黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

今更ながら試合の描写に苦しんでいる今日この頃です…(^-^;)

それではどうぞ!



第74Q~望み~

 

 

 

第3Q、残り6分37秒。

 

 

花月 63

秀徳 75

 

 

空が起点となる事で安定して秀徳から得点を奪えるようになり、逆転の足がかりが出来た。

 

『…っ』

 

だが、チームが反撃ムードになったその矢先、自陣ゴール下から緑間がスリーを決め、その勢いを止めてしまった。花月の選手達は一様に苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

 

「(嫌な所で決めてくれやがって…。性格悪い…いや、この場合、百戦錬磨というべきか…)」

 

自身の武器で相手の勢いを止めたその実力と判断力に空は圧倒されるのと同時に感心していた。

 

「(こりゃいよいよこっちは1本も落とせねえ。かと言って、ここで慎重に攻めても意味がねえ。やはりここは…)」

 

空が周囲に合図を出し…。

 

「行くぞ!」

 

この掛け声と同時に花月の選手達が一斉に走り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

フロントコートに一斉に走り始める花月の選手達。

 

「くそっ、せっかくが空が活路を見出してくれたのに…!」

 

反撃ムードに水を差され、悔しさを露わにする馬場。

 

「にしても、熱くなってまた暴走したかと思ってけど、まさかチームの為だったとはな。監督は気付いていたのですか?」

 

「ここで自滅するような馬鹿なら、あいつに司令塔なんぞ任せんよ」

 

真崎の問いかけに、上杉は腕を胸の前に組み、コートに視線を向けながら答えた。

 

「そういえば、姫ちゃんも神城君を追いかけた後すぐ戻って来たよね?」

 

「ええ。昨日の試合と違って冷静さを失ってないのは分かったから。…全く、紛らわしい事するんだから」

 

少し頬を膨らませる姫川。

 

「神城の目的はもう1つある。やはり、ここまでハイペースで試合を進めてきただけに、消耗が激しかった。特に、発展途上の松永と元々のスタミナに不安がある生嶋がこのままではもたない。自分がしばらくオフェンスとディフェンスを担えば2人の負担は格段に減る」

 

「そうか、2人を休ませる為に1人で…。けど、という事は、それだけあいつに負担がかかったって事じゃ。ここまでだってコート上で誰よりも走ってたのが神城だ。あいつ、最後までもつのか?」

 

上杉から空のもう1つの狙いを聞いた後、そこまでの空の負担の大きさに不安を覚えた真崎。

 

「心配いらん。見ろ」

 

不安を感じる真崎を他所に、上杉はコートの空を指差した。そこには、大して息も上がっておらぞ、縦横無尽にコートを駆けていく空の姿があった。

 

「あいつに関してはスタミナの不安をするだけ無駄だ。…そんな事より、今は1番にどうにかしなければならない問題がある」

 

突如、上杉が表情を真剣なものに変えた。

 

「緑間さんですね。あの人をどうにか出来なければうちに勝ち目はありません」

 

上杉の懸念を理解した姫川がその答えを口にする。

 

「やはり、綾瀬では荷が重いんじゃ…。あいつも頑張ってはいるけど…」

 

ここまで緑間を大地がマンツーマンマークをしているが、その結果は芳しくない。

 

「…」

 

馬場の言葉はもっともであり、上杉は視線を鋭くする。

 

「(実際、綾瀬と緑間の力の差はそこまで大きくない。それでも綾瀬が緑間を止められないのは根本的な理由がある)」

 

上杉はこの展開をある程度予測していた。花月で1番ディフェンスの上手い天野を付かせればもう少し緑間からの失点は減らせただろう。

 

「(だが、天野が付いてしまえばいくらゾーンを組んでいると言ってもインサイドの松永の負担が大きすぎる。何よりリバウンドが取れなくなる上にオールコートで打てる緑間に付いてしまったらそれこそ天野がもたない)」

 

天野はリバウンドの要であり、ある意味、花月において欠けたら1番影響が大きい存在である。故に、上杉は緑間に天野を付けなかった。

 

「(緑間を攻略する為には、綾瀬の力が必須だ。これは賭けだ。俺はこの手に賭けるぞ…!)」

 

心中で上杉は覚悟を決め、ギュッときつく拳を握ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

第3Q、4分46秒。

 

 

花月 67

秀徳 80

 

