投稿します!
遅れてしまいました…(^-^;)
気が付けば、前投稿から一ヶ月…。
時間が欲しい…。
それではどうぞ!
青峰のブロックを逆手に取り、バスカンをもぎ取った三杉。
フリースローラインに立ち、ボールの感触を確かめ、しっかり掴むと、落ち着いてフリースローを放つ。
――ザシュッ!!!
ボールはリングを潜り、しっかりとボーナススローをものにした。
第4Q、残り6分21秒…。
花月 69
桐皇 64
点差はさらに開いた。
「よーし!」
空が三杉の下に駆け寄り、ハイタッチをする。
『…』
青峰を半ば無効化され、さらには手玉に取ってバスカンを取られ、茫然とする桐皇。
「…」
青峰は、ディフェンスに戻っていく三杉を目で追う。
「(あんな奴がいたんだな…)」
第3Qから自身を圧倒する実力を見せた三杉。青峰は、逆転されたにも関わらず、その胸中は落ち着いていた。
「(…勝ちてぇ)」
三杉に勝ちたい…、青峰の頭の中にあるのは、これだけであった。
「スー…ハー…」
青峰は1つ深呼吸をしながら目を瞑り、両腕をだらりと下げた。
集中力を極限にまで研ぎ澄ませる。
すると、目の前には大きな扉が現れる。青峰は、その扉にそっと両手をかける。そして、力一杯押す。
扉は開かれ、そこに飛び込んだ…。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
今吉がボールを拾う。
「…っ」
すると、青峰が寄って来て、ボールを要求する。今吉は、持っていたボールを青峰に渡した。
ボールを受け取った青峰はゆっくりとドリブルを始める。
そこへ、近くにいた空と大地が青峰のマークに向かう。
「「?」」
青峰の様子が僅かに違うことを察したが、特に気にすることなくディフェンスを始める。
――ダムッ!!!
「なっ!?」
「っ!?」
青峰が動くと、空と大地の間を風のように通り抜けた。2人が振り返ると、青峰はすでに完全に2人を抜き去っていた。
「なんや!? あのルーキーコンビをあっさり抜きよった!」
ヘルプに天野が向かう。
――キュッ! …ダムッ!!!
青峰は1度停止し、そこから加速。激しく緩急の付いたそのドライブを、天野は付いていくことが出来なかった。
「…くっ!」
続けて生嶋がヘルプに向かうが…。
――ダムッ!!!
スピードをほとんど落とさず、バックロールターンで生嶋をあっさりかわす。
そのままリングに向かっていき、ペイントエリア内に入ると、そこでボールを掴み、跳躍。
――バキャァァァァッ!!!
そのままリングにボールを叩きつけた。
『…』
抜かれた4人は茫然と青峰に視線を向ける。
「いいね。やっぱ、勝負はこうでなくちゃ面白くねぇ」
青峰は三杉に視線を向ける。
「もっとだ。もっと楽しくしてくれ、三杉ぃっ!」
満面な笑みを浮かべる青峰。
「………ゾーンか」
ボソリと三杉が呟く。
「青峰からくるこのプレッシャーは…!」
「陽泉戦の折の紫原さんと同じ…!」
刺すようなプレッシャーを放つ青峰に空と大地は圧倒される。
――青峰大輝、ゾーンに入った……。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
オフェンスが切り替わり、花月ボール…。
現在、空がボールを保持し、ゲームメイクを行っている。
「……ちっ!」
空が苦々しい表情をする。理由は、コートでひと際存在感を醸し出す青峰に対してだ。
ゾーンに入った者との対戦は先日の陽泉戦の紫原で経験をしているが、青峰大輝は、それとはまた違っていた。
驚異的なまでにディフェンス力を誇った紫原。青峰は、圧倒的なまでのオフェンス力を有していた。
今吉が、フェイスガード気味に空をマークする。
「っ! んなろ!」
――ダムッ!!!
隙を突いて空が今吉の横をドライブで抜ける。
「(ここからどうする…)」
ペネトレイトでツーポイントエリアに切り込んだ空。そのまま突っ込むか、それとも急停止してシュートを放つか…。
――キュッ!!!
