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ゆっくり完結目指して頑張ります!
それではどうぞ!
花月高校…。
入部届を出したその日から練習は始まった。
噂どおり、花月高校バスケ部の練習は壮絶という一言であった。
『ハァ…ハァ…』
その翌日も当然ながら練習は行われる。現在、部員達は学校の外を走っている。
『とりあえず、外走ってこい。25キロ』
『…っ!?』
新入生達は言葉を失うものの、上級生達にとってはいつものことなのか、返事をした後、外へ向かっていった。
花月高校の練習は徹底とした基礎づくりが重視されている。初日も、マラソンランナーばりに走り、終了後もひたすら濃密な基礎練習。それが部活終了時間まで続けられた。
初日には21名いた新入生も、2日目には15名まで減っている。
ここで、新入生達が初日に監督が入部届を受け取らなかった上杉の真意が理解できた。早い話が、厳しすぎる練習に付いてこれないからだ。
花月高校では毎年、経験者、初心者問わず、それなりの人数が集まる。だが、毎年、その中で1年後に残っているのは多くても2、3割程度。巡りが悪い時は全滅する年もある。
入部届を受理してもすぐに辞めてしまう者が多いため、ふるいをかける意味でも、1週間という期間を設けたのだ。
現在、25キロという距離のランニングをしている。最後尾には新入生の集団。その前を生嶋と松永。その前を上級生の集団。
「ハァ…ハァ…やっぱり、1年は遅れているな」
馬場が後ろを振り返りながら呟く。
「ハァ…ハァ…、でも、生嶋と松永だけは俺達の集団に付いてきている。たいしたもんだ」
上級生達は1~2年間ここで鍛えられているアドバンテージがある。にもかかわらず、それに遅れずについてくる2人に感心する。
「…けどよ、先頭集団はバケモンだろ。三杉や堀田はまだ分かるけど…」
先頭集団、上級生達より遥か前を走るのは、三杉、堀田。そして…。
「神城と綾瀬。あの2人に遅れずに付いていってやがる…!」
空と大地。先頭を走る三杉と堀田にピタリと付いていっている。上級生グループを遥かに引き離し、その姿は既に小さい。
「帝光倒してMVPと得点王を獲得したのは伊達じゃないな」
上級生達はただただ茫然と眺めながら走っていた。
「…」
その空と大地を、1人の上級生が見つめていた。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
一方、先頭集団…。
三杉、堀田が先頭に、その一歩後ろを空と大地が走っている。
「やるね。このペースに付いてこられるだけでも大したものだよ」
「当然! スタミナには自信があるんでね。これでは負けませんよ」
賛辞の言葉を贈る三杉に笑みを浮かべながら答える。
「ほう…」
堀田が唸り、三杉と顔を合わせる。そしてニヤリとする。
「なら、ペースを上げるぞ。ついてこいよ」
三杉と堀田がペースを上げて空と大地を引き離す。
「負けるか! 大地、行くぞ!」
「言われなくても!」
空と大地もペースを上げ、遅れずに付いていく。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
残り3キロ…。
三杉、堀田のペースに相変わらず全く遅れずに付いていく。
「(やるね。普段からこのくらいは走っているんだな…、なら!)」
――ダッ!!!
三杉と堀田がラストスパートをかけ、さらにペースを上げる。
「負けるかーっ!」
「負けません!」
空と大地もスパートをかけ、ピタリと付いていく。全く離されることなくピタリと付いていく。
残り1キロ…。
「「おぉぉぉーーーっ!!!」」
――ダッ!!!
