投稿します!
一気に日程を進めます。
それではどうぞ!
試合終了
花月 57
陽泉 50
大激戦に、ついに終止符が打たれた。
「陽泉が……紫原が、負けた…」
観客席で観戦していた火神が、茫然としながら呟く。
「花月高校……、マジでシャレにならない強さだな…」
「ああ。特に、堀田健の実力は異常過ぎる。ゾーンに入った紫原と、対等にやり合うなんて…」
同じ列で観戦していた日向、土田も神妙な表情で感想を言い合っていた。
「三杉誠也も同様だ。あの氷室をああも抑え込んだ」
両膝の上に肘を付き、顔の前で手を組みながら伊月もポツリと呟く。
『…』
衝撃の試合結果に、誠凛メンバーは静まり返る。
「…でも、紫原も凄かったよな! ゾーンがあそこで切れてなかったら、分かんなかったよな!?」
暗くなっていたムードを明るくするため、小金井が大きめな声で言った。
「…『たら』とか『れば』を言い出したら、キリがないが、紫原の奮闘があったからこそ、ここまで競った試合になったって言えるな」
攻守で紫原が起点となり、花月高校を追い詰めていった。
「……冬、優勝するためには、あいつらにも勝たなきゃならないってことか」
『…』
何気なく、火神が口にしたこの言葉を聞き、再び静まり返る誠凛メンバー。
「……強くなりましょう」
「…黒子?」
「もっと強くなりましょう。冬、また優勝するために」
黒子が、真剣な面持ちで、自分と、誠凛のメンバーに言い聞かせるように言う。
「黒子君の言う通りよ。劣っている言うなら、もっと練習して私達も強くなればいいだけのことよ。去年もそうだったでしょ?」
黒子の言葉に同調したリコが皆に問いかける。
「…そうだな。足りねぇ…及ばねぇところがあるなら、もっと練習して補えばいいだけのことだ。冬までに、あいつらを倒す為に必要なモノを掴もうぜ!」
『おう(はい)!!!』
それに、日向も同調し、誠凛メンバー全員がそれに同調し、冬の連覇に向けて、気を引き締めるのだった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「…」
試合の行方を、目の当たりにした青峰。無言のままコートを見つめている。
『どっちが勝ってもおかしくない内容だった』
『紫原と堀田の勝負は白熱したよな』
『ああ。双方共に互角で、どっちが勝ってもおかしくなかった』
観客達も、未だに興奮が冷めやらぬ様子で感想を言い合っている。
「(…今日の紫原はかなりやばかった。正直、戦ってたのが俺だったら負けてたかもしれねぇ…)
試合を最後まで観戦して、最初に抱いた感想だった。
「(その紫原と互角にやり合った堀田…。だが、今日見せたあれがあいつの全力だったのか?)」
コート上の両者を見比べると、劉の肩に腕を回し、それでようやく立っているのがやっとの紫原に対し、肩で大きく息をしているものの、自分の足で立ち、足取りもしっかりしている堀田。
最後の1滴まで絞り出し、すべてを出し尽くした紫原に対し、堀田は、まだ、余力を残していることを意味する。
「(にしても、気に食わねぇのあいつだ)
コート上の、堀田から視線を外し、その横で、何やら話をしている三杉へと視線を向けた。
「(あいつが、もっと積極的に点を獲りに行っていれば、点差はこんなもんじゃすまなかったはずだ)」
今日の三杉は、氷室を圧倒しつつも、堀田にパスを捌くことがメインで、自身ではほとんど点を獲りにいかなかった。
「……ハッ!」
思わず、青峰の表情から笑みをがこぼれた。
「(いいね、勝ちあがりゃ、あいつらとやれると思うと、ゾクゾクするぜ!)」
自身と同格。全力で戦える実力者が2人も在籍している花月高校と戦うことを今から熱望する青峰。
「やつらと戦うためには――」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「…ふぅぅぅっ」
試合終了のブザーが鳴ったのを確認すると、堀田は深く息を吐き出した。
「お疲れ、健」
「…ああ」
そんな堀田を、三杉が労った。
