黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

今回は花月高校の試合……の前に、1戦挟みたいと思います。

それではどうぞ!


第34Q~注目のカード~

 

 

インターハイ3日目…。

 

初戦の興奮冷めやらぬまま、2回戦が始まる。そして、シード校も始動する。

 

本日、注目のカードが2つ…。

 

 

誠凛高校 × 洛山高校

 

花月高校 × 陽泉高校

 

 

1つは、昨年のウィンターカップで、激闘のファイナル戦を繰り広げた誠凛と洛山の試合。

 

観客も、あの激闘が再び見られることに興奮が隠せない。

 

もう1つのカード…。

 

方や、絶対防御(イージスの盾)と称されるほどのディフェンス力を誇り、県予選の試合のほとんどを失点0で抑えた、全国屈指の強豪校。

 

方や、昨日の行われた1回戦、会場を震撼させるほどの試合をした花月高校。

 

初戦のインパクトは充分で、花月高校の、特に三杉と堀田に関しては、『もしかして、キセキの世代クラスなのでは?』と、口にする者もいる。

 

会場中が試合開始前から盛り上がる中、この日最初の目玉のカード、誠凛対洛山の試合が始まろうとしている。

 

『…』

 

緊張感に包まれる誠凛ベンチ。試合開始直前、誰もが無言で準備を整えている。

 

「作戦は昨日説明したとおりよ。皆、頭に入っているわね?」

 

リコがベンチに座る選手達の前に立ち、確認をする。

 

「お互い、去年の主力が1人ずついない。こっちは木吉が、向こうは黛が…」

 

「向こうの新戦力はあの11番、四条か…」

 

日向と伊月が洛山ベンチを見ながら会話する。

 

誠凛が注目するのは、黛に変わってスタメンに選ばれた11番の選手、四条大智。

 

「彼は知ってます」

 

黒子がその選手に付いて知っていることを口にする。

 

「11番の選手、四条君は、僕と同じ、帝光中出身です。彼は、1軍の選手でした」

 

「ということは、結構な実力者ということか?」

 

日向が聞き返す。

 

「はい。帝光中にはキセキの世代がいたので、試合に出れる機会は少なかったのですが、実力はかなりのものでした」

 

「…なら、少なくとも、去年の黛みたいな変則的な選手ではないってことか?」

 

「それは間違いありません」

 

火神の質問に、黒子は断言する。

 

「赤司君はもちろん、無冠の五将の3人も去年の敗北を糧にかなり伸びているはずよ。けど、絶対に受け身になっちゃ駄目。最初から突き放しにいくつもりでかかりなさい!」

 

『おう!!!』

 

気合充分に返事をする。

 

「よっしゃ行くぞぉっ!!!」

 

日向の一喝を皮切りに、スタメンの選手達がコートへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

対する洛山…。

 

相手は昨年、敗北を喫した誠凛高校。だが、洛山の選手達は特に入れ込むわけでも熱くなるでもなく、淡々と準備を整えている。

 

「皆、準備は出来ているな?」

 

赤司がベンチに座る選手達の前に立つ。

 

「相手は誠凛高校。昨年の冬に負けた相手。当然、思うところがある相手だ」

 

洛山の選手達の目付きが鋭くなる。

 

「だが、俺達は昨年とは違う。俺達は、再び王を名乗るために今日まで、昨年の敗北を糧にここまで積み上げてきた」

 

『…』

 

「今年の俺達は挑戦者だ。それを忘れるな。昨年の借りはここで返す。…今年こそ知らしめるぞ。最強は俺達だと。…行くぞ」

 

『おう!!!』

 

洛山のスタメン達は立ち上がり、コートへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

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・・・・

 

 

両校の選手達がコート中央、センターサークル内にやってくる。

 

『待ってましたーーーっ!!!』

 

選手の入場により、観客が盛大に沸きあがる。

 

 

誠凛高校スターティングメンバー

 

4番SG:日向順平   179㎝

 

5番PG:伊月 俊   174㎝

 

