黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

少し試合が動きます!

それではどうぞ!


第37Q~均衡~

 

 

 

第1Q終了

 

花月 0

陽泉 0

 

 

両校共に激しい攻撃を仕掛けるも、得点をあげることは出来ず、スコアは試合開始から動かなかった。

 

 

――ざわ…ざわ…。

 

 

観客席はざわめき、どよめいている。

 

『0対0とか、初めて見た…』

 

『バスケでこんなこと起きるなんて…』

 

サッカーや野球等の球技なら珍しくもないことだが、頻繁に点が入るバスケにおいて、この現状は稀有…いや、まず起こりえない。

 

『誠凛は、あの陽泉によく勝ったな…』

 

『いや、今戦ったら分かんないぞ…』

 

観客は各々、感想を言い合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「0対0とかマジかよ!」

 

試合を観戦していた誠凛、日向が思わず驚愕の声を上げる。

 

「紫原のいる陽泉は分かるけど、まさか、花月まで0点に抑えるなんて…」

 

伊月も同様に驚いていた。

 

「…紫原君のディフェンスエリアの質が上がっているわね」

 

「質が上がっている? どういうことだ?」

 

リコの言葉を聞いて日向が尋ねる。

 

「知っていることだと思うけど、紫原君のディフェンスエリアはツーポイントエリア全域。けど、ツーポイントエリアの全ての攻撃を防げるわけじゃない。連続攻撃を仕掛けられれば、どこかで綻びが生じるわ」

 

『…』

 

「去年の紫原君は、ツーポイントエリア内のシュートは全て自分でブロックに向かっていたわ。けど、今年は自分が行かなくても問題ない、味方に任せてもいいシュートに限っては味方に任せているわ」

 

「なるほど、無理にブロックに行かないから、去年では間に合わなかったシュートに届くようになったってわけか…」

 

「もちろん、紫原君自身がフィジカルアップしたことも要因だけれどね」

 

リコが補足のように付け足す。

 

「しかし、花月の堀田も、紫原同様、ツーポイントエリアのシュートをほとんど迎撃している」

 

「パワーは凄そうだが、反射神経やスピードに関しては、紫原程ではないように見えるが…」

 

紫原がツーポイントエリア全域をカバー出来る要因は、長い手足の他に、その体格に見合わないスピードと反射神経によるものだ。

 

「それはひとえに、彼の読みと上手さによるものよ」

 

「上手さ? どういうこと?」

 

理解できない様子の小金井が聞き返す。

 

「彼がツーポイントエリア全域を迎撃できる理由は、ボールと選手の流れを読んで事前に最適なポジションに動いていること。これが1つ」

 

「ふむ…」

 

「後は、プレッシャーのかけ方が抜群に上手いのよ」

 

「プレッシャーのかけ方?」

 

「ツーポイントエリア内に進入してきた選手にプレッシャーをかけることで、攻撃を制限する。『ここでシュートを打ったらブロックされる!』って、思わず考えてしまうようなプレッシャーをかけることによって、相手を萎縮させ、思考状態に入り込ませて、その隙に迎撃態勢を整えているのよ」

 

リコは堀田のディフェンスの理由をこう語る。

 

「試合は、これから先どうなるか…」

 

日向がポツリと呟く。

 

「どっちも、何か仕掛けなければ点は入らない。第1Qでも、いくつか仕掛けてはいたが、どちらも実らなかった」

 

「…試合を動かすにはやはり――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「ちっくしょう! 点が取れねぇ!」

 

ベンチに座った空は苛立ちながら水分を取る。

 

「…想像以上の鉄壁です。絶対防御の名は伊達ではありませんね」

 

大地は、神妙な面持ちで陽泉の守備力を称える。

 

「あかんなー、こりゃ、緊急事態やわ」

 

天野は両手を頭の後ろで組みながら天井を見上げた。

 

「どうする? 陽泉は2-3ゾーンに加え、紫原が中央にいるからインサイドは鉄壁だ」

 

「なら、生嶋を投入するか? ゾーンにはスリーで攻めるのがセオリーだろ?」

 

馬場の分析に対し、真崎が生嶋投入を進言する。

 

