黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

相変わらずのクォリティです…(^-^;)

それではどうぞ!



第54Q~決意~

 

 

 

第3Q、残り8分57秒。

 

 

花月 45

洛山 49

 

 

赤司による、三杉、堀田の2人を抜いて得点を決めた。

 

「…マジかよ」

 

「こんなことが…」

 

2人に絶対的な信頼を持つ空と大地は、驚きを隠せなかった。

 

 

「すげぇ…、それぞれキセキの世代を倒した2人を1人で抜きやがった」

 

今のプレーを見ていた火神も目を見開いていた。

 

「そうだよ…、赤司には、あの眼があるんだ…」

 

あの眼、未来を先読みするエンペラーアイ。赤司を最強たらしめる代名詞である。

 

「今の1本…、大きいわよ」

 

リコは、今のプレーを見てこう分析した。

 

「まず、今の1本で、エンペラーアイの絶対性を見せつける事が出来た」

 

エンペラーアイが脅威であることを見せつけることによって、心理的に優位に立つことが出来た。

 

「次に、後半戦開始直後だということ」

 

ハーフタイム直後の為、タイムアウトが使いづらい。申請出来る回数が限られているタイムアウト。この先、何があるか分からない以上、終盤の勝負所まで取っておきたいというのが監督の心情である。

 

「そして、これが1番の効果。三杉君と堀田君がこの大会を通して植え付けた最強という意識を壊したことよ」

 

紫原を倒した堀田。青峰を倒した三杉。この2人は今や、キセキの世代以上という評価をする者も多い。

 

強者を相手にする場合、その者が強ければ強い程萎縮をしてしまいがちだ。それが高校生なら尚更である。メンタルがパフォーマンスに及ぼす影響力は計り知れない。

 

勝てないと思い込んで相手をすれば実力を発揮出来ない。だが、勝てると思い込んで相手をすれば時に実力以上の力を発揮することもあるし、最後の最後まで踏ん張ることも出来る。

 

赤司は、三杉と堀田を1人で抜きさることで2人に纏わりついていた最強という意識を壊し、他の洛山選手達に勝てない相手ではないということを自らのプレーで証明した。

 

「さすがね。花月を倒す為にここまで策を用意してくるなんて。……開くわよ、点差」

 

リコは予言のように言った。そして、その予言は的中することとなる。

 

 

「ちっ!」

 

リスタートをし、フロントコートまでボールを進めたものの、花月は攻めあぐねている。

 

改めて、赤司のエンペラーアイの破壊力を目の当たりにし、特に空と大地は動揺を隠せない。パス回しをしながらチャンスを窺うが、洛山のゾーンディフェンスは崩れない。もちろん、時折、僅かではあるがゾーンに綻びは出来るのだが…。

 

「…っ」

 

先ほどのスティールのダメージが残っており、罠を警戒して切り込めない。

 

「神城君! 恐れてはダメ! 積極的に攻めて!」

 

ベンチから姫川が声を掛けるも、空は警戒心が邪魔をしてしまう。

 

「くっ――っ! やばっ…!」

 

ボールを長く保持し過ぎた為、赤司に手を伸ばせばボールに届く所まで近づけてしまった。

 

空は、オフェンス時、無意識の内に、赤司を近づけさせないよう目測でテリトリーを定めていた。そのテリトリーに入られるとボールを奪われてしまう予感がしていたからだ。

 

そして今、赤司にそのテリトリー内に踏み込まれてしまった。

 

「(どうする!? 仕掛けても取られる予感しかしねぇ…!)」

 

思考する空。それが一瞬の隙を作ってしまう。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

赤司の手が空の持つボールを弾く。

 

「っ! こんの…!」

 

弾かれたボールを慌てて保持する。

 

「(ちっ! ちょっとでも隙を見せたらこれかよ。今は運が良かったが、下手すれば速攻喰らっちまう…)」

 

一瞬の隙が命取りになる赤司とのマッチアップ。空は気を入れ直す。再び、至近距離でディフェンスをする赤司。

 

「(……考えたって、赤司を出し抜くことなんて俺には不可能。だったら、仕掛けるだけだ!)」

 

意を決した空は、ドライブで赤司に仕掛けた。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

だが、ドライブを仕掛けようと動き出したその瞬間、赤司の手が空の手に収まるボールを捉えた。

 

