黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

盛り込みたいことを書き、それを違和感なく( じぶんなりに)繋がるように文章を盛り込むと、文章量がすごいことになるんだなと痛感しました(^_^;)

それではどうぞ!


第31Q~VS泉真館~

 

 

 

正邦高校と練習試合をした翌日…。

 

花月高校バスケ部の面々は泉真館まで来ていた。

 

控室に案内され、着替えを済まし、ウォーミングアップをこなした後、スタメンの発表がされる。

 

「今日は2、3年生は出さん。1年生のみで試合をしてもらう」

 

「残念。1年生達、楽しみに試合を見させてもらうよ」

 

上杉からの言葉を受け、三杉が若干残念そうな表情をした後、にこやかに1年生にエールを送る。

 

「中学最強が4人も揃ってるんだ。是非とも勝たないとな!」

 

空が気合を入れる。

 

「昨日は出番がなかったからね。ここで頑張らないと」

 

生嶋が音楽プレイヤーのイヤホンを耳に入れながらやる気を見せる。

 

「まだスタメンの座を諦めたわけではない。ここでアピールをさせてもらう」

 

ひしひしと気合が入る松永。

 

「連携面に不安を残しますが、私達1年生だけの初陣です。白星を飾りたいですね」

 

大地も1年生の試合に期待に胸を膨らませていた。

 

「んー、せやけど、全中参加の4人はええけど、帆足はええんか? 確か、バスケ始めたん高校入ってからなんやろ?」

 

天野が問題点を指摘する。

 

今年の1年生で部活に残っているのは5人いるのだが、全中ベスト5に選ばれた4人はともかく、残りの1人、帆足は高校に入学してからバスケを始めた素人。経験者でも逃げ出す程の練習に今日までついてこれただけでも大したものだが、それでも不安は拭えない。

 

「うーん、県1、2回戦レベルならともかく、全国区の泉真館相手にバスケ初めて1ヶ月足らずの帆足では荷が重いな」

 

「うぅ…すいません…」

 

当の本人である帆足は身体を小さくして頭を下げていた。

 

様子を見るに、このまま試合に出しても満足にプレーすることは出来ないだろう。

 

「ふむ…、しょうがないな。天野、お前が出ろ」

 

「ホンマ!? おっしゃ! ついとるでぇ!」

 

試合に出られることに天野は全身で喜びを露わにする。

 

空、大地、生嶋、松永、天野がスタメンに決まった。

 

「昨日のような課題は付けん。自由にやってみせろ。…だが、あまりにも無様な結果に終わったら、スタメンは練り直すからな」

 

『はい!』

 

なんだかんだで制約が付いてしまった形だが、自分達が勝利することを疑わない5人はただただ大声で返事をする。

 

「それと、今日も誠凛の監督の嬢ちゃんが見学に来てる。ま、気にせずやれ」

 

「ご迷惑をお掛けします」

 

リコは頭を下げる。

 

「(今日の試合はあの2人の出番はなしか…けど、ルーキー達の試合が見られるのは僥倖ね。じっくり見させてもらうわ)」

 

三杉、堀田の試合が見られないのは残念に思ったが、他に気になる大物ルーキー4人の実力が見られるので、そこに注目する。

 

「行ってこい!」

 

『はい!!!』

 

スタメンの5人はセンターサークルに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

花月高校スターティングメンバー

 

8番PF:天野幸次 192㎝

 

9番 C:松永透  194㎝

 

10番PG:神城空  179㎝

 

11番SF:綾瀬大地 182㎝

 

12番SG:生嶋奏  181㎝

 

 

泉真館スターティングメンバー

 

4番 C:鈴木学   193㎝

 

5番PG:渋谷啓太郎 170㎝

 

6番SG:松橋泰三  173㎝

 

7番SF:結城海人  184㎝

 

9番PF:沖裕也   190㎝

 

 

 

「…」

 

「…」

 

両チームがセンターサークル内に集まり、顔を合わせる。

 

泉真館のスタメン達は、一様に花月高校のスタメン達を睨み付けている。

 