「一筋縄では行かない相手だった。死力を尽くすに値する相手だったよ」
「うん、君の言う通りだ。健とここまで戦えるとは思わなかった。…紫原敦、大した男だよ」
額に当てていたヘアバンドを首元に下げる三杉。
「奴はもっと強くなる。次は、果たしてどうなるかな…」
「近い将来、健と紫原敦で、日本最強のセンターの座を、争うことになるかもしれないね」
「もちろんだ。そうなってもらわねば困る。…もちろん、負ける気は毛頭ないがな」
三杉の予感に対し、自信満々で答える堀田だった。
「…」
「…」
神妙な顔で黙り込む空と大地。
「なんや、辛気臭い顔しとるのう。勝って嬉しくないんか?」
2人の肩に腕を回して引き寄せる天野。
「…そりゃ、勝ったことは嬉しいですよ。…けど…」
「我々は、紫原さん相手に何もできませんでした…」
歯をギュッと食い縛り、悔しさを露わにした。
「氷室にも、一矢は報いたけど、試合通して見たら、経験、技術、あらゆるもので及ばないのは一目瞭然です」
「終盤、紫原さんの限界が来たからいいものの、そうでなければ、私の浅はかなミスで負けるところでした」
この試合での反省点を次々と述べていく2人。
「ま、確かに、誠さんとたけさんおらんかったら、確実にうちら惨敗やったろうな。けどまあ、そう腐ることもないやろ。実際、紫原敦は、空坊と大地坊には相性最悪の相手なんやし」
身長がない空と大地にとって、身長があり、身体能力と力に優れている紫原は天敵と言ってもいい相手。
「インターハイは、長いようで短いで。大会中に何か掴まんと、誠さんとたけさんがおらんウィンターカップ、惨敗するで。たくさん、2人から学ばせてもらおうや」
「ウッス!」
「もちろんです」
三杉と堀田の背中を見た3人が、決意するのだった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
センターサークル内に整列する両チームの選手達。
「57対50で、花月高校の勝ち!」
『ありがとうございました!!!』
共に礼をする。
「…完敗だ」
「君達も強かったよ」
三杉と氷室が前に出る。
「まだまだ、あなたには及ばないか…」
「紙一重さ。勝てたのは、僅かばかりに運が巡っただけさ」
「謙遜を…。だが、次は負けない。もっと練習して、次は勝たせてもらうよ」
「望むところだ。また、戦えることを楽しみにしてるよ」
2人は固く握手を交わした。
「さすが、あの帝光倒してMVPに選ばれただけのことはある」
「こっちも、結構ヒヤヒヤでしたよ。マジでキレのいいドライブでした」
永野が空の近くへと歩み寄った。
「お前ほどじゃない。…このまま優勝しちまえよ」
「そのつもりです。ありがとうございました」
同じく、固い握手を交わす。
「…全く、俺よりも、10㎝も低い奴に何度もブロックされるとはな。大した奴だよ」
「私も、あの局面、あの距離から決められる技術と胆力。脱帽致しました」
今度は、木下が大地に近寄る。
「俺達の負けだ。俺達の分まで……勝ってくれ」
「もちろんです。ありがとうございました」
同様に握手を交わした。
「ハァ…ハァ…」
劉に支えられ、立つのがやっとの紫原。
「…」
堀田は、紫原を一瞥し、踵を返した。
「ええんですか? てっきり、話でもするもんやと…」
「奴とは、試合中に充分に語り合った。勝者はただ、夢と志を継いで勝ち続けるのみ」
「…確かに、その通りやな」
堀田と天野は、ベンチへと戻っていった。
他の選手達も、付いていくように戻っていった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「紫原、大丈夫アルか?」
ベンチまで肩を貸し、ベンチまで戻った劉は、ベンチに紫原を座らせた。
「ちくしょう…ちくしょう…!」
俯き、両膝の上で拳をきつく握りしめながら悔しさを露わにする紫原。
「……お前がいなければ、ここまで競った試合にはならなかっただろう。…お前は、チームの柱としての役割を、立派に果たしてくれた。よくやった」
荒木が、紫原を労いながら、そっと頭にタオルをかけた。
