黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

思ったより早く仕上がりました!

それではどうぞ!



第51Q~主導権~

 

 

 

――ファイナルティップオフ…。

 

 

審判によってボールが高く上げられ、試合が開始される。

 

「ふっ!」

 

「っ!」

 

ジャンパーの堀田と五河が同時に飛ぶ。ジャンプボールを制したのは、堀田。

 

「ナイス、堀田さん!」

 

ボールは空の目の前に落ち、すかさず空がボールを確保する。

 

「よっしゃっ!」

 

ボールを持った空は前を向くと…。

 

 

――ブン!!!

 

 

前方へと勢いよくボールを投げた。

 

『っ!?』

 

ボールは、密集する洛山選手達の隙間を縫うように抜けていき、ティップオフと同時に走っていた大地の手元に飛んで行った。

 

『うおー、スゲーパス!』

 

ボールを受け取った大地はそのままドリブルで進軍していく。洛山選手達は、意表をつかれた形となり、慌てて大地の後を追う。

 

大地は、そのままフリースローラインを越えたところでボールを掴み、レイアップの態勢に入る。

 

先取点は花月高校……と、思われたが…。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

手元からボールを放られた直後にブロックされる。

 

『赤司だぁぁぁっ!!!』

 

意表をつかれた洛山選手の中、赤司だけは空と大地の電光石火の奇襲を読み、ディフェンスに戻って冷静にブロックをした。

 

「残念だが、簡単に先取点はやれないな」

 

「くっ!」

 

ボールは大地の手元からこぼれていく。

 

「ナイス、赤司!」

 

ルーズボールを葉山が抑えた。

 

「葉山、くれ!」

 

ブロックをした赤司がボールを要求する。葉山はすかさず赤司にボールを渡す。

 

「走れ!」

 

赤司の号令と同時に洛山選手達が一斉にフロントコートへと駆け上がる。

 

「なっ…!」

 

『なにぃぃぃぃーーーっ!!!』

 

この、洛山の行動に、花月選手達はもちろん、会場中から驚愕の声が上がる。

 

赤司がドリブルしながらフロントコートまで進むと、そこからパスを出す。ボールを受け取った選手がすぐさまパスを捌いていく。

 

洛山のバスケは、相手チームのバスケを真っ向から受け止め、きっちり対策を立ててから攻勢に出る、所謂、横綱相撲ようなバスケスタイル。

 

故に、序盤から積極的に攻めてくることは全くと言っていいほどない。

 

にも関わらず、洛山が第1Q序盤から誠凛を彷彿させるラン&ガンで攻める姿に、驚きを隠せなかった。

 

「ちぃっ!」

 

データに全くない、想定外の洛山の攻撃に、空の口から思わず舌打ちが出てしまう。

 

再び、スリーポイントラインの外側で赤司にボールが渡り、赤司はそのままドリブルで切り込んでいく。

 

「むっ…」

 

ドリブルで切り込む赤司。待ち受けるのは、ゴール下を陣取っている堀田。フリースローラインを越えたところで、堀田が飛び出す。

 

 

――ピッ!

 

 

「っ!」

 

赤司は、堀田をギリギリまで引き付け、リング付近にボールを放った。堀田はカットしようと試みるも、紙一重でボールに触れることが出来なかった。

 

リング付近に放られたボールに飛び込む1つの影。

 

『根武谷だぁぁぁっ!!!』

 

赤司のパスに絶妙なタイミングで根武谷が飛び込んだ。

 

根武谷は空中でボールを掴み…。

 

 

――バキャァァァァッ!!!