「…ふん。低レベルの全中で活躍した程度でいい気になるなよ」

 

ふと、泉真館の1人がポツリとこのようなことを囁いた。

 

「あん? キセキの世代がいなかった頃の代でしか王者名乗れねー奴が威張んなよ」

 

それにカチンときた空が売り言葉に買い言葉のように返した。

 

「っ! …ズタボロにして静岡に送り返してやる。覚悟しておけ」

 

そんな捨て台詞を残して両チームのスタメン達は、ジャンパーの松永、鈴木を残して散らばっていく。

 

センターサークル内に立つ松永と鈴木。

 

「…」

 

「…」

 

双方がジャンプボールに備える。

 

審判がボールを上げ、ティップ・オフ。

 

ルーキーたちの試合が始まった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「(さすが、伊達に全中でベスト5に選ばれただけあるわ。それぞれ身体能力は高いしテクニックもある。並みの高校生レベルをはるかに凌駕している)」

 

試合が始まって幾ばくか経ち、リコはそれまでの経過をこう総評する。

 

「(…けど、それでも試合は…)」

 

リコは改めてコートに視線を向ける。

 

「……ちっ!」

 

空は思わず舌打ちをする。

 

 

第2Q、残り3分。

 

花月  30

泉真館 39

 

 

試合は泉真館がリードしている。

 

花月側は要所要所で好プレーを見せているが、いまいち波に乗り切れていない。

 

対する泉真館は、スタメン5人全員がパス、ドリブル、シュートを高いレベルでかつバランス良く鍛えれており、花月ほど派手さはないが、ミスを逃さず、チャンスは的確に物にしていた。

 

泉真館リードの要因の1つは、花月側のミスが多いことだ。現在のスタメン5人は、実力者こそ揃っているが、チームの連携が上手くいっておらず、5人全員が噛み合わず、時折、足を引っ張り合ってさえいる。

 

だが、1番の要因は…。

 

 

――バチン!

 

 

「あっ!」

 

空から生嶋へパスが出るが、ボールが出された場所が悪く、生嶋がファンブル。ボールを弾いたところを泉真館の沖に奪われる。

 

「ターンオーバーだ!」

 

「あー、ちくしょう!」

 

瞬く間にピンチとなり、頭を抱える空。

 

「速攻!」

 

沖が前方に大きくロングパス。フロントコート少し先で速攻で走っていた渋谷が受け取り、そのままドリブルしていく。

 

完全なるワンマン速攻。

 

渋谷が悠々とレイアップを打つ。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「えっ?」

 

レイアップが決まると確信していた渋谷はブロックされた瞬間にこんな声が漏れる。

 

ブロックショットを決めたのは。

 

「だー危ねぇ!」

 

空だった。

 

ブロックが決まると、空は着地し、苦々しい表情をする。

 

「(マジかよ…、あいつパスミスした時はぺネトレイトでペイントエリアまで行ってたのに…、あそこから俺に追いついたのかよ…)」

 

渋谷は空が生嶋にパスを出した瞬間にスティールを確信し、速攻に走っていた。確かに、ターンオーバーからワンマン速攻が決まると確信していた渋谷は僅かにスピードを緩めていたが、それでもかなりスピードは出していたし、そもそも、自分と相手との距離はかなりあった。

 

にもかかわらず、速攻は防がれてしまった。

 

この事実に、ブロックされた渋谷だけではなく、他の者達も驚いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「ふん。これが才能に頼り切りになり、基礎をじっくり鍛えずに試合に出てしまった者の末路だ」

 

泉真館の監督が鼻を鳴らしながらニヤリと笑う。

 

「おまけに、自らのミスを帳消しにするためのわざわざ全力で走り込んでのブロック。そのスピードには目を見張るが、私から言わせれば後先考えないただの暴走だ。もう優に1試合分は走っている。直に終わりだ」

 

先程の空のブロックも、無益なものと吐き捨てる泉真館の監督。

 