「どうして…、どうして俺は…! 去年も…、これじゃあ、一緒じゃねぇかよ!」
「敦…」
昨年、陽泉は誠凛に負けた。
試合の最後、火神の必殺のダンク、流星のダンク(メテオ・ジャム)で逆転し、その直後、紫原が誠凛ゴール下まで走り、ボールを受け取った。
だが…、そこで…、紫原の脚は限界を迎えてしまった。
それでも何とかボールをリングに放とうしたものの、ただ1人、ディフェンスに戻っていた黒子テツヤのブロックを食らい、陽泉は敗北を喫した。
そして今年、勢いも流れも陽泉に傾き、勝機が見えた直後、紫原が限界を迎えてしまい、後一歩ところで敗北した。
何の因果か、昨年と似た形で…。
「……敦、君は決して負けてなかった。あの堀田と対等に…いや、対等以上に戦った」
「…そんなの、試合に負けたら意味がないじゃんか!」
氷室が慰めるべく声をかけるが、紫原は感情を抑えられない。
「だが、次は勝てる」
「?」
「敦はもっと強くなる。そして、俺も…いや、俺達ももっと強くなる。だから、次、必ずリベンジを遂げよう」
「っ…、当たり…前…じゃんか…!」
紫原はタオルをギュッと握りしめ、花月ベンチを睨みつけたのだった。
※ ※ ※
この日、2戦もの、大激闘が行われた。
その試合は、見る者全てを魅了し、熱狂させた。
勝者がいれば、敗者もいる。
この日、昨年のウィンターカップの覇者、誠凛高校と、絶対防御(イージスの盾)を誇る陽泉高校が、敗北し、インターハイの3日目が、終わった…。
※ ※ ※
その夜……。
激闘を終えた花月高校の選手達が、自分達の宿泊している旅館へと戻ってきた。
「…まだ信じらないよ。俺達が、陽泉に勝っちまうなんて…」
旅館の一室で、部長である馬場が、未だに夢心地の表情でポツリと呟く。
「ホントだよなぁ…。少なくとも、去年の俺達じゃあ、考えられなかったな」
馬場の対面に座る真崎が、同様の表情で返す。
全国で名は知られているものの、過去の実績は乏しい花月高校。全中大会に参加したことなかった2人は、キセキの世代の紫原敦を擁する陽泉高校に勝利したことに未だに実感が持てないでいた。
「改めて、三杉と堀田はバケモンだ」
「それしか感想が出ないな…」
三杉と堀田…。
数ヶ月間、共に練習をしていて、実力は分かっていた。…いや、分かっていたつもりだった。
だが、2人が普段、見せていたものは、実力の片鱗にしか過ぎなかったことを今日、知った。
「…ん?」
ふと、窓の外を覗くと、旅館から飛び出す2人の影が。
「神城……綾瀬…?」
それは、ジャージに着替えた空と大地だった。
「まさか、これからトレーニングにいくのか?」
2人の様子を見て、そう判断する。
さらに、2人に続いて、生嶋と松永も旅館の玄関から現れた。
「あいつら…、明日も試合があるっていうのに…」
インターハイは連日試合がある。当然、明日も試合が行われる。
空と大地に至っては、今日、陽泉高校相手にフル出場している。
「多分、空と大地は、今日の試合内容に、納得してないんだろうな」
普段、試合に勝利にした時は、抱き合うくらい喜びを露わにする空や、大地は、浮かない顔をしていたことが馬場には強く印象に残っていた。
「試合には勝ったけど、それは三杉と堀田がいたからこそだ」
「悔しかったんだろうな」
結局、空と大地は、紫原敦からまともに1回も得点を奪うことが出来なかった。氷室辰也も、倒したとは言い難い。
「…今年の冬は、三杉と堀田はいない。そのことが、さらに不安なんだろう」
インターハイが終わってしまえば、三杉と堀田は、アメリカにある、花月高校の姉妹校に戻ってしまう。
冬のウィンターカップは、2人抜きで戦い、勝ち抜かなければならない。
キセキの世代の実力を目の当たりにし、体感した今、それが至難の業だということを痛感させられた。
たとえ、大会中でも、明日に試合があろうと、時間を無駄には出来ない。
試合に出場する機会がなかった生嶋と松永も、キセキの世代と戦うにはまだまだ足りないものがありすぎると痛感し、自主的に練習を始めた。
「「…」」
