黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

少し、駆け足で展開していきます。

それではどうぞ!



第50Q~インターハイファイナル~

 

 

 

試合終了…。

 

 

花月 90

桐皇 83

 

 

三杉が青峰を吹き飛ばすダンクを決め、そこで試合が終了した。

 

『…』

 

桐皇の選手達は、茫然とする者、悔しさを露わにする者など、各々が敗北を噛みしめていた。

 

花月の選手達は、大きく喜びを表現する者はおらず、試合に勝利することが出来てどこかホッとしている様子だった。

 

両校の選手達がセンターサークル内に整列する。

 

「90対83で花月高校の勝ち!」

 

『ありがとうございました!』

 

互いに礼をした。

 

「全中優勝は伊達やないな。完敗や」

 

「全中には、お前ほどやりにくい相手はいなかったよ」

 

空と今吉が握手をした。

 

「…」

 

三杉が、無言で青峰に握手を求めた。

 

「ハッ! 俺の負けだ。…だがな、次は俺が勝つ」

 

青峰は不敵な笑みで握手に応じ、ベンチへと引き上げていった。

 

「…待ってるぜ」

 

三杉はそんな青峰を見据え、ベンチへと引き上げていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

桐皇の選手達が、控室へと戻っていく。

 

各々がこみ上げるものを堪えながら歩いていく。試合に出場した選手達、特に桜井はタオルを頭から被り、桐皇の選手達の中でひと際沈んでいた。

 

「くくくっ、あんな奴がいるとはな。…これだからバスケは面白ぇ」

 

青峰だけは笑い声をあげていた。その態度に主将の若松が怒りを露わにした。

 

「てめぇ! 負けたんだぞ!? なにヘラヘラして――」

 

青峰の袖を掴み、強引に自分の方を向かせたところで若松を言葉を止めた。いや、続けることが出来なかった。

 

「…るっせぇな、放せよ」

 

「…っ」

 

掴んだ手を無理やり振り払うと、青峰は1人歩いていった。そこへ、原澤が若松の肩に手を置き、そっと首を横に振った。

 

「…負けて悔しくない者などいません」

 

原澤はそれだけ若松に告げた。若松は、それ以上青峰を非難することは出来なかった。

 

何故なら、青峰は――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

青峰は、会場の裏手にあるベンチに1人来ていた。ここは人気がほとんどなく、今は青峰1人しかいない。

 

「…」

 

青峰は、1人今日の試合を振り返る。

 

 

――完敗だった…。

 

 

点差だけ見れば7点差だが、試合の内容は、完全に三杉に抑え込まれ、言い訳の余地がなかった。

 

「…」

 

ふと、青峰は自分の過去を振り返った。

 

 

――練習したら、上手くなっちまうじゃねぇか…。

 

 

――俺に勝てるのは俺だけだ…。

 

 

「…っ」

 

かつて、青峰はバスケを愛するが故。バスケをより楽しみたいが為に自身の成長を止めた。

 

全ては、周りが成長することを願い、自分と対等に戦い、より、スリリングな戦いをしたいが為に…。

 

その驕りが、昨年のウィンターカップの敗北に繋がり、ひいては、今日の敗北に繋がった。

 

もし、絶望せず、練習を絶えず重ねていたら、昨年も、今日も、違う結果になっていたかもしれない。

 

だが、それも全ては後の祭りだ。

 

「……くっ」

 

思わず、青峰の口から嗚咽が漏れる。

 

今日の三杉誠也は強かった。自分のバスケの全てが止められてしまった。

 

青峰は腹立だしくてならなかった。それは敗北した自分自身のことはもちろん、三杉程のプレーヤーが日本にいなかったこと…。そして、何より…。

 

「…俺は、なんで……時間を無駄にしたんだ…!」

 

自分より上はいないと高を括り、何もせずに練習をサボっていた過去の自分自身に腹が立ってしょうがなかった。

 

自分以上の実力者は、成長を止めずともいたのだ。

 