彼からすれば、花月高校のバスケはそれぞれが能力と才能に任せた自分本位なバスケと総評している。対する泉真館はそれぞれがパス、ドリブル、シュート。そして、走、攻、守がバランス良く鍛えられており、今までチャンスはものにし、ピンチは防ぎ、相手に対して有効的な戦術を布いている。

 

「一芸突出の選手や、自分勝手な天才はウチにはいらん」

 

泉真館は、東京都の強豪校であるため、関東圏から、あるいは全国から有望な選手が集まる。

 

バスケ部に入部した新入生にまず叩きこむのが、選手は、チームのためにあり、選手は歯車であるということ。

 

始めの1年間はとにかく基礎重視で練習を行い、弱点を無くし、全ての基礎や技術をバランス良く身に付けてもらう。翌年から試合を通じてそれらを馴染ませていき、最後の年にその積み上げてきたものの集大成を見せる。

 

もちろん、中学のエース級の選手の中にはこの方針に反発する者も少なからずいるが、最後には納得してもらい、そうでない者はバスケ部を去る、といった具合だ。

 

結果、全てに秀でた選手が育ち、どのような相手、どのような戦術にも対応出来るようになる。

 

「神城空君。君の才能は認めよう。秀でたものを持っていることも認める。だが、それを支える土台である基礎を積み上げない者が、積み上げてきた者と戦えば結果は自ずとこうなってしまうのだ。今日は、そのことを勉強していってもらおう」

 

泉真館の監督は、去年に星南中学に赴いて空のスカウトに行った際の空の言動と態度に未だに根に持っていた。それらは、選手達にも伝わっており、それが先程の言動の一因だ。

 

「さあ、私の教えをその身に沁みつけた私の選手達よ。花月高校のような無駄に派手なプレーはいらない。じっくりチャンスをものにし、じわじわと差を付けてあげなさい」

 

含み笑いを浮かべながら試合を見守った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「1人でピンチを作って、1人で挽回して、忙しい奴だな」

 

ベンチから試合を眺めていた三杉が薄っすらと笑顔を浮かべながら空に向けてそう呟いた。

 

今日の試合、泉真館にリードを許している1番の要因は、空と、大地を除く、他の3人とのパスが噛み合わないからだ。

 

空は、持ち前の広い視野とパスセンスを生かしてパスを捌くが、特にリズムが合わない生嶋と松永とのパスが上手くいっていなかった。

 

ボールを取りきれず、ファンブルするか、不安定な体勢でのキャッチが求められ、体勢を立て直した時にはチェックが付いてしまうか。

 

「今日の神城は調子最悪だな。さっきからミスばっかだ」

 

ベンチメンバーである馬場がフゥっと溜め息を吐く。

 

「…本当にそうでしょうか?」

 

「えっ?」

 

同じく、試合を見ていた姫川が馬場の言葉に反論する。

 

「確かに、神城君からの失点が多いですが、全て神城君が悪いと言われるとそれは違うのではないかと…」

 

「けどな、現に神城から…」

 

「いや、姫ちゃんの言うことも一理ある」

 

そこに、三杉が口を挿む。

 

「確かに、神城のパスからの失点が多いが、何も、空だけが原因という訳ではない。見てて気づかないか? 今日の空のパスはファンブルはしていても、スティールは1度もされてないんだ」

 

「まあ、確かにそうだが、だが、そうなると、受け手に問題があるってことか?」

 

「んー、それもまた違うかな。大地以外の奴が空のパスを取れないのは、ひとえに、リズムやテンポ、タイミングの問題だ」

 

三杉はコートに視線を移す。

 

「昔からのコンビの大地や、ポストプレーがメインの天は別にして、生嶋と松永は、今まで受けてきたパスとあまりにかけ離れている為にファンブルが多いのだろう。こだわりの強い生嶋は自分独自のリズムやテンポがある。過去のチームメイトはそれに合わせてパスを送っていたのだろう。松永はワンマンチームにいたために空のような癖のあるパスに耐性が弱いからまだ対応が出来ない」

