黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

33 / 228
投稿します!

ついに原作主要キャラが出てきます。

あと、ちょっとねつ造設定も入ります。

それではどうぞ!


第33Q~インターハイ開幕~

 

 

 

「インハイ出場、おめでとう」

 

『そっちも、危なげなく出場したみたいで』

 

空が携帯電話片手に電話で話をしている。

 

「にしても、引っ越すから東京のどこかの高校に進学するってのは聞いてたけど、誠凛って聞いた時はマジで驚いたよ」

 

電話の相手は、中学時代の主将であり、チームメイトであり、バスケ部に引き戻してくれた恩人でもある、田仲潤。

 

『ああ、引っ越し先から目と鼻の距離だったし、何より、バスケ部が有名なところだからね』

 

ウィンターカップ制覇を、創部2年で成し遂げた誠凛高校。その名は今や全国にも轟いている。

 

「調子はどうよ? 確か、そっちは去年の正センターがいないんだろ? 結構出番があるんじゃないのか?」

 

『全然だよ。予選ではそこそこ出番あったけど、後は、秀徳戦にちょっとだけ出たくらいだよ』

 

「仮にも、全中優勝校の主将だろ。レギュラー奪えなかったのか?」

 

『無理言うなよ。今年センターやってる水戸部さんはすげー上手いし、火神さんはマジ化け物。主将の日向さんと伊月さんもすげーよ。1年じゃ、試合に出れるだけマシだよ。新海はそれなりに出番あるけど、俺と池永は出番少ないぜ』

 

「…そういや、そっちに何故か帝光の新海と池永がいるんだったな。新海はまぁ…いいけど、池永はどうも好きになれないんだよなぁ…」

 

かつての敵の名前を聞き、眉を顰める。

 

『新海はいい奴だぜ。池永は、まぁ、想像通りだけど、毎日、火神さんに勝負挑んではズタボロにされてるよ』

 

「身の程知らずだなぁ…」

 

『…けど、毎日やりあってるだけあって、かなり伸びてるぜ、あいつ。今なら、お前相手でもいい勝負するかもしれないぜ?』

 

それを聞いて空はムッとした表情をする。

 

「…あいつだけには絶対負けたくねぇな。こっちだって伸びてんだぜ? 返り討ちにしてやるよ」

 

そのまま2人は談笑していく。

 

「ととっ、そろそろ行かねぇと…、それじゃ、インターハイで会おうぜ」

 

『ああ、今度は敵同士だが、やり合う時はよろしくな』

 

そこで電話を切る。

 

「さてと…練習練習」

 

荷物を持ち、空は家を出たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

インターハイ静岡県予選を無事、1位突破した花月高校。先に控えるインターハイに向けて猛練習を積んでいる。

 

「足を止めるな! この程度でバテていて優勝が狙えると思ってんのか!」

 

上杉の檄が飛ぶ。

 

インターハイ出場が決まってから、花月の練習も激化していた。

 

今までも厳しい内容だったが、現在はさらに厳しい。

 

『ぜぇ…ぜぇ…!』

 

部員達は滝のように汗を流し、大きく肩で息をしながら練習に取り組んでいる。

 

きつい練習なれど、ここまで脱落せずに残ったメンバー。必死に食らいついていく。

 

練習は、日が暮れてもなお続いた。

 

部活動終了後…。

 

「空! 今日こそは俺を抜いてみせろよ!」

 

「もちろん! 今度こそぶち抜いてやる!」

 

空と三杉が1ON1勝負を行っている。

 

「俺を抜けんようじゃ、誠さんは抜けへんでぇ!」

 

「行きますよ!」

 

隣のリングにて、大地と天野が1ON1を行っている。

 

「ふぐぐぐっ…!」

 

「もっと腰を落とせ! どう足掻こうと相手より高くはなれん。自分より高い相手には重心を落として対応しろ!」

 

「はい! おぉぉぉぉーーーっ!!!」

 

松永と堀田が、ゴール下にて、勝負を行っている。

 

「ぜぇ…ぜぇ…!」

 

生嶋は、普段から日課にしている500本( 決まるまで)のスリーの打ち込みに加え、自身の弱点であるスタミナ不足を補うため、両足にパワーアンクルを付け、走り込みをしている。

