黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

少々、時間がかかりました…(^-^;)

それではどうぞ!


第38Q~差~

 

 

 

第2Q終了

 

花月 10

陽泉 10

 

 

前半戦が終了し、スコアは互角。

 

第2Q中盤まで、互いに点が取れず、スコアボードが0点から変動しなかったが、互いの守備の要である、堀田、紫原が動くと、点の取り合いへと変わっていった。

 

『紫原と堀田…、どっちもすげぇ…』

 

失点を0に抑えた鉄壁の盾。両者の矛はその盾を貫いていた。

 

「…」

 

観客席、肩に桐皇学園のジャージを掛け、コートを見つめる男。

 

「10-10…」

 

映し出されているスコアボードを見てポツリと呟いた。

 

自身の試合を終え、柔軟体操をし、汗を拭うと、すぐさま花月×陽泉戦を見るために観客席へと急いだ青峰。

 

「(さつきの話じゃ、第2Q中盤まで0-0。そこから紫原とあの5番、堀田が動いて双方5本ずつ決めて10-10…か)」

 

ちょうど試合の半分が終わり、その結果を見て眉を顰める。

 

「(陽泉が0点に抑えたのは分かる。なんせ、紫原がいるんだからな。…だが、花月も0点に抑えたってのか?)」

 

その事実に、青峰は少なからず衝撃を受ける。

 

陽泉は、全国的には、その守備力で有名であるのだが、オフェンス力も決して低くない。

 

複数人も長身選手が揃っている上に、今年はアウトサイドシューターもいる。何より、青峰自身も警戒する氷室辰也もいる。

 

それだけの選手が揃った陽泉相手に0点に抑える守備力。驚かないわけがない。

 

「(しかも、第2Q後半からは、あの陽泉…紫原からあっさり点を奪いやがった)」

 

紫原から得点を奪うのは、青峰をもってしても容易ではない。その紫原から、あろうことか力づくで得点を奪った堀田。

 

力においては、紫原以上はいないと思っていた青峰は、紫原を上回る力を持つ堀田に驚きを隠せなかった。

 

「…読めねぇーな。間違いなく第3Qに試合は動く。そのカギは、まあ、紫原と堀田。どっちが勝つか…か…」

 

試合の勝敗を分ける要因として、堀田と紫原のセンター対決。これをどちらが制するかと青峰は予想した。

 

「にしても…」

 

青峰は、控室に向かっている花月選手達。その1人の三杉に視線を向けた。

 

「何を考えてやがる。昨日の試合を見て、あいつは間違いなく俺達と同格だ。だが、動く気配が全くねぇ」

 

前半戦、三杉は得点出来ていない。紫原のいるインサイドにカットインするものの、そこからパスを捌くばかりで、シュートにはいかない。

 

「紫原相手に攻めあぐねているのか? そんなタマには見えなかったが…」

 

動きを見せない三杉に、青峰は疑問を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「堀田さん、すごいっすね! あの紫原から点を取っちまうなんて!」

 

控室に戻ると、空ははしゃぎながら堀田に歩み寄った。

 

第2Q中盤まで、いくら手を尽くしても紫原の牙城を崩せなかった。その紫原からあっさり点を決めてしまった堀田。

 

「第3Q、これまで通り、健を中心に攻める。いいね?」

 

三杉が全員に向けて告げる。

 

「どんどんボールをくれ。それと、紫原にディナイはかけなくていい。どんどんボールを渡しても構わない」

 

「えっ? それって…」

 

「奴と真っ向勝負をする。ようやく紫原が前に出てきたんだ。つまらん小細工はいらん」

 

「んー、でも、ええのですか?」

 

軽く不安顔の天野が訪ねる。

 

「心配はいらん。こっちもそろそろ本気を出すからな」

 

堀田が指の骨を鳴らしながら拳を握る。

 

その光景を見て、三杉と上杉を除く者達は背筋を凍らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「いいぞ、敦。この調子で頼むぞ」

 

氷室が紫原に飲み物を渡す。

 

「第3Qからどうするアル?」

 

仕切りなおすように劉が皆に尋ねる。

 

荒木が、考えるように胸の前で腕を組む。

 