 

『…』

 

「空は、特殊で広い視野とパスセンスを持っているから、瞬時にフリーの味方を発見でき、パスコースも、ボール1個分通るスペースを見つければそこからパスを出せる。慣れている大地はともかく、他の奴等は慣れるまでに時間がかかるだろうな」

 

『…』

 

「だが、空もそこで受け手が取りやすいパスを出せるほどまだ器用ではない。俺や健、大地のスピードとタイミングではさっきのようにファンブルしてしまうし、過去のチームメイトのスピードとタイミングでは遅すぎてシュートまで持っていけない。まあ、この5人でのチーム練習をほとんどやってないから、仕方ないと言えば仕方ないんだが…」

 

三杉の言葉を、ベンチメンバーは注目しながら耳を傾けていた。

 

「パスの出してと受け手のズレ。これさえ修正出来れば、試合の流れは1年坊達の方に変わるんだがな…」

 

そう言葉を残すと、再び試合に注目し始めた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

試合は点差が縮まらないまま進んでいく。

 

花月高校はミスが多い中、それでも離されずに食らいついていっている。

 

その要因の1つは…。

 

 

――バシィィィィッ!!!

 

 

「おら! もらうでーーーっ!!!」

 

天野はリバウンド争いを制し、ボールをもぎ取る。

 

要因の1つ、天野がオフェンス・ディフェンスリバウンドを取りまくっていること。

 

1つ、個人技を生かし、ここ一番のシュートはきっちり決めていること。

 

1つ、流れを変えうる泉真館側のシュートはしっかりブロック出来ていること。

 

1つ、泉真館に爆発力がなく、ここ1番で突き放すことが出来ないことが要因だ。

 

 

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

 

 

ここで、だい2Q終了のブザーが鳴る。

 

 

第2Q終了

 

花月  38

泉真館 46

 

 

泉真館リードで終わる。

 

「あー! ちくしょう!」

 

自身のミスが失点につながっている自覚があるため、悔しさを露わにする。

 

「ごめん、僕が君のパスをちゃんと取れていれば…」

 

「いや、それは俺も同じだ。神城は悪くない」

 

生嶋も松永も、これまでの結果の要因は自分にあると考えており、決して空を責めることはしなかった。

 

「悪いのは俺だ。生嶋も松永が踏ん張りがあったから何とか食らいついていけてる。けど、俺は自分の尻拭いしかしてねぇ…!」

 

自分の失態を挽回することでしか結果を残せてない空は悔しさを露わにする。

 

「はいはいそこまでや。自分を責めとっても何にもならんで? それよか、対策考えんと。時間も限りがあるんやからな」

 

天野が手をパンパンと叩きながら間に入り、クールダウンさせる。

 

「天野先輩の言うとおりです。このままではジリジリ離されるだけです」

 

大地も同じように割って入って空達を諌めていく。

 

「まあ、そうだな…とりあえず、パスが上手くいかねぇ。第2Q後半までやってだいぶ掴めてきたが、どうもテンポが合わねぇ」

 

「中学時代とはメンバーが違いますからね。連携が不十分な段階ではどうしても空の素早いテンポになってしまいますからね」

 

あーでもない。こうでもないと話し合っていく。

 

「…」

 

監督、上杉は、特に指示を出す素振りは見せない。

 

「監督、指示は出さないのですか?」

 

姫川が尋ねる。

 

「練習試合だからな。俺が勝たせても意味がない。だったら、自分達に考えさせて、その結果が、あいつらを大きくさせるだろう」

 

上杉はあくまでも空達の自主性に任せた。

 

『…』

 

話し合う事数分。未だに具体的な案は出てこない。

 

「…ん?」

 

空はふと、ベンチで見学している誠凛の監督、リコに視線を移す。リコは何かをノートにメモしていた。

 

昨年、創部2年で奇跡を起こす程のチームをつくりあげた現役女子高生監督。

 

「…あっ! なあ、ちょっと思いついたんだけど…」

 

突如、閃いたことを空が話していく。

 