 

その他の者も、自主的に居残り練習を行い、またある者は、それらの者達のフォローをしている。

 

バスケ部の者達の中に、県予選1位突破で満足している者はおらず、全国の頂点を目指すべく、自身を高めていく。

 

「…ふっ」

 

その姿を、監督である上杉は満足そうに眺めている。

 

「今年は狙えそうですね」

 

その横から同じく、自主練を眺めていた姫川がノート片手に問いかける。

 

「当たり前だ。これだけの戦力が揃っているんだ。獲れなきゃ無能以外の何者でもないだろうよ」

 

優勝は狙えると断言する上杉。

 

――後半、動けない天才より、試合を通じて走り回れる凡人…。

 

これが、上杉が好む選手像。

 

故に、練習は基礎体力を向上させることを目的としたメニューが多い。

 

だが、今年の花月の戦力は、試合を通じて走り回れる天才が集まっている。故に優勝出来なければ無能と言い切る。

 

今年入部したばかりの1年生も、わずか数ヶ月で急成長を遂げており、三杉や堀田と濃密な練習をこなすことにより、今、この瞬間も成長している。

 

「皆さーん! しっかり水分補給をしてくださいねー!」

 

マネージャーの相川が特製の栄養ドリンクを片手に自主練をしている部員達に見せる。

 

「おっ、きたきた!」

 

部員達が待ってましたとばかりに相川の下に寄っていく。

 

相川特製の栄養ドリンクは、栄養もさることながら、味も抜群で、部員達の間では人気を博している。市販で発売されているスポーツ飲料の粉に、プロテインを絶妙な分量で配合しているらしいが、そのレシピは相川しか知らない。

 

「茜ちゃんには感謝するばかりです。マネージャー業務のほとんどは茜ちゃんに任せきりになってしまってますから」

 

姫川は主に、他校のスカウティングや、チームメイトの試合や練習内容を基に、弱点や課題を洗い出し、それを上杉や選手達に伝えるのが役割となっている。

 

「お前はお前にしかできんことをやっている。それでいい。現に、こっちは助かっている」

 

「ですが…」

 

「バスケと一緒だ。周りに仲間がいるんだ。1人で全てやる必要はない。任せられるところは任せても構わん」

 

マネージャー業務を相川に任せてしまっていることを気にする姫川を、気遣う上杉。

 

「そうです! 私、こういうの好きだから問題なしです! 私はバスケのことはチンプンカンプンだから、こっちは私に任せて、姫ちゃんはすかうてぃんぐ? に専念してね♪」

 

ドリンクを配り終えた相川が姫川を抱きしめながら伝える。

 

「茜ちゃん…うん!」

 

頼れる仲間に、姫川は笑顔で返事をする。

 

「それより……もう吹っ切れたのか?」

 

突如、上杉が笑顔から一転、表情を改めて姫川に尋ねる。

 

「……いえ、まだ…」

 

「?」

 

姫川は一瞬、苦悶の表情をし、首を横に振る。話が分からない相川は頭に?を浮かべている。

 

「…まあ、そんなもんだ。割り切るには、まだ時間がかかるだろう。若いならなおな。ゆっくり、考えていけばいい」

 

「…はい」

 

俯きながらそっと返事をする姫川。事情を尋ねたいが、軽々しく触れてはならないと判断した相川は、姫川の顔を見るだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

インターハイ予選が終わり、各県の、インターハイへの切符を掴んだ者達が頂点を目指すべく、練習を重ねていく。

 

そして、月日は過ぎ、遂に、その日がやってきた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

8月某日…。

 

全国高等学校体育大会。通称、インターハイが開催された。

 

各県の予選を勝ち抜いた代表校が、今年の会場となった千葉県に集まった。

 

「っしゃぁ! やってきたぜ!」

 

今年の会場となる場所にやってきた空が、会場を目の前に大はしゃぎをする。

 

「空、周りに人がいるのを忘れないで下さいね」

 

そんな空を大地が窘める。

 

「大声出さないで、恥ずかしい」

 

姫川がジト目で注意する。

 

「へぇー、日本大会の会場も豪華なものだな」

 

