投稿します!
ペースを戻す言いながら、かなり空いてしまい、申し訳ありませんm(_ _)m
それではどうぞ!
第2Q終了
花月 29
桐皇 48
桐皇の大量リードで前半戦が終わる。
両チーム、控室へと戻っていく。
『桐皇が大量リード。これは決まりかなー』
『堀田がいないと花月はダメだな』
『それにしても、やっぱ、青峰のプレーはすげぇな!』
『うんうん、相手、全然止めれてなかったからな』
観客達は、感想を言い合う中、ひと際、青峰のプレーに魅了された者が多かった。
中には…。
『つうかさ、青峰マークしてた奴って、確か、去年の全中の得点王だったよな? ぶっちゃけ、微妙じゃね?』
『言われてみればそうだな。ずっと抜かれっぱなしだったし、何か、付いていくだけでやっとって感じだったな』
『ショボ過ぎだろ。キセキの世代がいない全中なんてどうせレベル低いだろうし、得点王なんてたかが知れてんだろうな』
口々に、青峰をマークしていた大地の悪口とも取れる言葉を吐く者もいた。
「…ちっ!」
「…」
そんな心無い言葉に、怒りを覚えたのが、元城ヶ崎中学、現海常高校に所属する小牧と末広。
空と大地とは、全中でしのぎを削って戦い合った同士。
自分達との激闘を制し、さらには優勝した彼らを嘲笑し、ついには、彼らと自分達を含めた者達を、低レベルと嘲る言葉を吐いたことに苛立ちを隠せなかった。
「随分な物言いッスね」
「っ! 黄瀬先輩…」
そんな小牧と末広の様子に気付き、溜息を吐く黄瀬。
「ま、観客の言うことも一理あるから、仕方ない気もするッスけど」
「…黄瀬先輩も、あの神城と綾瀬は低レベルだと思ってるんですか?」
思わず尋ねる末広。
「まあ、あの2人は、青峰っちのプレーに付いていくのがやっとッス。でも…」
「「…」」
「あの青峰っちの動きに付いていけることが、どれだけすごいことなのか、全く分かってないッスよ」
黄瀬は、興味深そうな面持ちで空と大地は目で追っていく。
「あのアジリティーに変則的なリズムが加わった青峰っちに付いていけることが出来る奴が、全国にどれだけいるか。分かってないッスよ」
「黄瀬先輩…」
黄瀬の2人を認める言葉に、小牧は多少ではあるが、溜飲が下がった。
「今は正直、2人ががりで来たととしても、負ける気はしないッス。けど…1年後には分かんないッスね」
「どういうことですか?」
「あの2人、初めて戦った時の火神っちと同じ匂いがするんスよ。大きな才能と、その才能の蓋がまだ空いてない。そんな匂いが…」
「それって…」
「神城君と綾瀬君だっけ? あの2人、まだまだ伸びるッスよ。あのタイプは、僅かな期間で劇的に化けたりすることもあり得るッス。もしかしたら、1年後とは言わず、今年の冬には、俺達(キセキの世代)と対等に戦えるレベルになるかもしれないッスね」
「マジですか…」
黄瀬の、2人への評価に、小牧と末広は、思わず息を飲んだ。
「同世代の君達にとってあの2人は無視出来ないッス。死ぬほど努力しないと、差は開くばかりッス」
「!? は、はい! もっと練習して、さらに強くなります!」
発破をかけると、2人は気合を入れた。
「頼もしくて何よりッス。…ま、今は試合ッス。今のところは、桐皇の優勢ッスね」
「花月は青峰を止められないですし、堀田不在でインサイドも劣勢です。それにこの点差。正直、ここから巻き上げられるとは思えないですね」
「俺も同意見だ。点差は安全圏内。もう、8割方勝敗は決まったようなもんだな」
小牧、末広は、既に桐皇勝利と予想する。
「……俺はそうは思わないッス」
「「えっ?」」
黄瀬の言葉に、2人は驚きの声を上げる。
「正直、青峰っちが負ける姿は想像出来ないんスけど、花月がこれで終わるとも思えないんスよね」
「…ですが、花月に打てる手があるとは思えません。…生嶋がベンチにいますけど、この点差をひっくり返す程の結果を残せるとはとても…」
「…」
ここで、黄瀬は考える仕草を取る。