7番 C:水戸部凛之助 187㎝

 

9番PF:火神大我   191㎝

 

11番SF:池永良雄   191㎝

 

 

洛山高校スターティングメンバー

 

4番PG:赤司征十郎 173㎝

 

5番SG:実渕玲央  190㎝

 

6番SF:葉山小太郎 181㎝

 

7番 C:根武谷永吉 192㎝

 

11番PF:四条大智  191㎝

 

 

「黒子はベンチスタートか…」

 

赤司がボソリと呟く。

 

誠凛は、キセキの世代の幻の6人目(シックスマン)である黒子テツヤをスタメンから外す。

 

これは、余裕や驕りでは断じてなく、理由がある。

 

1つは、黒子のミスディレクションは1試合丸々もたない。試合に出れば出るほど効力を失う。2度目の対戦となればそれはさらに顕著に表れる。

 

ましてや、昨年の洛山には、黛という黒子テツヤと同種の幻の6人目(シックスマン)がいたことにより、ある程度耐性が付いており、効力はさらに短い。

 

そのため、早々に効力を失わせないための処置。これが1つ。もう1つは…。

 

「(洛山のバスケは横綱相撲。序盤から勝負をかけることはしない。1度負けてる相手なら尚更だわ)」

 

第1Qだけなら、黒子がおらずとも、対等に渡り合うことは可能。これがリコが出した結論だ。

 

「言っとくが池永。勝手なプレーばかりしたらすぐにベンチに下げる。それを忘れるな」

 

「わーってるよ。赤司先輩の恐ろしさは俺だってよく知ってんだよ」

 

日向の忠告を、池永は面倒くさそうに返事をする。

 

県予選で池永が試合にあまり出られなかった。その理由は、チームプレーを無視してスタンドプレーばかり行ったからだ。チームプレーを重視する誠凛にとって、池永は異物も同然だった。

 

今回の試合、戦力的なことを考え、悩んだ挙句、池永を使うことを決断した。

 

整列が終わり、試合が始まろうとしている。

 

ジャンパーに、誠凛は火神、洛山は根武谷が立つ。

 

 

――ティップオフ!!!

 

 

「「っ!」」

 

審判がボールを放るのと同時にジャンパーが飛ぶ。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「ぬおっ!」

 

ジャンプボールを制したのは火神。

 

「ナイス、火神!」

 

弾かれたボールを日向が拾う。

 

「伊月!」

 

日向が前方に大きくボールを放る。ティップオフと同時に相手ゴールへと走っていた伊月にボールが渡る。

 

そのままドリブルで持ち込み、レイアップの態勢に入る。

 

「やらせないわ」

 

だが、伊月の前方を、ディフェンスに戻っていた実渕が阻む。

 

 

――スッ…。

 

 

「っ!?」

 

伊月は、焦ることなく、想定していたかのようにボールを真上に放る。実渕の視線を前に移すと、そこには…。

 

 

――ダンッ!!!

 

 

空中に向かって大きく跳躍した火神の姿が。

 

ジャンプボールと同時にダッシュで相手ゴールへと走り込み、フリースローラインから跳躍し、伊月が放ったボールを空中で掴み取った。

 

『ま、まさか!』

 

観客が期待の眼差しを向ける。

 

「させるか!」

 

「調子に乗んな!」

 

根武谷と四条が火神の前方に現れる。だが…。

 

「「っ!?」」

 

火神の高さ、滞空時間には及ばず…。

 

「らぁっ!」

 

 

 

――バキャァァァァッ!!!