「確かにな」

 

三杉と堀田が会場を見ながらにこやかに談笑する。

 

『…(ゴクリ)』

 

会場を前にした2、3年生達がゴクリと唾を飲み込む。

 

「先輩? どうかしたんですか?」

 

様子に気付いた生嶋が尋ねる。

 

「…いや、俺達、全国の舞台は初めてだから…」

 

現2、3年生は、今回が初めての全国大会となる。

 

「さすが、全中経験者、余裕だな」

 

特に、臆した様子がない1年生達を見て、上級生達は感心する。

 

「余裕ではありませんよ。私も同じく、緊張しています。ですが、それ以上にワクワクしています」

 

「そうですね。怖いの半分、ワクワク半分です」

 

「こういう気分は、こういう舞台に立たないと味わえないな」

 

「この始まる前の緊張感、たまんねーよな!」

 

大地、生嶋、松永、空が、笑顔で先輩の問いに答える。

 

「お前ら…」

 

その様子を見て、上級生達の緊張が薄れていく。

 

「開会式まで時間はない。行くぞ」

 

上杉が声をかけ、会場入りしていく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

開会式がつつがなく執り行われた。

 

前年度優勝校である洛山高校。その主将である、赤司征十郎によって優勝旗が返還される。

 

各校の各選手が、ある者は緊張に包まれ、ある者は敵を威嚇し、ある者は闘志を胸に秘め、ある者は強敵との闘いを目の前に笑っていた。

 

そして、開会式は終了し、選手達は明日からの激闘に向けて準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

開会式後、誠凛高校…。

 

「あの、飲み物買ってきてもいいですか?」

 

黒子テツヤが監督であるリコに尋ねる。

 

「あまり遅くならないようにね。ただ…火神君! 一緒に付いていきなさい」

 

「うす」

 

黒子と肩を並べて火神が歩いていく。

 

「…1人でも大丈夫なんですが…」

 

「お前はほっとくとすぐフラフラといなくなるからな。まぁ、お目付役ってことだろ」

 

黒子と火神は会場外にある自販機を目指して歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…ん?」

 

会場の外に出て、エントランス付近を歩いていると、火神が発見する。そこには…。

 

「あん? お前もかよ」

 

「黒子っち! 火神っちも!」

 

「…ふん。騒がしい奴が来たのだよ」

 

「あれ~、黒ちんじゃん。あと火神」

 

そこには、キセキの世代と呼ばれる者達が集まっていた。

 

「久しぶりです。…もしかして、今年も集まったんですか?」

 

「いや、今回は本当に偶然だ。たまたまここに皆が集まっただけだよ」

 

そこにはもちろん赤司もいた。

 

目的は様々だが、この場に、昨年のウィンターカップを熱狂させたキセキの世代と彼らを倒した火神が集まった。

 

「全員、無事、インターハイに出場出来たようで安心したよ」

 

「はっ、当然だ! 去年は出れずじまいだったからな」

 

不敵に笑いながら火神が答える。

 

「ふん。3位でのギリギリの出場でどうしてそんなに威張れるのか、不思議でならないのだよ」

 

「得失点差でだろうが! つうか、お前には勝ったけどな!」

 

「言ってくれるな…!」

 

火神と緑間がにらみ合いを始める。

 

「やめろ、うっとうしいな。今更どうでもいいだろ」

 

そのやり取りを、青峰が面倒くさげに言葉を挟む。

 

「何だと? 負けたくせに偉そうなのだよ」

 

「…言ってくれるじゃねぇか緑間」

 

そこに、青峰も参加し、三つ巴で睨み合う。

 

「…ミドちん~、はさみ貸して~。これ切れない」

 

そんなにらみ合いも気にせず、菓子袋が切れない紫原が緑間にはさみを借りようとする。

 

「持ってないのだよ。…というか、取り込み中だ」

 

緑間はうっとうしげに答える。

 

「やめろお前達。誰が強いか、それはすぐに分かることだ」

 

「そうです。喧嘩はやめましょう」

 

その争いを、赤司と黒子が止める。

 

「…ちっ」

 

「ふん」

 

「…そうだな」

 