「そうだな…、紫原のおかげで中から攻められるようになった。これで外に向いていた意識が中に向く。中の紫原を起点に、外から木下で――」

 

「いい。余計なことしないで、まさこちん」

 

それを制するように紫原が言葉を挟む。

 

「まさこちんって呼ぶんじゃねぇ!」

 

荒木は傍に立てかけてあった竹刀で紫原の後頭部を叩いた。

 

「あいつを捻り潰さなきゃ気がすまない。…ていうか、俺が捻り潰せば終わりなんだからそれでいいじゃん」

 

叩かれた後頭部を擦りながら言い放った紫原。

 

「…出来るのか、敦?」

 

氷室が表情を改める。

 

「んー、さっきまでずっと守備ばっかだったら、身体が冷えちゃったけど、ようやく温まってきた。…そろそろ本気出すよ」

 

紫原は指を鳴らし、拳を握る。それを見た陽泉選手達は寒気を感じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

『出てきたぞ!』

 

『待ってました!』

 

10分間のインターバルが終わり、花月、陽泉の選手達がコートに戻ってくる。試合を待ちわびていた観客は盛大に歓声を上げる。

 

両校共、選手交代はなく、スタメンと同じメンバーがコートにやってくる。

 

注目の的はやはり…。

 

『来た来たー!』

 

『紫原と全くの互角の堀田! あいつはもう、キセキの世代と同格と言っても間違いない!』

 

第2Qの後半から始まった両校のセンター対決。

 

10年に1人の逸材と呼ばれ、ディフェンス力はその中でも随一の紫原に引けを取らないディフェンスを見せ、尚且つその紫原からあっさり得点を奪った堀田。その注目度はもはやキセキの世代と同等。

 

どちらがこの勝負を制するか…。

 

観客の注目はその一点である。

 

「来い。俺を倒して見せろ」

 

「言われなくもするし。…捻り潰す」

 

不敵な笑みを浮かべる堀田に対し、紫原は、第2Qから、自分からあっさりと点を決められたこともあり、表情は不機嫌であり、堀田を睨みつけている。

 

 

そして、第3Qが始まり、再び、2人の勝負の火蓋が再び切って落とされた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

花月のオフェンス…。

 

空はすかさず堀田にボールを渡す。それと同時に、それ以外の4人がヘルプサイドに寄る。

 

『うお! 花月のアイソレーションだ!』

 

 

――アイソレーション…。

 

 

特定の選手が1ON1しやすいようにスペースを空ける戦術。

 

花月は、堀田で点を取りに行くことを意味している。

 

常識で考えるのならば、紫原相手に1ON1など、無謀の極み。

 

 

――ズン!!!

 

 

堀田の背中でマークする紫原に第2Q同様、ズシリとした衝撃が襲う。

 

ジリジリと背中でインサイドまで押し込もうとする。

 

「いつまでも調子に乗るなよ…!」

 

紫原は歯を食い縛り、腰をより深く落として堀田の侵入を阻んだ。

 

「ほう…」

 

堀田は、紫原の様子がさっきまで違うことを瞬時に理解する。

 

「(ようやく本気を出してきたか…)」

 

先ほどまではリング下まで押し込めたのだが、此度の衝突では、リングに手が届くまで距離まで押し込むことが出来ず、手前で止められてしまった。

 

「なるほど、そうでなくてはな…ならば、次はこっちの番だ」

 

 

――ダムっ!!!

 

 

「っ!?」

 

堀田は、そこから先ほどの紫原に劣らない程のキレ味がある高速スピンターンで紫原を振り切る。

 

押し留めることに力を注いでいた紫原は、スピードもキレもあるこのスピンターンに対応出来なかった。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

紫原をかわした堀田はそのままリングにボールを叩きつけた。

 

『すげー! 今の、めちゃめちゃ速かったぞ!?』

 

一連のプレーを見た観客は、突如上がった堀田のスピードに度肝を抜かれる。

 

「ちっ!」

 

止めることが出来なかった紫原は思わず舌打ちをする。

 

「いいぞ、敦」

 

悔しがる紫原に氷室が声をかける。

 

「押し合いでは負けてなかった。これで最初の関門はクリアした。スピードは敦に分があるはずだ。次は止められるさ」

 