 

 

 

リングにボールが叩きこまれる。

 

着地する火神。静まり返る会場。

 

「お…」

 

『おぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

息を吹き返したかのように大歓声が沸きあがった。

 

『レーンアップ・アリウープだーーーっ!!!』

 

試合開始早々の超ビックプレー。会場を震え上がらせるには充分だった。

 

「よし! 奇襲成功!」

 

ベンチにて拳を握り、ガッツポーズをするリコ。

 

まだ完全に試合に入り切れていない試合開始早々の奇襲。

 

「ちぃっ!」

 

開始早々に大技を1発もらったことにより、表情を多少険しくする洛山選手。

 

前日に試合をしていた誠凛と違い、洛山はシード校のため、今日がインターハイ初の試合。入念に準備をしていたつもりであっても、やはり、完全には入り切れていなかった。

 

それを見抜いたリコはまさにその最初を狙い打った。しかも、昨年のウィンターカップの優勝を決定付けた時と近いシチュエーションの火神のアリウープ。昨年の敗北を思い起こされる1発。動揺を誘うのと同時に流れを掴み取る狙いもある。

 

「慌てるな」

 

少なからず動揺をしていた洛山選手の中で一切動じず、表情1つ変えずに味方を落ち着かせる赤司。

 

「開始早々仕掛けてくるのは想定の範囲内だ。慌てることはない。1本、きっちり返すぞ」

 

赤司の言葉に、落ち着きを取り戻し、無言で頷く。

 

リスタート。洛山の攻撃が始まる。

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

赤司がゆっくりとフロントコートにボールを進めていく。マークするのは伊月。

 

今や全国区の選手である伊月のディフェンス。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

チェンジオブペースから一気にぺネトレイト。伊月は抜き去られる。

 

「っ!」

 

だが、伊月の真骨頂はここから。抜き去った赤司に背を向けたままバックチップを狙う伊月の必殺技。

 

 

――鷲の鉤爪(イーグルスピア)!!!

 

 

鷲の鉤爪が赤司を襲う。

 

赤司、それを右から左への切り替えしてかわし、パスを捌く。ボールはスリーポイントラインの外で立っていた実渕へと渡る。

 

「打たせねぇぞ!」

 

日向がすかさずチェック。

 

三種のシュートを持つ実渕。昨年の経験を基に、警戒をする日向。

 

実渕、スリーにはいかずに中に展開していた四条にボールを渡す。四条がそのままゴール下まで切り込み、シュートに持ち込む。

 

「やらさねぇよ!」

 

池永がブロックに現れる。四条、動じず、根武谷にボールを渡す。

 

「おっしゃぁっ!」

 

 

――バス!!!

 

 

根武谷が落ち着いてゴールを沈める。

 

『おぉ! 洛山がきっちり1本返したぞ!』

 

奇襲を仕掛けて先制点を先取した誠凛。傾きかけた流れを淡々と戻す洛山。

 

共に得点は2点ずつ。試合は加速していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「誠凛はいきなり派手にいったな~」

 

観客席で試合を観戦する花月高校の面々。空がポツリと感想を述べる。

 

「洛山も、それに動じることなく、きっちり返しましたね」

 

派手な誠凛に目を向ける空に対し、大地は確実に返す洛山に注目した。

 

「洛山…というよりも、赤司か。動じるでもなく、やり返すでもない。自身のペースで、きっちり仲間を使って1本返す。優秀な選手だな」

 

一連のプレーを見ていた三杉が赤司を称賛する。

 

「空も、その辺は見習ってほしいかな」

 

「クス、そうですね。あなたはやられるとすぐさまやり返そうとしますからね」

 

「うっ…」

 

三杉の指摘に、大地はクスリと笑い、図星を突かれた空は言葉を詰まらせる。

 

「奇襲を仕掛けて強引に流れを呼び込もうとした誠凛。あくまでも自分のペースを崩さない洛山。恐らく、序盤は試合は動かないだろうな」

 

試合を観戦しながら堀田が冷静に分析する。

 

「同意見だ。まずはお互い様子見。誠凛は最初にジャブを1発出した程度。動くのは第2Q…いや、第3Qかな?」

 

堀田の意見に賛同した三杉が具体的な動きの時期を指す。

 

「お前はこの試合、どっちが勝つと踏んでいる?」

 

堀田が視線だけを三杉に向けて尋ねる。

 

「…そうだな。正直、誠凛はどうにも読みづらいチームだから、一概には言えないが、俺の予想は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