2人の静止に、3人は半分納得、半分不満げな表情をしながら言い争いをやめる。

 

「ふぅ…、とはいえ、このインターハイは、俺にとっては去年のリベンジの舞台だとも思っている。黒子、火神。去年の借りは、返させてもらうよ」

 

「はっ! 負ける気はさらさらねぇけどな!」

 

「僕も負けません」

 

赤司の挑戦状とも言える言葉に、黒子と火神は笑顔で答える。

 

すると、そこへ…。

 

「おっ、見ろよ! キセキの世代が全員揃ってる! 火神さんもいるぜ!」

 

エントランスの階段の下から声が聞こえてきた。

 

「声が大きいですよ。周りの迷惑も考えてください」

 

現れたのは、花月のジャージを着た2人の選手、空と大地だ。

 

開会式終了後、空は、会場のどこかにいるキセキの世代を探しに単独行動をし、空がいないことに気が付いた大地が探索に出かけ、ちょうどこの近くで空を発見、連れ帰っているところだった。

 

声が大きかったことで、その場にいた全員が空と大地に気付いた。

 

「あれ~? あの2人、どこかで見たことあるような…」

 

紫原が2人のことを必死に思い出そうとする。

 

「あんた達の後輩を目の前で倒したはずなんですけどね…、なら、自己紹介、星南中出身、現花月高校の神城空だ。あんた達を倒すためにここに来た」

 

空が不敵な笑みを浮かべながら自己紹介をしていく。

 

「空、失礼ですよ。…綾瀬大地です。申し訳ありません。彼に悪気はありませんので…」

 

大地が自己紹介をしながら頭を下げて謝罪をしていく。

 

「ふん、覚えていないのだよ」

 

緑間は眼鏡のブリッジを押し上げながら視線を外す。

 

「おっ、あの時の目立ってた2人ッスね! 俺は覚えてるッスよ」

 

黄瀬は興味を持ったのか、笑顔で答えていく。

 

「へぇー、そうなんだー、すごいねー」

 

紫原はそれでも思い出せず、菓子を食べている。

 

「お前が……なるほど、なかなかやりそうだな」

 

火神は、新たなるライバルの出現に笑顔を浮かべる。

 

「謝ることはないさ。ただの挨拶だ」

 

赤司は紳士な態度で対応する。

 

「…俺達のいない帝光中に勝ったくらいでいい気になってんじゃねぇぞ」

 

青峰だけが、軽く不快感を露にし、2人に歩み寄っていく。

 

「俺達に勝つ勝たないの話は、その実力差を埋めてから言えよ」

 

「「っ!?」」

 

2人の目の前までやってきた青峰が、凄みながら言い放つ。その、青峰が放つ威圧感に…。

 

「(これがキセキの世代のエースのプレッシャーかよ…、やべぇ、これはとんでもねぇわ!)」

 

「(…コートに立たずしてこのプレッシャー…、これが今の私と彼の差ですか…!)」

 

2人は、青峰の放つプレッシャーに圧倒されそうになるが、何とか踏ん張る。

 

空は少し引き攣ってはいるものの、不敵な笑みを変えず…大地は冷や汗を流すものの、表情を変えず、目を逸らさずに対峙する。

 

空と大地の登場に、その場の空気が変わる。そこへ、更なる風がやってきた。

 

「…おっ、ここにいたか」

 

そこへ、1人の男がやってくる。

 

『っ!?』

 

その瞬間、キセキの世代の面々と、火神の表情が一転する。

 

「空、あんまりウロウロするなよ。監督カンカンだぞ?」

 

三杉がそこにやってきて、空を諫める。

 

「ん? ……へぇ」

 

その場に、キセキの世代と火神がいることに気付く。

 

「…」

 

三杉は、キセキの世代を1人1人を観察する。

 

「……なるほど、10年に1人の逸材。その言葉に偽りはないな」

 

「あん? あんた、誰だよ?」

 

青峰が、三杉に尋ねる。

 

「俺はこの2人の先輩さ。…ゆっくり話でもしたいが、あいにくと、監督が待っている。空、綾瀬、戻るぞ」

 

2人の肩に手を回し、その場を後にする。数歩歩いてからピタリと足を止める。

 