空と大地がさらにペースを上げる。
「「っ!?」」
これには三杉と堀田も驚愕する。空と大地を引き離すため、目一杯飛ばして走っていた2人だが、空と大地はそこからさらにペースアップ。
空と大地は上げたペースをそのまま維持し…。
「よっしゃーーーっ!!!」
空が一歩大地より早くゴールする。
「負けました…」
僅かな差で負けた大地は項垂れながら悔しがる。
20秒ほど遅れた三杉と堀田がゴールした。
「全く、最近の若い奴は元気がいいな」
「やれやれ…、スタミナには自信があったんだがな」
三杉は苦笑を浮かべ、堀田はフゥッと溜め息を吐いた。
「後ろは…まだ戻って来る気配がないな…、三杉さん! みんなが戻って来るまで1ON1付き合ってくださいよ!」
空は三杉を急かすように体育館に誘う。
「あー分かった分かった、そう急かすなって、一息吐いたらな」
三杉は腰に手をあて、呼吸を整えながらゆっくり体育館に向かっていく。
「元気だな。何も今でなくても、練習終了後でもいいだろう?」
「練習終わった後もお願いするつもるですよ? 時間はいくらあっても足りないですからね。ひたすら練習しないと、先輩達がアメリカに帰る時までに勝てませんから」
堀田の言葉に、空はニコッとしながら答える。
それを聞いた三杉が一瞬目を見開き、そして、薄い笑みを浮かべる。
「ハハハッ! なるほど、俺達にも勝つつもりか…よし! 空、急いで体育館に行くぞ。1ON1だ」
「そうこなくちゃ!」
空と三杉はダッシュで体育館に向かっていった。
「やれやれ…、綾瀬、俺とやってみるか?」
「いいのですか? まだ呼吸が乱れているようですが…」
「構わん。第4Q、勝負所という想定での練習だ。…やるか?」
「…分かりました。是非とも、ご教授願います」
堀田の皮肉に、大地はニコリと笑みを浮かべ、頭を下げた。
そして、空と三杉の後に続くように体育館に向かっていった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「空ぁっ! 手元がお留守になってるぞ!」
「はい!」
「綾瀬、相手の土俵に無理に付き合うな。自分の土俵で戦え」
「はい!」
『…』
10分以上遅れて帰ってきた上級生達と1年生。1ON1を繰り広げている4人を見て空いた口が塞がらなかった。
※ ※ ※
「今日はここまでだ! 1年は片付けしっかりしてからあがれよ」
監督の上杉が練習終了を告げると、体育館を後にしていった。
「お、終わった…」
その場で1年生達が倒れ込むように床に座り込む。
「…はぁ」
上級生達も、1年生ほどではないが、疲労の色が見える。
バスケ部全体がお疲れムードの中…。
「三杉さん、1ON1やりましょうよ!」
「私も、お願いします!」
空と大地が1ON1の勝負を三杉に頼み込む。
「ああ。1人ずつな」
三杉はそれを了承し、3人はリング付近まで移動していく。
別の一角では、松永が堀田の下に歩み寄っていた。
「ハァ…ハァ…ほ、堀田先輩。…ゴール下のディフェンスのご教授、願います」
「うむ、いいだろう。だが、まずは呼吸を整えろ」
息絶え絶えで頭を下げる松永に対し、堀田は快く了承する。
「も、申し訳…ござい…ません。…ぼ、ボールをお借り…します」
生嶋が断りを入れて、ボールを集めた篭をスリーポイントラインまで運んでいく。
「に、日課、ですので…い、1日500…本…」
――ザシュッ!!!
生嶋はフラフラな状態でボールを掴み、スリーを放つ。ボールは綺麗にリングを潜る。
「甘い」
「あっ!」
――ザシュッ!!!
三杉が空をかわし、レイアップを決める。
「ちくしょう…」
「なかなかでしたよ、空。…次は私ですね、よろしくお願いします」
空が下がり、大地と立ち位置を変える。そして、大地と三杉の1ON1が始まる。
「腰を落とせ! そんな棒立ちじゃ、押し合いには勝てんぞ!」
「ぐぐぐっ! はい!!!」
堀田と松永がゴール下で押し合いをしている。
「ぜぇ…ぜぇ…」
――ザシュッ!!! …ザシュッ!!!