旅館の外へ走り出した1年生達を目の当たりにした馬場と真崎はその場から立ち上がり……。
「後輩達が頑張ってるのに、俺達だけ休んでいられないよな」
「ああ。冬は、あいつらが主軸となる。俺達は恐らく…」
実力的なものを考えて、冬、スタメンに選ばれるのは今年入学してきた1年生達だと予想する。そうなれば、馬場、真崎をはじめとした、上級生達は出番は少なくなる。
「けど、俺達にだって出来ることがあるはずだ。だから、今、出来ることをやろうぜ」
馬場と真崎は、ジャージに着替えると、外へと飛び出していく。すると……。
「考えることは、皆、同じだな」
「お前ら…」
そこには、2・3年生全員が揃っていた。
「時間は限られとるんや。はよう、始めましょう」
2・3年生達は、馬場を先頭に、走り始めた。
空と大地は、ひとしきり走りこんだ後、1ON1を繰り返し、生嶋は、ひたすらスリーを打ち続け、松永は、筋トレを始め、上級生達は、チーム練習を始めた。
少しでも、自身の実力アップのため、限られた時間を練習に充てたのだった。
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・・・・・・・
・・・・
「ふふっ、いいチームだな」
花月選手達の練習を眺めていた三杉がポツリと呟く。
「明日の試合に備えて、軽く身体を動かすつもりだったが、…やれやれ、これではそうはいかないな」
三杉は、選手達の下まで近づいていったのだった。
その後、全体で練習を始め、さらには、紅白戦まで始めたのだが、上杉がその場に現れ、チーム全員が説教される事態にまでになった。
三杉を始めとした、選手のほぼ全員が正座で上杉に説教を受け、呆れ顔の姫川と、苦笑いをする相川だった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「やれやれ…」
その光景を、外から眺める堀田。
他の者達と同じ、明日の試合の調整のため、旅館の近場にあるコートまで足を運んだのだが、選手全員が上杉に正座で説教を受けていたため、コートに入れずにいた。
「…仕方がない。軽く走りこむ程度にとどめるか」
コートの練習を諦め、その場を後にする。
「…っ」
踵を返そうとすると、突如、足に違和感が襲い、軽く表情を曇らせる。
「…」
堀田は、ほんの僅か、考える素振りをすると、走り込みを中止し、旅館の自室へと戻っていったのだった。
※ ※ ※
翌日…。
インターハイ4日目、3回戦が始まる。
この日は、キセキの世代を擁するチーム、及び、花月高校がぶつかる試合はない。
洛山高校……。
相手は、全国区の高校が相手だが、危なげなく試合を進めていく。
第2Q終了時には、赤司、実渕、葉山は既にベンチに下がっており、それでも、試合は優勢に進んでいった。
第4Q終盤には、スタメン全員がベンチに下がっており、コート上は、控え選手が試合を行っていた。
点差も覆らないほど開いており、試合は洛山優勢のまま進み……。
『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』
そのまま、洛山が完勝で終わった。
次に、海常高校…。
この日、唯一、苦戦を強いられたのが、海常高校だった。
相手は、全国常連の大仁田高校。
かたや、キセキの世代の黄瀬涼太を擁する海常高校。
かたや、小林圭介が抜けた大仁田高校。
海常高校が完勝で終わると誰もが予想していた。
だが、試合は拮抗した。
第3Q終了時、点差は僅か4点差。
大仁田は、徹底的に黄瀬にボールを持たせないよう動き、黄瀬はほとんどボールを持たせてもらえず、チームのエースでありながら得点は僅か10点に抑えられてしまった。
遂には、第4Q残り3分には、同点となってしまう。
「仕方ないッスね」
海常リスタート、ボールを受け取る黄瀬。
『なっ!?』
ディフェンスに戻る大仁田の選手達の顔色が変わる。
自軍ゴール下で、黄瀬がシュート態勢に入る。黄瀬の手から放たれたボールは、高いループを描き…。
――ザシュッ!!!