「いや、それは悪手かもしれません」

 

その提案を、空が否定する。

 

「陽泉は、ガンガン前に出てプレッシャーをかけて、とにかくスリーを最優先でディフェンスしています。あれじゃ、外はきついですし、何より、生嶋には悪いが、テクニックはあっても身体能力と高さがない生嶋では、陽泉をディフェンスするのはきついかと」

 

「…言い返したいけど、これには同意かな」

 

悔し気な表情で肯定する生嶋。

 

陽泉は、ディフェンスエリアが広い紫原が後ろに控えているので、ガンガン前に出てスリーをとにかく打たせないようにガンガンチェックしてくる。

 

最悪、抜かれてしまっても、後ろには紫原がいるので失点するリスクは低い。

 

「ならどうすんだ。スタメンにはシューターはいないんだぞ。中から崩せないんじゃ…」

 

ここで、何人かが堀田をチラリと見る。

 

選手達の胸中では、堀田がオフェンスに参加すれば突破口が開ける。だから、オフェンス参加してほしい、と考えている。だが、それは口に出せない。

 

実際、花月のオフェンスは堀田を欠いた状況でのオフェンスであり、数的不利。これに堀田が加われば、不利もなくなり、何より、紫原を攻略できるかもしれない。だが、陽泉側も同じことを考えている。

 

今、堀田が出るということは、引きずり出されたのと同じであり、後手に回るのと同義なため、動けない。

 

やはり、流れを掴むためには、4人で紫原から点を奪う他ない。

 

「相手はゾーンやから、スクリーンも効果は薄いからのう…」

 

「ブロック覚悟で、しばらく中から攻め立てて、然る後、外から決めるのはどうでしょう?」

 

「それを成立させるには、中からの攻撃が驚異であると示さなければならない」

 

「だったら、連携を駆使しての連続攻撃ですね。俺と大地で何とか仕掛けてみます」

 

次々と意見を述べていく選手達。

 

「三杉さんはどうです? 相手は氷室ですが…」

 

「ああ、いい選手だ。テクニックは優れているし、頭も切れる。キセキの世代に匹敵する逸材だ」

 

第1Q、主に氷室の相手をしていた三杉は、氷室を絶賛する。

 

「そういや、氷室のプレースタイルって、三杉さんに似てますよね?」

 

「確かに、フェイクの精度やテクニックは三杉さんに通じるところがあります。あの方は去年の夏までアメリカにいた聞きますし、もしかして、どこかで?」

 

「いや、少なくとも、アメリカでは会ったことはないな。確かに似てはいるが、ただの真似ではなく、自分のスタイルとしている。俺とは別物だ」

 

三杉は、似てるが別物と断言する。

 

「とりあえず、ガンガン中から仕掛けて、相手のディフェンスを中に向けて、そこを一気に外から仕掛けるってことでいいですよね?」

 

「やむを得まい。とりあえず、その方向で行こう。ディフェンスは、こちらもスリーを要警戒。シューターの木下は特に警戒だ。綾瀬、ガンガンプレッシャーをかけろ。最悪は抜かれても構わないからな」

 

「分かりました」

 

「均衡を崩すためにも、紫原を引きずり出すぞ!」

 

『はい(おう)!!!』

 

花月は、中を意識させて外。ディフェンスはスリーを警戒。そして、紫原をどうにか引きずり出す、ということで纏まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

一方、陽泉ベンチ…。

 

「まさか、こんなことになるとはな…」

 

0点に抑えられ、動揺を隠せない陽泉選手達。

 

「(失点を0点に抑えたのは重畳だ。だが、こちらも0点に抑えられたのは予想外だ)」

 

監督である荒木も動揺していた。

 

「花月側も、こちらと同じ、スリーを警戒している。唯一、堀田の射程外から打てる木下は封殺されていると同じだ…」

 

「ならば、中から攻めるしかあるまい。…氷室」

 

「はい」

 

荒木が名を呼び、氷室が返事をする。

 

「中へ切り込め。こちらにはシューターの木下がいる。花月側はうちより外の意識が強い」

 

「…ですが、氷室のマッチアップ相手は三杉です。切り込むのは難儀なのでは?」

 