空は今吉を抜いてすぐに停止し、シュート態勢に入る。
「させるか!」
福山がヘルプにやってきて、ブロックに現れる。
だが、空はシュート態勢を中断し、そこからノールックビハインドパスに切り替えた。
ボールは、横をかけてきた大地に向かっていく。ボールが、大地の手に収まろうとしたその時!
――バチィィィッ!!!
「「っ!?」」
そのパスは、大地に手に収まることなく、青峰にスティールされてしまう。
「(マジかよ! 俺はパスの直前まで青峰の位置は把握していた。どんな瞬発力してんだよ!)」
その驚異的な瞬発力と、空がパスのキャンセルが出来ないギリギリのタイミングで飛び出したことでパスは失敗する。
青峰は、その野生を以って絶妙なタイミングで飛び出したのだ。
ボールを奪った青峰は、そのままワンマン速攻を仕掛ける。
「っ! 行かせない!」
生嶋が、青峰の前に立ちはだかる。
――ダムッ!!!
だが、青峰はクロスオーバーであっさり生嶋をかわしてしまう。
生嶋を抜いた後は、そのままリングに向かってドリブルをしていく。
「止める!」
「止めなければ!」
空と大地が、生嶋を抜いた際のスピードが緩んだ隙に戻り、スリーポイントラインの外側で青峰を捉えた。
「っ! ゾーンに入った青峰君に追いつくとは…。スピードはやはりさすがと言ったところか」
「…だが、ゾーンに入った青峰を止められる訳がねぇ。今の青峰を止められるのは、同じくゾーンに入った奴だけだ」
青峰を捉えた2人のスピードを評価する氷室。火神は、ゾーンに入った青峰を止めることは無理だと断じだ。
「…」
空と大地がディフェンスに現れたことにより、青峰は一旦止まる。そこから、左右に揺さぶりを始める。
「(右か左か……いや、考えても分かるわけねぇんだ。勘で食らい付いてやる!)」
――ダムッ!!!
青峰が切り込む。
「(右! ビンゴ!)」
勘が的中し、青峰が切り込む方向に動いた空。だが…。
「っ!? マジかよ!?」
それでも、青峰の速さが上回り、空の横を抜けていく。その抜けた先に、大地が空のかわした直後の青峰のボールをカットする為、そのボールに手を伸ばした。
「(これなら…!)」
空が抜かれると想定し、抜いた直後の一瞬の隙を狙いすます大地。
――ダンッ!!!
「なっ!?」
青峰は、大地がボールに触れる瞬間、ボールを大地の股下に投げつけ、そのまま加速。投げたボールを拾った。
「(食らいやがれ!)」
ボールを拾うと、そのままボールを右手に掴み、リングに向かって跳躍する。
グングンリングへと近づいていく青峰。ボールは、リングへと叩きつけられる…。
――バチィィィッ!!!
が、青峰の右手の収まっていたボールは、その右手から弾き出された。
「まさか自らの意思でゾーンに入るとはね。これにはさすがに驚いた。…けど、違うんだよ」
ダンクをブロックしたのは、三杉。
「スピードだとかテクニックだとか、君が俺に勝てないのは、そういうことではない」
青峰の手からボールを弾き出した三杉。ルーズボールを空が素早く拾う。
「くれ!」
ブロックをした三杉はそのままフロントコートに駆け出し、ボールを要求する。空はすかさずフロントコートに向かっている三杉にボールを投げた。
「ゾーンの強制解放を見せてくれて礼に俺も見せよう。『支配』の発展形を…」
ボールを受け取った三杉はそのまま速攻で駆けていく。
「っ! 行かせへんで!」
そこに、今吉がディフェンスに現れる。だが、三杉は構わずそのまま今吉に突っ込んでいく。
「っ! ぶつかるぞ!」
ディフェンスが目の前にやってきたにも関わらず、減速するでもなく、左右に切り返すのでもなく、むしろ、スピードを上げて突っ込んでいく三杉を見て、思わず声を上げた。
変わらず三杉は今吉に突っ込んでいく。
――3メートル…2メートル…1メートル…。
その距離が、ゼロへとなろうとしたその瞬間…。
――今吉が、まるで譲るかのように道を空けてしまう。
「っ!」
ハッとした表情で後ろへ振り返ると、三杉は既に今吉の後方に駆けていた。
「行かすか、ボケ、カス!」
次に現れたのは、若松だ。
三杉を威嚇するように声を荒げ、両腕を広げながら三杉を迎え撃ちにきた。
「…」
それでも三杉は、先ほど変わらず、そのまま直進……若松に突っ込んでいく。
再び、両者の距離がどんどん縮まっていく。そして、2人の距離がゼロになる直前…。
――ダムッ!!!