ほぼ、垂直でリングを潜った。
一瞬の静寂の後、会場に歓声で埋め尽くされる。
キセキの世代、黄瀬涼太の無敵の必殺技、パーフェクト・コピーが発動される。
それから1分間、黄瀬は、パーフェクト・コピーで大仁田を圧倒。失点を全部防ぎ、得点を量産した。
その1分間で、10点もの点差を付けた。
試合は、黄瀬のパーフェクト・コピーによって流れを引き寄せた海常が優勢に進め…。
『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』
海常高校が試合を制した。
次に、秀徳高校…。
やはり、試合は緑間を中心に得点を重ねていく。
緑間にマークが集中されれば、そこからパスを捌き、他の者が得点をする。
試合は、危なげなく進んでいき…。
『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』
秀徳が大差で試合を制した。
続く、桐皇学園…。
試合は、驚異的なオフェンス力を擁する桐皇学園がガンガン得点を重ね、相手を圧倒していく。
ディフェンスも、桃井さつきが調べ上げたデータを基にした先読みで封殺し、攻め手を塞いでいく。
コート上で、青峰を止められる者はおらず、型にはまらないバスケで得点を量産。
『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』
試合は、圧勝という言葉すら生温い点差を付け、桐皇学園が制した。
そして……。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
――おぉぉぉぉぉーーーーーっ!!!
会場が、この日最大の大歓声に包まれる。
『待ってました!』
『これだよ! この試合を見に来たんだよ!』
花月高校がコート上に現れる。
先日、鉄壁を誇る陽泉高校を降したことにより、注目度は最高。今や、優勝候補筆頭とも言われるほどである。
スタメンに選ばれたのは、先日と同じ、三杉、堀田、天野、空、大地。
「よし、行こうか」
『おう!!!』
花月高校の、3回戦が始まる。
※ ※ ※
「4番と5番だ! あの2人を止めれば――」
相手チームの主将が、悲鳴に近い声を上げ、三杉と堀田を止めるよう指示を出す。
「舐めんなよ!」
空が、目の前の相手をドライブでかわす。そのまま、堀田対策で組んでいたゾーンに向かって突っ込む。
「周りを警戒しろ! パスが来るぞ!」
相手チームの監督が、ベンチから指示を出す。
だが、空はパスを出さず、相手をゾーンを高速スピンムーブでゾーンによる密集地帯を抜ける。そして、跳躍。
「舐めんな、1年坊が!」
相手センターがブロックに現れる。
「らぁっ!」
――バキャァァァッ!!!