「っ! これはまた、大胆なことを思いつきましたね…」

 

大地がその案を苦笑いをする。

 

「…確かに、半端な連携を組むよりはマシだとは思うが…」

 

松永も大地と同じく、苦い表情をする。

 

「…面白いとは思うけど、これをやるとなると、くー、君の負担が1番大きくなるよ? 今までさえ、合わなくて苦しんでいたのに…」

 

生嶋は空の案に対して、提案者の空の負担の大きさを懸念する。

 

「問題ねぇ。むしろ、そのくらいの方がやりやすいし、何より、面白そうだろ?」

 

空がニヤリと笑みを浮かべる。

 

「けど、君はもう1試合分動いているんだよ? それでは――」

 

と、生嶋はここで言葉を止める。

 

空は自身のミスを自分でカバーするためにコート中を走り回っている。これからやろうとしている作戦を実行したら空がもたないのではないかと。

 

だが、生嶋はここで気付く。空はあれだけ走り回っていたにも関わらず、息を全く乱していない。空の半分も動いていない生嶋の方が息が上がっているくらいだ。

 

「私は空の案に賛成です。せっかくの練習試合です。思い切って試すのもありだと思います」

 

大地も空の案に賛成の意思表示をする。

 

「ならば、簡単な基本のパターンも決めておきましょう。とりあえず、天野先輩に――」

 

空が突如、思いついた案に大地がさらに具体案を出し、煮詰めていく。

 

「――と、こんな感じでどうでしょうか?」

 

「ええで。おもろなってきたわ」

 

「面白い。これが上手く決まれば、さぞかし最高だろうな」

 

「まさに、この5人の、『僕達のバスケ』だね」

 

天野、松永、生嶋も、具体的に固まった案に興奮を隠せない。

 

 

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

 

 

ここで、インターバル終了のブザーが鳴る。

 

「っしゃぁ! 行こうぜ!」

 

空が気合一閃。大声を上げる。

 

双方のベンチから選手達が現れる。

 

前半戦の結果を見て、心なしか余裕がある泉真館の選手達。対する花月側の選手達の表情も明るい。その表情は、新しい悪戯を思いついた悪戯坊主のよう…。

 

第3Q、泉真館ボールからスタート。

 

淡々とパスを回していき、チャンスを窺う泉真館。

 

 

――ピッ!

 

 

渋谷からゴール下に走り込んでいた沖に矢のようなパスが通る。

 

「もらった!」

 

パスを受け取った沖がそのままゴール下を沈めにいく。

 

 

――バチィィッ!!!

 

 

「くっ!」

 

「させるか!」

 

そのシュートは松永にブロックされる。

 

「ええ仕事ぶりやで、松永!」

 

ルーズボールを天野が拾う。

 

「天さん!」

 

「あいよ!」

 

拾ったボールはすぐさま空に預けられる。

 

「っし! 速攻ー! 走れー!!!」

 

その掛け声と同時に花月側の選手が一斉にフロントコートへと走り出した。

 

「っ!? これは!?」

 

前半戦までのゆったりしたバスケとは一転、選手達が全速力で駆け抜けるスピードバスケに切り替わる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

空が目の前に渋谷を抜き去り、そのまま一気に加速していく。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールは大地へと渡り、悠々とレイアップを決める。

 

『…』

 

ボールが花月へと渡ってから瞬く間に得点。

 

そのあまりの速さに茫然とする泉真館の面々。

 

 

『ボール奪ったらさ、全員で一気にフロントコートまでダッシュしちまおうぜ!』

 

 

空の提案した案は、各々の身体能力と運動量を生かし、圧倒的なスピードで相手が体勢を整える前に一気に決めてしまうラン&ガン。

 

泉真館の者達は何も出来ずにターンオーバーからの失点を決められてしまう。

 

試合の流れが花月の5人の起こした激流によって、変わっていく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「慌てるな! たかだか付け焼刃のラン&ガンだ! お前達は昨年にも味わっているだろ!」

 