花月高校が集まる観客席の1番端で試合を観戦する上杉。

 

腕を組みながら試合を観戦している。

 

「よう、順調そうじゃねぇか」

 

上杉の横の席を、白いスーツとサングラスをかけた1人の男が座る。

 

「…トラか」

 

横に視線を向けることなく返事をする上杉。

 

横の席に座ったのは、現在、誠凛のベンチで試合の指揮を執っている監督、相田リコの父親、相田景虎だ。

 

「ハッハッハッ! 久しぶりじゃねえか、ゴウ!」

 

景虎はサングラスを外すと、上杉の肩に手を回し、再会を喜んだ。

 

「相変わらずやかましい奴だ」

 

若干、うっとうしげに溜息を付く上杉。

 

「お前が指揮する試合が見れて嬉しいぜ」

 

「何が指揮だ。俺は何も指揮をしていないぞ」

 

「ま、だろうな。あんだけのメンバーに恵まれればな」

 

景虎は肩に回した腕を外し、試合に視線を向けた。

 

「…お前の娘、監督が板に付いてきたようだな。指揮の執り方が昔のお前に瓜二つだ」

 

「だろだろ! 俺のリコちゃんは大したもんだろ!」

 

豪快に笑いながら愛娘を自慢する。

 

「…ふん」

 

鼻を鳴らしながら自慢話を聞き流す。

 

「にしても、2回戦で洛山とはな」

 

「…ああ、去年はかろうじて勝ったが、それでも分が悪い」

 

ここで2人の表情が変わる。

 

「…お前はこの試合どう見る?」

 

「……7-3で洛山だ」

 

上杉は少し考えてから分析結果を伝える。

 

「7-3か」

 

「不満か? これでも、誠凛贔屓のつもりだったんだがな」

 

「フッ、妥当な分析だ」

 

フッと笑みを浮かべる。

 

「あてにするなよ。俺の予想は当たらないからな。去年も、決勝で誠凛が大差で負けると踏んでいたからな」

 

「いやいい。あくまでも予想だ。目くじら立てることの程じゃねぇさ」

 

景虎は膝を組んで、頬杖をつきながら答える。

 

「試合の入り方を重視するエージの性格を考えて、洛山は序盤には動かない。誠凛も、黒子テツヤを温存していることから序盤は様子見。だが、まだ、表面化はしていないが、試合の勝敗を左右するものは少しずつ出ている」

 

「…だな」

 

「…見させてもらうさ。試合がどのような結末を迎えるかを、な」

 

2人は試合に集中した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

試合は進行していく。

 

この日絶好調の火神が得点を量産し、同じく絶好調の日向が得意のスリーで外から攻めていく。

 

第2Qに入り、5分を経過したところで黒子テツヤを投入。高速のパスワークに変化が付き、攻守共に安定していく。

 

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

 

 

第2Qが終了し、試合の半分を消化する。

 

 

第2Q終了

 

誠凛 33

洛山 45

 

 

「…誠凛が調子良さそうに見えたけど、試合の半分が終わってみれば、洛山が二桁リードか…」

 

第2Qが終わり、誠凛、洛山の選手達がコートから退くのを眺めながら空がボソリと呟く。

 

「確かに、誠凛は絶好調と言える試合運びだった。だが、洛山はミスがなかった」

 

「ミスがない?」

 

「ああ。見事な試合運びだ。点数を付けるなら90点以上だ。全国屈指の強豪と呼ばれるのも頷ける」

 

高得点を付ける三杉。

 

「絶好調の誠凛、ノーミスの洛山ですか…」

 

大地も、その意見に同調するように頷く。

 

「この点差は、ひとえに今の誠凛と洛山の実力差だ。洛山は特に動きを見せたわけじゃない。淡々と自分達のバスケをしていただけ」

 

「誠凛は、切り札の1つである黒子テツヤを切った。対して洛山は手持ちの手札を一切伏せたままだ。このままでは差は開くばかりだな」

 

三杉と堀田が次々と感想を述べていく。

 