「ちくしょう……ちくしょう…!」

 

青峰は、自分自身の無能さを呪い、涙を流し続けた。

 

「……大ちゃん…!」

 

その光景を物陰から見ていた桃井が、一緒に涙を流していたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

一方、花月側の控室。

 

桐皇とは違い、無事、決勝へと駒を進めることが出来、選手達の表情は明るくい。

 

「…ふぅー」

 

さすがに三杉は、青峰を相手にしながら試合をコントロールしていたので、いつもの試合後より疲れを見せていた。

 

『…』

 

その中でも、1年生の4人は、表情が暗かった。

 

「すいません、俺ちょっと先上がります」

 

空は一言告げ、そのまま控室を後にした。

 

「私も失礼致します」

 

それに続くように大地が出ていった。

 

「俺もすいません、お先に失礼します」

 

「すいません、僕も」

 

松永と生嶋もすぐ後を追った。

 

「あいつら、まさか…」

 

「そのまさかだろうな」

 

馬場の予想を言い終える前に、三杉が肯定した。

 

「今日の試合内容で満足出来る程、あいつらの目標が低くないだろうからな」

 

「明日も試合…それも決勝。相手は洛山だってのに、相変わらずだな」

 

真崎が呆れながら言った。

 

空と大地は、近くのストリートバスケのコートに出向くと、ひたすら1ON1を繰り返し続けた。

 

生嶋は、日課であるスリーを500本。それにプラス100本の計600本決めるまで打ち続けた。

 

松永は、足腰を鍛えるため、ひたすら走り込みをしたのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

コート上から花月、桐皇の両校が去ったが、観客席の黒子、火神と言った選手達は未だ席に座っていた。

 

『…』

 

キセキの世代のエースとまで称された青峰が、半ば封殺されて試合は終わってしまった。終盤、通じるようになったものの、やはり、最後には止められてしまった。

 

「……今日の青峰は強かった」

 

『…』

 

「スピード、キレ、俺の見た中で最高だった。あれにパスを絡められたら、正直、俺じゃあ止められねぇ」

 

火神がポツリと喋り始めると、周りの者達は無言で耳を傾けていた。

 

「だが、三杉は、そんな青峰すらも止めてみせた。…あいつは…いや、あいつらは、どれだけ高見にいるんだよ…!」

 

あいつら…。それは、三杉誠也だけではなく、堀田健のことを指している。そして、現時点の自分では相手にもならないことも理解してしまい、悔しさを露わにする火神。

 

キセキの世代の中でも最硬のディフェンス力を誇る紫原敦は堀田健に、キセキの世代の中でも最強のオフェンス力を誇る青峰大輝は三杉誠也に完敗した。

 

「…今大会、ディフェンスに長けた陽泉が負け、オフェンスに長けた桐皇が負けました。花月高校に勝てる高校があるとするなら…」

 

黒子が言い終えると、視線を隣に移した。

 

「…」

 

言葉を発することなく、赤司はコートを見つめていた。

 

「今大会、攻守において最もバランスの取れ、優れたチームは洛山高校だ。…もしかしたら、初めから花月高校と対等に戦えるのは洛山高校だけだったのかもしれないな」

 

氷室が赤司の方へ向きながら言う。

 

「…陽泉にしろ、桐皇にしろ、花月に引けを取ってはいなかった。次、やれば試合の勝敗は分かりませんよ」

 

そういい終えると、赤司は席から立ち上がった。

 

「…勝算はあるのか?」

 

火神が尋ねる。

 

「…明確には言えない。ただ分かるのは、俺が今までやってきた試合の中で一番厳しいものとなるだろう。…だが、俺は好都合だと思っているよ」

 

「どういうことですか?」

 

赤司の真意が分からず、思わず質問をする黒子。

 

「俺は…いや、俺達(洛山)は去年、誠凛に負け、王の座を失った。誠凛にリベンジを果たしたが、それはあくまでも雪辱を果たしただけ。再度、王を名乗るには、それに見合った試練が必要だと考えていた」