「全員と戦うことができないのが残念だ。それじゃ、次はコートで会おう」

 

三杉は、空と大地を連れてその場を後にしていった。

 

「…今の、誰ッスか?」

 

黄瀬は、冷や汗を流しながら周囲に尋ねる。

 

「初めて見る顔なのだよ」

 

緑間は、険しい表情をしながら答える。

 

「…あんな強烈な匂いは初めてだ。お前ら(キセキの世代)と会った時以上の衝撃だぜ…」

 

火神が、目を見開きながら言う。

 

「…」

 

紫原は、菓子を食べる手を止め、無言で三杉達の後を見つめている。

 

「いいね。今年の楽しみが増えたってことだな」

 

新たなる強敵の登場に、不敵に笑う青峰。

 

「…彼は…」

 

赤司は、何か思い出そうとしていた。

 

ライバル達との再開で騒がしくも盛り上がっていたキセキ達。

 

そこに現れた、次世代の風と、異国からの風。

 

2つの風を受けた昨年を騒がせたキセキ達。

 

今年、彼らは知る。

 

その、暴風雨の恐ろしさを…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

翌日、インターハイの試合が始まる。

 

 

『おぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

 

年々、バスケ人口と共に人気が上昇していき、そのレベルも、年々上昇していく。

 

観客席はファンに埋め尽くされ、大熱狂している。

 

彼らの目当てはもちろん…。

 

 

――バキャァァァァッ!!!

 

 

『きたぁぁぁーーーっ!!!』

 

海常の黄瀬のダンクが炸裂する。

 

キセキの世代の誕生により、バスケ人気を加速させていった。この会場にいる観客のほとんどが彼ら目当てといってもいい。

 

「らぁっ!」

 

 

――バキャァァァァッ!!!

 

 

「すげぇ! レーンアップだ!」

 

火神がフリースローラインから跳躍し、ワンハンドダンクをぶちかます。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

「なんであそこから入るんだよ!?」

 

緑間がセンターラインの後ろからシュートを放ち、その放ったボールがリングを潜るのを待たず背を向け、ボールはリングを潜った。

 

他者を圧倒する活躍を見せるキセキの世代と火神。そのパフォーマンスに、観客は大いに盛り上がる。

 

海常、誠凛、秀徳が、番狂わせの気配などみじんも見せず、1回戦を突破していく。

 

「今年にインハイはどこが優勝すんのかな?」

 

「桐皇だろ! 青峰止められる奴なんていないって!」

 

「洛山だろ。赤司はもちろん、あそこには無冠の五将が3人もいるんだぜ。総合力が違うよ」

 

「いや、陽泉だな。バスケはやっぱり、インサイドがものを言う。紫原に加え、長身選手が揃ってる陽泉が優勝だ」

 

「秀徳だって。コートのどこからでも打てるシューターの緑間いるんだぜ?」

 

「おいおい、海常を忘れんなよ。あそこには、キセキの世代の技をコピーできる黄瀬がいるんだぜ? 止められないって」

 

「誠凛も充分可能性あるぜ。去年のウィンターカップの優勝メンバーがほとんど残ってるんだ。また奇跡を起こしてくれるって!」

 

観客達は、各々今年のインターハイの優勝校を予想している。

 

知らぬ者同士が大いに盛り上がっている。

 

 

その頃、花月高校もまた、目の前に迫る1回戦に向けて準備をしていた。

 

「…盛り上がってますね」

 

「キセキの世代の皆さまは派手ですからね」

 

空と大地が準備をしながら会話していく。

 

「そういや、三杉さんと堀田さん、今日スタメンですけど、今日も第1Qで下がるんですか?」

 

「いや、今日はフル出場するよ。インターハイのコートの感触を確かめておきたいからね」

 

柔軟をしながら三杉が答えていく。堀田は椅子に腰かけ、腕を組んで目を瞑りながら時間を待っている。

 

「何より…」

 

柔軟を終え、ヘアバンドを額へと付ける。

 

「会場のオーディエンスに理解してもらう必要がある。今年、この大会を優勝するのがどこであるかを…」

 