「…誠凛、勝てますかね?」

 

空が恐る恐る尋ねる。誠凛にはかつてのチームメイトであり、中学最後の年に全中大会へと誘ってくれた恩人、田仲がいる。そのためか、誠凛贔屓で応援している。

 

「…勝負の神様というのは、気まぐれで、どんな筋書きを用意するかはわからない。だが、最後まで諦めなかった奴に驚くようなドラマを用意することは多々ある。まだ折り返しだ。結末を語るにはまだ早いさ」

 

あえて多くは語らず、最後まで試合を見守るように言い含める三杉。

 

「…」

 

空は祈るようにコートを見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

誠凛控室…。

 

各々、体力回復に努めている。

 

「…」

 

リコは後半戦から戦略を練る。

 

本音を言えば、もっと点差を詰めておきたかった。だが、想定はしていたので動揺は少ない。

 

「…水戸部君、交代よ。第3Q頭からは田仲君、出番よ」

 

「…(コクリ)」

 

「は、はい!」

 

水戸部は無言で頷き、呼ばれた田仲は返事をし、準備を始める。

 

これまでの試合、1番負担が大きかったのは水戸部だった。技巧派の選手である水戸部が、超パワー型の選手である根武谷のマッチアップするには分が悪い。

 

「ディフェンスを変えるわ。赤司君に伊月君。実渕君には日向君。後はゾーンでインサイドを固めて」

 

「トライアングルツーか…」

 

後半からのディフェンスに一同が頷く。

 

「(…後は、黒子君ね。1度ここで下げたいのだけど…)」

 

やはり、黒子のミスディレクションの効力が限りなく短い。2度目の対戦であり、黛の慣れがあるため、第2Q途中から出場したのにも関わらず、黒子の姿が捉えかかっている。

 

影の薄さが無くなる前に1度下げたい、だが、ここで下げてしまっては点差は詰まらない。

 

思わずリコの頭に、木吉鉄平がいたら…と、よぎる。だが、それは叶わない。現段階に手元にある手札で戦うしかない。

 

「後半、ある程度の失点は仕方ないわ。けど、それ以上に点を取りにいくわよ。外の日向君、中からは火神君、ガンガン行きなさい」

 

「うす!」

 

「後半からは点の取り合いを挑むわよ。みんな、ガンガン走ってガンガン打っていきなさい!」

 

「はい(おう)!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

洛山控室…。

 

12点リードで前半を終えた洛山。

 

しかし、そのことで慢心する者はいない。

 

「前半戦はプラン通りに終わることができたな」

 

「はい。ここまでは想定通りです」

 

赤司と監督である白金が話し合う。

 

「皆、注目してくれ」

 

赤司が選手達に問いかけると、全員が赤司に視線を向ける。

 

「ここまでは想定通り、皆、よくやっている。現在、12点もの点差がある。だが…、それは一旦忘れろ」

 

『…』

 

「この程度の点差など、誠凛相手ではあってないようなものだ。勝利を掴むためには、もっと引き離す必要がある」

 

『…』

 

「実渕、葉山、根武谷。お前達も積極的に仕掛けろ。根武谷、木吉がいない以上、お前のところが1番のミスマッチだ。特に積極的にいけ」

 

「おう! 任せろ!」

 

根武谷が腕の筋肉を高ぶらせながら返事をする。

 

「誠凛の心を折ることは不可能だ。それは去年からの経験で理解しているはずだ。後半は、心を折るのではなく、…息の根を止めにいく」

 

『はい(おう)(ええ)!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

誠凛、洛山の選手達がコートに戻ってくる。

 

「おっ! 田仲が出るみたいだな」

 

コートへと向かっていった田仲を目の当たりにし、前のめりになる空。

 

第3Q、後半戦が開始される。

 

「行くぞぉっ!!!」

 

日向の掛け声と同時に相手フロントコートへ走る誠凛。得意のラン&ガンを仕掛ける。

 

「誠凛は点を取りに来た」

 