生嶋は、息を切らし、今にも倒れそう面持ちながらもスリーを放っていく。回数が三ケタに届きそうな回数に昇るものの、未だに1本も外していない。
『…』
その光景を、他のメンバー達が茫然と眺めている。
「…あんな異常な量の練習こなした後なのに、まだ自主練するだけの余裕があるのかよ…」
1年生達は信じられないものを見るかのような表情でその光景を見つめる。
「…お前、入部して2日目で自主練する余裕あったか?」
「あるわけないだろ。練習をこなすだけで精一杯だったよ」
上級生達も驚きを隠せない。
「俺、もう無理だよ…」
「こんなの続けられないよ…」
目の前で見せつけられる自分との違い。1年生の中に心が折れる者も現れる。
そしてこの日、さらに1年生が退部を決意する。
「…」
空達、自主練をする1年生達を、1人の上級生が観察していた。
※ ※ ※
辺りはすっかり暗くなった頃、1年生達と三杉と堀田の自主練は終わった。
「今日は終わりだ。また明日な」
さすがの三杉も、疲労を隠せない面持ちである。
「「ありがとうございました!」」
空と大地は揃って頭を下げ、礼の言葉を述べる。その面持ちはすっきりしている。
「やれやれ、元気なルーキーだ」
三杉が苦笑を浮かべながら呟く。
「鍛え方が足りん。この先、センターでやっていくつもりなら、そこからさらに身体を鍛え上げろ…だが、筋はいい。いっそう励めよ」
堀田は松永に厳しめに批評するが、最後には褒め称えた。
「ありがとう…ございました…」
滝ような汗を流し、疲労困憊で床に座り込みながら何とか声を搾りだして礼を言う松永。
「ヒュゥー…ヒュゥー…」
スリーポイントラインの僅か外側で今にも消え入りそうな呼吸をしながら倒れ込む生嶋。
「おーい、生きてるかー」
空が傍まで近寄り、声をかける。
「…(グッ)」
生嶋はフルフルとさせながら右手を上げ、人差し指と親指でマルを作った。
「…大丈夫そうに見えねえけど、まあいいや、片付けは俺達がしとくから、それまで寝とけ」
生嶋の心配をよそに、空達は後片付けを始めた…。
※ ※ ※
「生嶋さん、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫…、すぐに回復…するかな?」
「知らん。歩けないならジッとしとけ」
帰り道、空と大地、生嶋と松永の4人で下校をしている。大地が生嶋の心配をし、松永が生嶋をおぶっている。
「にしても、お前達はあれだけ動いている割に随分余裕そうだな? 俺は少し休んでようやくこの程度なのだがな」
松永は生嶋をおんぶしているが、足元はフラフラだ。当初、空と大地が交互におぶるという提案をしたが、松永が、同じ寮に住んでいるという『生嶋と松永は他県からの越境入学のため、寮生活』理由と、身体を鍛えるためという理由で自ら名乗り出た。
「まあ、もともと体力には自信があったし、ここ(花月高校)もあっさり推薦で決まっちまったから受験勉強せずに身体鍛えまくったからな」
「母校のバスケ部の顧問は厳しくも優秀な方でしたので、みっちりと身体を鍛えることができました」
星南中バスケ部顧問、龍川。卒業まで空と大地を気にかけ、課題という形で練習メニューをやらせていた。
「見た目はヤ○ザそのものだけどな」
空がケラケラ笑いながら補足する。
雑談しながら下校していると…。
「なあ、ちょっとそこ寄ってかないか?」
空が親指でファーストフード店を指差す。
「寄り道は感心しませんよ?」
「いいんじゃないかな。親睦を深めるためにも」
大地が難色を示したが、生嶋が感心を示した。
「そうそう。堅い事言わないで、行こうぜ」
空が先頭を切って店に入っていく。
「それも悪くないな」
それに続いて生嶋をおぶった松永も入店していく。
「はぁ…、まったく、しょうがないですね」
溜め息を吐きながら大地も渋々入店していった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
それぞれが注文したものを席まで運び、席に付く。
生嶋も、ようやく1人で歩ける程度には回復し、足元がおぼつかないながらも自力で席まで歩いて行く。
「ようやく回復してきたよ。ありがとう、まっつん」
「誰がまっつんだ…、にしても、練習熱心なのはいいが、体力がないなら500本もスリーなんて打つな」
「ハハハッ、日課だからね。さすがに、あれだけ練習した後に、500本決まるまでスリーはきつかった」
生嶋は笑いながらポテトを1つ咥える。
「500本決まるまで!?」
それを聞いた空が身を乗り出して驚きを露わにする。
「うん。…でも、1本も外さなかったからピッタリ500本で終わったよ」
『…』
それを聞いた他の3人は絶句する。
決めるのか容易ではないスリー。それを500本ノーミス。それも、膨大な練習をこなして疲労が溜まりきっている練習後に…。