 

ここで赤司がフッと笑みを浮かべた。

 

「花月高校…、俺達、洛山が再び『開闢の王』を名乗り、最強の名を取り戻す相手にはうってつけの相手だ。明日、俺達は全力を以って花月高校を討つ」

 

そして、決意に満ちた表情を浮かべたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

日はすっかり暮れ、辺りは既に夜の帳が降りていた。

 

「ハァ…ハァ…」

 

「ハァ…ハァ…」

 

空と大地は、未だ1ON1を繰り返していた。生嶋と松永は試合後ということもあり、自主トレを終えて既に旅館へと戻っていた。

 

「今のはどうだ?」

 

空が尋ねると、大地は首を横に振った。

 

「…残念ながら、スピード、キレ共に青峰さんのものには遠く及びません」

 

「ちっ! まだまだダメか…」

 

それを聞いた空は苛立った表情を取った。

 

今日の試合で見た青峰のイメージを元に、自分のスキルアップを目指した空だが、まだまだ元のイメージには遠く及ばなかった。

 

「…正直、アレを再現するには、今日明日程度のトレーニングではとても足りません。やはり、少しずつ着実に積み上げていくしか…」

 

「分かってるよ。けど、これまでは三杉さんや堀田さんに頼りっぱなしだったんだ。最後の決勝くらい、2人の手を煩わせずに戦いたいんだよ。それに、明日の俺のマッチアップは――」

 

「――普通に考えれば、空のマッチアップは赤司さんになりますね」

 

キセキの世代の主将、赤司征十郎。10年に1人の逸材を率いていた選手だ。

 

「花月の司令塔は俺だ。俺が何も出来なきゃ話にならねぇ。だから、僅かな時間でも練習して戦えるように――」

 

 

――ファサ…。

 

 

突如、空の頭にタオルが掛けられた。

 

「そこまでだ。今日フル出場している上、明日は決勝だ。コンディションを整えるのも選手の仕事だぞ」

 

2人の様子を見に来た三杉がやってきた。

 

「三杉さん……すいません、あと少しだけいいですか? もう少しで何か――」

 

「――ダメだ。いくら、お前達の体力が無尽蔵でも、これまでの全ての試合フル出場した上、今日も1試合丸々こなしてるんだ。確実に疲労は蓄積している。これ以上は、明日のパフォーマンスに影響する」

 

渋る空を、三杉が遮るように窘める。

 

「「…」」

 

それでも空と大地は納得しなかった。

 

「…これまでの試合の内容が満足出来なかったのか? それとも、明日の試合への不安か?」

 

「……それも勿論あります。ですが、それ以上に…」

 

「三杉さんと堀田さんがいない今年の冬。このままじゃ間違いなくうち(花月)は惨敗します」

 

2回戦の陽泉。準決勝の桐皇戦でキセキの世代のレベルを肌で感じた空と大地。三杉と堀田がいない今年の冬に不安を感じていた。

 

「…お前達の気持ちはよく分かる。俺も健も、アメリカで十分味わったからな。…だが、今日はここまでにしておけ。今は、先のウィンターカップのことより、明日の決勝戦の方が重視しろ」

 

「…はい」

 

「…分かりました」

 

三杉に諭され、空と大地は渋々了承した。

 

「みんな待ってる。さっさと着替えろよ」

 

そう告げると、三杉は2人に背を向け、踵を返して旅館へと戻っていった。

 

「…」

 

その際、三杉は後ろを振り返り、2人を見やった。

 

「…お前達はインハイ前とは比べ物にならないくらい成長してるんだが…、紫原や青峰レベルの選手を相手にしていれば、気付かないのは無理もないか…」

 

三杉はボソリと呟くように言ったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

翌朝…。

 

「ハァ…ハァ…!」

 

起床時間より2時間は速い早朝、ジャージ姿の空が息を切らしながら走っていった。

 

「……ぷはぁ!」

 

公園の前に辿り着くと、空はそこで足を止めた。

 