インサイドへのカットインを勧める荒木に、選手達が苦言を呈した。

 

「確かに、三杉からは至難の業だろう。…だが、それ以外からなら可能だろう?」

 

「もちろんです」

 

フッと笑みを浮かべながら氷室に視線を向けると、氷室はニコリとしながら首を縦に振った。

 

「三杉にスクリーンをかけてでも氷室から引き離せ。氷室なら、得点を決められるか、少なくとも、中へ意識を向けることは出来る。早いうちにこの均衡を崩し、堀田をゴール下から引きずり出すんだ」

 

『はい!!!』

 

「早く点決めてよー。いい加減飽きてきたー」

 

第1Q、ディフェンスに専念していた紫原は、タオルで汗を拭いながら言う。

 

「ああ、分かってる。必ず点を決めて敦を楽にするから、敦もディフェンスを頼むよ」

 

「うん。分かったー」

 

そんな紫原を、氷室はそっと宥めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

第2Qが始まると、双方、硬いディフェンスをこじ開けるべく、攻撃を仕掛けていく。

 

「…」

 

ボールをキープしているのは空。その空の前には永野。

 

両者、にらみ合い、空は隙を窺う。

 

大地がスリーポイントラインの外側まで下がり、空の近くでボールを要求。空はチラリと大地の方を見て…。

 

 

――ピッ!!!

 

 

ボールを投げる。

 

「っ!?」

 

だが、それは大地にではなく、ハイポストまで走りこんだ天野にであった。

 

空はパスをするとすかさず天野に向かって走り出した。そして、すれ違い様にボールを受け取り、そのままゴールまで突っ込んでいく。

 

「行ったー!」

 

待ち構えるは紫原。

 

「…行くぞ!」

 

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

空、バックチェンジからのクロスオーバー。左右の揺さぶりをかけて紫原を抜きにかかる。

 

「それでフェイントのつもり?」

 

だが、紫原、空のフェイントとスピードに悠々とついていく。

 

『駄目だ、抜けない!』

 

「そんなの、百も承知だ。…本命はこれからだ!」

 

空はボールを掴み、そのまま真横に身体が倒れるほどの態勢で横っ飛びをする。

 

紫原も一瞬、戸惑いながらもそれに対応しようとする。

 

空は、横っ飛びの態勢からボールを右手で持ち…。

 

 

――ブン!!!

 

 

そのまま、リングに向かってボールをブン投げる。投げた先には、リングに向かって跳躍している大地の姿が。

 

『これは…アリウープだ!』

 

ボールは大地の右手に収まる。

 

「いっけーーーーっ!」

 

花月ベンチからの期待の歓声が響く。

 

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

 

「くっ!」

 

だが、リングにボールを叩きこむより速く紫原の手が現れ、ボールはその手に弾かれてしまう。

 

「マジかよ! これでも追いつくのか!?」

 

意表を突くと共に、空と大地の高速連携。紫原の反射神経と身体能力はこれにも追いつく。

 

こぼれたボールは劉が拾い、そのまま前線に向かって放り投げる。

 

「カウンター!」

 

前線でボールを受け取った永野は、一気にワンマン速攻を仕掛ける。

 

「ちっ! させねえよ!」

 

猛ダッシュでディフェンスに戻る空を始め、花月選手達。

 

「っ!? 速っ!?」

 

あっと言う間に全員自陣に戻り、ディフェンスを固めてしまったそのスピードに、永野は思わず声を上げた。

 

永野の前に空が立ちはだかり、氷室には三杉、木下には大地、劉には天野がマークに付き、ゴール下に堀田が立ち塞がる。

 

「…」

 

ボールをキープしながらゲームメイクをする永野。空はドライブを警戒して若干深めにディフェンスをしている。

 

ふと、劉が動き、合図を出す。それと同時に氷室が動き出す。

 

「…と」

 

追いかけようとする三杉だったが、劉のスクリーンに捕まる。そこにすかさず氷室にボールを渡す。

 

「スイッチや!」

 

「了解っす!」

 

天野の指示に空が従い、氷室のマークに向かう。

 

「…」

 

「…」

 