「(…あの4番、三杉とか言う人。この程度だとは到底思えないッス。初めて見た時のあのプレッシャー。あれは間違いなく、俺達と同等…いや、それ以上ッス。そんな彼が、この程度だとは思えないッス。まず間違いなく、後半から動くはず…)」
黄瀬は、そう予測したのだった…。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「開いたな」
「そうですね」
ポツリと火神が呟くと、黒子がそれに返事をする。
「青峰の奴…予選の時よかキレがいい。今の青峰を止められる奴が、全国にどれだけいるか…」
口々に、ライバルである青峰を称賛する。
「…」
「? ……タツヤ?」
そんな中、氷室はただ1人、神妙な顔をしている。そんな氷室に声を掛けようとしたその時…。
「ここ、空いているかな?」
そこへ、隣の空席に1人の男が現れる。
「!? 赤司!?」
やってきたのは、先ほどまでコートで試合をしていた、洛山高校の主将、赤司征十郎。
「今日、俺は試合に出なかったのでね。クールダウンする必要がなかったから、ミーティングの途中で許可をもらって試合の観戦に来たのだが、少々間が悪かったようだ」
赤司は、次の…決勝戦で戦う相手をその目で確かめるため、洛山の中でいち早く観客席にやってきたのだ。
「落ち着いて試合を見たかったから、空席を探していたのだが、あいにくとここしか席がなくてね。少々、配慮にかけるが、構わないだろうか?」
氷室は別として、黒子と火神は、2回戦で赤司率いる洛山と試合をし、負けている。そんな相手と並んで試合を見るのは気分を害するのではないかと、赤司は気にしている。
「僕は構いません。一緒に観戦しましょう」
黒子が了承すると、チラリと火神の方を見る。
「……別に、正々堂々と戦った結果なんだから、一々気にする必要なんてねぇだろ。好きなところで見りゃいいんだよ」
火神も、気にするなとばかりに了承する。
「なら、隣、失礼します」
「ああ」
「氷室さん。こうして会うのは久しぶりですね」
「そうだね。こうやって話をするのは、以前のタイガのバースデーパーティー以来か」
隣同士の赤司と氷室が挨拶を交わす。そして、挨拶もそこそこに、話は試合のことに変わる。
「試合は、桐皇が随分と点差を付けているようだね」
「はい。第1Qはそこまでの点差はなかったのですが、第2Qに入って、青峰君の調子が上がってきました。それに応じて、桐皇も調子を上げています」
「花月も、要所要所できっちり点を取ってはいるが、9番(福山)の代わりに11番(新村)が入ったことで、ディフェンスの穴が無くなって失点は減った。だが、調子を上げた青峰に、綾瀬は歯が立ってねぇ」
「綾瀬? 青峰をマークしていたのは三杉ではないのか?」
疑問を感じた赤司は、思わず聞き返していた。
「はい。青峰君をマークしているのは、綾瀬君です」
それに、黒子が答える。
「…腑に落ちないな。資質は認めるが、今の彼に、青峰を抑える力はないことは明白だ。何か思惑でもあるのか?」
花月の考えが理解出来ない赤司は、腕を胸の前で組んでその狙いを思案する。
「どんな狙いがあるにしても、もう逆転は無理なんじゃないのか? 正直、堀田が試合に出れないのなら、花月に青峰を止められるとは思えねぇ。仮に点が取れても、それ以上に失点を抑えられない。後半戦、逆転出来るとはとても…」
「……俺はそうは思わない」
火神の予想を、氷室が否定する。
「あの三杉が、あまりにも大人し過ぎる。俺には、わざと動かなかったとしか思えない」
「…そうは言ってもな、あの青峰相手じゃ、三杉が付いても結果はあまり変わらなかったと思うぞ? 確かにテクニックはかなりのレベルだが、俺には、キセキの世代のような怖さをあいつ(三杉)からは感じねぇ。とてもじゃないが、この状況から逆転出来るような奴には…」