「…ふぅ」

 

公園内に設置された水道に向かい、喉を潤した後、頭から水をかぶった。

 

「やっべ、タオル持ってきてなかった」

 

ここでタオルを忘れた事に思い出した空は焦り出した。

 

「どうぞ」

 

その時、空の手にタオルが渡された。

 

「……ふぅ、…って、大地?」

 

タオルで濡れた髪を拭き取ると、ここでタオルを渡した者の正体が大地である事に気付いた。

 

「あなたが旅館を出ていったのを見かけたので、きっとあなたはここに寄ると思ったので、先回りして待っていました」

 

「大地…」

 

「お気持ちは察します。本音を言えば私も試合まで練習をしておきたいです。…ですが今日は決勝戦です。あなたの体力は知っていますが、あなたの相手が相手だけに、それでもどうなるか分かりません。この辺りにしておきましょう」

 

「……ハァ、分かったよ」

 

大地に促され、空は渋々了承した。

 

旅館に戻った空が上杉に大目玉を食らったのはご愛敬…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

 

『洛山高校、花月高校は、アップを開始して下さい』

 

『しゃす!』

 

決勝戦の舞台にたどり着いた花月高校、洛山高校が一礼をし、ウォーミングアップの為、コートへと現れた。

 

『来た! 王者奪還を狙う、キセキの世代、赤司が率いる、開闢の帝王、洛山高校!』

 

『対するは、強力な新戦力を率い、突如現れ、陽泉、桐皇を退けた新星、進撃の暴凶星、花月高校!』

 

会場のボルテージは、この日最高潮となった。

 

初戦で昨年のウィンターカップのリベンジを果たし、準々決勝で黄瀬涼太が擁する海常高校を破った洛山高校。

 

2回戦で今大会の最硬のディフェンス力を誇る陽泉を破り、準決勝で今大会最強のオフェンス力を誇る桐皇を破った、花月高校。

 

下馬評どおりの洛山は別として、花月高校は当初、ダークホース程度の扱いであったが、今では、優勝候補の筆頭にまで挙げられていた。

 

「健、足の調子はどうだ?」

 

足に違和感を感じ、準決勝を欠場した堀田。三杉が調子を確認する。

 

「問題ない。むしろ、昨日1日退屈してたことで、身体がなまっていないかの方が心配だ」

 

問題ないとばかりに笑みを浮かべた堀田。

 

「おりゃ!」

 

 

――バキャァァァァッ!!!

 

 

パスを出し、ボールを受け取った空がワンハンドダンクを炸裂させた。

 

『出た! 神城のダンク!』

 

沸き上がる観客。180㎝にも満たない空によるダンクは、今では花月の代名詞となっていた。

 

「やれやれ、試合前だというのに…」

 

そんな空を呆れながら見つめる三杉。

 

「さて…」

 

三杉が今日の対戦校である、洛山高校の方へと視線を向ける。

 

 

――バス!!! バス!!! …!!!

 

 

洛山高校のウォーミングアップは、派手なことはせず、淡々とレイアップを決めていた。

 

「…1本も外していない。これが、洛山高校…」

 

ベンチからその光景を眺めていた姫川が冷や汗を流していた。

 

「それくらいのレベルでなきゃ、王者は名乗れねぇよ。…ましてや、監督はエージだ。とことん、選手達に基本が染みついてるだろうよ」

 

「…」

 

旧知の仲である上杉剛三と洛山高校の監督、白金永治。2人が視線でやり合う。

 

「…なるほど、1人1人のスキルは素晴らしい。高校最強の名は伊達ではないな」

 

「特に、スタメンの実力はその中でも群を抜いている。歯ごたえのある試合になりそうだ」

 

冷静に相手を分析する三杉と堀田。

 

「…うぉ、すげぇ。これが洛山か!」

 

「…分かっていたことですが、激戦は避けられませんね」

 

空と大地も、三杉と堀田の横に並び、洛山の様子を眺めていた。

 