「ん、当然じゃん」

 

氷室の鼓舞を受け、紫原の士気が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

続いて、陽泉のオフェンス…。

 

ハイポストに立つ紫原にボールを渡すと、他の4人がヘルプサイドに寄った。

 

『陽泉もアイソレーションだ!』

 

陽泉側も、オフェンスを紫原に託した。

 

「…」

 

「…」

 

ハイポストに立つ紫原。その背中にマークに付く堀田。

 

 

――スッ…。

 

 

紫原は左へとロールし、堀田の左手側からかわそうと試みる。

 

だが、それにすぐに反応し、紫原の進路を塞ぎにかかる。その瞬間…。

 

 

――ダムっ!!!

 

 

堀田がその瞬間に逆方向にロールする。

 

「(速い!)」

 

スピードの上がった紫原に対応しきれず、堀田の横を高速で抜けていく紫原。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

堀田に追いつかれる前にリングにボールを叩きつけた。

 

「…スピードが上がった。…なるほど、奴も本気を出し始めたか…」

 

一見して分かるほどに雰囲気が変わった紫原。以前までの衝突で、紫原がまだ全力ではないことは理解していたが、未だ、紫原の底を計りきれていないことを知った堀田。

 

「ドンマイ、健。次、行こう」

 

「ああ。今度はこっちの番だ」

 

三杉に檄を受け、オフェンスへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

そこから、第2Qと同様、両チームのセンター同士の1ON1が再び始まる。

 

双方、インサイド一辺倒の攻撃ではあるが、互いに止めきれていない。この戦いに、両チームともヘルプには向かわない。あくまでも、互いのセンターを信じ、勝敗を託す。

 

その後、両者が2本ずつシュートを決め、点差は同店のまま時間は進んでいった。

 

「…どっちも譲らねぇな。この均衡、いったいいつまで続くんだ?」

 

2人の対決を目の前で見ている空は、いつになったら勝負が動くのか、冷や汗を流しながら見守っている。

 

「均衡はもう崩れる」

 

そこに、横で同じく勝負を見守っていた三杉が、ボソリと呟いた空の独り言に回答する。

 

「えっ、ホントですか? いったいどっちがこの勝負を制するんですか?」

 

「答えは言わずとも、すぐに分かる。よく見ておけ」

 

答えは言わず、ただ勝負を見ろとだけ言う三杉。言われるがまま、空は2人の勝負に視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

堀田が得点を決め、陽泉ボールに切り替わり、ボールを持つのは紫原。

 

「…」

 

 

――ダムっ!!!

 

 

右から行くと見せかけ、左から高速スピンターン。堀田の左側を抜ける。

 

そのままボールを片手で掴み、リングに向かってワンハンドダンクを叩き込む。

 

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

 

「っ!?」

 

だが、そのダンクは堀田の手でブロックされる。

 

「それはさっき見たぞ?」

 

「そんな…、紫原がブロック!?」

 

陽泉選手達は目を見開いて驚愕する。

 

こぼれたボールは天野が拾い、そのまま空に渡す。

 

「ナイスブロック、堀田さん! そんじゃ、速攻!」

 

ボールを受け取った空はそのままフロントコートまで進んでいく。

 

「悪いが、行かせないよ」

 

ヘルプにやってきた氷室が進行を阻むべくやってくる。

 

「(構うことはねぇ、さっきの借りを返すためにも、ぶち抜く!)」

 

空、そのまま氷室に突っ込んでいく。

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

レッグスルーからのクロスオーバーで抜きにかかる。

 

「(っ! 速いな…)」

 

氷室、それに遅れることなく付いていく。

 

「(ちっ! ダメか…なら、もう一丁!)」

 

そこからバックロールターンで再度仕掛ける。

 

「スピードは目を見張るものがある。だが、キレが悪い。それでは俺は抜けないよ」

 

これにも氷室は追いつき、抜かさない。

 

「くそっ…、まだ抜けないか…」

 

 

――スッ…。

 

 

空は1度立ち止まり、ノールックビハインドパスでボールを左に投げる。

 

「っ!?」

 

投げた先、空のすぐ横を大地が駆け抜け、ボールを受け取って2人の横を抜けていった。

 

「ちっ!」

 