若松は、先ほどの今吉同様、道を譲るように空けてしまう。
「んだと!?」
驚愕の声を上げながら若松は後方に振り返った。
『道譲ってどうすんだよ!』
観客からは、非難するような声が上がる。
「(そんなわけないやろ!)」
「(今、あいつは確かに――)」
今吉、若松の2人を抜き去った三杉は、そのままリングに向かってドリブルしていく。
「っ! 今度こそ、今度こそ止めてやる!」
スリーポイントラインを僅かに超えた瞬間、青峰がディフェンスに現れた。
「ゾーンに入った青峰なら…!」
先ほどまであしらわれていたが、ゾーンに入ったことにより、100パーセントの実力を引き出している為、青峰に期待感を持つ火神。
野生+ゾーンの青峰が三杉を迎え撃つ。
一定の距離まで両者の距離が詰まると、おもむろに三杉がフッと笑みを浮かべた。
「……気前がいいな。また1本くれるのかい?」
「っ!?」
その時、青峰の頭の中に、先ほどのバスカンの記憶が蘇る。その瞬間、青峰の身体が僅かに硬直する。
――ピッ!
0コンマ何秒の硬直による一瞬の隙。常人…いや、実力者ですら、隙と呼べるレベルとは言えない僅かな時間の硬直。だが、三杉の前ではそれが致命的なる。
その隙を付き、三杉がミドルシュートを放つ。青峰、ブロックに向かうが、ほんの僅かに間に合わなかった。
――ザシュッ!!!
ボールは、キレイにリングを潜り抜けた。
三杉は拳をグッと握りこむ。
「……っ!」
対して青峰は、悔しさから拳をきつく握りしめた。
「……青峰っちが……ここまで…」
自身の目標である青峰が簡単にあしらわれている光景を見て、黄瀬は茫然とする。
「その前に、今吉と若松は、なんで道を開けたんだ?」
「…いや、あの2人は道を開けたのではない。……道を開けさせたのだよ」
高尾の疑問に、緑間が答える。
「三杉は、接触する直前に、左右に小さなフェイクを入れた。今吉と若松は、それに反応してしまい、正面を開けてしまった」
「人間には、『無条件反射』というものがある。熱い物に触れた時に手を引いてしまったり、物が飛んでくれば咄嗟に避けてしまうあれだ。彼は、ギリギリのタイミングでフェイクを見せ、無条件反射を起こさせた」
氷室の解説に赤司が補うように捕捉する。
「っ! そんなの、狙って起こせるものなのかよ!?」
信じられない火神が思わず立ち上がって聞き返す。
「相手の動きと心理。この2つを正確に読むことが出来れば可能だ。…俺自身、この眼を使っても3回に1回起こせるかどうか…。試合中ともなればもっと確率は低くなるだろう」
赤司は、火神を言い含めつつ、険しい表情を取った。
「…」
青峰は無言で俯いている。
ゾーンに入ってもなお、青峰は三杉を止められなかった。
「(どうすればあいつに勝てる!? どうすればあいつを……!)」
三杉は勝つ方法を必死に考える。
「(勝ちてぇんだよ、三杉に! 俺が全力を出してなお倒せねぇ三杉に!)」
格上と断じた三杉に勝ちたいと願う青峰。その時…。
――昨年の敗北。君はそこから何も感じることはなかったのか? 何も学ばなかったのか?