「ディフェンスだけなら陽泉。オフェンスだけなら桐皇の方が上だろう。…だが、総合力では間違いなく、洛山の方が上だ」

 

「オフェンスにもディフェンスにも隙がない。ベンチの層も厚い。…さて、どうなるか」

 

「三杉はんでもやっぱ、洛山は強敵でっか?」

 

同じくやってきた天野が、三杉に尋ねる。

 

「あぁ、強敵だよ。特に、赤司征十郎は、俺とは相性が良いとは言えないし、何より、今まで戦ってきたキセキの世代とは違う」

 

「どういうことですか?」

 

三杉の言葉の意味が分からず、空が尋ねる。

 

「紫原にしろ、青峰にしろ、彼らは『勝負』にこだわっていた。だが、赤司はおそらく『勝利』にこだわったバスケをしてくるだろう。その手の選手は変に熱くなり過ぎないし、ビビッて消極的になり過ぎることもない」

 

「『勝負』ではなく、『勝利』ですか…」

 

大地が唸るように呟く。

 

「もし、紫原と青峰が初めから勝利だけを重視して試合に臨んでいたら、もっと手強かった…いや、最悪、負けていたかもしれない」

 

「…」

 

空の表情が強張る。

 

「空、綾瀬、天野。今日の試合、俺と健だけが活躍しても勝てない。…頼りにしてるぜ」

 

「うす」

 

「はい」

 

「了解や」

 

3人が返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「見てみろよ玲央姉! 花月マジで強そうだぜ!」

 

洛山高校の葉山小太郎が目をキラキラ輝かせながら花月高校の選手達を見つめる。

 

「ハァ…、あなたは気楽でいいわねぇ」

 

そんな葉山を実渕玲央が呆れた表情で溜息を吐いた。

 

「いやいやだって、あんな凄いの見せられたら、テンション上がりまくりっしょ!」

 

「言っておくけど、今日の試合、あんたがキーマンになるのよ? あんたの相手は――」

 

「――分かってるって。今日の俺の相手は……綾瀬大地。確かにやるけど、誠凛の火神ほどじゃないし、まっ……ぶっ潰してやるよ…!」

 

葉山は持っていたボールを額に乗せ、目をギラつかせながら言った。

 

「俺のことより、玲央姉はどうなんだよ。確か玲央姉の相手って、三杉誠也っしょ?」

 

「…そうね。細身だけど、無駄がなく、強靭かつ柔軟なあの肉体……たまらないわ♪」

 

実渕が三杉の全身を舐めまわすように視線を向ける。

 

「ほれぼれしちゃうわ…………敵でさえなければ…ね」

 

全身を観察した後、真剣な面持ちとなった。

 

「正直、私でどこまで相手になるか分からないけど、やるだけのことはやってみるわ」

 

消極的な言葉ではあるが、実渕の表情からは、確固たる意志が感じられる表情であった。

 

「私と同じ……いえ、私以上に不安なのは――」

 

「――ゲェェェェェェェェェェプ!!!」

 

そこに、とてつもなく長いゲップ音が響いた。

 

「もう! 相変わらず、試合前のドカ食いはやめられないのね!」

 

怒り半分、呆れ半分の表情で実渕が根武谷永吉を睨みつける。

 

「応よ! 何せ、今日の俺の相手はあの紫原に勝った堀田だからな。いつも以上に食ってきたぜ!」

 

特に悪びれることなく、腹を摩りながら根武谷は笑った。

 

「見ろよ、あいつのあの筋肉。小手先のテクニックに逃げず、パワーアップを追及し続けたあの肉体を! 俺と同じ考えの奴がいてくれて嬉しいことこの上ないぜ!」

 

堀田を見て、自分と同じ志を持つ同士を得たとばかりに根武谷は嬉しさを露わにする。

 

「俺も、去年、負けてからこの身体をさらに鍛え直した。今の俺は、パワーだけなら、紫原にだって勝てる自信がある。どっちの肉体が最強か、決めてやろうじゃねぇか!」

 