 

試合は再び双方の点の取り合いをするハイペースの展開となった。

 

『おぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

攻守が激しく切り替わる展開に、観客のボルテージはグングン上がっていた。

 

「……ふぅ」

 

現在、秀徳のオフェンス。ボールは高尾がキープしている。決してスタミナがない訳ではない高尾だが、ここまで花月のハイペースに付き合わされ、疲労の色は隠せない。

 

「(こんな疲れる試合は高校入って初めてだ。点差は詰められちゃいないが、広がってもいない。ったく、いつまでこれが続くんだよ…!)」

 

しつこく食い下がる花月の猛攻に、高尾はげんなりしていた。

 

「(いい加減、こっちも付き合ってられねえよ。……少し黙らせねえとな…)」

 

ここで、高尾は木村にアイコンタクトを取った。

 

「(…コクリ)」

 

アイコンタクトを受け取った木村は頷き、動き始める。

 

「っ!?」

 

同時に緑間がマークを振り切る為に動き出す。大地がすかさず追いかけようとした所、木村のスクリーンに捕まってしまう。ノーマークでボールを受け取った緑間がスリーポイントラインから2メートル程離れた所でシュート態勢に入る。

 

「(ここでのスリーは点差的にも流れ的にもあかん!)打たせへんで!」

 

ここで、天野がヘルプに飛び出し、ブロックに飛んだ。

 

「…」

 

最高到達点に達した所で緑間はボールをリングにではなく、右下に落とした。

 

「ナイス緑間!」

 

落とした所に宮地が走り込み、ボールを受けると同時にリングに向かってドリブルを始めた。

 

「…っ!?」

 

目の前でディフェンスに立った生嶋だったが、ほぼ棒立ち状態で抜きさられた。

 

『よっしゃ、7番はもう限界だ!』

 

いとも簡単に抜かれた様子を見て観客席の秀徳の応援席から歓声が上がる。

 

「くそっ!」

 

慌ててヘルプに向かう松永だったが、生嶋があまりにも容易く抜かれてしまった為に対応が遅れてしまう。ペイントエリアに足を踏み入れた所で宮地はボールを掴み、リング目掛けて跳躍した。

 

「食らいやがれ!」

 

ボールを右手に構えた宮地はリングにボールを持った右手を叩きつけた。

 

 

――バチィィッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

だが、ボールがリングに叩きつけられる直前、構えていたボールが何者かに叩き落された。

 

「決めさせっかよぉっ!」

 

『神城!?』

 

ブロックしたのは空。緑間にボールが渡るのと同時にヘルプに飛び出した天野とパスを貰いにいく宮地の動きを読んで空がゴール下まで戻っていた。

 

「さすがやで空坊!」

 

零れるボールをすかさず天野が抑えた。

 

「天さん!」

 

ここで、ブロック直後にすぐさまフロントコートに向けて先頭を駆けた空がボールを要求。天野はフロントコート走る空目掛けてボールを放り投げた。

 

「っしゃ!」

 

フロントコートを越えた所でボールを貰った空はそのままワンマン速攻を仕掛けた。

 

「まずい、カウンターだ!」

 

先頭を駆ける空を見て支倉が思わず声を出す。秀徳の選手達は慌てて自陣へと戻っていく。

 

「(さっきまでゴール下までヘルプに来た奴がどうして先頭走れんだよ!? いや、そもそもあいつはもう優に1試合分の運動量を越えてるはず。なのにどうしてあんなに走れるんだ!?)」

 

常識を超えた空の運動量に宮地は軽く恐怖を覚えた。

 

「お返しだ!」

 

単独でボールをフリースローラインを越えた所まで運び、そこで跳躍。先ほどの宮地と同様にボールを右手に構えてリングに向かっていく。だがその時、空の背後から1つの影が現れた。

 

「させないのだよ!」

 

現れたのは緑間。空のすぐ真後ろからブロックにやってきた。

 

「くっ!」

 

ダンクの態勢に入ってしまった為、ここからダブルクラッチでブロックをかわす事も出来ない。しかし、このままダンクをすれば確実にブロックされる。

 

「神城ぉっ!」

 

ここで、空の背後から自身を呼ぶ声が耳に入る。

 

「がっ! …こんのぉ…!」

 