氷室の前に空が立ち塞がる。

 

「(止める。そんで今度こそ紫原から点を取る!)」

 

腰を落とし、氷室のドライブに備える。

 

「……足りないな」

 

「…?」

 

「資質はなかなかだ。だが、俺を止めるには至らない。俺を止めたければ、もっと殺す気でこい」

 

「っ!」

 

刺すような視線と、プレッシャーが空を襲う。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

それと同時に氷室が仕掛ける。

 

「今度こそぉっ!」

 

空の左側から仕掛ける氷室。空はそれについていく、が…。

 

「っ!?」

 

氷室は右側から仕掛けていた。空は氷室の高精度のフェイクに釣られてしまう。

 

ペイントエリアに進入した氷室はそのままフリースローライン目前でシュート態勢に入る。

 

「打たせません!」

 

ヘルプに現れた大地がシュートブロックに向かう。

 

「なっ!?」

 

だが、氷室はロールしながら大地をかわす。大地もフェイクにかかる。

 

「(クソが! このフェイクといい、マジで三杉さんとやってるみたいだ!)」

 

「(身体能力だけなら帝光の池永さんとそう変わりません。ですが、テクニックが段違いです!)」

 

高精度のフェイクを用いて、空と大地の2人を抜き去る。

 

『氷室行ったーっ!!!』

 

インサイド近くまで潜り込んだ氷室。その前に立ち塞がるは堀田。

 

「(俺のミラージュシュートで、堀田をかわす!)」

 

氷室が得意とする、相手ブロックをすり抜ける陽炎のシュート(ミラージュシュート)。自身の技で持って堀田をかわしにかかる。

 

「面白い…、来い!」

 

堀田が両腕を広げて氷室を待ち構える。

 

「…くっ!」

 

堀田から発するプレッシャーが氷室に襲い掛かる。

 

「(…ダメだ、このまま打っても防がれる!)」

 

身体に突き刺さるプレッシャーから、堀田はかわせないと判断する氷室。

 

「(…なら!)」

 

そのまま堀田へと突っ込んでいく氷室。

 

2人の距離が詰まり、堀田が動く。

 

「(ここだ!)」

 

機と見て、シュートフェイクを入れ、パスを捌く。ボールの先は、左アウトサイド、スリーポイントラインの外側に展開していた木下に。

 

「フリーだ、打て!」

 

「っ! しまった!」

 

大地が氷室のヘルプに出てしまったため、木下がフリーになってしまった。

 

パスを受けた木下は、シュート態勢に入る。

 

「行っけーーーっ!!!」

 

ボールは、木下から指から放たれた。

 

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

 

「っ!?」

 

そのシュートはブロックされる。

 

『三杉だーーーっ!!!』

 

ブロックをしたのは三杉。

 

「ふぅ」

 

無事、ブロックに成功し、一息吐いた。

 

「…あっさりとスティールにかかったことに引っかかってはいたが…」

 

「健がいる以上、インサイドから点を取るのは容易ではないからね。内は彼に任せて、俺は外に警戒を向けるさ」

 

堀田の堅守に絶対の信頼を預け、三杉は外に目を向け、フリーになっていた木下を見つけ、ブロックに向かっていた。

 

「よし! 今度こそ決めるぞ!」

 

ボールを貰った空は、フロントコートまで侵入していった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

そこから再び、双方が手を変え品を変え攻撃を仕掛けていく。

 

だが、両校の守備の要である、堀田、紫原を突破することができない。

 

両校、どちらも得点を決めれないまま、4分が経過しようとしていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『まだ点が決まらない…』

 

『どっちのオフェンスも温くない…』

 

『両校共守備が固すぎる…』

 

未だにスコアが動かないことに観客のどよめきが止まらない。

 

いったい、この均衡はいつになったら動くのか。

 

もう間もなく第2Qが折り返しに入りかかる頃、この均衡が動き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…飽きたな」

 

「ん?」

 

ボソリと呟いた堀田の言葉に、三杉が反応する。

 

「俺はこんな勝負がしたくて日本に来たのではない。これではつまらん。そろそろ、行かせてもうおうか」

 

