Q、残り1分28秒。

 

 

静岡 29

秋田 38

 

 

試合は、秋田選抜が優勢に進んでいた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ボールを持ったウィルがカットイン、中に切り込み、シュート体勢に入る。

 

「打たせっかよ!」

 

すかさず陸がブロックに入るが…。

 

 

――スッ…。

 

 

ウィルはその体勢からボールをリングにではなく、背後へと放った。

 

「ナイスパス!」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

パスを受けた選手がそのままジャンプシュートを決めた。

 

陸を苛立たせている原因は、自身の思う通りにプレー出来ていない事が1つ。もう1つ、何より大きいのは…。

 

「(またかよ!)…おいてめえ、さっきからパスで逃げてばっかじゃねえかよ。前みたいに勝負しろよ」

 

「…」

 

抗議をするも、ウィルは意に返さず、ディフェンスに戻っていった。

 

 

「なるほど」

 

静岡選抜のベンチに座る上杉が何かを納得したかのように頷く。

 

「ただパスに逃げたにしては手慣れている。奴の本来のポジションは、ポイントフォワードか」

 

ポイントフォワード。それは、フォワードのポジションからポイントガードの仕事をする選手の事を指す。

 

 

「ちっ、つまんねえ。これじゃ、何の為に国体に参加したのか分かんねえよ」

 

陸が国体に参加したのはウィルとの勝負を楽しむ為。しかし、今日のウィルはここまで積極的に仕掛けてはこず、パスを捌く事が機会が多かった。

 

「おい陸、オフェンスだ。切り替えろよ!」

 

「わーってるよ!」

 

ボールを運ぶ竜崎の言葉に対し、陸は鬱陶し気に返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

試合はその後も、秋田選抜が流れを掴んでおり、静岡選抜は劣勢を強いられていた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ボールを持った陸が仕掛ける。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

しかし、ウィルがこれに対応、抜かせない。

 

「(…っ、抜けねえ――っ!?)」

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

動きを止めた瞬間、ウィルが陸のキープするボールを捉えた。

 

「(君のトリッキーな動きには驚かされたけど、そればかりしてくればさすがに慣れるよ)」

 

零れたボールをすぐさまウィルが確保、そのまま速攻を仕掛ける。

 

「…っ、やらせっかよ…!」

 

スリーポイントライン目前で陸が追い付き、回り込んで立ち塞がった。

 

 

『スゲースピード!』

 

『あれに追い付いちまうのかよ!?』

 

 

――スッ…。

 

 

陸に追い付かれると、ウィルはパスを選択。

 

「何度もやらせ――っ!?」

 

瞬時に反応し、パスコースを塞いだ陸だったが、ウィルはパスをしておらず、そのまま陸の横を駆け抜けていった。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

ウィルはそのままリングにボールを叩き付けた。

 

 

『完全にインターハイとは真逆の展開だな』

 

『けど、あのアメリカ人、パスばっかでほとんど勝負してねえじゃん』

 

『リードしてんのは秋田の方だ。試合は勝たなきゃ意味ないぜ』

 

『逆に言えば、勝負を避けなきゃ試合に勝てないとも言えるぜ』

 

試合の展開に、観客の反応は十人十色。

 

 

「神城陸。神城空の弟だけに、その才能は規格外だ。あのキセキの世代を彷彿させる程に。良くも悪くも(・・・・・・)、な」

 

ベンチの秋田選抜の指揮を執る荒木がポツリと呟く。

 

「この試合はもう揺らぐ事はない」

 

そう言って、相手ベンチで静岡選抜の指揮を執っている上杉に視線を向ける。

 

「この調子なら冬もウチが頂く事になる。だが…」

 

ここで荒木が思い起こすのは、上杉が陸に対し、何か指示を出す事はおろか、諫めている様子もない事だ。

 

 

「…」

 

相手ベンチでは、上杉が腕組みをしてコートに視線を贈っていた。

 

 

「(なるほど、あくまでこの国体は、あの(坊や)に分からせると言う事ですか。ならば冬、本当の決着を付けましょう)」

 

そう決め、荒木は視線をコートに戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

試合終了のブザーが鳴った。

 

 

試合終了

 

 

静岡 69

秋田 78

 

 

「勝ったぞ!」

 

「やった!!!」

 

勝利した秋田選抜のメンバーが喜びを分かち合う。

 

 

『…』

 

負けた静岡選抜は一様に負けた事実を受け止めていた。

 

「…」

 

陸がただただ茫然としていた。そんな陸の下に、ウィルが歩み寄る。

 

「夏の借りは返した。決着は冬だ」

 

「…」

 

「次はもう少し、期待している(・・・・・・)よ」

 

「っ!?」

 

その言葉に陸は思わず振り返る。

 

「ちくしょう…!」

 

爪痕がくっきり残る程に拳をきつく握る陸。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――この日、陸は敗北を喫した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

秋の国体が終わり、次に控えるは冬のウィンターカップ。

 

国体選出メンバーも合流し、冬の制覇に向け、練習を重ねている。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

陸が目の前の相手を抜きさる。

 

「へい、こっちだ!」

 

直後、味方がパスを要求。

 

「…」

 

しかし、陸は一瞥をくれるも、そのままドリブル。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

ステップワークでヘルプディフェンスに来た竜崎をかわす。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

その後は、リングに向かって飛び、室井のブロックもお構いなしに上からダンクを叩き込んだ。

 

「すげ、うちの主力のキャプテンと室井先輩入れた3人抜きかよ」

 

あっさりと3人を抜いて決めた陸に驚愕するチームメイト。

 

「…」

 

着地した陸は特にリアクションをする事はなく、練習へと戻っていく。

 