「タイガは、直接やりあったことがないから分からないだろうが、俺には、タイガやキセキの世代、あの堀田よりも、三杉の方が断然怖さを感じる」
神妙な顔をし、氷室は続ける。
「確実に言えるのが、俺達との試合。三杉は、実力のほとんどを見せていない」
「っ!? マジかよ…」
これには、火神は驚愕する。氷室の実力は、キセキの世代に比類するほど。氷室の言葉を信じるなら、三杉は力を抑えながら氷室を手玉に取ったことになるからだ。
「あの言い知れない恐怖は、実際に相手した者にしか分からないよ。全てを見透かされたかのようなあの感覚は…」
「「…」」
黒子も赤司も、ただ黙って氷室の言葉を聞いていた。
「三杉は前半戦、わざと動かなかった。時折、何かを観察する様子が見られたし、何より…桐皇は、点差こそ付けているが、何処か波に乗り切れていない。完全に流れをのるための1本を防いでいたのは全て三杉だった」
「!? そう言われてみれば…」
「第3Q。必ず、花月は何か手を打ってくる。そして、動くのは確実に三杉だ。まだ試合は、決まっていない」
「っ!」
確信にも似た氷室の言葉と迫力に、火神は、思わず息を飲む。
「俺は試合を見てはいないが、氷室さんの意見に同感だ。…後半戦、俺達の思いのよらない展開になるかもしれない」
赤司はこう予測する。
そして、その予測は、現実のものとなることを、まだ、知らない……。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
花月控室…。
『…』
圧倒的なオフェンス力を誇る桐皇…青峰を止められず、19点ものリードを許し、空気は重い。
「後半…どうする?」
重い空気の中、馬場が口を開いた。
「とりあえず、仕掛けるしかないですよ。開始早々、オールコートで当たりましょう」
空は、オールコートディフェンスを提案する。
「それはいくらなんでも、早計じゃないのか? お前や綾瀬はともかく、終盤の勝負所で体力が尽きるのが関の山だ」
松永が空の提案に苦言を呈す。
「けど、何か仕掛けなきゃ、点差は縮まりませんよ。多少無茶でも、やるしか…」
「いえ、相手も、こちらが何か動きを見せのは予想しているでしょう。私には、劇的な効果があるとは…」
「なら、松永を下げて、生嶋を投入したらどうだ? インサイドが不安になるが、この際、ある程度は目を瞑るしか…」
選手達が口々に意見を出し合っていく。だが、中々結論が出ず、徐々にヒートアップしていく。
「…」
監督、上杉は、無言でこの状況を見守っている。
大量リードされている不安。止められない青峰。その事実が、選手達の心をさらに焦りを生む。
――パンパン!!!
そこへ、大きく手を叩く音が2つ、室内に響く。全員がその音の先に集中する。
「みんな落ち着け。まだ試合は折り返したばかりなんだ。まだまだ慌てる時間帯じゃない」
手を叩いた三杉が、皆を落ち着かせるべく、声をかける。その一言で、ヒートアップしていた選手達が多少落ち着きを取り戻す。
「とりあえず、後半もこのまま行く」
次に言葉にしたのが、先ほどまで変更点なしという言葉だった。
「ちょっと待ってください! 何か手を打たないんですか? 19点差付いているんですよ!?」
この提案に驚いたのが、空だった。
決して楽観視出来ない状況にこの点差。空以外の者も、口には出さないが同様の見解であった。
「落ち着けと行っただろ? 派手な仕掛けを打つ必要はない。点差なんて、いくら付いても、第4Q終了のブザーが鳴るまでにひっくり返せば問題ないのだからね」
周囲の空気を感じつつも、三杉は意見を変える素振りを見せない。
「それに、19点という点差を一気に返そうとすると、やはり、賭けに出なければならない。点差(借金)を掛け(ギャンブル)で返そうとすれば、まず破滅だ」
「で、ですが…」
「空。お前はもしかして、点差を付けられることが不利になる。そう思ってないか?」
「…違うんですか?」
心配する空に、三杉が突如、そう問いかける。