『ターンオーバーだ!』

 

ボールを奪った赤司は速攻で一気に駆け上がる。

 

「ちくしょう! 行かせっかよ!」

 

空も猛ダッシュで赤司を追いかける。スピードには定評がある空。スリーポイントライン手前で何とか赤司に追いついた。

 

 

「あの赤司に追いついた。スピードは神城の方が上か!」

 

ボールを奪われてなお赤司に追いついたそのスピードに感心する伊月。

 

 

「…ほう、良く追いついた」

 

賛辞の言葉を贈る赤司。

 

「(集中しろ! 赤司には青峰のようなアジリティはない。アンクルブレイクにも慣れた。集中さえ切らさなければ…!)」

 

腰を落とし、集中力を最大限にして身構える空。

 

「……1つ、勘違いしているようだから教えておいてやる」

 

赤司が左右に切り返しながら空に仕掛けていく。

 

「(右……いや、左だ!)」

 

空の左手方向から仕掛けてからのクロスオーバー。空の予測が当たり、クロスオーバーで切り返した直後のボールを狙い撃つ。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

そこからビハインドバックで再度切り返す。

 

「まだ……まだぁっ!」

 

身体を強引に動かし、倒れこみながら赤司にボールに手を伸ばす。だが、赤司はそんな空を嘲笑うかのようにバックロールターンで反転し、鮮やかに空をかわした。

 

「アンクルブレイクなど、僕にとっては選択肢の1つに過ぎない。そんなものがなくとも、僕とお前とでは埋まりようが無い実力差がある。……身の程を弁えろ」

 

冷たい視線を向けながら言い放った。

 

空を抜き去った赤司は、そのままリングに向かって進んでいく。幸い、空が赤司を捉えた為、花月の選手達はディフェンスに戻っている。

 

「……来い」

 

待ち構えているのは三杉。

 

 

「どうする赤司。あそこではアンクルブレイクは使えないぞ」

 

ある程度スペースがなければアンクルブレイクを起こすことは出来ない。既に人が密集しているインサイドに切り込んでいる赤司にはそのスペースがない。

 

赤司は前後に身体をゆらゆらと動かし、ロッカーモーションで三杉に対して仕掛ける。三杉はそれに惑わされず、付いていく。赤司もそれは想定したのか、動じることなくビハインドバックで右に切り返した。それに三杉が反応し、赤司の進路を塞ぎにかかる。

 

 

――ピッ!

 

 

その瞬間、赤司が左にノールックビハインドパスを出す。

 

「よっしゃー! ナイスパス!」

 

そこへ、三杉が空けたスペースに葉山が走りこむ。ボールが葉山の手に収まる。

 

「なんつって♪」

 

だが、葉山はそのボールをスルーする。

 

「なに?」

 

葉山にボールが渡ると思い込んでいた堀田はこれに目を見開く。スルーしたボールは左サイドのスリーポイントラインの外側にポジション取りをしていた実渕に渡った。

 

「っ!? 天野先輩……あっ!?」

 

天野に声を掛ける大地だが、天野は四条のスクリーンに捕まっていた。

 

「くっ!」

 

仕方なく、大地がヘルプに向かうが…。

 

「もう遅いわよ」

 

悠々とスリーを放つ実渕。大地もブロックに向かうが届かず…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはキレイな弧を描いてリングの中央を通過した。

 

『スゲー、連続ゴールだ!』

 

洛山の2連続ゴールに、観客が沸き上がる。

 

「ちっ! 次だ、次は止めてやる!」

 

ターンオーバーの切っ掛けになった赤司に対して闘志を燃やす空。

 

試合は、後半戦になって再び動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

試合は洛山ペースで進んでいく。

 

現状、花月は赤司を単独で止めることが出来ない。スペースがあるエリアでは、アンクルブレイクで足を崩されてしまうし、唯一、アンクルブレイクが通じない空では、実力に差があって止めることが出来ない。

 

かと言って、人数をかければ他が空いてしまう。洛山は、赤司以外も一級品なので、迂闊に空けられない。

 

ディフェンスは、もともとの高いディフェンス力に加え、連携抜群の2-3ゾーンが待ちかまえ、オフェンスでは、赤司のエンペラーアイによる単独突破……あるいは、そこからのパスで他の4人がフィニッシュ。花月は、これに対応しきれず、失点を重ねていく。