すぐさま反応した氷室が大地を追いかける。だが…。

 

 

――スッ…。

 

 

氷室が横に並走した瞬間、大地は真後ろの空にバックパスをする。

 

再び、ボールを受け取った空は今度は右へとボールを放る。ちょうどその瞬間、ブロックしてからやってきた堀田がボールを拾い、そのままドリブルを開始する。

 

「行かせん!」

 

「止めるアル!」

 

その進行を、劉と木下が阻む。

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

「ぐっ…!」

 

「くそっ…!」

 

堀田は2人の間を、強引にドリブルで突破していく。

 

リング近くまで侵入すると、ボールを掴み、そのままリングに向かって跳躍する。

 

「っ! ふざけんな! させるわけないじゃん!」

 

そこに、先ほどのシュートから戻ってきた紫原が前方に回り込み、ブロックに現れる。

 

『紫原はえーっ!』

 

「よし! 敦、頼むぞ!」

 

素早い速攻だったにも関わらず、それに対してブロックに追いついてしまう紫原に驚愕する。

 

「…大したものだ。そうでなくては面白くない。…ならば、こちらも本気を出すとしよう」

 

堀田は、右手に持っていたボールに左手を添え、両手に持ち帰る。

 

 

 

――ズッ…!!!

 

 

 

「っ!?」

 

その瞬間、紫原にかつてないほどの圧力と威圧感が襲う。

 

「(そんな…、さらに力が上がった! まだ本気じゃなかったのか!?)」

 

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

 

堀田のボースハンドダンクが炸裂する。

 

「ぐあっ!」

 

紫原、堀田のダンクをブロック出来ず、そのまま吹き飛ばされてしまう。

 

『うおぉぉぉっ! マジかよ、あの紫原を吹き飛ばしたーーーっ!!!』

 

観客は大歓声、驚愕の声を上げる。

 

紫原が相手を吹き飛ばしていた光景は何度も目の当たりにしていたが、紫原が吹き飛ばされた光景を見るのは初めてであったからだ。

 

床に倒れこむ紫原。両手をリングから放し、着地する堀田。

 

「くっ!」

 

倒れこんだ紫原は、すぐさま上半身だけ起こし、すぐ横にそびえ立つ堀田を睨みつける。

 

「いいぞ。もっとだ。もっと来い。お前の実力、可能性、もっと見せてみろ」

 

上から見下ろしながら紫原に告げる。

 

「っ!?」

 

その迫力に、紫原は圧倒される。

 

「敦、大丈夫か!?」

 

弾き飛ばされた紫原を心配した氷室が傍まで歩み寄ってきた。

 

それと同時に堀田は自陣コートまで下がっていく。

 

「…ん、大丈夫」

 

心配する氷室を手で制し、すぐさま立ち上がった。

 

腕を回し、足首や腰の具合を確かめる。すぐさま問題がないことを確認された。

 

その様子を見て、氷室もそっと胸を撫でおろす。

 

「(…それにしても、あの敦を吹き飛ばすとは…)」

 

今の光景を見て、氷室も思わず背筋を凍らせる。

 

ボールは陽泉ボールになり、陽泉のオフェンスが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「(くそっ! どうする…、紫原は止められた。誰で行く…)」

 

ボールをキープする永野は何処から攻めるか悩む。

 

相変わらず、紫原のマークは甘い。それ以外は、マークがきつい。

 

氷室は三杉がマークし、パスを受け取る隙もなければ、振り切ることも出来ないでいる。

 

木下も、大地がタイトにマークしており、ボールすら触らせない程である。劉も天野のマークがきつい。

 

選択肢は、自ら行くか、紫原に渡すか。

 

「(ちっ! …こいつのディフェンスも時間が進むごとにきつくなってきやがる!)」

 

何度かカットインを試みようとしたが、空のディフェンスはその隙を与えない。それどころか、気を抜けばいつ取られるか分からない程きつい。

 

「(…しょうがない、ここはやっぱり託すしかない!)」

 

やむを得ず、永野は紫原にボールを渡す。

 

ボールを受け取る紫原、背中には堀田。

 

「来い」

 

「っ!?」

 

背中からはどんどん増す堀田のプレッシャー。紫原は背中で押し込もうとするがピクリとも動かない。

 