 

 

そのままリングに叩きつけた。

 

『アリウープだぁぁぁっ!!!』

 

開始早々の赤司のパスからのアリウープに、会場は大いに盛り上がる。

 

「ちっ!」

 

「っ!」

 

開始早々1本決めるつもりが、逆に決められてしまい、悔しがる空と大地。

 

「ドンマイ! しゃーない、1本返すで!」

 

天野がボールを拾い、素早くリスタート。空にボールを渡す。その瞬間…。

 

「あかん! 空坊!」

 

パスを出した瞬間、天野が思わず目を見開いた。

 

「えっ…?」

 

空にボールが渡った瞬間、赤司と実渕がダブルチームを仕掛けた。

 

「っ!? んだと!?」

 

予想外のことに、空は激しく動揺する。

 

赤司と実渕が空を囲うようにダブルチームを仕掛け、その後ろで、葉山と根武谷がポジションを確認しながら陣取り、そのさらに後ろで五河が陣取っている。

 

 

「おいおい、これって…」

 

「オールコートゾーンプレスかよ!」

 

日向と伊月が、洛山の選択に驚愕する。

 

 

洛山が得点を決め、花月がリスタートをした瞬間にオールコートゾーンプレスを仕掛けた。

 

「ぐっ……ぐっ…!」

 

赤司と実渕の2人がかりでプレッシャーをかけられ、空はコートの端へとどんどん追い詰められていく。このままではラインを割ってしまうため、焦る空。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「あっ!」

 

実渕の手がボールを捉え、空の手からボールが零れる。

 

「いいぞ、実渕」

 

ルーズボールを赤司が素早く確保した。

 

赤司はそのまま、リングへとドリブルしていく。

 

「こんの、させっか!」

 

「行かせへんで!」

 

空が素早く赤司の後を追い、天野がヘルプへと向かった。さらに、ゴール下には堀田が待ち構えており、正面から堀田、側面から天野、後方から空の3人が赤司を囲むようにやってくる。

 

「…」

 

赤司、3人に完全に囲まれる前に、ノールックパスを繰り出す。ボールは構築される前の包囲網の隙間を抜け、フリースローラインの外側でポジション取りをしていた葉山にボールが渡る。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

葉山はボールを受け取るとすかさずミドルシュート。落ち着いて決める。

 

「よっしゃっ!」

 

ガッツポーズをする葉山。

 

「…っ」

 

自分からの失点の為、悔しがる空。

 

リスタートするべく、天野がボールを拾う。

 

「っ!?」

 

実渕が天野の前で両手を上げて立ち塞がる。司令塔である、空の背中には赤司が。

 

「ちぃっ!」

 

空にボールを渡したいところだが、その瞬間、先ほど同様、ダブルチームの餌食になることは明白なので、天野は、他のパスターゲットを探す。だが…。

 

「…くっ!」

 

他の、大地、三杉、堀田はパスコースが見事に塞がれている為、パスを出せない。

 

「天野先輩、もうすぐ5秒です!」

 

ベンチから、姫川が声を出す。

 

仕方なく、天野は唯一パスコースが空いている空へとパスを出す。

 

『来た!』

 

「くそっ!」

 

予想通り、赤司と実渕が空を再びダブルチームで密着マークし、コートの端へと追い込んでいく。

 

『今日の洛山どうなってるんだよ! 開始早々容赦ねぇ!』

 

かつてない戦術プランに、観客からも悲鳴に近い声が上がる。

 

 

「いつもの洛山じゃねぇな、横綱相撲の洛山が第1Qから仕掛けてくるとは…」

 

2度の洛山との試合経験のある日向は、一連の洛山のプレーを見て驚きを隠せない。

 

「……洛山は花月の弱点を突いてきたわね」

 

今まで無言で試合を観戦していたリコが口を開いた。

 

「花月の弱点?」

 

「ずばり、連携不足よ。花月には、今年になって強力な戦力が加入された。でも、今年の4月に顔合わせしたばかりのチームでは、連携不足は否めないわ」

 

リコは、花月の弱点に、連携不足を挙げた。

 

「その点、洛山は、スタメン全員が昨年から同じチームで過ごしているわ。当然、チームプレーは抜群よ」

 

昨年からのスタメンが4人も残る洛山。四条にしても、今日スタメンの五河にしても、昨年から洛山に在籍している為、その分、チームの練度も高い。

 

「それと、花月にはもう1つの弱点があるわ」

 