 

第3Qが残り3分を過ぎた頃には、点差は大きく開いていた。

 

 

第3Q、残り2分54秒。

 

 

花月 51

洛山 61

 

 

『ついに10点差! 点差が開いてきたぞ!』

 

状況は花月にとってかなり悪かった。三杉が個人技でゾーンを突破し、何とか得点を決めるが、追撃には至らなかった。

 

「大丈夫ですか、空」

 

赤司にやられ続け、気落ちを心配して大地が声を掛ける。

 

「…」

 

空は赤司に視線を向ける。

 

キセキの世代の主将、赤司征十郎。空と同ポジションの天才。

 

力の差は歴然であった。今まで積み上げてきた経験も実力も、赤司には通用しなかった。そんな赤司を前に、空は絶望……していると思いきや…。

 

「…ハハッ」

 

にこやかに笑っていた。

 

自分が倒すと誓った選手がここまでの実力者であることに、空は絶望どころか、その胸中は興奮していた。

 

「あんなスゲー選手がいるんだな。……あんな人を倒せたら、最高だろうな」

 

「…空?」

 

こんな状況にも関わらず笑っている空に、戸惑う大地。

 

「良いぜ、最高だよ。こうでなくちゃ、倒し甲斐がない。もっと勉強させてもらうぜ。もっと…もっと…」

 

不敵な笑みを浮かべたまま、空は歩いて行った。

 

「…空坊は大丈夫なんか?」

 

同じく、心配になった天野が大地に尋ねる。

 

「……大丈夫です。少なくとも、気落ちはしていません。久しぶりに見ました。ああなった空の姿を…」

 

今の空の姿に不安が消え去る大地。空は、相手が強敵であればあるほどモチベーションを上げていく。

 

「空は大丈夫ですね。…私も空の心配ばかりしていられません。自分の為すべきことをしなければ…」

 

空のことは頭の片隅に追いやり、目の前の相手に集中するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

花月のオフェンス時…。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

仕掛けようとした空の手に収まるボールを赤司が弾き飛ばす。

 

「まだまだぁっ!」

 

ボールを拾おうとする赤司より先に、飛び込みながらボールを確保する空。

 

「…ちっ」

 

しぶとく足掻く空に思わず悪態を吐く赤司。ボールをもぎ取った空は大地にボールを渡した。

 

 

ディフェンス時…。

 

赤司が左右、前後に高速かつキレのあるテクニックで空に仕掛けていく。

 

「抜かせるか!」

 

空も遅れずに食らい付いていく。

 

「無駄だと言ったはずだ。お前ごときでは、僕の敵にすらなりえない」

 

必死に食らい付く空をあっさり翻弄していく。

 

「うるせぇ! 何度でも挑戦してやる!」

 

不安定な態勢になりながらも、その天性のバランス感覚でがむしゃらに食らい付いていく。

 

 

――ドン!!!

 

 

だが、突っ込み過ぎた為、赤司と接触してしまう。

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

「ディフェンス、チャージング、緑10番!」

 

「ちっ」

 

結局、ファールの形になってしまい、舌打ちをする空。

 

「…」

 

そんな空を、無言で見つめる赤司。

 

「大丈夫、征ちゃん?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

駆け寄った実渕に問題がないことを告げる。

 

今のプレー、赤司は問題なくかわせると思っていた。だが、実際はファールで止められた。赤司は、そんな空を表情には出さないが、軽い不快感を抱いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「まだだ! 俺はまだこんなもんじゃねぇ!」

 

全身全霊、全力で赤司に挑む空。それでも、赤司は空の上を行く。

 

今は試合中、それもインターハイの決勝。劣勢の状況にも関わらず、空は赤司との勝負が楽しくて仕方なかった。

 

自分より上の領域。その領域にいる者とのマッチアップ。それを体感出来ることが楽しくてしかたなかった。

 

 

――自分もこの領域にたどり着きたい…。この領域にいる赤司を倒したい…。

 

 

「おしい! 次だ、次!」

 

今回も止められなかったが、気持ちを切り替えていく。

 

『あいつ、まだやるつもりかよ』

 

『やるだけ無駄だろ、いい加減気付けよ』

 

『さっさと諦めろよ! お前じゃ勝てっこねぇよ!』

 