「僕はくー(空)やダイ(大地)みたいに身体能力に恵まれなくてね。ミニバスを始めた当初は、全く試合に出れなくて…それで、こんな僕でも試合に出れるように、試合で活躍できるように身に着けたのがこのスリーだったんだ」
「ほう…」
松永が生嶋のスリーへのこだわりを聞いて唸り声をあげる。
「でも、その努力が実って、全国中学校の強豪の1つの城ケ崎中のエースにまで上り詰めたんだからすげーよな」
「僕は回りにかなり支えられてのエースだからね。少なくとも、ここにいる皆みたいに、1人で結果をだせるようなレベルじゃないから。僕からすれば、君達の方がすごいよ」
和やかに談笑していく。
唐突に、空が話を切り出す。
「そういやさ、生嶋と松永って、キセキの世代と戦ったことがあるんだよな?」
「…うん」
「まあな」
2人は少し表情を暗くする。
「率直に、今の俺がキセキの世代と戦ったとして、通用するか?」
空が表情を改め、真剣な表情で聞く。
「…そうだな、俺が戦ったのは、中学1年の時だが、凄まじい実力だった。鉄平さん…無冠の五将とまで呼ばれていた木吉さんですら、1対1でも歯が立たなかった。正直、あれからさらに進化を遂げたキセキの世代となると、今のお前でも、精々何とか戦えるか、という程度だろうな」
「僕は一昨年戦ったけど、ほとんど適当に流して試合していたのにも関わらず、一方的な試合だったよ。僕の私見だけど、今の君では勝てるどころか、『敵』にもなるか…」
2人共、言いづらそうに、正直な感想を述べる。
「…なるほど、まあ、分かっていたことだ。悪いな、言いづらいこと聞いちまって」
空は特に気にする素振りを見せず、軽く謝罪をしながら飲み物を口にした。
同格の実力を持つ大地は苦笑しながら、2人の意見を受け止める。
「「…」」
生嶋と松永は正直に話し過ぎたことを少々後悔した。
暫しの間、その場に沈黙が支配していると…。
「なんや、通夜の席みたいに静まりよって」
空いている席に突如、1人の男が座り込んだ。
「ん? あんた、どっかで…」
空はその男に見覚えがあるのか、必死に思い出そうとする。
そんな空を見て男は席からずっこける素振りを見せる。
「いや、昨日と今日に顔合わせとるやろ…、ほな、しゃーない、自己紹介や! ええか、ワイはなぁ――」
「天野幸次先輩、ですよね?」
大地が言い切る前に名前を言い当てる。それを聞いて男は再びずっこける素振りをした。
「お前が言うんかい! …って、よう知っとったなぁ!?」
天野はズビシ! っと突っ込みを入れ、かと思えば目を見開いて驚いた。
「ええ、三杉先輩や堀田先輩を除けば、この静岡でもっとも有名なプレイヤーとも言えますからね」
大地がニコリと笑みを浮かべながら説明する。それを聞いて天野は満足気に笑いだす。
「わかっとるなあ! そうや、静岡の笑いのヒットマン幸ちゃんとはワイのことや!」
親指を自分に向けながらドヤ顔をする。
「ヒットマン? は知りませんが、去年のインターハイとウィンターカップにおいて、マッチアップした選手を全て0点に抑えこんだ、通称、『エースキラー』天野幸次。…静岡では知らない者は少ないのでは?」
「そっちかい! …まあ、ディフェンスとリバウンドはワイの専売特許や。相手が誰であれ、負けへんでぇ。…それが、キセキの世代でもなぁ」
1年生4人は、天野から発する凄みを感じ取り、思わず圧倒される。
「なら、天野先輩をぶち抜ければ、キセキの世代を相手にしてもぶち抜けるかもしれない…ってことですか?」
空がニヤリと笑みを浮かべながら挑発するように問いかける。
「先輩はいらんで。堅苦しい。ワイを呼ぶときは天さんでええで。…まっ、ワイに勝てればいけるかもなぁ…R-○大会」
「笑いの話しじゃねぇ! …ま、いいですよ。明日から、練習後の自主練の時、大地が三杉さんとやってる時に相手お願いしますよ」
空が挑戦状を叩き付ける。それに対し、天野はニヤリとする。
「ええで、こいやルーキー。ネタ帳持って待っとるわ」
「だから笑いじゃねぇ!」
こうして、にぎやかに談笑していくのだった…。
※ ※ ※
そして翌日…。
「やべーやべー。早く着替えないと…」
提出物を職員室に持っていったため、1人遅れる空。
基本的にバスケ部は時間厳守で、1分でも遅れるとペナルティーの筋トレが待っている。
「ん?」
その途中。体育館の影で人影を見つける。
1人は三杉誠也。
「誰だろ、あの子」
もう1人は見覚えのない女生徒。様子を見るに、何やら女性が涙を流しており、三杉がその子を慰めている。
「三杉さんの彼女か?」
三杉程のルックスと性格なら彼女の1人はいてもおかしくはない。
「……あっ、やべ! 遅れる!」
空は、時間が押し迫っていることを思いだし、気にはなるものの、部室へと走っていった。
「神城ぉ、腕立て腹筋スクワット50回……を、5セット」
「…Orz」
結局、間に合わなかったのだった。
続く
最近バスケの描写をほとんど入れてないことに気付きました(^_^;)
次回から何とか入れることができれば…。
感想、アドバイスお待ちしています。
それではまた!