青峰の頭の中に、三杉が発したこの言葉が蘇る。
昨年のウィンターカップ。青峰は誠凛に負けた。
――負けた…。そうか、俺は負けたのか…。
自身の初めての敗北。言葉に出来ない、胸を締め付けるような痛みを伴った。
仲間に頼らず、自分1人で戦った結果、青峰は誠凛に負けた。その後、誠凛は、キセキの世代を擁した高校に勝ち続け、ついには、圧倒的格上である洛山を倒し、日本一になった。
彼らは決して、1人で戦ったわけではない。力を結集させることで、日本一の座をものにした。
――俺のバスケは、仲間を頼るようには出来てねぇ。
だが、1人で戦った結果、青峰は誠凛に負けた。
その後、洛山と戦う誠凛を目の当たりにし、1人で戦うことの限界を知った。
――たとえ、青峰が三杉に勝ったとしても、試合に負ければ何の意味がない。
「……スーフー」
青峰は、1度大きく深呼吸をした。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
オフェンスが切り替わって桐皇ボール…。
今吉がボールをキープする。
「(…もう、手があれへん。…こんなん、計算外や)」
すっかり気落ちする今吉。その動きは、精彩を欠いていた。
「(…気を抜き過ぎだぜ!)」
――ポン…。
「あっ!」
隙を付いて空が今吉がキープするボールをスティールする。
「よっしゃ!」
ボールを奪った空はそのままワンマン速攻で駆ける。グングン加速し、空はフリースローラインを越えたところでボールを掴み、そのまま跳躍する。
「トドメだ!」
ボールを右手に持ち替え、ワンハンドダンクの態勢に入る。ボールはリングへと叩き込まれる……。
――バチィィィッ!!!
その瞬間、ボールは空の手から弾き飛ばされた。
「なっ!?」
ブロックされた空は、後ろを振り返ると…。
『青峰だぁぁぁーーーっ!!!』
ブロックしたのは、青峰だった。
「調子に乗ってんじゃねぇぞ、1年坊!」
ルーズボールを桜井が拾う。
「よこせ!」
青峰が前方を指差し、ボールを要求。桜井は、フロントコートに走る青峰の前方にボールを投げた。
「よし…!」
ボールを受け取った青峰はそのまま速攻をかける。
「あかん、ターンオーバーや!」
空の速攻が防がれ、焦りながらディフェンスに戻る花月選手達。このままターンオーバーからの速攻が決まると思っていたが…。
「…ちっ!」
三杉が青峰の前に立ち塞がる。青峰は舌打ちをし、いったん停止する。その間に、花月選手達はディフェンスに戻る。
「…」
「…」
青峰はドリブルをしながら機会を窺う。そこから青峰が仕掛ける。
――ダムッ…ダムッ!!!
レッグスルーからのクロスオーバーを仕掛ける。だが、青峰の動きを掴んでいる三杉はそれに難なく付いていく。
「っ!」
クロスオーバーの直後、急停止し、反対方向に横っ飛び、そのままフォームレスシュートの態勢に入る。だが…。
「くっ!」
それすらも三杉は見透かし、シュートコースを塞ぐように青峰の目の前に現れる。
「ダメか…!」
「彼の裏をかくことは不可能か…!」
火神と氷室は隙を見せない三杉に対し表情がさらに険しくなる。
「(…くそっ! 今の俺じゃこいつには…!)」
ゾーンに入ったことにより、状況を冷静かつ正確に把握出来る青峰は、今の自分では三杉には勝てないことを嫌でも実感出来てしまう。
「(また…負けるのか…)」
昨年、青峰は誠凛に負けた。今年のインハイの決勝リーグでも、秀徳に負けた。
――敗北による喪失感…。
かつて敗北を知らなかった青峰にとって、無意識に望んでいたものではあったが、それは耐え難いものだった。
「(俺じゃ…俺だけじゃ、こいつには勝てねぇ…)」
自分1人では、三杉には勝てない。それは、青峰にはもう分かっていたことであった。ここで思い出す。1人でやれることの限界に…。チームメイトと力を合わせることで強敵を圧倒する誠凛…自身のライバルである火神の姿に…。
「(………認めるぜ。今の俺じゃ、お前(三杉)には勝てねぇ…)」
ここで初めて、青峰は力の差を認める。
「(だがな、それでも、試合の勝敗だけは、譲らねぇ!)」
――ブォン!!!