そんな空の姿を見て、観客席から嘲笑う者、野次を飛ばす者も現れる。

 

 

「だが、少しずつではあるが、赤司のプレーに対応し始めている」

 

「ああ。さっきまで余裕の顔していた赤司が、今ではあの表情だ」

 

緑間、高尾の指摘した通り、最初は涼しい表情で相手をしていた赤司だったが、今ではそれもない。

 

試合中にも関わらず、進化を続けている。空の身体能力と潜在能力の高さを2人は評価をした。

 

だが、それでも止めるには至らず、点差は少しずつ広がっていく。そして…。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで、第3Q終了のブザーが鳴った。

 

 

花月 58

洛山 72

 

 

試合も残すところ、第4Qのみを残すところまで進み、点差は14点にまで広がっていた。

 

『洛山強ぇー!』

 

開闢の帝王、洛山高校が、今年に新たに現れた新勢力、進撃の暴凶星、花月高校を追い詰めていく。

 

 

「赤司の奴、去年よりさらに進化してやがる」

 

自らのゲームメイクで花月を翻弄していく赤司に、火神の背筋が凍る。

 

「赤司に生かされて、他の4人も実力をいかんなく発揮している。テクニック、ゲームメイク全てにおいて赤司はもう、高校生のレベルを遥かに超えている」

 

伊月も、同ポジションである赤司に畏敬の念を覚える。

 

改めて、洛山の実力を目の当たりにし、高校最強であることを痛感する誠凛の選手達。

 

「…決まりか」

 

日向が、ポツリとこんな言葉を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

洛山ベンチ…。

 

「悪くない。ここまでは想定通りだ」

 

現在の結果に、白金は当初の想定通りに進んでいることに頷く。

 

「ですが、まだこの点差です。流れや勢い1つで容易に追いつかれてしまう点差です」

 

赤司は、まだ安全な点差ではないと判断し、気を引き締めさせる。

 

「もちろん、ここで守りに入るつもりない。洛山が帝王と称されてきたのは、我らを倒そうとした挑戦者達に対して守備に回らず、攻め続けたからだ。それはこれからも変わらない」

 

「分かっています。試合が終わるまで攻撃の手を緩めるつもりはありません」

 

ここで赤司がスッとベンチから立ち上がる。

 

「もっと点を取りに行く。各自、試合が終わるまで花月を蹂躙し続けろ」

 

『おう!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

花月ベンチ…。

 

「…」

 

上杉は、両腕を組み、無言で選手達の前に立っている。

 

前半戦まで拮抗していた点差が、今では14点もの点差が開いてしまった。その為、ベンチの空気は重い。

 

「…っ」

 

空は、俯きながら右の拳を左の掌に当てている。

 

「(少しずつだが、赤司の動きに対応出来るようになってきた。あと少し…あと少しで――)」

 

「――ら、空!」

 

「えっ?」

 

考え事をしていて上の空だった空が大地の声で正気に戻る。

 

「第4Qだが、まず、マークを変える。…三杉、ここからはお前が赤司をマークしろ」

 

「えっ…」

 

それは、空にとって受け入れがたい指示であった。空は思わず立ち上がる。

 

「待ってください! ようやく掴めそうなんですよ! もう少し、もう少しだけ――」

 

「――空」

 

指示の撤回を求める空を、三杉が制止する。

 

「お前はいずれ、赤司を超えられる。…だが、この試合中には無理だ」

 

「っ!?」

 

「まだ戦りたい気持ちも分かる。だが、これは勝つ為だ。良いな」

 

「………はい…!」

 

渋々、空は了承する。ベンチに腰掛けると、悔しそうな表情で両拳をきつく握った。

 

「(…空)」

 

準決勝で大地も途中で青峰のマークを変えられたことがあるだけに、空の気持ちが手に取るように分かった。それだけに、声を掛けることが出来なかった。

 

その後、第4Qの指示が為され、インターバルが終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

第4Qが始まり、洛山ボールからスタートされる。

 

『うおっ、来た!』

 

花月の変化に観客が気付き、思わず声を上げる。ボールを持つ赤司に三杉が付き、実渕を空がマークしていた。

 

 

「やむを得まい。神城では赤司を止められない。赤司をどうにか出来なければ、花月に逆転はないのだからな」

 

緑間がメガネのブリッジを押し上げながら言う。

 