現段階で、花月高校の注目度は高くない。三杉と堀田は県予選でほとんど出場していなかったため、認知度は低い。むしろ、空と大地を始め、昨年の全中ベスト5の内、4人が在籍していることでの認知度の方が高い。

 

注目度は、せいぜいダークホースという程度だ。

 

その言葉を聞き、三杉はニコリと笑い、空も大地も笑う。堀田は静かに目を開ける。

 

「さあ、初戦だ。…いこうか」

 

 

『おう(はい)!!!』

 

 

花月の選手達は、コートへと向かっていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

観客席…。

 

「最終戦だってのに、まだ客がこんなにいんのか…」

 

そこには、試合を無事、完勝で終えた誠凛の選手達が来ていた。

 

バスケ人気の上昇の影響か、目当ての試合だけではなく、すべての試合を観戦していく観客も多い。

 

「(…さっきの奴はまだか? 確か、花月だったか…)」

 

火神は、コート中をくまなく探している。

 

「タイガ、ここにいたのか」

 

そこに、火神に話しかける人物が現れる。

 

「タツヤ! 来てたのか」

 

現れたのは、火神の兄貴分であり、ライバルでもある、陽泉高校現主将、氷室辰也だ。

 

本日、陽泉はシードのため、試合はない。洛山、桐皇も同様に試合はない。

 

「ああ。タイガやキセキの世代の試合をこの目で見ておきたいからね」

 

そう言って、空いていた火神の隣の席に座る。

 

「調子が良さそうで何よりだ」

 

「たりめえだ。去年は出られなかったからな。冬と続けて優勝してやるつもりだ」

 

気合に満ちた表情で語る。

 

「お互い、順調に勝ち上がれば戦うのは決勝だ。そこで、去年の借りを返させてもらう」

 

「ああ。決勝で会おうぜ!」

 

互いに、誓いを立てる。

 

「陽泉の相手はどこなんだ?」

 

「ああ、それだったら次の――」

 

「見つけた。ここにいたか、タイガ、タツヤ」

 

新たに2人の前に人影が現れる。

 

「「アレックス!」」

 

「よう」

 

そこに、2人のバスケの師匠である、金髪の異国の女性、アレクサンドラ=ガルシア、通称アレックスが現れる。

 

「アレックス、また来たのか」

 

「まあな。愛弟子の試合だし、何より、日本の試合はもはや、アメリカと肩を並べるほど面白いからな」

 

アレックスはにこやかな笑顔で話していく。

 

「あと…」

 

ここで、アレックスの表情が引き締まる。

 

「お前達に教えておいた方がいいこともあったからな」

 

「アレックス?」

 

「いったい、何のことだよ?」

 

「それは……いや、説明するより、実際に見た方が早い。あそこだ。あいつらをよく見ておけ」

 

アレックスが、コートの一角を指差す。そこから現れたのは、本日の最終試合の高校の選手達が現れた。

 

「っ! あいつ、さっきの…!」

 

現れた高校の一方は花月高校。そこにいる三杉を火神が見つける。

 

「っ! そんな、彼がどうして!?」

 

氷室の方は、席から立ちあがり、驚愕の声を上げた。

 

「タツヤ?」

 

「あの4番と5番は……アレックス」

 

「ああ。お前も知ってのとおりだ」

 

氷室とアレックスのみが理解しているかのように話していく。

 

「みんな、花月高校の試合をよく見ておきなさい。片時も目を離すんじゃないわよ」

 

リコが注目を集めると、誠凛のメンバーに告げる。

 

「花月高校は、去年の全中のベスト5の内の4人が集まったところだったな」

 

「中でも、MVPと得点王を獲得した神城と綾瀬がどこまでやれるか、か」

 

日向と伊月がコートに視線を向けながら言う。

 

「あの2人だけなら、そこまで警戒しなかったんだけどね…」

 

「監督?」

 

ボソリと呟くリコに気付いた小金井が声をかけるが、リコはコートから目を離さなかった。

 

スタメンに選ばれた空、大地、天野。そして、三杉と堀田がコート中央に向かっていく。

 

そして、試合が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「うそ…だろ…」

 

「…こんなことが…」

 

試合は、第4Q残り2分まで進んだ。

 