自らの肉体に力を込めて隆起させ、根武谷はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

「準備は出来ているようだね」

 

そこに、洛山のキャプテン、赤司征十郎がやってきた。

 

「今日の相手は過去最強。全員が100パーセント…いや、120パーセントの力を尽くさなければ勝てない。健闘を祈る」

 

「「「応(あぁ)(えぇ)!」」」

 

「実渕、お前の相手は三杉誠也だ。正直、かなり分が悪い相手だが、それでも相手をしてもらう。五将のブライドに賭けても彼を止めてみせろ」

 

「もちろん、タダでやられるつもりはないわ」

 

赤司の激に、実渕が笑顔で答える。

 

「根武谷、実渕と同様、お前の相手も今日は分が悪い。だが、インサイドを制圧されてしまっては、試合どころではない。お前のその鍛え上げたパワーで、インサイドを制圧しろ」

 

「応よ! 任せておけ!」

 

同じく赤司の激に、根武谷が筋肉をさらに隆起させて答える。

 

「葉山、今日の試合、お前のところが狙い目になる。とは言え、相手は全中を優勝したチームのエースだ。決して侮るな」

 

「ハハッ! 任せてよ」

 

赤司から掛けられた激に、葉山は目をギラつかせながら答えた。

 

「さあ、帝王の凱旋の前に立ちはだかる最後の試練。超えてみせるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

――ざわざわ…。

 

 

迫る決勝戦を前に観客達が騒めいている。どちらも優勝候補に恥じない戦力を有する高校。興味は尽きない。

 

しばらくすると、決勝にまで駒を進めた2校がコートへとやってきた。

 

 

 

――おぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!

 

 

 

その瞬間、試合会場に地響きが起こる程の歓声が上がった。

 

「出てきたな」

 

「…始まるッスね」

 

緑間と黄瀬が、ポツリと呟いた。

 

観客席には、インターハイに出場した高校を始め、あらゆる選手達がこの試合を観戦している。

 

キセキの世代を擁する高校はもちろん、誠凛高校も、決勝の行く末を見守る為、会場に来ている。

 

「洛山高校対花月高校…」

 

「この試合、いったいどんな結果になるんだ…!」

 

誠凛の日向と伊月が、コートに注目しながら言った。

 

 

 

「さて、そろそろ時間だ。みんな、準備は出来ているな?」

 

「ふっ、言われるまでもない」

 

「当然!」

 

「もちろんです」

 

「当たり前や!」

 

三杉の問いかけに、堀田、空、大地、天野が決意に満ちた表情で答えた。

 

「いい顔だ。…ここまで来たなら、特に言うことはない。勝つぞ」

 

『応(はい)(よっしゃっ)!!!』

 

花月の選手達が、三杉の号令で声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『試合に先立ちまして、両チームの紹介を行います。始めに、白のユニフォーム。洛山高校、コーチ、白金永治』

 

呼ばれた白金永治は立ち上がり、一礼をした。

 

『続きまして、スターティングメンバーの紹介です。12番、五河充(いつかみつる)』

 

「…よし! やるぞ!」

 

呼ばれた、洛山高校の12番、五河充が顔を両手で2回叩き、コートへと入場した。

 

 

「12番? 11番の四条じゃないのか?」

 

日向が、自分達と対戦した時に出てきた選手と違うことに、眉を顰めた。

 

「けど、デカいな。去年の陽泉の主将の岡村くらいあるな。洛山には、あんな奴がいたのか…」

 

伊月が、意外な伏兵に軽く驚嘆の声を上げた。

 

「去年のウィンターカップの時にもベンチにいたわよ。…もっとも、出番はなかったけれど」

 

「…そういや、1人でけぇのがベンチにいた気がするな」

 

火神が思い出すように言った。

 

「洛山の控えのセンターよ。昨日の試合にも出ていたけれど、それを見る限りでは、かなりの選手よ。陽泉と洛山以外なら、どこに行ってもスタメンでしょうね」

 