「当然だな。点差もある。守りに入って防ぎきれる相手ではない。なら、多少のリスクは覚悟で点を取るしかない」

 

誠凛は高速でパスを回しながらチャンスを窺う。

 

洛山、慌てず、確実にマークに付き、シュートチャンスを与えない。

 

「(…やはり、簡単には打たせてもらえないか。…なら!)」

 

ボールを受け取った伊月は、鷲の目(イーグル・アイ)でコート全体を見渡し、ビハインドバックパスを出す。

 

一瞬、誰もいないところにパスをし、パスミスか? とも思われたが、パスを出した先には黒子テツヤの姿が現れる。

 

「っ!」

 

黒子、両足のスタンスを広げ、右手を引き、指だけを曲げ、掌底の構えをする。。

 

「っ!? これは…!」

 

洛山選手、瞬時に黒子が何をするかを察知し、火神のマークを強める。

 

「甘いわよ!」

 

それを見てリコが笑みを浮かべる。

 

黒子、ボールに作った掌底を叩きつける。

 

 

――バァァァァン!!!

 

 

「加速するパス(イグナイトパス)廻!」

 

螺旋の回転が加えられた高速パスが放たれる。

 

 

――バチィン!!!

 

 

「いってぇっ!」

 

スリーポイントラインの外側で立っていた日向にボールが渡る。

 

ボールを受け取った日向はすぐさまスリーを放つ。マークをしていた実渕は火神の警戒をするあまりに日向のマークを甘くしてしまい、ブロックに行けない。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

そのシュートは綺麗な放物線を描きながらリング中央を潜った。

 

「おーし!」

 

スリーを決め、拳を握る。

 

日向、手をヒラヒラさせ、涙目でディフェンスに戻っていく。

 

「今の、イグナイトパス・廻」

 

「火神と木吉以外も取れるようになったか…」

 

実渕、根武谷がボソリと呟く。

 

「うちは冬からさらにフィジカルアップしているわよ。今では、条件次第ではあるけど、イグナイトパス・廻も取れるようになっているわよ」

 

昨年のウィンターカップの時点では火神と木吉しか取れなかったイグナイトパス・廻。今では、正面から、尚且つ両手で受けるという条件の下なら他の選手(現1年生と2年生以外)も取れるようになっている。

 

洛山、リスタート。

 

赤司がゆっくりとボールをフロントコートまで進めていく。

 

誠凛のディフェンスが変わる。

 

赤司には伊月が、外の実渕に日向がマークし、インサイドを火神、田仲、黒子がゾーンで展開し、トライアングルツーに変わる。

 

「…」

 

 

――ピッ!!!

 

 

赤司、スリーポイントライン手前から外に展開していた実渕に鋭いパスを出す。

 

ボールが渡ると、日向がガンガンプレッシャーをかけていく。

 

「あら、気合入ってるわね」

 

ボールをキープしながら日向に話しかける。

 

「お前を止めなきゃ話にならないんでな。絶対止めてやる!」

 

気合充分の日向。全神経を集中させてディフェンスに徹する。

 

「そう。これは一筋縄ではいかなそうね…」

 

実渕も、集中力を高めていく。

 

「(集中しろ! 重心の動きを見逃すな!)」

 

日向、実渕の三種のスリー、天、地、虚空を選別するべく、実渕の重心の動きに注視する。

 

「いいわ、出し惜しみは無しにするわ」

 

「?」

 

「もう知ってると思うけれど、私には天、地、虚空の三種のシュートがある。そして、今から見せるのが、新たに身に着けた4つ目のシュート…」

 

「っ!? 何だと…!」

 

実渕の発言に日向の表情が驚愕に染まる。

 

「見せてあげるわ。私の、あなた達に敗北してから身に着けた新たな武器――」

 

 

 

 

 

 

 

 

――下弦…。

 

 

 

 

 

 

 

洛山…、五将、動く……。

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




まずは誠凛対洛山の試合からです。

去年の主力が1人ずついない両校。

結末は…。

感想、アドバイスお待ちしています。

それではまた!
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