当初は盛大に沸いていた会場も、不気味な静けさを醸し出していた。

 

 

第4Q、残り1分。

 

花月 137

令聖   0

 

 

圧倒的な点差を付け、試合を支配している花月高校。

 

『ハァ…ハァ…』

 

対する、令聖学園の選手達は、猛者揃いの花月高校相手に手も足も出ず、戦意を失いかけている。

 

「…令聖高校って、弱いの?」

 

小金井がポツリと呟くように囁く。

 

「全国まできた高校が弱いわけないだろ。うちの火神やキセキの世代のような目立ったエースはいないが、穴はない、バランスの取れたチームだよ」

 

日向が冷や汗を流しながら答える。

 

「…正邦が、インハイ前に花月と練習試合をしたのよ」

 

ゴクリと唾を飲み、リコの話に耳を傾ける。

 

「結果は、107対21で、正邦が惨敗したわ」

 

「っ!? 嘘だろ!?」

 

その事実に日向が驚愕の声を上げる。

 

誠凛は、予選大会の、ブロックトーナメント決勝で、決勝リーグ進出をかけて試合をしていた。

 

正邦の硬い守備に手こずり、試合終了スコアは74-69。

 

「はっきり言って、花月高校は化け物揃いよ。今年のインハイの優勝候補は、花月高校であることは間違いないわ」

 

『…』

 

その言葉に、誠凛の選手達は絶句した。

 

 

「おいおい! なんだよあいつら、化け物かよ!」

 

秀徳高校、2年生の司令塔、高尾が目を見開きながら驚愕の声を上げる。

 

「…っ!」

 

緑間は、歯をギュッときつく噛んだ。

 

 

「なんなんスか…、あんな奴らがまだいたんスか…」

 

黄瀬が、観客席最上段、手摺をきつく握りながら驚愕の声を上げる。

 

 

「…」

 

紫原敦。氷室とは別の場所から試合を観戦していた。

 

「…花月高校」

 

表情を変えず、ボソリと呟いた。

 

 

「…クククッ! いいじゃねぇか! 勝ちあがりゃ、あいつらとやれると考えると、俄然やる気が出てくるぜ!」

 

青峰は、強者の襲来に興奮を隠せず、ただただ笑っていた。

 

 

「なんなのよ、化け物じゃない!」

 

洛山、実渕が声を上げる。

 

「なにあいつら! 俺、知らねぇんだけど!」

 

同じく、葉山も声を上げる。

 

「おいおい、ダークホースどころじゃねぇぞ」

 

根武屋も、先の2人と同様のリアクションだ。

 

「…やはり、彼は…いや、彼らはそうだったか」

 

「征ちゃん、知ってるの?」

 

「あの4番と5番。三杉誠也と堀田健のことは知っている。帝光中時代、1本のビデオに映っていた。俺が入学する1年前、帝光中が全中前の最後の調整相手に花月高校付属中学と練習試合を行った」

 

「「「…」」」

 

五将の3人は無言で赤司の言葉に耳を傾ける。

 

「前半戦までで、帝光中がダブルスコア以上点差を付けてリードしていた。後半戦からあの2人が出てきて、結果、点差はひっくり返されて逆転負けを喫した」

 

「マジかよ!」

 

葉山は再度驚愕する。

 

キセキの世代加入前の帝光中とて、全国屈指の実力を誇っていた。その帝光中を相手に、ダブルスコア以上のビハインドを背負って出場して逆転勝利。驚かないわけがない。

 

「…けど、おかしいわね。征ちゃん達が入学前の全中。私も試合に出てたけど、そんなことができる実力者なんていなかったわよ?」

 

「ああ。先輩達も、彼らを1番に警戒していたらしいが、彼らの姿は全中にはなかったらしい」

 

実渕の疑問に、赤司は伝聞情報を伝える。

 

「…彼らの存在は驚異だ。だが、俺達はその前に倒さなければならない相手が数多くいる。皆、そのことを忘れるな」

 

洛山が花月と戦うのはずっと先。そのことを口にし、赤司はコートで行われている試合に集中した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「くそっ! 1本! せめて1本決めるぞ!」

 

令聖の選手達は、せめて1本、凍り付いた令聖のスコアを変えるため、最後の気力を振り絞る。

 