その声を聞いた空はボールを持った右手を広げ、手首を目一杯外に曲げると、スナップを利かせ、ボールを指で滑らせるにしながら右手を振りぬいた。するとボールは空の右手から離れ、空の真上へと緩く舞い上がった。

 

「っ!?」

 

空の咄嗟の機転に緑間は目を見開きながらボールを目で追った。そこに、先ほどの声の主、松永が飛んできた。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

空中でボールを両手で掴んだ松永はそのままリングに叩きつけた。

 

『うおぉぉぉっ! 何だ今の!?』

 

『アリウープもすげえけど、その前のパスもすげー!』

 

一連のビックプレーに観客の一部が立ち上がりながら2人を指差した。

 

「助かったぜ。よく走ってきてくれた松永」

 

「ぜぇ…ぜぇ…おう、これで鈍足とは言わせんぞ」

 

笑顔で手を差し出した空に、息を切らしながら松永がハイタッチを交わした。

 

「(とりあえず2点縮めた。流れが俺達に傾く時が必ず来るはず。その時までに少しでも点差を縮めておきたいな…)」

 

チラリとスコアが表示されている電光掲示板を見て空は心中で思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

秀徳のオフェンス…。

 

フロントコートまでボールを進めると、これまでとは一転、ボールを回し、時間をたっぷり使いながら得点チャンスを窺っている。

 

「(ペースダウンか? それとも…)」

 

ボールを持った選手にシュートチャンスを与えないよう素早くチェックに入る空。他の花月の選手も同様にチェックを早めに行っている。ボールが再び高尾に戻ってくると…。

 

「っ!?」

 

ボールを持っていない緑間がシュートを放つ構えをし始めた。

 

「空中装填式3Pシュート(スカイ・ダイレクト・スリーポイントシュート)か!?」

 

そう判断した空がすかさず高尾と緑間のパスコースに割り込んだ。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

だが、高尾は緑間にパスを出さず、リングに向かってドリブルを始めた。

 

「ちっくしょう、フェイクかよ!」

 

みすみす前を空けてしまった事に空は悔しさを露わにする。

 

「行かせへん!」

 

ドリブルで切り込む高尾に、天野がチェックに行く。高尾は天野に捕まる前にハイポストの木村にパスを出し、すぐさまローポストに立つ支倉にパスを出した。

 

「梃子でも動かん!」

 

支倉はマークする松永。疲労の色が濃いが、歯を食いしばって支倉の侵入を阻止する。背中をぶつけて強引にゴール下まで押し込もうとした支倉だが押し切れず、3秒が経過する前にボールを木村に戻した。そこからボールは宮地に渡り、宮地はスリーポイントラインの外側まで下がった高尾に渡った。空が距離を詰めようととした瞬間、高尾は左上にボールを放った。

 

「しまっ…!」

 

ボールの先には、シュートの構えをしながら跳躍した緑間の姿があった。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールは緑間が最高到達点に到達と同時にその手に収まり、放たれ、リングの中心を通過した。

 

「さっすが、真ちゃん」

 

労う高尾に対し、緑間は当然とばかりにメガネのブリッジを押し、ディフェンスへと戻っていった。

 

「くそっ、このパス回しはあくまでもこのスリーを成功させる為か」

 

今のオフェンスでの秀徳の目的を知った松永は悔しさを露わにする。

 

オフェンスは花月に切り替わり、空がボールを運ぶ。生嶋にパスを出した所、そこに宮地がパスコースに割り込みボールをカット。ボールはラインを割った。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

『チャージドタイムアウト、緑(花月)!』

 

ここで、花月のタイムアウトがコールされた。コート上の選手達は各ベンチへと下がっていった。

 

 

第3Q、残り4分7秒。

 

 

花月 69

秀徳 83

 

 

「うっ…」

 

ベンチにたどり着くや否や、生嶋がベンチに倒れ込んだ。

 

「生嶋君!」

 

その様子を目の当たりにした相川が慌てて駆け寄った。

 

「ハァ…ハァ…、大丈夫…です。少し、足がもつれただけです…」

 

駆け寄ってきた相川を手で制し、ベンチに腰を下ろした。それに続いて他の4人もベンチに座った。

 

「生嶋、もう限界か?」

 

生嶋の前に立った上杉が問いかけた。

 

「やれ…ます! 僕のスリーはまだ…死んでません!」

 

相変わらず息は絶え絶えだが、しっかり上杉の眼を見据えながら生嶋は答えた。

 