「ちっ!」

 

紫原は1度後ろに退き、僅かに距離を開けると、向かい合うように対峙する。

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

ゆっくりドリブルを開始する。

 

 

「紫原の奴、正面から1ON1を仕掛けるつもりか? …だが、あいつにあの堀田をかわす程のドリブル技術はあるのか?」

 

火神が素朴な疑問を浮かべる。

 

「…いや、紫原っちは、少なくとも、そこらのエース級の奴よりドリブル技術は高い。もしかしたら…」

 

観客席で観戦していた黄瀬が勝負を静かに見守る。

 

 

「…」

 

「…」

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

紫原は左右の切り替えしで堀田をかわそうと試みる。

 

「…っ!」

 

だが、堀田は翻弄されることなく、進行を阻む。

 

そこからさらにターンや切り返しをして突破を試みるが、堀田をかわすことは出来ない。

 

「っ! …くそっ!」

 

堀田を抜くことが出来ず、思わず悪態を付く。

 

「敦!」

 

氷室がインサイドに侵入し、パスを要求。

 

紫原はすぐさま氷室にパスを出す。

 

「打たせないよ」

 

氷室がボールを受け取ると、その横を三杉が並走するように並ぶ。これではシュート態勢に入れない。

 

「そのつもりはないよ」

 

 

――ピッ!!!

 

 

氷室は、ボールを受け取るとすぐさま紫原にリターンパスを出す。

 

紫原は、氷室にパスを出すと、ロールしてすぐさまゴール下まで移動していた。

 

ボールを受け取る紫原。だが、背中には堀田の姿が。

 

「そんな…! 紫原のスピードと対等に!?」

 

スピードでは分があると思っていた陽泉サイドは驚きを隠せない。

 

「ちっ!」

 

そのまま決めるつもりだったのだが、堀田の対応があまりにも速すぎ、舌打ちをする。

 

「だが、その距離は敦の距離だ」

 

先ほどはハイポストで対峙した両者だが、今回はゴール下。紫原の得意な距離である。

 

『出た!』

 

紫原は、横回転しながら跳躍する。

 

『来るぞ! 紫原の必殺ダンク!』

 

持ち前の体格とエネルギー量を十全に生かした必殺技。それは複数人のブロックを吹き飛ばし、時に、リングをも叩き折った程の威力を持つ。

 

 

 

――破壊の鉄槌(トールハンマー)!!!

 

 

 

「これをブロック出来たのは火神のみ…!」

 

回転力を加えた紫原がリングへとボールを叩きつけようとする。

 

「ぬぅん!!!」

 

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

 

『なっ!?』

 

紫原の破壊鉄槌(トールハンマー)。それを堀田は右手のみでブロックに向かう。

 

「無理だ。紫原のあのダンクを片手でブロックなんて…」

 

そのダンクを体験した火神はブロック不可能だと断言する。

 

「ぐっ! …ぐっ…!」

 

空中で押し合いをする両者。

 

「ぬるいわぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

 

――バチィィィン!!!

 

 

 

『なにぃぃぃーーーっ!!!』

 

陽泉選手、そして観客からの驚愕の声が会場中に響き渡る。

 

圧倒的な破壊力を持つ紫原の破壊の鉄槌(トールハンマー)。堀田は、あろうことか、片手でブロックしてしまった。

 

「(あり得ない…。ゾーンに入ったタイガでさえ、両手で、しかも、前方に飛んで力を上乗せすることでやっとブロック出来たと言うのに…)」

 

昨年のウィンターカップの火神も破壊の鉄槌(トールハンマー)をブロックしたが、その時は、ゾーンに入って、実力の100%を開放してた上に、両手を使い、前に飛んで力を上乗せして何とかブロック出来た。

 

だが、堀田は、ただ垂直に飛び、右手1本で紫原ごとブロックしてしまった。

 

「マジ…かよ…」

 

今のプレーを目の当たりにした火神は、ただただ言葉を失っていた。

 

「…すごすぎだろ…」

 

「味方ながら、ここまでいくと恐怖を覚えますね…」

 

空も大地も、引き攣った笑いが思わずこみ上げてしまう。

 