「何と言うか、最近の陸は鬼気迫るって言うか…」

 

「ああ。これまで以上に気合い入ってるよな」

 

「やっぱり、国体の敗北が原因だよな」

 

国体から戻って来ると、陸はひたすらに練習を重ねていた。

 

「…」

 

そんな陸に視線を向ける竜崎。

 

「(似ている…)」

 

思い出すのは、帝光中時代の先輩であるキセキの世代の存在だ。

 

「(確かに練習には精を出している。…けど、これで良いのか?)」

 

今の陸に不安を感じている竜崎。一見すると真剣に練習に取り組んでいるように見える。だが、国体後、陸は紅白戦や3ON3のような実戦形式の練習で、一切パスを出さなくなったのだ。

 

「足りねえ。こんなんじゃあいつには…」

 

あいつ…、それはウィルの事であり、国体のリベンジを果たす為には、今の自分では勝てないと陸は認識していた。

 

「…」

 

陸を見つめる上杉。当然、陸の変化に上杉も気付いている。だが、上杉は何かを語る事はしなかった。今の陸に、自分やチームメイトが何を語っても、意味を為さない事を理解していたからだ。上杉は、課した基礎練習を始めた陸を、ただただ見守るのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

翌日の休み時間…。

 

「…」

 

教室にて、クラスメイトが各々談笑する中、陸は椅子に座ってピンポン玉サイズの鉄球を3つ手に持ち、回転させていた。

 

「(練習量は増やした。けどこれじゃ足りねえ。あいつに勝つには、もっと何かが…)」

 

冬に向け、放課後練習と朝練に加え、自主練も増やした陸。だが、今自分に必要なのは、単純な練習ではない事を理解していた。

 

「(もっとレベルの高い奴とやり合わねえと。…くそっ、こんな時、兄貴や大地さんがいれば…)」

 

現状、自分と互角以上にやり合える兄の空とその相棒である大地。だが、2人がいるのは遠い地であるアメリカだ。

 

「(何処かにいねえのかよ、俺とやり合える奴は…!)」

 

「見て見て! 隣町に黄瀬君が来てるって!」

 

「嘘!? 私ちょーファンなんだけど!」

 

「近いじゃん! 学校終わったら会いに行かない!」

 

陸のすぐ横の席で女子同士で盛り上がっていた。

 

「(…黄瀬?)」

 

聞き覚えのある名を聞き、その人物を思い起こす陸。

 

「………あっ!?」

 

その人物を思い出し、何かを思い付いたのか、立ち上がる陸。

 

「なあ、その黄瀬って奴、何処にいんの!?」

 

談笑している女子グループに駆け寄った陸が問いかける。

 

「きゃっ!? 隣街のアリーナ会場だけど…」

 

突然話しかけられ、驚きながらも情報が載っているスマホを見せる女子。

 

「ありがと!」

 

場所を聞いた陸はすぐさま駆け出した。

 

「何処行くの!? もう次の授業始まるよ!」

 

「早退する! 何か適当に言い訳よろしく!」

 

手を振りながら陸は教室を飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

場所は静岡県にある某アリーナ会場。ここには翌日のBリーグのチームである地元静岡と、東京のチームの試合を控え、練習を行っている。

 

「すいません、それではインタビューお願いします」

 

「ういッス」

 

記者に呼ばれた東京のチームの1人である黄瀬が取材を受けている。

 

「では、明日の試合の抱負を――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「たのもー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

その時、会場内に大声量が響き渡る。

 

「な、なんだ!?」

 

「?」

 

驚いた記者と黄瀬が声の方へ振り返ると…。

 

「黄瀬涼太! 俺と勝負しろ!」

 

観客席の先頭で叫んだ陸がコートのある会場に飛び降り、着地をすると、黄瀬の下へ駆け寄る。

 

「おいお前、どうやって会場に入った!」

 

当然、そんな陸に警備員やスタッフが慌てて詰め寄り、取り押さえる。

 

「今日は関係者以外立ち入り禁止だぞ!」

 

「摘まみ出せ!」

 

数人がかりで陸を取り押さえ、出口へと引き摺っていく。

 

「放せって! 俺はただあいつと1ON1勝負しに来ただけだって!」

 

必死に抵抗する陸。

 

「な、何だったんだ?」

 

戸惑う記者。

 

「……あれ? 誰かと思ったら、神城っちの弟君じゃないッスか!」

 

黄瀬が陸を思い出し、歩み寄っていった。

 

「知り合いですか?」

 

「そうッスよ。悪いスけど、放してあげてもらって良いスか?」

 

黄瀬が促すと、スタッフは顔を見合わせながら陸を解放した。

 

「久しぶりッス。あの試合以来ッスね。今日はどうしたんスか?」

 

「頼む、俺と1ON1の勝負してくれ!」

 

頭を下げて頼み込む陸。

 

「……何か訳アリみたいッスね。ちょっと待つッス」

 

鬼気迫る陸の様子を見て、何かを察した黄瀬は、監督の下へ向かい、何やら話をした後、戻って来た。

 

「お待たせッス。監督から少しだけ時間は貰ったッスから、やりますか」

 

「マジで!? あざっす!」

 

「ま、これもファンサッスよ」

 

ニヤリとしながらウィンクをした黄瀬であった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

突如として、シーズン中のプロチームが滞在しているアリーナ会場に殴り込んだ陸。

 

そのチームに所属する黄瀬に勝負を挑む。

 

その真意とは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





この話で締めたかったのですが、思い付いた事をぶち込んだ結果、あまりに長文になってしまい、分割する事としました…(>_<)

後もう少しだけ、私の自己満足にお付き合いして頂ければ幸いです…m(_ _)m

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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