「もちろん、それは間違いではない。…だが、正解でもない」
『…』
「点差を付けてしまったことで、それが後々、自分達の首を絞めることもある」
『…(ゴクリ)』
三杉が発する迫力に、思わず選手達は息を飲んだ。
「前半戦で勝つ為の種は撒いておいた。それが必ず、後半戦に芽を出す。それを踏まえても、今の状況は全く問題にならない。ここは1つ、俺の言葉を信用してくれ」
自信と、三杉の中になる根拠からなる言葉に、選手達は引き込まれ、胸の中の不安が不思議と無くなっていった。
「とは言え、これ以上、点差が付くのは空の言う通り、好ましくない。このままで行くとは言ったが、1つだけ変更する。ここから先は、青峰大輝は俺が相手をする」
『っ!』
「っ! 三杉さん! 私は――」
異議を唱えようとする大地を、三杉は片手で制する。
「綾瀬。お前はよくやった。お前は俺が望んだとおり…いや、それ以上にやってくれた。これはお世辞でも同情でもない。だが、今のお前では青峰の相手は無理だ。今は、ね。この試合に勝つ為、後は俺に任せろ」
「……はい、分かりました…!」
大地は俯き、拳をきつく握りしめ、悔しさを露わにした。
「…」
そんな大地を、空は一瞥した。
「…すいません、少し、席を外します」
大地は一言断りを入れてから控室を後にした。
「…すんません、俺、ちょっとトイレに行ってきます」
大地に続いて、空も控室を後にした。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「…」
控室から少し歩いた扉の先のエントランスで、大地は手すりに手を付きながら遠くを眺めていた。
そこへ、後を追ってやってきた空が、大地の肩にジャージをかけた。
「夏とは言え、汗まみれのままウロウロしてたら身体冷えるぜ」
「……すみません」
そのまま空は、手すりに腰掛けるように体重を預けた。
「…陽泉の紫原は、俺達と戦う土俵もタイプも違った。だから、勝てなくとも『言い訳』が出来た。けど、今日の青峰は、俺達の土俵である平面。しかも、スピードで圧倒された」
「…」
「分かっていたつもりでも、いざ、実力差を突き付けられると、きついな」
「……全くです」
「方や、全中MVP。方や、全中得点王。けど、キセキの世代には歯が立たない。……全く、高校バスケはすげぇよな」
晴れ渡る青空を見上げ、溜息のように言葉を紡いでいく。
「…同感です」
同じく、晴れ渡る青空を見上げながら呟く。
「「…」」
暫しの間、無言で空を見上げていると、空が口を開く。
「…諦めるか?」
「えっ?」
「あと2年もすれば、キセキの世代はいなくなる。そうすりゃ、生嶋と松永がいる俺達に敵はいない。三大大会優勝だって夢じゃないぜ」
ケラケラと笑いながら空が言う。
「……諦めるわけがないでしょう。キセキの世代を倒すと決めたあの誓いを、私は片時も捨てたつもりはありません。…というか、あなたも、欠片もそんなつもりはないのでしょう?」
大地の返答に、空は満足そうな笑みを浮かべた。
「ハハハッ! 心が折れてなくて何よりだ。大地って、一見冷静だと思われがちだけど、ここ一番、俺より熱くなりやすい上に、プライドも高いからな。少し心配したけど、杞憂で良かった」
「…あなたに言われるとは、私もまだまだですね」
大地は苦笑を浮かべながら溜息を吐く。
「ま、現段階じゃ、俺達はキセキの世代に敵わない。…けど、勝敗は別だ。試合での勝利は譲れない。後半、もっと暴れて、勝利に貢献しようぜ」
「もちろんです。私達に出来ることは必ずあります。インターハイ、優勝して冬の糧としましょう」
空と大地は拳を突き出し、コツンと合わせた。
その後、空と大地は控室に戻り、すぐさま、コートへと向かっていった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
――おぉぉぉぉぉーーーーーっ!!!