青峰がボールを放り投げる。
「っ!」
三杉が目を見開く。
だが、そのボールの先は、リングではなく、ゴール下に陣取っていた若松であった。
「うおっ!」
若松は、突然飛んできたボールに驚きながらもキャッチする。
「ボーとしてんな、打て!」
青峰の声に若松はハッとした表情の後、そのままシュートを放つ。
――バス!!!
放たれたボールは、リングを潜った。
『おぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』
その直後、観客から大歓声が上がる。
「なかなかいいパス出すじゃねぇかよ!」
「うるせえーよ」
ハイタッチをした若松の手を青峰はかわす。
「……まさか、あの青峰っちがパスをするなんて…」
今の青峰のプレーを見て、黄瀬は苦笑いをする。
「おいおい…、青峰がパスかよ…」
火神も同様であり、赤司も少なからず驚愕の表情をしていた。
青峰のバスケにパスはない。これは、周囲の選手達にとっては周知の事実であった。
1人で決められるだけの実力を持ち、バスケを楽しみたいが故の青峰の悪癖であった。少なくとも、以前の青峰であるなら、勝てるまで無謀な1ON1を繰り返していただろう。
それだけに、驚きを隠せなかった。
「…なるほど、ナイス判断、ナイスパスだ」
三杉は、今の一連の青峰のプレーに素直に称賛の言葉を贈った。
そして、予感する。これで、勝敗が分からなくなったと…。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
――バチィィィッ!!!
「っ!?」
生嶋の変則スリーが青峰によってブロックされる。ルーズボールを福山が拾い、桐皇ボールとなる。
今吉がフロントコートまでボールを運び、そこから青峰にボールが渡る。
『来た! 青峰だ!』
「…」
「…」
青峰がゆっくりドリブルを始め、徐々にスピードを上げていく。
――ダムッ…。
青峰はボールを視線の反対側に弾ませる。ボールは青峰の手から離れていく。一見、隙だらけに見える。
「(…違うな、これは、変則のチェンジオブペース!)」
――ダムッ!!!
素早くボールを右手で掴み、ドリブルで三杉の横を抜けようとする。だが…。
――キュキュッ!!!
それを読み切った三杉は先回りをして青峰の進路を塞ぐ。その瞬間、青峰はボールを両手で掴んだ。
『打つ気か? だが、マークが外れてないぞ!?』
三杉のマークは外れていない。このままシュートを打っても止められるのが目に見える。だが…。
――ピッ!
青峰の選択は、ノールックビハインドパスを出す。ボールの行き先は、左サイドの、スリーポイントラインの外側に立っていた桜井。
「あっ!?」
マークを外してしまった生嶋は思わず声を上げる。慌ててブロックに向かうものの…。
――ザシュッ!!!
桜井のクイックリリースの方が速く、放たれたスリーはリングの中心を射抜いた。
「よしっ!」
拳を握る桜井。
「よっしゃぁぁぁっ! 同点だぁぁぁーーーっ!!!」
若松が歓喜の声で桜井の背中を叩き、称えた。
「…くっ!」
悔しさを露わにする生嶋。
「…ふむ、この流れは少しまずいか…」
三杉がポツリと呟いた。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
花月ボール…。
空がボールを運び、そのまま右スリーポイントラインの外側にいる三杉にボールが渡る。
「…来い」
「…」
青峰がマークをする。フェイクに対応出来るよう、若干距離を開けている。
「……いいのかい? そんなに開けて。俺は一言も言ってないよ――」
「……っ!?」
青峰は目を見開いた。気が付くと、三杉と青峰の距離がさらに開いていた。
「くっ……そ!」
三杉がスリーを放った。青峰もブロックに飛んだが僅かに間に合わなかった。
――ザシュッ!!!