「……分かった。ならば下げん。このまま出てもらう」

 

「監督!」

 

そんな上杉の決定に姫川が異議を唱える。

 

「生嶋の眼は死んじゃいない。この先、秀徳に勝つ為には外は必須だ。だから、戦意を失っていないならこのまま出てもらう」

 

「…っ」

 

限界を超えているのは誰の目にも明らか。ここは1度ベンチに下げて回復を図るべきである。だが、生嶋を下げれば外から打てる選手がいなくなってしまい、オフェンスを外に広げなくなってしまう。それが分かっている為、姫川はこれ以上、何も言えなかった。

 

「生嶋。お前はディフェンスでは相手にプレッシャーをかけるだけでいい。後は何もするな」

 

「…えっ?」

 

思わぬ指示に、生嶋は目を見開く。

 

「その代わり、オフェンスでは点を取れ。残り僅かな体力は点を取る為に使え」

 

「は、はい!」

 

「神城。生嶋の穴はお前が塞げ。ディフェンス2人分だが、やれるな?」

 

「もちろんです! そのくらいやってやりますよ!」

 

指名された空は笑顔で引き受けたのだった。

 

「……ふぅ」

 

一方で、ベンチの1番外側で大地が1人汗を拭いながら呼吸を整えていた。

 

「随分と情けねえ姿を晒してんじゃねえかよ、大地」

 

「…えっ?」

 

そこへ、空が大地の目の前に立った。

 

「去年の全中の得点王の名が泣くぜ?」

 

そう語り掛けると、空は大地のユニフォームを掴み上げた。

 

「それが花月のエースの姿かよ。ろくに点は取れない。緑間は止められない。そんな様でエースが務まると思ってんのかよ!?」

 

どんどん熱くなっていく空。口調もどんどん荒く、声も大きくなっていく。

 

「やめろ神城!」

 

「綾瀬は緑間をマークしてるんだぞ? これでも綾瀬はよくやっているだろ」

 

見かねた馬場と真崎が止めに入るが、それでも空は止まらない。

 

「止められねえのは仕方ねえ。そこは俺は何も言わねえ。けどな、点がほとんど取れてない事に関しては言わせてもらうぜ。それが三杉さんからエースを任せられた奴の姿かよ! 情けねえと思わないのか!? そんなんでチームを背負えると思ってんのか!?」

 

「っ!?」

 

空の迫力に、ベンチ全体の空気が張り詰める。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで、タイムアウト終了のブザーが鳴った。

 

「……分かっています」

 

そっとユニフォームを掴む腕を外すと、歯を食い縛りながら答えた。秀徳の選手達がコートに戻るのに続いて、花月の選手達もコートに戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

「珍しいな」

 

「あん?」

 

コートに戻る途中、松永が空に話しかけた。

 

「お前は綾瀬にかなり信頼を置いているように見えたんだがな」

 

タイムアウト中の空と大地のやり取りを見て、思わず尋ねた。

 

「…それは今も変わらねえよ」

 

両腕をクロスさせ、腕を解しながら答えた。

 

「あいつは昔から試合とかでも相手に敬意を払いすぎるところがあるんだよ。相手が去年の帝光やジャバウォックみたいにスポーツマンシップの欠片もない奴等なら実力をいかんなく発揮するけど、逆に、相手が心身共に尊敬出来る奴が相手になると、何処かで限界を決めちまって自分にブレーキをかけちまう」

 

「…」

 

「大地は、幼い頃からの親友で、誰よりも頼れる相棒であって、…身近で1番のライバルでもあるからあんまり言いたくはないんだが、俺はキセキの世代の5人と火神大我。あの領域に1番近い所にいるのは大地だと思ってる」

 

「ほう」

 

空の口から出た言葉に、松永は思わず唸り声のような返事をした。

 

「基本的なスペックはあいつらと大差はないし。ポテンシャルはあいつらと同等。平面勝負なら、あいつが緑間に負けるはずがねえ。あいつが本気になってさえくれれば、俺達は秀徳に勝てる」

 

腕を下ろすと、天野からボールを受け取る。

 

「昔からあいつが俺の期待を裏切った事はない。さっき活を入れてやったし、こっからのあいつは見物だぜ」

 

ゆっくりとドリブルをしながら、空は笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

ボールは空がキープし、フロントコートまで運ばれる。

 

「何か揉めてたみたいだが、ひょっとしてさっきのあれも演技かい?」

 

「…」

 

高尾が軽い口調で探りを入れた。本当に仲違いしたならそこにつけ込みたい。だが、先ほどの例もある為、慎重に分析を重ねる。

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

チェンジオブペース。ゆっくりとしたリズムから一気に加速し、高尾に仕掛ける。一方の高尾も、読みと持ち前の鷹の眼(ホーク・アイ)を使って対応。無理にボールを取りに行かず、味方の密集エリアに追い込む動きを見せる。

 

 

――ピッ!!!