相手センターの上からワンハンドダンクを叩き込んだ。
『…』
茫然とする相手選手達。
『すげー!!!』
『花月は三杉と堀田だけじゃないぞ!?』
「そのとおり」
ドヤ顔で空が呟く。
続く、相手のオフェンスを止め、空がボールを拾い、すぐさま大地の渡す。
「行きますよ」
大地がスリーポイントラインの外側から一気に切り込んでいく。先ほどの空と同じく、ゾーンに突っ込んでいく。
「くそっ! 絶対止めてやる!」
相手が大地の侵入に備える。
「囲め!」
大地が侵入すると、ゾーンディフェンスが縮小し、大地を囲みだす。
「ふっ!」
大地がゾーンに突っ込むと、その瞬間、高速のバックステップで下がり、ディフェンスを置き去りする。
『っ!?』
フリーになった大地は、そのままミドルシュート。
――ザシュッ!!!
難なく得点を決める。
「ナイス!」
パチン! と、ハイタッチをする空と大地。
『…』
再び、茫然とする相手選手。
三杉と堀田以外のからの得点。ここで思い出す。空と大地は、あの帝光中を破って全中を制し、さらには、MVPと得点王に輝いた選手なのだと。
圧倒的な戦力で押しつぶされ、試合は進んでいき…。
『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』
大量得点、圧倒的な点差を付けて花月高校が試合を制した。
この日、番狂わせは特に起きることなく、終了した。
※ ※ ※
翌日、インターハイ5日目、準々決勝。
この日、注目のカードは2つ。
洛山高校 × 海常高校
桐皇学園 × 秀徳高校
キセキの世代を擁する高校同士の激突。
高校入って初対戦の洛山と海常。県予選の決勝リーグでぶつかった桐皇と秀徳。
最初の試合は、洛山と海常の試合。
「去年は、結局、戦うことはなかったッスけど、今日は勝たせてもらうッスよ、赤司っち」
「悪いが、そうはいかない。失った栄光を取り戻すため、今日、勝つのは俺だ、黄瀬」
試合前から激しく火花を散らす赤司と黄瀬。
そして、試合は始まる。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
試合は、開始直後から動く。
――ザシュッ!!!
高弾道の超長距離からのスリーがリングを潜る。
黄瀬、試合開始直後からパーフェクト・コピーで突き放しにかかる。
海常の思惑どおり、試合開始僅か3分で、海常が12点もの点差を付ける。
「…」
だが、赤司…そして、洛山、一切動じず、落ち着いたバスケで展開、確実に点差を詰めていく。
第1Q終わった時点で、7点差で海常リード。
試合開始当初から勢いと流れを掴みにかかった海常だが、洛山の動揺を誘うには至らなかった。
第2Qから、洛山が動き出す。
赤司がパスを捌き、五将…実渕、葉山、根布谷が得点を量産していく。
海常も、黄瀬が奮闘するも、点差はどんどん詰まっていく。第2Q終了時には、同点にまでなっていた。
後半戦、洛山は止まらない。いや、止められなかった。
やはり、昨年の主力である、笠松、森山、小堀が抜けた穴は大きかった。新戦力を獲得したものの、黄瀬頼りになってしまう面も多く見られた。
赤司が仕掛けに入り、点差はどんどん開いてしまう。黄瀬も踏ん張るも、やはり、1人では限界がある。
結局、第3Qで洛山が13点もの点差を付けた。
第4Q、洛山優勢は覆らず、点差は、じわじわと付いていく。
やはり、戦力の差が大きく、黄瀬が奮闘しても、他のポジションから崩されてしまう。
「(り)ッバァァァン!!!」
辛うじて、今年、主将に任命されて早川がリバウンドを制しているため、洛山に食らいついていける状況だ。
第4Q、残り5分…。
点差は17点を付けられ、焦った黄瀬がパーフェクト・コピーを再び発動させる。
試合開始当初に3分間、使用したことを考えれば、試合終了までもつ可能戦は限りなく低い。だが、逆転するためにはここで使うしかない。