「良いのかい? 今、勝負の焦点は、どちらが先にセンターを引きずり出すことができるか、だ。今、出てしまえば、相手の思惑にハマることになるよ?」

 

「構わん。時間には限りがあるんだ。いつまでも変わらない勝負など意味がない。向こうが来ないなら、こちらから出向いてやろう」

 

堀田が、ついに自陣ゴール下から離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「来た…!」

 

第2Q、5分が経過し、花月ボール、花月のオフェンス。

 

堀田が、自陣のゴール下から離れ、オフェンスに参加する。

 

「(堀田をゴール下から引きずり出すことは出来た…)」

 

「(けど、何て威圧感だ!)」

 

フロントコートまでやってきた堀田。陽泉選手達は、その強烈な威圧感に圧倒される。

 

「(ディフェンスの時以上の迫力。敦並み…下手したらそれ以上…!)」

 

「(オフェンス参加した紫原を敵にした相手の気持ちが今、分かったアル!)」

 

堀田は、ローポストに立つ。

 

「(…結局、堀田さんが出張る結果になっちまった…。情けない限りだが、ここは頼らせてもらおう)」

 

ひとまず空は、大地にボールを渡し、大地がハイポストまで移動した天野にパスをする。天野が空にボールを戻し、ボールを再び受け取った空が、一連のパスでゾーンディフェンスが崩れ、ローポストに立つ堀田までのパスコースができ、そこに投げるようにパスを出す。

 

ボールを受け取る堀田。その背中に紫原が付く。

 

「行くぞ」

 

「来いよ」

 

堀田と紫原のファーストコンタクト。

 

『ついに来たぞ…』

 

『センター対決…!』

 

観客も固唾を飲んで2人の勝負を食い入るように注目する。

 

 

 

――ズン!!!

 

 

 

「っ!?」

 

紫原に、未だかつてない重圧が襲い掛かる。

 

堀田は背中で紫原を押し込んでいく。

 

「ぐっ! …ぐっ!」

 

紫原、踏ん張るも、堀田のパワーに押されていく。

 

『マジかよ…』

 

『あの紫原が力で押されてる!?』

 

圧倒的な力を持つ紫原。力の権化とも言える紫原が力で押されている現状に、観客は再びどよめく。

 

そして、ついにゴール下まで押し込まれてしまう。

 

「ぬん!」

 

そのまま反転し、ボールを片手で掴み、ダンクに向かう。

 

「ちぃ!」

 

紫原がブロックに向かう。

 

 

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

 

 

「がっ!」

 

堀田は紫原を弾き飛ばし、ボールをリングに叩きつけた。

 

吹き飛ばされ、倒れる紫原。ズン! と、着地をする堀田。

 

水を打ったように静まり返る会場。

 

事実に思考が追いつくと…。

 

 

 

――おぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!

 

 

 

割れんばかりの大歓声に変わった。

 

試合開始から凍り付いたスコアが、ついに溶け出し、新しい『2』の数字を刻む。

 

『すげー! 紫原からあっさり点を取った!』

 

陽泉選手達は、今の光景を見て唖然としている。

 

キセキの世代と呼ばれ、絶対の守備力を持つ紫原。

 

その紫原から最初のコンタクトで得点を奪った堀田に、言葉を失う。

 

「何だ、いたのか?」

 

リングを潜ったボールを拾うと、座り込んでいる紫原にボールを放るように渡す。

 

「あん?」

 

その一言を聞き、表情を険しくする。

 

ディフェンスに戻る堀田、及び、花月選手達。

 

「敦、大丈夫か?」

 

吹き飛ばされた紫原の傍により、身体を気遣う氷室。

 

「…あいつ、ちょっと調子に乗りすぎだわ」

 

スクッと立ち上がり、ボールを氷室に渡す。

 

「…捻りつぶす」

 

静かに…それでいて、業火の如く怒りを燃やす紫原。

 

氷室が陽泉側ベンチの荒木に視線を向ける。

 

「…(コクリ)」

 

荒木はコクリと頷いた。

 

「分かった、存分にやるといい」

 

氷室がそう伝えると、紫原は自陣ゴール下から離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「良かったんですか? 作戦では、紫原がオフェンスに参加するのは、第3Qからの予定だったはずでは…」