リコが、知ってる限りの情報をもとに、詳細なデータを口にしていく。

 

「あれ? 洛山のセンターって、根武谷だよね? それじゃあ、根武谷はベンチ?」

 

「んなわけないだろ。…見ろ」

 

小金井が、疑問に思ったことを口にし、日向が否定しながら指を指した。

 

 

『7番、根武谷永吉』

 

「おっしゃぁぁぁぁっ!!!」

 

呼ばれた根武谷が筋肉を意識したポーズを取り、大声を上げながら筋肉を隆起させた。

 

 

「バックアップセンターの五河をスタメンに起用し、かつ、根武谷をスタメンに据えたということは…」

 

「えぇ、おそらく、根武谷君は今日、パワーフォワードとして起用されたのでしょうね。狙いは…」

 

「堀田健対策……ッスね」

 

伊月、リコに続き、火神が答えを言った。

 

 

 

「紫原ですら勝てなかった堀田を、根武谷1人でどうにか出来るわけない。バスケは、インサイドを制圧されたらそれこそ勝敗に影響する」

 

「2人がかりで、堀田を抑えるってことだな」

 

緑間の解説に、高尾が続けて説明した。

 

「根武谷は今でこそセンターをやっているが、中学時代のポジションはパワーフォワードだ。昨日の準決勝でも、パワーフォワードのポジションに入っていた。昨日の試合を見た限りでは、ブランクは感じられなかった」

 

「なるほど、昨日の試合の時から既に今日の準備は進められたってことか」

 

高尾は改めて、洛山の戦略に感心したのだった。

 

 

『6番、葉山小太郎』

 

「ははっ♪」

 

呼ばれた葉山が、屈伸運動、両腕の関節を鳴らしながらコートへと入場した。

 

 

「今日の試合、間違いなく葉山にボールが集まることになるだろうな」

 

伊月が自身の予想を告げる。

 

「マッチアップ相手は多分……綾瀬か。…伊月、2度も葉山を相手にした経験から基づいて、花月の綾瀬とぶつかったら、どうなると思う?」

 

日向は、誠凛で1番葉山を相手にした経験がある伊月に尋ねた。

 

「……今の時点なら、葉山の方が上だと思う。だけど、綾瀬は試合を追うごとにどんどん進化していく。だからどうなるか…」

 

伊月は、このように予想した。

 

 

『5番、実渕玲央』

 

「ふふっ♪」

 

呼ばれた実渕は、薄い笑みを浮かべながらコートへと入場した。

 

 

「『天』『地』『虚空』…そして、『下弦』の4つのスリーを携えたシューター…」

 

「けれど、今日の相手は恐らく、三杉誠也だ。あの男に、どれだけ抗えるか…」

 

「…」

 

陽泉の木下、そして氷室は、実渕を高く評価しているが、今日の相手はあの三杉。分が悪いと予想する。紫原は、特に表情を変えることなくコートを見つめていた。

 

 

『キャプテン、赤司征十郎』

 

「スー…フー…」

 

呼ばれた赤司は、1度深呼吸をし、コートへと入場した。

 

 

「言わずと知れた、キセキの世代の主将、赤司征十郎…」

 

「自身の実力はもちろん、赤司に率いられる者は、実力を限りなく発揮出来る…」

 

「高校バスケット界最強のポイントガードや…!」

 

永野、高尾、今吉が、最強を目する司令塔、赤司。

 

 

無冠の五将と称される実渕、葉山、根武谷。そして、その3人に引けを取らない実力者の五河。そして、キセキの世代の赤司…。

 

これだけの実力者を擁する洛山高校…。普通であれば、これだけの選手達が相手を目の前にすれば、たちまち震え上がり、果ては、戦意を喪失してしまうだろう。…だが、今日の相手は違う。

 

 

『続いて、緑のユニフォーム、花月高校…。』

 

洛山高校の紹介が終わり、対戦校の花月高校の紹介が始まる。

 

『コーチ、上杉剛三』

 