だが、これも、赤司の思惑どおりだった。
ここで、赤司が黄瀬のマークをし、とにかく黄瀬にボールを渡さないようにピッタリマークする。
「いかに、お前のパーフェクト・コピーが強力でも、ボールを持てなければ宝の持ち腐れだ」
「っ!」
黄瀬、何とか赤司を引き離そうと試みるが、赤司の目が、それを許さない。
ここから、膠着状態に陥る。
双方、共に点が入らない。
洛山は、黄瀬の、紫原のコピーによって、攻撃は全てシャットアウトされ、海常は、黄瀬が赤司のマークによってボールを持たせてもらえないので、点が入らない。
試合は、ごく稀に、黄瀬が赤司をかわし、ボールを受け取り、パーフェクト・コピーで攻めるも、洛山は、緑間のコピーに最大の警戒を強いているため、点差は2点ずつしか詰められない。
結果、洛山、海常は残り5分から極端に得点が減り、海常が僅かずつ点差は詰めていったものの…。
『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』
ここで試合が終了した。
試合終了。
洛山 76
海常 65
洛山が準々決勝を制し、準決勝へと駒を進めた。
海常、ベスト8で敗退した。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
次は、桐皇対秀徳…。
県予選の決勝リーグでは、88-86で秀徳が制していた。
桐皇にとって、これはリベンジマッチでもある。
チームの相性、そして、青峰の緑間の相性を考えると、僅かに秀徳有利…と言うのが、試合開始の前の予想だった。
試合は、開始される。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
試合は、第4Q、残り3分。
桐皇 80
秀徳 69
試合は、秀徳有利の予想を覆し、桐皇リードで進んでいた。
「ハァ…ハァ……くっ!」
思わず、唸り声を上げる緑間。
緑間は、青峰を抑えている。だが、逆に、緑間も青峰に抑えられていた。
県予選では、ある程度は緑間にやられていた青峰なのだが、この試合、青峰は緑間を抑え込んでいた。
「青峰の動き…、緑間の先を完全に読んでやがる。もしかしてあれは…」
「…間違いないと思います。青峰君は、桃井さんから、データを受け取っています」
ふと、浮かんだ火神の予想に、黒子が頷いた。
2人の予想は的中しており、青峰はマネージャーの桃井からデータを受け取っていた。
「(緑間とは、さつきのデータ抜きでやりあいたかったが、仕方がねぇ)」
青峰がチラリと視線を向けると、そこには、試合の備えて待っている、花月高校の面々の姿があった。
無論、青峰とて、これは不本意であった。だが、これには理由があった。
それは、何としてでも、次の対戦相手と戦いたかったからだ。
いつものとおり、データ無しで戦えば、試合はどう転ぶか分からない。
相性を考えれば、僅かに分が悪い。
確実に、花月高校と戦うため、渋々、青峰は桃井からデータを受け取った。
その結果が、桐皇リードである。
試合は、青峰が緑間を抑え込んだことが要因となり…。
『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』
ここで、試合終了のブザーが鳴った。
試合終了
桐皇 92
秀徳 84
この試合を、桐皇が制し、準決勝へと駒を進めた。
秀徳、ベスト8で敗退した。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
そして、花月高校の試合。
試合は、花月が圧倒的優勢で進んでいく。
――ダムッ!!!
空がぺネトレイトでインサイドに切り込み、そのままシュート態勢に入る。
「させるか!」
そこに、2枚のブロックが現れる。
――スッ……。
ここで、空はゴール下で待つ堀田にパスを捌く。
――バキャァァァッ!!!