ボールはリングを潜った。
「――外がないとはね」
『うおぉぉぉぉぉっ! ここでスリーは痛い!』
観客からは悲鳴に近い声が上がる。
「今のは、キャプテンの不可侵のシュート(バリアジャンパー)!」
「……いや、似ているが少し違う。彼のは膝を曲げるのではなく、抜いている。さらに難度の高い高等技術。瞬発力がある者があれを使えば、当然、もっと速くなる」
赤司が解説を入れる。
桐皇は同点に追いつくも、またもや花月リードを許してしまう。
「……ちっ!」
またもや止めることが出来なかった青峰は、思わず舌打ちが漏れる。
「気にすんな! 流れはうちにある。すぐに取り返すぞ!」
若松が青峰に発破をかける。
「るっせぇな、でけぇ声出すな」
悪態を吐くものの、青峰の口は僅かに綻んでいた。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
オフェンスが切り替わり、今吉がボールをキープする。
「(今更、裏も表もないで! うちはエースに託すだけや!)」
今吉は迷わず青峰にパスをする。
『おぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』
両チームのエース対決に、観客が沸き上がる。
「第3Qに入ってから、青峰君はこれまで1度も三杉さんを抜けてない。この2本はパスで切り抜けてきましたが、それもいつまでも通用するとは…」
「ですが、彼は2本のパスを『見た』。それは、彼の頭の中に刻まれています」
桃井の懸念に、原澤はコートを見据えながら答える。
「これまでデータになかったパスという選択肢が青峰君に増えた以上、読みが効く状況ではなくなった。そうなれば、青峰君のアジリティーがものを言います」
「…」
「…」
三杉、青峰が睨み合う。青峰がゆっくりボールを動かしながら機会を窺う。そして…。
――ダムッ!!!
「っ!」
そこから一気に仕掛けると、三杉の横を高速で抜き去った。
『抜いたぁぁぁーーーっ!!!』
フリースローラインを越えたところで跳躍し、ボールを右手で掴む。
「こんの…!」
そこへ、天野がブロックに向かったが…。
――バキャァァァァッ!!!
天野の上からリングへとボールを叩きつけた。
『うおぉぉぉぉぉっ! 青峰がついに決めたぁぁぁーーーっ!!!』
リングから手を放し、ゆっくりとディフェンスに戻る青峰。三杉とすれ違い様…。
「ぶち抜いてやったぜ」
不敵な笑みを浮かべながら三杉に呟いた。
「…フッ、面白い」
三杉も不敵な笑みを浮かべたのだった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
ここからは、両チーム、エースを中心に展開する。
青峰がボールを受け取れば、パスを捌きつつ、パスを囮に自ら仕掛け、得点を重ねていく。
一方、三杉も、究極のフェイクで青峰を翻弄しつつ、パスを捌き、得点を重ねていった。
試合は、3点差と1点差を繰り返しながら第4Q終盤まで進んでいった…。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
第4Q、残り53秒…。
花月 86
桐皇 83
桐皇のオフェンス。ボールは現在、青峰がキープしている。残り時間を考えれば、桐皇はこの1本は絶対に落とせない。青峰の表情にもある種の決意が見られる。
「…」
「…」
睨み合う両者……、そして、青峰が動く。
『フォームレスシュート!?』
青峰がボールを投げる態勢を取った。三杉もブロックへと動く。
――ダムッ!!!
だが、青峰のそれはフェイク。フォームレスシュートを中断すると、そのまま仕掛けた。
『抜いたか!?』
しかし、三杉もそのドライブに付いていく。三杉のブロックもフェイクであった。
ドライブを読まれたものの、青峰は強引に押し進めていく。リング近くにまで切り込むと、そのままボールを掴んで跳躍し、ダンクの態勢に入った。
そこへ、リングと青峰の間に、三杉がブロックに現れた。
――バチィィィッ!!!