再びコートへと戻ってきた両校。
観客達は、会場中を埋め尽くす程の歓声でそれを出迎えた。
「さて、後半、どう出るかね」
観客席の一角に座る、誠凛の監督である相田リコの父、景虎が予想を立てる。
「ゴウは、今大会、特別な指示は出さねぇみたいだが、この状況でも口出ししないつもりか?」
以前に景虎は、上杉から、恵まれ過ぎた新加入の強者が大勢揃ったがために、練習は別として、試合では最低限の指示しか出さないと聞かされていた。
「かっちゃんは、と、点差は19点。相手は、ディフェンスの要の堀田が欠場…。ここは一度、スタメンを下げて、休ませてもいい場面だ。たとえ控えでも、しばらくは持つだろうからな。…だが、俺ならやらねぇし、かっちゃんなら、尚のことしねぇだろうな」
足を組み、頬杖と付きながらコートを見つめたのだった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
桐皇ベンチ…。
「第3Qも、メンバーチェンジ無しでそのまま行きます。点差があるからといって、決して油断しないよう、お願いします」
桐皇は、第2Q終了時のメンバーのまま、後半戦に臨む。
メンバーチェンジはせず、一気にトドメを刺すことに決まった。
「…ふぅ」
ベンチに座り、ひと際、大きな溜息を付く桜井。
「桜井君、大丈夫?」
「大丈夫です。今日の試合、まだ何もしていませんから。疲れなんて…本当にすいません!」
疲労が見えている桜井を、桃井が気に掛け、声をかけると、桜井は疲れた表情を見せたものの、それをごまかすかのように頭を下げた。
「ま、一気にトドメ刺してやるよ」
肩にかけていたタオルを桃井に渡し、コートへと向かっていく。
「?」
タオルを受け取った桃井は、何処か違和感を感じたが、考えても思いつかなかったため、そのまま原澤の横へと座った。
青峰に続くように、若松、桜井、今吉、新村がコートへと向かっていった…。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
花月ベンチ…。
「よし!」
「ふぅ…」
先ほどまで気落ちしていた大地だが、すっかり切り替えられ、気合も十分であった。そらも同様で、顔を叩いて気合を入れていた。
「ほな、行きまっせ」
天野も気合十分で、これからの後半戦の意気込みが窺えた。
「…」
唯一、暗い表情をしていたのが、松永。
マッチアップ相手である若松に後れをとっていることが理由だ。
「…松永」
「はい、何でしょう?」
そんな松永を見かねて堀田が声を掛ける。
「若松は強いか?」
「…はい。強いです」
「俺よりもか?」
「いえ、そんなことは…」
「花月高校に入学して、練習でお前は毎日俺とゴール下を争ってきたのだぞ? それを忘れるな」
「は、はい!」
堀田に発破を掛けられたことにより、松永の表情が引き締まった。
「さて、ここからが正念場だ。皆、覚悟は出来ているな」
三杉が言い終えると、選手達の顔を見渡す。選手達の顔は真剣そのものだった。
「…ふっ、結構だ」
選手達の表情に満足した三杉は笑みを浮かべる。
「ここからは青峰はお前がマークするのだろう? 大丈夫なのか?」
先ほど、控室の話し合いで決まったマークチェンジ。堀田が再度、確認の意味を込めて尋ねる。
「問題ない。すでに、『アナライズ』も済んでいる。ここから先、彼(青峰)が活躍することはない。さしあたって、第3Q、青峰を0点に抑える」
『っ!?』
三杉のこの言葉に、選手達…特に大地が驚いていた。
「それじゃ……行こうか」
額に、愛用のヘアバンドを当て、コートへと向かっていった。
『おう(はい)!!!』
それに続くように選手達が続いていった……。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
試合が再開され、ボールは桐皇ボール。
「……へぇ」
ここで、青峰が嬉しそうにほほ笑む。理由は、自分のマークが三杉に変わったからだ。
『青峰に三杉が付いた』
『けど、三杉でも止められんのか?』
観客の興味もそこへと移る。
「…来たか」
氷室もこれに注目する。黒子、火神、赤司や、他の選手も同様である。
「誠二、よこせ!」
早速、青峰がパスを要求。
ボールをキープしていた今吉は、ここでパス。ボールの先は、青峰……ではなく、若松。
「あっ!?」
エース対決が見られると思っていた花月側は意表を突かれ、観客からは溜息。
「おい、誠二!」
「すんまへんなぁ。青峰はんより、こっちの方が空いてたんですわ」
苛立つ青峰に、今吉は、表情を変えずに謝罪の言葉だけ述べた。
「(ホンマは、何か嫌な予感がしてならんのですわ。後半戦最初の1本やし、不確定要素のある青峰はんより、ここは確実性の高いキャプテンを選びますわ)」
この1本を確実に取る為、今吉はエースの青峰ではなく、前半戦、実績がある若松を選択した。
ボールを受け取った若松。背中に付くのは松永。
「止める!」
背中でジリジリ押し込んでくる若松に対し、松永はグッと腰を落とし、それを阻止している。
「(さっきまでより重い! だが、人間、すぐさまパワーアップ出来るわけねぇ! 分かるぜ! けどな、押し返すのにそんなに全力注いだら、これには対応出来ねぇだろ!)」
押し込めないと見た若松は、フェイントを掛けてスピンムーブで反転しながら松永をかわす。
「ちぃっ!」
やはり、押し返すのに、力を込め過ぎたため、突然のスピンムーブに対応出来なかった。
「おっしゃー! もらったぁっ!」
そのままボールを右手で掴み、そのままリングに跳躍。持ったボールをリングに叩きつけ――
――バシィィィッ!!!