堀田のボースハンドダンクが炸裂する。
そのまま、着地すると…。
「…っ」
ほんの僅かに、表情を顰める。
「堀田さん? どうしました?」
堀田の反応が気になった空が尋ねる。
「…いや、何でもない。ディフェンスに戻るぞ」
堀田は、ディフェンスに戻っていった。
「…」
そんな堀田を、三杉は見逃さなかった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
試合は、花月高校の圧勝で終わった。
試合終了後、ベンチにて…。
「…」
堀田がバッシュの紐を緩めていると…。
「堀田」
両腕を組み、険しい表情をした上杉が堀田の傍に歩み寄る。
「お前、どこか痛めたな? 恐らく、脚を…」
「…っ」
突然の上杉の発言に、バッシュを緩める手が止まる。
「俺も、同意見だ。健、今日…いや、昨日の試合を含めて、君のプレーは精彩を欠いていた。俺の目は、誤魔化せないよ」
三杉も堀田の違和感に気付いており、同様の感想を得ていた。
「えっ!? やっぱり、さっきのアレって…」
「大丈夫ですか?」
会話を聞いていた空と大地が心配そうな面持ちで堀田に歩み寄る。
「騒ぐほどのことではありません。…痛み…というほどではありませんが、少々、脚に違和感がありまして…」
隠しきれないと判断した堀田は、自身の不調を話していく。
「原因はやはり…」
「…一昨日の陽泉戦…、紫原とのマッチアップが原因やな」
「情報程度ですが…、紫原敦さんも、昨日の試合の後、医者に掛かったという話を耳にしました。やはり、堀田先輩も…」
姫川が、表情を暗くしながら言葉にしていく。
チーム全体が突然のアクシデントにムードが暗くなる。
「…」
少し、考える素振りをした後、上杉が口を開く。
「堀田。お前は明日はベンチに下げる。否は認めん」
上杉がそう決定する。
「…出れない程のものではありませんよ?」
決定を認められず、堀田が食い下がる。
「脚の怪我はバカに出来ない。ここで無理をすれば、この将来(さき)に影響する恐れがある」
「…ですが、次の相手は…」
準決勝の相手は桐皇学園…。
誠凛が敗れた今、オフェンス力ナンバーワンのチームである。
「もっと早く話していれば、昨日今日、お前を休ませる処置が出来た。黙っていた罰だと思え。…ったく、我慢は美徳ではないのだぞ?」
呆れた表情で堀田を窘める。
「…」
堀田は、尚も納得出来ない表情だ。
「まあまあ…。監督の言うことも尤もだよ。ここで無理をすることはない。…それに、そろそろ、後輩達に出番をあげてもいいんじゃないかな?」
納得しない堀田を窘め、親指で後ろを指さす。そこには…。
「お任せ下さい。そろそろ試合に出ないと、身体が鈍ってしまいます」
「任せて下さい。堀田先輩の教えを披露する機会を下さい」
不敵の笑みを浮かべる生嶋と松永の姿が。
「……ふっ、そう言われてしまうと弱いな。分かった。明日は、大人しく、ベンチで休ませてもらおうか」
ここで、堀田は納得し、上杉の言葉を聞き入れる。
「どのみち、お前(三杉)がいるなら、安心して試合を任せられる」
「君にそう言ってもらえるのは光栄だけど、プレッシャーでもあるかな。俺は、健のような規格外ではないからね」
信頼の言葉を贈る堀田に対し、薄い笑みを浮かべてそう返す三杉。
「どの口がそれを言う。…見せてもらうぞ。アメリカで、プロフェッサーとまで称された、お前のバスケを…」
「ああ。……やれやれ、明日は、楽しくなりそうだ――」
三杉は、ニコリと笑った……。
※ ※ ※
準々決勝が終わり、四強が出揃った。
洛山高校 × 多岐川東高校
花月高校 × 桐皇学園
だが、強敵を前に、花月高校が誇る最強の盾、堀田健が欠場となってしまう。
かくして、激戦が終わり、また新たな、激戦が、始まる……。
続く
準々決勝の洛山×海常戦と桐皇×秀徳戦は、省略しました。
理由としましては、じっくり書くと、ものすごく長くなってしまうことと、上手く書ききれる自信がなかったからです(^-^;)
四強が出揃い、インターハイも佳境に入りました。ですが、堀田の欠場。いったい、どうなるってしまうか…。
それではまた!