三杉と青峰が激突する。
「っ!」
ここで、青峰は理解する。このダンクは失敗すると。
「ちぃっ!」
青峰は零れるボールを空中で掴み直し、そこからパスに切り替えた。
「なっ!?」
「上手い!」
火神と氷室は、その青峰のプレーに驚愕する。
ボールの行き先は、福山。ボールは福山の手に収まった。
「よっしゃぁぁぁっ!」
若松が声を上げる。福山がシュート態勢に入る――。
「――読んでいるよ」
「なっ!?」
シュート態勢に入る直前、空と大地がダブルチームで福山にマークした。
「くそっ!」
空と大地のダブルチームにより、福山はボールをキープするので精一杯。
「わざと俺の左側を通らせ、パスルート限定させ、そこにルーキーコンビをぶつけた。うちのルーキーコンビによるダブルチーム。君以外に抜ける者がいるかな?」
「っ!?」
三杉による罠。青峰の表情が歪む。
「(やべぇ、もうボールをキープ出来ねぇ!)…キャプテン!」
たまらず、福山は視界に入った若松にパスを出した。
――バチィィィッ!!!
その瞬間、死角から1本の手が現れる。
「もらいや!」
天野がパスコースに割り込み、ボールをカットした。
『なっ!?』
ボールをカットした天野はすぐさまボールを拾った。
「天野!」
フロントコートに走っていた三杉がボールを要求した。天野はすぐさまフロントコートへボールを投げた。
ボールを受け取った三杉はそのまま進軍していく。フリースローラインを越えたところでボールを掴んで跳躍する。
「決めさすかよ! 絶対止める!」
そこに、青峰が現れた。
『青峰速ぇぇぇっ!!!』
ボールがカットされ、三杉が走ってから少し遅れて青峰も三杉を追っていった。平面では青峰が速いため、ギリギリのところで三杉を捉えた。
青峰は、三杉のシュートコースを完全に塞いだ。
「…さすが、一筋縄ではいかないか」
ポツリと呟くと、ダンクを中断し、空中で態勢を整え、手首のスナップを利かせてボールをふわりと浮かせた。
――ザシュッ!!!
青峰のブロックを山なりに越えていったボールは、リングの中心を潜った。
『おぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』
ターンオーバーから、三杉が青峰のブロックをかわし、得点を決めた。
『…』
閉口する桐皇選手達。落とせない1本を落とし、トドメに近い失点をしてしまった。
点差は5点にまで広がり、残り時間を考えると、試合の結末はほぼ決まったも同然であった。
「まだ終わってねぇ! ボールを俺によこせ!」
諦めムードになりかけていたチームを青峰が一喝して引き戻す。
若松がリスタートをし、今吉がボールを運び、青峰にボールが渡った。
「…」
「…っ」
マークするのは三杉。両者の最後の1ON1が始まる。
青峰は力を振り絞る。自身の最大最速を以って、三杉に仕掛けようとしている。
「(……行くぞ!)」
意を決し、青峰が仕掛ける――。
「――データは揃った」
――バチィィィッ!!!
青峰が動いたその瞬間、青峰の手からボールを弾いた。
「っ!?」
弾いたボールを拾い、そのままワンマン速攻を仕掛ける。
――ダン!!!
そのまま、ボールを掴んでダンクの態勢に入った。
「負けねぇ! 俺は絶対にお前に勝つ!」
青峰がブロックに現れた。
――バチィィィッ!!!
三杉と青峰が激突する。
「さすがはキセキの世代のエースだ。最後は少しヒヤッとしたよ」
「っ!」
青峰の手が徐々に押されていく。
「試合終盤のその気持ちを忘れるな。それさえ忘れなければ、君は俺を超えられる……かもな」
――バキャァァァァッ!!!
青峰のブロックを弾き飛ばし、ボールをリングに叩きつけた。
『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』
ここで、試合終了のブザーが鳴り響く。
激闘のセミファイナルがついに、終結した……。
続く
桐皇戦終了です。
青峰の成長をもっと表現したかったのですが、これが限界でした。
最近はもう1つの方にかかりっぱなしでこっちの執筆が出来ませんでした。複数の作品を遅らせずに投稿出来る人はホントに尊敬出来ますね…(^-^;)
気が付けば投稿1周年が経過してました。今後も投稿を続けられればと思います。
感想、アドバイスお待ちしています。
それではまた!