 

「…っ」

 

怒りの形相を浮かべながら空は赤司を睨み付ける。

 

「ダメよ、余所見しちゃ」

 

目の前に立つ実渕が空を諫めるように口を開いた。

 

「あなたが私の相手をするんでしょ? だったら集中しなきゃ。気移りした相手に負ける程、私は容易くないわよ」

 

「…分かってるよ」

 

諫められた空は目の前の実渕に視線を戻した。

 

「……運が悪かったわね」

 

「あぁ?」

 

「違う世代に産まれていれば、あなたは間違いなく天才と呼ばれていたでしょうね」

 

「…」

 

「運が悪かったのよ。あなたも……私も」

 

表情を曇らせながら実渕は呟いた。

 

才能に恵まれ、天才と呼ばれる程の実力を有しながら、キセキの世代という、さらに上の天才が存在してしまった為、無冠の五将等という不名誉な称号を与えられてしまった。

 

それだけに、実渕は空に同情した。

 

「……確かに、運が悪いよ。俺は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――後1年早く産まれたかったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?」

 

「1年早く産まれれば、キセキの世代と1年多く戦えたんだ。ホント、残念だよ」

 

「…」

 

予想外の返答に、実渕は目を丸くする。

 

「何でも自分の思い通りになることの何処が面白い? 自分を超える奴に挑戦するから楽しいんじゃんか。だから俺は、何度でも、勝つまで挑戦してやるつもりだよ」

 

「……そう」

 

一瞬、目を見開いた実渕だが、すぐさま表情を元に戻しながら呟いた。

 

「挑戦することは素敵なことよ。けど、その資格を持つのは力がある者だけ。あなたに、その資格があるのかしら?」

 

「知らねぇな。ただ、1つだけ言えるのは、力はなくとも、挑戦し続けるだけの意志はあるぜ」

 

ここで空は不敵な笑みを浮かべた。

 

「悔しいが、この大会でキセキの世代には歯が立たなかった。けど、このまま終わったんじゃカッコ悪すぎる。せめて、五将の首くらい取ってやる」

 

「…ふふっ、面白いことを言うわね、坊や。…やれるものならやってみなさい」

 

一瞬微笑んだ後、その笑み消して空を見据えた。

 

「監督は、私達にこのような指示を出しました」

 

大地が目の前の葉山に語り始める。

 

『1年以上同じ時間を過ごした洛山と違って、俺達は急造チームだ。緻密な戦略なんざ取れっこねぇ。なら、やることは1つだ。三杉は赤司。堀田は根武谷。天野は四条。神城は実渕。綾瀬は葉山。各自、叩き潰してこい!』

 

「私にも意地があります。負けっぱなしでこの大会を終えられません」

 

スッと大地は葉山を見据える。

 

「ですから、私は今日ここで、あなたを倒します。全身全霊を以って…」

 

「……へぇー、大人しそうな顔してるくせに、なかなか面白い目付きしてんじゃん」

 

大地に宣戦布告され、葉山はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「俺、どうにもお前には負けたくないんだよね。……ぶっ潰してやるよ」

 

笑みを消し、大地を睨み付けた。

 

「ようやく来たか」

 

「ああ。これからは俺が相手をさせてもらう」

 

赤司が目の前の三杉に喋り出す。

 

「だが、お前が来ても同じことだ。僕を止めることは出来ない」

 

「どうかな? それはやってみなければ分からないと思うけどね」

 

ジッと赤司を見据え、薄く笑みを浮かべながら言葉を返す三杉。

 

「絶対は僕だ。未来(さき)が見えている僕を出し抜くことは出来ない。お前達は今日、ここで負ける」

 

自信に満ちた表情で赤司は告げる。

 

「絶対か…。そんなもの、バスケの国アメリカにすらなかったよ」

 

三杉の表情から笑みが消える。

 

「試合が終わるまで、何が起こるか分からない。君が絶対と呼ぶその幻想。ここで打ち砕いてやろう」

 

三杉は、そう赤司に告げた。

 

試合はついに第4Qを残すのみとなった。全国の覇者を決める最後の10分が始まる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





試合もそろそろ佳境。早いとこ終わらせたいものです。

インハイ後が本領と自分は考えているので、今一度、原作を見直し、構想を練りたいと思います。

感想、アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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