「まだあるの?」

 

思いつかない小金井は思わず聞き返した。

 

「それは、ルーキーコンビよ」

 

「ルーキーコンビって、神城と綾瀬のことか? …だが、あいつら、キセキの世代程じゃないにしても、かなりの実力者じゃねえかよ」

 

花月のルーキーコンビ。それは、言うまでもなく、空と大地だ。

 

昨年の全中優勝校の原動力であり、今年のインターハイ、これまでフル出場を果たしている。

 

「確かに、身体能力、テクニック、資質共に全国レベルでも上位のプレーヤーよ。…けれど、彼らはまだ1年生。百戦錬磨の洛山選手相手には、実力は互角でもキャリアで大きく後れを取ってしまうわ」

 

『…』

 

「ゾーンプレスを破るには、連携は必須。それは、今から対策を講じていたら間に合わない。…赤司君は、実に強烈な一手を打ってきたわね」

 

リコは、洛山の…赤司の戦略に感心するのだった。

 

 

「くっ! こんの…!」

 

赤司と実渕は、ボールを持った空にガンガンプレッシャーをかけていく。

 

「(ちっ! プレッシャーが強すぎる。これじゃあ抜けねぇ! …左右がダメなら――)」

 

空が、ボールを掴んでジャンプする。

 

「上からだ!」

 

ボールを持って高く飛び上がると、赤司と実渕の上から大地にパスを出した。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

「いただきだ!」

 

だが、そのパスは根武谷によってカットされてしまう。

 

『うわー! またカットされた!』

 

「ちっくしょう!」

 

またもやボールをカットされ、悔しさを露わにする空。

 

「五河ぁっ!」

 

 

――ブン!!!

 

 

ボールを奪った根武谷は、ゴール下に陣取る五河に、ドッジボールようにボールを投げ、鋭いパスを出した。

 

「よし!」

 

バチンっと大きな音を立てながら五河はボールを受け取る。すぐさま、堀田が五河の背中に付く。

 

「戻せ!」

 

そこに、大きな声が響く。フリースローライン付近に走りこんだ赤司がパスを要求した。

 

五河は迷わず赤司にボールを渡す。ボールを受け取ったすかさずシュート態勢に入る。

 

「…ちっ」

 

ブロックに向かおうとした堀田だが、目の前の五河がスクリーンの役割になり、ブロックに向かえず、思わず舌打ちが出る。

 

「打たせっかよ!」

 

そこに、空がブロックに現れた。

 

『うおー、神城高ぇっ!』

 

空は、赤司以上に高く、赤司とリングを塞ぐようにブロックに飛んだ。

 

「…」

 

ここで赤司、動じることなく、シュートを中断し、ノールックビハインドバックパスに切り替える。

 

「ナイスパス、征ちゃん♪」

 

ボールは、スリーポイントラインの外側でポジション取りをしていた実渕のもとへ。

 

「あかん!」

 

ノーマークだった実渕は悠々とシュート態勢に入る。

 

「打たせへんで!」

 

それでも、何とかスリーを阻止しようと天野が懸命にブロックに飛ぶ。

 

「天野、行くな!」

 

三杉が咄嗟に声を出すも、紙一重で遅かった。実渕は、シュート態勢のまま止まっていた。

 

「あかん!」

 

「せっかちね。…でも、せっかくだからいただくわ」

 

 

――ドン!!!

 

 

実渕がシュート態勢に入ると、ブロックに飛んだ天野と激突する。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

審判が笛を吹く。

 

ぶつかったのと同時に実渕はシュートを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放られたボールは、リングを潜った。

 

「ディフェンス、チャージング、緑8番! バスケットカウント、ワンスロー!」

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

 

「出た…! 実渕の地のシュート」

 

地のシュート…。無冠の五将の夜叉と呼ばれる実渕の技の1つ。相手にぶつかりながらスリーを決め、かつバスカンを獲得する技である。

 

身をもって味わったことのある日向は冷や汗を流す。

 

 