泉真館の監督が立ち上がりながら檄を飛ばす。

 

彼らは、昨年にラン&ガンを経験している。

 

後に日本一にまで上り詰めた奇跡の新星、誠凛高校によるラン&ガン。

 

より純度を高めたラン&ガンを彼らは経験している。

 

だが、同じラン&ガンでも、誠凛と花月では大きく異なる。

 

誠凛は、高速のパスワークと、そこに黒子テツヤのミスディレクションによるパスの中継が加わった変幻自在型のラン&ガン。

 

対して、花月は、連携不足も相まって、誠凛ほどパス行き交うことはないが、誠凛と大きく違うところは、選手の機動力。ボールではなく、選手が絶え間なく動き回る。

 

誠凛と大きく違う点は、フィニッシャーの多さだ。

 

誠凛のフィニッシャーは、主に火神と、外から日向の2人なのだが、花月は、スコアラーである大地に、オフェンス能力が高い空。外から確実に射抜けるシューターの生嶋に、もともとはフォワードの選手であり、スコアラーでもあった松永。

 

つまり、得点源が4人も存在する。

 

そのため、的が絞れず、早い展開に対応出来ないまま失点を重ねてしまう。

 

そして、先程まで上手くかみ合っていなかった空のパスが、早い展開になってから格段にファンブルの回数が減り、パスが通り始めるようになる。

 

さらに、天野がハイポストに展開してポストプレーをこなしたり、スクリーンを駆使してパスを中継し、フリーの選手を作り、チャンスを演出する。

 

それが機能し始めると、さらに止めることが困難になる。

 

「くそ…!」

 

花月側のスピードに付いていけず、翻弄される。

 

試合は、完全に花月の流れとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

第4Qに入っても、花月側はそのままラン&ガンを継続する。

 

生嶋が第4Qに入ってすぐにスタミナ切れで失速する。

 

半ばに入ると、松永の足も止まり始める。

 

だが、空と大地は止まらない。

 

「(こいつら、何でこんなに動けるんだよ…)」

 

「(バケモノだ…)」

 

泉真館の選手も足が止まり、既にスタメンの渋谷、結城はベンチに下がっている。

 

だが、控え選手さえも足が止まりかけている。

 

ラン&ガンを始めてから全く運動量が落ちない大地。空に至っては迷惑をかけた分、スピードが落ちた生嶋と松永の分をカバーすべく、さらにスピードアップ。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

空がインサイドへと切り込む。

 

「囲め!」

 

泉真館選手達が空を包囲し始める。

 

 

――スッ…。

 

 

完全に囲まれる前にパスアウト。

 

「ぜぇ…ぜぇ…」

 

ボールは左アウトサイド、3Pラインの外側に立っていた生嶋にボールが渡る。

 

「そいつはもう撃てない! ボールを奪え!」

 

「そんなヤワじゃねぇよな?」

 

生嶋はゆっくりボールを構え、シュートを放つ。

 

フォームは崩れ、リズムも悪い不格好なシュート。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングに掠ることなく潜り抜ける。

 

『なっ!?』

 

「さすが、相変わらず落ちないな。ナイッシュー」

 

空が声をかけると、生嶋は黙って親指を立てた。

 

 

 

「1本! 返すぞ!」

 

泉真館側もきっちり返すべく、パスを回していく。

 

「もらった!」

 

鈴木がシュート体勢に入る。

 

「ちっ、させっか!」

 

空がブロックするべく、ヘルプに向おうとしたが…。

 

 

――バチィィッ!!!