 

「やむを得ない。ああなってしまっては、あいつ(紫原)は止まらない。下手に止めるくらいなら、行かせた方がマシだ」

 

「…なるほど」

 

「それに、気性の荒い紫原が、第3Qまで大人しくディフェンスだけをしていられる等、初めから思ってない。ここまで我慢出来ただけでも良好と言える」

 

荒木は、試合を…選手達を見守るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

陽泉ボールとなり、永野がボールをキープしている。

 

「(やべーやべー、紫原を引きずり出したけど…)」

 

「(圧倒される! ディフェンスの時以上の迫力です!)」

 

先ほどの陽泉選手同様、紫原の放つプレッシャーに、花月選手達は圧倒される。

 

「寄越せ!」

 

先ほどの堀田と同じ位置でボールを要求する。

 

永野は、ディナイを警戒し、ボールを高く上げ、紫原にパスをする。

 

ボールを受け取る。その背中には堀田。

 

「来い」

 

「捻りつぶす」

 

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

 

堀田と紫原がぶつかり合う。

 

「っ!?」

 

紫原は、いつもの如く、背中で相手を押し込み、ゴール下まで侵入しようとする。だが…。

 

「う…動かない…?」

 

2人の対決を見守る陽泉選手達は目を丸くする。

 

背中で押し込もうとする紫原だが、堀田はピクリとも動かない。

 

過去、紫原の相手をしたチームは、ダブルチーム、トリプルチームで紫原を抑え込もうと試み、それでも抑え込むことが出来なかった。

 

だが、今、その紫原を、たった1人で抑え込んでいる。

 

未だかつて見たことないこの事実に、陽泉選手達は焦りを覚える。

 

「(…ちっ! 重い。…山でも押してるみたいだ…)」

 

相対する紫原も、まるっきり動かすことが出来ないことに苛立ちを覚える。

 

「ふぅん、大した力だね。だったら、これはどう?」

 

 

 

――ダムっ!!!

 

 

 

「っ!」

 

紫原、そこから高速のスピンターン。体格に見合わないスピードで堀田を抜き去る。

 

『うおっ! はえー!』

 

「ちっ!」

 

堀田、すぐさま反応し、紫原を追いかけるが…。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

それよりも速く紫原のワンハンドダンクが叩き込まれた。

 

 

 

――おぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!

 

 

 

『紫原もすぐさま返したーーーっ!!!』

 

リングから手を放し、着地すると、堀田に振り替える。

 

「あれー、今来たの? 随分とのんびりなんだねー」

 

ボールを拾い、堀田に渡しざま、挑発するように言い放った。

 

「ふっ…面白い…!」

 

挑発を受けた堀田は、強敵を得たことにニヤリと笑った。

 

そしてここから、凍り付いていたスコアが沸騰したかのように熱を帯び始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

 

堀田が紫原を力で押し切り、ダンクを炸裂させると…。

 

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

 

紫原はスピードで堀田をかわし、そのままダンクを叩き込む。

 

両チームのセンターがオフェンス参加をすると、試合は点の取り合いへと移行した。

 

ここで退けば、流れを一気に持っていかれてしまうし、現状、他の者のオフェンスでは失敗する恐れがあるので、オフェンスは双方のセンターに委ねた。

 

結果、どちらも1歩も譲らず、互いに得点を奪い合った。

 

 

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

 

 

ここで、第2Q終了のブザーが鳴り響いた。

 

 

第2Q終了

 

花月 10

陽泉 10

 

 

ディフェンスで均衡が保たれ、堀田がその均衡を崩したのをきっかけに、今度はオフェンスにて均衡が保たれ始めた。

 

「…」

 

「…」

 

ブザーが鳴った直後、数秒、睨みあうと、互いのベンチへと引き上げていった。

 

試合の半分が終わり、スコアは互角。

 

試合は、激動の後半戦へと移行するのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





タイトルの名のとおり、未だ均衡が保たれています。

これからどう試合が動くか…。大雑把には構想がありますが、まだ少し靄がかかっています(^-^;)

感想、アドバイスお待ちしています。

それではまた!
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