「しもた…!」

 

スリーに加え、バスカンまで与えてしまった天野は頭を抱えて悔しがる。

 

「仕方ありません、切り替えましょう」

 

大地が天野の傍まで歩み寄り、声を掛ける。

 

とはいえ、ここまで何も出来ていない大地の胸中も穏やかではなかった。

 

「このままじゃまずい。大地、ゾーンプレスを突破するから力貸してくれ」

 

「分かっています。独力ではゾーンプレスの突破は難しいですから、リスタート後、私が直接ボールを貰いに行きます」

 

「人数かけてボールを運べば突破も出来るやろ。俺も動くで。」

 

空、大地、天野は、ゾーンプレス突破の打ち合わせをしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

実渕、落ち着いてボーナススローを決め、4点プレーを成功させる。

 

 

第1Q、残り9分2秒…。

 

 

花月 0

洛山 8

 

 

『開始1分経たずにもう8点差だ』

 

『このままじゃもっと点差は開くぞ!?』

 

観客は、ざわついている。

 

「(何度も同じ手を食らわねぇぞ。次で必ず…!)」

 

堀田がリスタートをし、空がボールを受け取る。

 

「(よっしゃ、来てみろ…)…あれ?」

 

ダブルチームを警戒する空。だが、赤司と実渕が一向にプレッシャーをかけてこない。ふと見ると、洛山選手達は自陣に全員戻っていた。

 

「んだよそれ、せっかく突破してやろうと思ったのによ…」

 

意気込んで待ち構えていた空は、肩透かしを食らった表情になった。

 

 

『オールコートゾーンプレスをやめたぞ?』

 

『何だよ、このまま続けてりゃ、楽勝に勝てんだろ』

 

ゾーンプレスを解いた洛山に対し、悪態を吐く観客。

 

「…いやいや、メチャメチャ体力を消耗するオールコートゾーンプレスをいつまでも続けられる訳ないだろ」

 

そんな観客に対し、苦言を呈する高尾。

 

「けど、あと1回くらい仕掛けても良かったんじゃないか? 決めりゃ、点差は二桁にまで開くから、与えるダメージもデカいだろ」

 

「…いや、主導権は既に掴んでいる。ここが引き時なのだよ」

 

高尾の考えを、緑間は否定する。

 

「開始早々の隙を付いたとはいえ、同じ戦術が3度も通用するほど、花月は甘い相手ではない。万が一、ゾーンを突破されれば、せっかく掴んだ主導権を手放すことになりかねない」

 

「…」

 

「所詮、序盤の2点。多大なリスクを背負ってまで取りにいく価値はないのだよ」

 

「…それもそうか」

 

高尾は緑間の解説に納得し、コートに視線を移した。

 

 

「…監督、洛山の予想外の奇襲に、みんな浮き足立っています。流れを切る意味でも、ここは1度、タイムアウトを取っては…」

 

「……うむ」

 

状況が悪いと判断した姫川は、上杉にタイムアウトを提案する。上杉は、少し考えを巡らせた後、タイムアウトを申請するべく、ベンチから立ち上がった。

 

「…(スッ)」

 

その直後、コート上の三杉が、タイムアウトを申請する上杉を止めるように手で制した。それに気付いた上杉は三杉に視線を向けると…。

 

「…(フルフル)」

 

三杉は首を横に振った。

 

「………(コクリ)」

 

それを確認した上杉は頷き、上げた腰をベンチに下した。

 

「…よろしいんですか?」

 

「三杉は問題ないと判断している。まだ序盤だ。もう少し、様子を見よう」

 

心配そうに尋ねる姫川に、上杉は腕を組み、試合を見守った。

 

 

フロントコートにまでボールを進めた空。洛山は、マンツーマンディフェンスを布いてくる。

 

空には赤司。大地には葉山。三杉には実渕。天野はノーマークで、堀田には根武谷と五河がダブルチームでマークしている。

 

「(堀田さんには2人…、天野さんが空いている。ここは天野さんに渡してそこから切り崩しにかかるか…それと、大地に任せるか…)」

 