「まだだ。もっとだ。お前はこんなものではないだろう? これで全力なら、俺には届かないぞ?」

 

「っ! あっ…」

 

互いに着地し、堀田が紫原に言い放つと、紫原は気圧されて思わず1歩退いてしまう。

 

「悪いが、彼は健には勝てないよ」

 

「…何だと?」

 

ボソリと呟くように三杉が囁くと、隣にいた氷室が怪訝そうな表情で振り返る。

 

「確かに、資質は大したものだ。資質なら、健と同等…いや、もしかしたら、それ以上かもしれない。だが、彼は健には勝てない」

 

「なに?」

 

「この日本に、彼、紫原君と対等に戦える者がどれだけいるだろうか? せいぜい、同じキセキの世代と火神大我君くらいだろう。彼らにしても、平面や高さに秀でてはいるが、パワー勝負、ゴール下で争う分には紫原君と互角というわけにはいかないだろう」

 

「…」

 

「けど、俺達のいたアメリカは違う。あそこには、キセキの世代クラスはゴロゴロいる。それ以上の奴もね。俺や健が戦ってきた相手は、常に自分と同等がそれ以上の相手ばかり。単純なテクニックは通じず、身体能力では後れを取る相手ばかり。これが俺達の戦ってきた環境だ」

 

「…」

 

「キセキの世代は、10年に1人と言われる程の才能を有し、勝利に勝利を重ね、輝かしい栄光を残した。だが、俺達には輝かしい栄光などない。自前のテクニックは通じず、身体能力では勝負にすらならない。アメリカに行った俺達の前に待っていたのは、吐き気がするほどの敗北の連続。唯一、対抗出来たのは負けん気くらいのものだった。血の滲むような努力を重ね、壊れてしまうかもしれない程自身の身体をいじめ抜き、勝てるようになったのは最近の話だ」

 

「…」

 

「強大なチームメイトからスタメンを奪い、奪ってからはそれを死守し、試合では結果を残さなければすぐにスタメンを奪われてしまう。特に、センターである健は、俺以上の苦行だ。決して楽しいことばかりではない。…俺達を、キセキの世代と同格と言う、評価を与えてくれているが、…そうだな、少し彼らに乱暴な言い方をさせてもらうと――」

 

「っ!?」

 

「――ろくに相手出来る者もいない、勝利が当たり前の温い環境で戦ってきたような奴らと同列に扱われるのは、少々、心外なんだよ」

 

三杉から語られる言葉、そして、迫力に、氷室は背筋を凍らせる。

 

「…まぁ、一言で言うなら、健と紫原君の差は、ひとえに、2人が戦ってきた環境の差だ。同等以上の者と戦って敗北にまみれながら戦ってきた者と、対等に戦えるのが限られていて、勝利することが当たり前の環境で戦ってきた者。資質が互角なら、勝つのは前者だ」

 

表情を改め、今の結果を砕いて説明する。

 

堀田と紫原における差は、戦ってきた環境の差だと三杉は断言する。

 

「均衡は崩れた。こうも分かりやすく差を見せつけられてしまえば、並のメンタルでは折れてしまうだろう。さてと、紫原君は、どうだろうか…」

 

意味深なことを呟き、三杉はディフェンスへと戻っていった。

 

「…」

 

呆然と立ち尽くす紫原。

 

「―つし、敦!」

 

「えっ?」

 

氷室が声掛けでハッと我に返る紫原。

 

「気落ちするな。まるっきり通じない相手ではないんだ。やりようはいくらである。これからもボールをどんどん回していくから、頼むぞ」

 

鼓舞する言葉をかけながら、コツンと紫原の胸に軽く拳を当て、オフェンスへと向かっていく。

 

「…っ」

 

だが、紫原の表情が晴れることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

ついに崩れた均衡。試合は動きを見せ始めた。

 

堀田が紫原を圧倒し始める。

 

試合の流れは、花月へと傾いていく……。

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





投稿が遅れました(^-^;)

難産であったことと、やはり、年末は忙しすぎます…Orz

年末年始に入るまで、投稿スピードは落ちるかもしれませんm(_ _)m

出来るなら、今年度中に陽泉戦を書き終えたいです…。

感想、アドバイスお待ちしています。

それではまた!
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