 

 

「らぁっ!」

 

松永の渾身のブロックが炸裂。

 

「これが俺の仕事だ。お前は自分の仕事に専念しろ」

 

ヘルプに行こうとしていた空に気付いていた松永がニヤリとしながら空に告げる。

 

「(頼もしいな。俺がいちいち駆け回る必要もないんだな…)」

 

主に周囲のフォローに駆け回っていた星南中時代。

 

それも楽しくもあったが、頼もしい仲間を得て笑みがこぼれる。

 

ボールを拾った空がそのままワンマン速攻。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

そのままワンハンドダンクをぶちかました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「面白いね。まさに、監督好みのチームですね」

 

「ふっ、鍛え甲斐がある」

 

上杉が試合を見ながら笑みを浮かべる。

 

「連携不足、攻撃パターンの増加、体力増強、冬までにどこまで熟成させられるか、ですね」

 

姫川は、スコアの集計と各選手のデータをノートに纏めながら課題を指摘する。

 

「しかし、泉真館も全国レベルのチームだぞ。バランスのいい選手が揃った相手に運動量と個人技でねじ伏せてやがる」

 

馬場が冷や汗を流しながらポツリと呟いた。

 

3年間、じっくりチーム練習をしながら積み上げてきた泉真館を今年の4月に顔合せたばかりの急造チームが圧倒している。

 

味方ながら、頼もしいと思うのと同時に恐ろしくも感じる。

 

今年集まったルーキーは、とてつもない可能性を持っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

 

試合終了のブザーが鳴り響く。

 

「バカな…、こんなことが…」

 

泉真館の監督がベンチに腰を抜かしながら座り込む。

 

 

試合終了

 

花月  104

泉真館  96

 

 

第3Qから泉真館を圧倒し、そのまま勢いに乗り、試合を決めた。

 

泉真館選手達は、公式戦に負けたかのように悔しがっている。

 

ルーキー達の初陣は、勝利に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

試合を見学していたリコ。

 

その表情は険しい。

 

「(あの2人がいなくとも、恐ろしいチームね…)」

 

それが最初に思った感想であった。

 

圧倒的なスキルにテクニック、身体能力を持った選手も恐ろしい。キセキの世代がいい例だ。

 

だが、1試合通じてコート中を駆け回れるスタミナを持った選手もまた恐ろしいのだ。

 

スタミナには限りがあり、ペースを誤ればすぐに枯渇してしまう。

 

「(このチームの連携が深まり、さらにオフェンスパターンが増えたら脅威だわ)」

 

急造チーム故に運動量任せの試合運びになってしまったが、連携力が高まれば、チームはさらに熟成される。

 

「(しかも、彼らはまだ1年生。これからまだまだ伸びていく)」

 

リコの目には、ルーキー達に大きな伸び代が見えた。

 

キセキの世代の次に現れた新たな世代。

 

リコは、更なる強豪の誕生に、頭を悩ませるのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

帰りの新幹線…。

 

「2連勝! いやー、遠征試合、楽しかったなー!」

 

空が練習試合の結果を得て喜びを露わにする。

 

東京都の強豪校2校を相手に連勝完勝。戦果としては上々である。

 

「浮かれないの。課題は山積み。あなたは特にね」

 

姫川がノートでポンっと空の頭を小突く。

 

「見て。第2Q頭、あそこは切り込むんじゃなくて、天野先輩を中継してフリーだった生嶋君に繋げるべきだった。次は――」

 

姫川が空の隣に座り、ノートを見せながら今日の試合の空の問題点を次々と上げていく。

 

「うぐ…」

 

言い返したいが、正論すぎて言い返せない空。

 

「(…僕の課題はスタミナだ。とりあえず、早朝と、練習後のシュート練習の後に走り込みを加えよう)」

 

「(今日の試合、パワー負けをした場面が多々あった。もっと筋力を付けなければ)」

 

「(ハンドリング技術にまだ難がありました。さらに磨きをかけなければ、この先、ひいては、三杉先輩と堀田先輩が抜けた冬を勝ち抜くのは難しいですね)」

 

1年生達は各々、今日の試合での自身の課題を洗い出し、帰郷後、さらに自分を高めるために練習に励むのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





ラン&ガンってかっこいいですよね!

戦術もそうだけど、名前からしてかっこいいです(^o^)





……腰痛めました(T_T)

しゃがむと痛い…、椅子に座ってると痛い…。

現在通院中です(^_^;)

感想、アドバイスお待ちしています。

それではまた!

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