軽快にパスを回していく令聖。10秒後、フリーの位置でボールを受け取った令聖スモールフォワードの選手がシュート態勢に入る。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

そのシュートは堀田にブロックされる。

 

「ぐっ! もう1回だ!」

 

ルーズボールを拾った令聖パワーフォワードがすかさずシュート態勢に入る。

 

堀田がブロックに向かう。

 

「大丈夫です、任してください!」

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「何だと!」

 

堀田を静止し、空がブロックに飛び、阻止する。

 

10㎝近い身長差をものともしないブロックに、観客はおろか、令聖選手も驚愕する。

 

「ナイス空坊!」

 

天野がボールを拾い、三杉へとボールを預ける。

 

「速攻!」

 

三杉がドリブルで進軍を開始する。

 

「くそっ! 行かせない!」

 

相手フロントコートの、スリーポイントライン、わずか外側まで進むと、相手シューティングガードが立ちはだかる。

 

「…」

 

三杉が相手の左側から仕掛ける。相手も反応し、左側をふさぎにかかる。だが…。

 

「っ!?」

 

だが、三杉は右側から仕掛けていた。相手はフェイクにかかってしまう。

 

「この…!」

 

ヘルプがやってくると、シュート態勢に入る。

 

当然、相手はブロックに飛ぶのだが…。

 

「っ!?」

 

三杉はシュート態勢に入ってはおらず、そのまま相手の脇を抜けていく。先ほどと同じく、フェイクにかかってしまう。

 

 

――スッ…。

 

 

その直後、三杉は放るようにリング付近にボールを投げる。そこに駆け込んでくる影、それは大地。

 

大地がリング付近で跳躍し、空中でボールを掴む。

 

「ま、まさか…!」

 

これから起こること。観客はもうすでに予想が付いていた。

 

 

――バキャァァァァッ!!!

 

 

そのままリングに叩きつける。

 

『アリウープだーーーっ!!!』

 

大地にアリウープに、観客のボルテージが上がる。

 

それと同時に…。

 

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

 

試合終了のブザーが鳴る。

 

 

試合終了

 

花月 141

令聖   0

 

 

花月の圧倒的勝利で試合が終了する。

 

0点は1回戦全ての試合の最低得点はもちろんのこと、総得点141は、1回戦の最多得点。

 

コート上では、空が大地に抱き着き、三杉と堀田がハイタッチをしている。

 

花月高校、1回戦、圧勝…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「つえぇ…」

 

火神の口から出た感想はその一言だった。

 

「あの5番、堀田だったか。パワーといい守備範囲といい、紫原並みだ」

 

この試合、0点に抑えた1番の原動力は堀田の手によるものだ。

 

「…だが、あの4番、三杉のバスケスタイル。心なしか、タツヤに似ている気がするな」

 

「…似てて当然さ。俺のこのスタイルは、彼を参考にしたんだからな」

 

「マジかよ!?」

 

その事実に、火神は驚愕する。

 

「あいつらはアメリカでも有名だ。あいつらの名が知れ渡ったのは、タイガがアメリカを離れて少しした後だから知らないだろうが、あの2人、三杉と堀田は、日本人でありながらアメリカの手練れ達を圧倒していったことで名が上がった」

 

アレックスが詳細を説明していく。

 

「その姿に憧れた俺は、彼の、三杉のスタイルを手に入れるべく、アレックスと一緒にそのスタイル獲得を目指した。結果、あれに近いものを身に着けることができた」

 

「…」

 

「覚えておけ、タイガ。この大会で優勝を狙うなら、あいつらは、1番の障害になる」

 

「…ああ、みたいだな」

 

「そしてタツヤ。あれがお前の――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――最初の相手だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インターハイ2日目、1回戦の全ての試合を終わり、翌日の、2回戦へと進むのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




文章が長いわりに、内容が薄くてすみませんm(_ _)m

インハイの仕組みがいまいち不透明なため、矛盾が生じるかと思います。あったらご指摘願います。

ついに公開、三杉のスタイル。氷室に近いスタイルなんですが…詳細は後日…。

感想、アドバイスお待ちしています。

それではまた!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。