呼ばれた上杉は、立ち上がり、一礼をした。

 

『マネージャー、姫川梢』

 

呼ばれた姫川は、立ち上がり、ペコリと一礼をした。すると、観客席の一部から、ピーピーと指笛を鳴らす音が響く。

 

『続きまして、スターティングメンバーの紹介です。11番、綾瀬大地』

 

「さあ、行きましょう」

 

呼ばれた大地は、落ち着いた表情でコートへと入場する。

 

『10番、神城空』

 

「よっしゃぁぁぁっ! ガンガン走るぜ!」

 

ピョンピョンとジャンプをしながら空がコートへと入場する。

 

『8番、天野幸次』

 

「ほな、行きまっせ!」

 

呼ばれた天野は、腕をグリグリ回しながら入場していく。

 

『5番、堀田健』

 

「よーし、行くぞ!」

 

呼ばれた堀田は、存在感を醸しながらコートへと入場する。

 

『キャプテン、三杉誠也』

 

「さあ、行こうか」

 

呼ばれた三杉は、薄く笑みを浮かべながらコートへと入場する。

 

洛山に続き、花月の選手達がコート上のセンターサークル内に整列した。

 

 

花月高校スターティングメンバー

 

4番SG:三杉誠也 190㎝

 

5番 C:堀田健  204㎝

 

8番PF:天野幸次 192㎝

 

10番PG:神城空  179㎝

 

11番SF:綾瀬大地 182㎝

 

 

洛山高校スターティングメンバー

 

4番PG:赤司征十郎 173㎝

 

5番SG:実渕玲央  190㎝

 

6番SF:葉山小太郎 181㎝

 

7番PF:根武谷永吉 192㎝

 

12番 C:五河充   200㎝

 

 

「紫原と青峰を1対1で降した三杉と堀田、全国屈指のディフェンス力とリバウンド力を持つ天野。そして、未だ発展途上、潜在能力未知数の実力者の神城と綾瀬の花月高校…。そして、俺達(キセキの世代)を率いていた赤司に、無冠の五将の実渕、葉山、根武谷と、それに匹敵する実力を持つ五河の洛山高校…」

 

「戦力的にはほとんど互角。…なら、勝敗はどう転ぶか…」

 

「…赤ちんが負けるとは考えられないけど、それと同じくらい、花月も…」

 

「確かめさせてもらうッスよ」

 

緑間、火神、紫原、黄瀬が試合開始を今か今かと待ち焦がれている。

 

『これより、インターハイファイナル。洛山高校と花月高校の試合を始めます』

 

「礼!」

 

『よろしくお願いします!!!』

 

審判のコールに、選手達が礼をした。

 

 

 

――おぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!

 

 

 

ついに、ティップオフが目の前に近づき、会場が再び歓声に包まれる。

 

選手達は、それぞれ散らばっていく。そして、センターサークル内に、花月高校、洛山高校のジャンパー、堀田、五河が立った。

 

『…』

 

選手達は、無言でこれから始まるジャンプボールに神経を注いでいる。

 

 

――ゴクリ…。

 

 

先ほどまで歓声を上げていた観客達も、それに釣られるように静まり返った。

 

静寂に包まれる会場…。

 

『ピーーーーーーーーー!!!』

 

審判が笛を吹き、そして…。

 

ボールが高く上げられた

 

 

――バッ!!!

 

 

ボールが上げられると、堀田、五河が同時に飛んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ファイナルティップオフ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏の王者を決める最後の戦いの火蓋が今、切って落とされた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





何とか1ヶ月空けずに投稿出来ましたが…、相変わらず、時間が取れない…(^-^;)

閑散期になって暇になると言われながら、今日まで来ました…Orz

たまの休みも、他にやることが忙殺され、結局ほとんど執筆出来ず…。

にも関わらず、別の二次のアイディアがポンポン浮かぶんですよね…。これは自分だけでしょうか…( ;∀;)

感想、アドバイスお待ちしています。

それではまた!
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