るはずだったのだが。ボールは若松の手から弾きだされた。
ブロックに行ったのは…。
「っ! んだとぉっ!?」
青峰のマークを解いてブロックに向かった三杉だった。
『おぉぉぉぉぉーーーーーっ!!!』
ルーズボールを大地が拾った。
「ちっ! だから俺に寄越せっつったんだよ…」
溜息と怒りが混ざった声で青峰が呟いた。
「大地! こい!」
大地がボールを投げると、空がボールを受け取り、速攻。そのままワンマン速攻を決めたかったが、桐皇、戻りが速い。全員がディフェンスに戻っていった。
「どうするかなぁ…」
桐皇の守備をどうやって突破するか考えていると…。
「三杉さん?」
三杉がボールを要求している。その三杉の目の前には青峰がいる。空は、すかさずパスを出した。
ボールは、カットされることなく三杉に渡る。
「ようやくやる気になったかよ。散々もったいぶりやがって、せいぜい俺を楽しませて――」
その時、青峰の全身に言い知れようがない悪寒が襲う。
『っ!?』
それは、他の選手達も同様であった。
その直後…。
「っ!」
両手をダラリと下げ、野生を全面に出してディフェンスを始めた。
「っ! 青峰が本気になった!?」
青峰の雰囲気が変わったことに気付く火神。
「みたいですね」
これに、黒子も同意した。
「完全にディフェンスに集中した。今の青峰を抜き去るのは誰であっても至難の業」
赤司は、青峰の全力のディフェンスを評価する。
『…(ゴクリ)』
固唾を飲んで見守る観客と選手達。
左サイドに展開する三杉に対し、他の選手達は右サイドに寄っていた。
『アイソレーションだ…』
観客の誰かが口にした。
「…」
「…」
三杉と青峰の勝負。
今までは、極力勝負を避け、引き付けてパスを捌いていたが、今回は違う。会場の観客達も、それを感じ取って黙って勝負を見守っていた。
――ゴクリ…。
今までの歓声が嘘のように静まり返る会場。唾を飲み込む音さえも聞こえてきそうなほどの静寂に包まれている。
2人の姿はさながら、居合の達人同士が、お互いの間合いで刀を構える侍そのものである。
時間にして僅か数秒。だが、数分にも感じられるこの対峙。
観客及び、コート上にいる選手達が注目する中、2人の勝負が始まる。
そして次の瞬間、勝負を見守る者達のその目に移ったものは……。
――ダムッ!!!
それは、棒立ちで抜き去られる、青峰大輝の姿だった。
「っ!?」
慌てて反応した青峰が振り返ると、そこにあったのは、レイアップを決める三杉の姿だった。
ボールがネットを潜る音が会場中に響き渡る。
『…』
会場にいる、堀田を除く、全ての者が、茫然としてその光景を見つめている。
2人の勝負を見守っていた1人であるカメラマンが、思わず持っていたカメラを床に落としてしまう。
その落下音で、ハッと会場を正気に戻す。
――おぉぉぉぉぉーーーーーっ!!!
その目に移った事実を脳がようやく理解し、観客達が会場を揺るがさんばかりの歓声を上げた。
「さあ、試合はこれからだ」
薄い笑みを浮かべ、三杉が囁くように声を発した。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
第3Q最初に先制したのは花月。
そしてここから試合は、誰もが予想しえないところへ、進んでいくのだった……。
続く
試合描写よりも、会話描写の方が多くなってしまいました(^-^;)
ここからが花月…三杉の本領発揮です。
キセキの世代みたく、でたらめになっちゃうかもです…(^-^;)
感想、アドバイスお待ちしております。
それではまた!