どのように攻めるか…。自分のミスからの失点を重ねている為、何としてもここは返したい。その心が、空を焦らせていた。

 

「空、くれ!」

 

その時、三杉が左のスリーポイントラインの外側でボールを要求した。

 

「(…三杉さん……よし、ここは堅実に三杉さんで行こう)」

 

空はすかさず三杉のパスを出した。

 

「簡単に突破はさせないわよ」

 

三杉にボールが渡ると、実渕がプレッシャーを強める。

 

「…」

 

「…」

 

睨み合う三杉と実渕。

 

「…(チラッ)」

 

おもむろに、三杉が目線のフェイクを入れる。その直後…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

高速のドライブ。三杉が一歩で実渕を抜きさる。

 

三杉はそのまま切り込んでいく。

 

「残念だけど、ここで止まってもらうよ!」

 

そこに、ヘルプに葉山がやってくる。三杉、葉山に捕まる前にその場で停止し、シュート態勢に入る。

 

「させないよ!」

 

葉山は、持ち前の脚力で距離を詰め、ブロックに飛んだ。

 

「小太郎、待ちなさい!」

 

実渕が大声で葉山を静止させようとした。

 

「えっ? …うそっ!」

 

だが、紙一重で間に合わず、葉山はブロックに飛んでしまった。その直後、気付く。三杉が飛んでいないことに。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

そんな葉山をバックロールターンで抜きさった。

 

インサンドへと侵入していくと、五河がヘルプに飛び出そうとする。

 

「…(チラッ)」

 

「っ!?」

 

接近しようとする五河に対し、三杉は一瞬チラリとインサイドに陣取った堀田に視線を向けた。これにより、五河は動きを止めた。何故なら、ヘルプに出てしまえば、堀田ががら空きになり、パスを出されてしまうからだ。

 

ゴール付近まで近づくと、三杉はボールを掴み、高く跳躍した。

 

「させるかよ!」

 

ダンクに向かう三杉の前に、根武谷がブロックに現れた。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

根武谷の右手が、三杉の掴んだボールに接触する。

 

「――らぁっ!」

 

「ぬおっ!?」

 

 

――バキャァァァァッ!!!

 

 

三杉が右腕から手にかけて、渾身の力を込め、根武谷の右手を吹き飛ばし、ボールをリングへと叩きつけた。

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

ダンクが決まると同時に大歓声が会場中を埋め尽くす。

 

「「「…」」」

 

実渕、葉山、根武谷は茫然としながらディフェンスに戻る三杉を見送る。

 

「…三杉さん」

 

一連のプレーを見ていた空や大地のところへ三杉がやってきた。

 

「空、綾瀬、天野。月並みだが、まずは落ち着け」

 

『っ!?』

 

三杉の言葉に、呼ばれた3人の心臓が鳴る。

 

「…洛山のデータに無い試合開始早々のラン&ガンとオールコートゾーンプレスで主導権を奪われた。だからと言って、慌てる必要はない。昨日も言ったろ? 点差なんて、試合が終わるまでにひっくり返せば良いんだよ」

 

『…』

 

「赤司征十郎は、無駄なことや意味のないことはやらない。そんな彼が、かつて1度もやったことのない戦術をやってきたということは、それだけ余裕がないということだ」

 

「…あっ」

 

「なるほど…」

 

「少しは落ち着いたな。なら、ディフェンスだ。きっちり止めるぞ」

 

「「「はい!」」」

 

花月の選手達は、自陣へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「凄いな…」

 

今のワンプレーを見て氷室がポツリと呟く。

 

「彼は、実渕玲央をかわして3点を決めることだって出来たはずだ。…いや、その方がリスクが少なかった。だが、彼は、あえて切り込んだ」

 

「? どういうことー?」

 

紫原が意図が分からず、聞き返す。

 

「彼は中央を突破して得点を決めた。ここで大事なのは、五将の3人を抜いて決めたということだ」

 

『…』

 

陽泉の選手達が氷室の解説に聞き入る。

 

「先の奇襲で花月の選手……特に、1年生2人は浮き足立っていた。口で落ち着けと言っても、冷静になれるものではない。だが、五将の3人を抜きさって決めるというプレーは、それだけインパクトがある。冷静さを取り戻すには十分だ」

 

「なるほど…」

 

「おまけに、今のワンプレーで奪われた主導権を奪い返すことが出来た。…赤司君が組み立てた戦術によって奪った主導権を、彼は独力の力技だけで奪い返した。…やはり、底が知れないな」

 

氷室は、改めて、三杉の恐ろしさを知ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

オフェンスが切り替わり、洛山のオフェンス…。

 

「…」

 

赤司がボールを運びをしている。

 

花月のディフェンスはマンツー。赤司には空、実渕には三杉、葉山には大地、根布谷には天野、五河には堀田。

 

 

「赤司のマークは三杉の方が良いんじゃないか?」

 

「確かに、神城が実渕に付く場合、お互いにミスマッチが出来るが、神城の身体能力なら多少の身長差は関係ないだろうし、アウトサイドシューターならなおのこと…」

 

伊月の考えに、日向が同調する。

 

「赤司をどうにか出来なきゃ、洛山は止められないぞ」

 

 

赤司はゆっくりボールをキープしている。空は、全神経を集中させ、ディフェンスに臨んでいる。

 

「…」

 

赤司は暫しボールをキープし、実渕へパスを出した。そこから、洛山はボールを回して隙を窺う。

 

「…」

 

赤司が目の前の空に視線を向けている。

 

『気に入らないな』

 

突如、赤司の内側で声が響いた。

 

 

『どうした?』

 

『この試合、この僕に、神城空をマークさせる意味はない。昨日の試合では、大輝の観察とシューターを潰すことが狙いだったが、この試合でそれをする意味はない。つまり、これは神城空に僕をぶつけ、経験を積ませようという意図しかない』

 

『…』

 

『王の座を失ったとはいえ、ここまで侮られるのは不愉快だ。…すまないが、代わってくれないか?』

 

『…分かっているのか。この試合は――』

 

『――心配はいらない。作戦を壊すつもりはない』

 

『……分かった。ひとまずお前に任せよう』

 

 

ボールは赤司に戻ってくる。ボールを受け取ると、赤司は目を瞑った。

 

「よし」

 

空が再びディフェンスに付く。

 

「神城空、だったね」

 

「?」

 

ボールを受け取ると、赤司はゆっくりボールを付き始めた。

 

「君は以前、キセキの世代を倒すと、言っていたね」

 

赤司がゆっくりと目を開く。

 

その瞬間、空に、今までにないプレッシャーが襲った。

 

「(っ!? なんだ、この感じ…。さっきまで様子が全く…!)」

 

「キセキの世代を倒す。…その言葉を口にすること自体、思い上がりだということを、教えてあげよう」

 

そこから今度はボールを左右に切り返し始めた。空は、その動きに食らい付いていく。

 

「無駄だ。誰であっても、僕のこの眼からは逃れられない」

 

赤司が目を見開く。そして、空の足の重心が片足に乗った瞬間、ボールを切り返した。

 

「っ!?」

 

その瞬間、空はバランスを崩し、後ろへと倒れた。

 

「――道をあけろ」

 

赤司は、空の横を抜ける。

 

もう1人の赤司征十郎が、再びコートに君臨した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





俺司と僕司の切り替えが実際どういう感じなのかはわかりませんが、とりあえず、僕司が出る意欲を見せ、俺司が了承すれば出られるという設定にしました。

ところで、この作品にアンチ・ヘイトタグは必要でしょうか? 自分は、アンチ・ヘイトは、原作良キャラをぞんざいに扱ったり、正反対のクズキャラにすることだと思っていたのですが、どうなんでしょうか? これを見ていた方がいましたらご意見ください。

感想、アドバイスお待ちしています。

それでまた!
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