 

 

囲まれる直前に空はノールックビハインドパスを出す。ボールの先は逆サイドに展開していた大地。

 

「…」

 

「…」

 

ボールを貰い、構える大地。目の前には試合開始から大地をマークし続けている緑間。

 

『エース対決!』

 

『…て言っても、実力差が明らかだからなぁ…』

 

『盛り上がんないよなぁ』

 

観客の反応は多種多様。だが、勝敗の予想が見えているので、一部の者を除いて注目度は低い。

 

「スー…フー…」

 

ここで、大地は気持ちを落ち着かせるべく、1度深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

 

「(…緑間さんは本当に素晴らしい選手です。こんな私でも、驕る事も侮る事もなく、全力で相手をしてくれています)」

 

ここまで、何度か2人の勝負の場面はあったが、緑間はオフェンスでもディフェンスでも手を抜く事なく相手をしている。

 

「(ですが……空の言う通り、それで満足していてはいけませんね。私は、三杉さんにエースを託されたのですから!)」

 

ここで大地が動き出す。レッグスルーで左、右とボールを行き来させ…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

一気に加速。緑間の左手側から仕掛けた。

 

「…ちっ」

 

一瞬、大地のスピードに面を食らうも、冷静に動きを読み切り、後を追う。進路を塞がれると大地はここでバックチェンジで反対に切り返した。

 

『抜いたか!?』

 

逆を付いた大地がそのままリングに突き進もうとしたその時…。

 

「っ!?」

 

再び、緑間が目の前に現れた。

 

「それで抜けると思ったのなら、考えが甘いのだよ」

 

「くっ!」

 

ここでボールを掴み、そこからフェイダウェイでジャンプショットを打った。

 

 

――バチィィッ!!!

 

 

だが、そのシュートは緑間のブロックによって阻まれた。

 

『カウンターだ!』

 

ルーズボールを高尾が抑え、そのままワンマン速攻を仕掛けた。

 

「行かせっかよ」

 

だが、スリーポイントライン目前で空が高尾を捉え、進路を塞いだ。

 

「(相変わらずでたらめな速さだな)…けどまあ、分かってたけどな」

 

追いつかれるのと同時に高尾はビハインドバックパスでボールを右へと放った。そこへ、走り込んできた木村が受け取り、そのままリングにドリブルし、レイアップを放った。

 

 

――バチィィッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

だが、そのレイアップは放たれたのと同時にブロックされた。

 

「決めさせませんよ」

 

「はっ!? 綾瀬だと!?」

 

ブロックに現れたのは大地。そのまさかの人物にラストパスを出した高尾も驚愕する。

 

「ハッハッ! 良い感じだぜ。再度速攻だ!」

 

ブロックしたボールを空が抑え、そのまま速攻に走った。だが、速攻からのカウンターだった為、秀徳のほとんどがフロントコートを越えておらず、空が決める前にディフェンスを整えた。

 

「…ちぇ」

 

軽く舌打ちをしてボールを止めると、高尾が空の目の前に現れた。

 

「残念。簡単に速攻なんざ決めさせねえよ」

 

「…」

 

空は無理に切り込まず、パスを出した。ボールの行き先は先程と同様大地に渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「あくまでもエースに託すつもりか…!」

 

「エース対決を制すれば流れを呼び込めるだろうが、いくら何でも無謀だ!」

 

再度、大地にボールを渡す空を見て、日向と伊月が声を上げる。

 

「けど、そうするしかないのよ。神城君が起点となってオフェンスではやはり何処かで失速するわ。そうでなくても点差はじわじわ開いているのだから、何処かで無理やりにでも流れを呼び込まなければ花月に勝ち目はないわ」

 

リコが花月の内情と心情を解説する。

 

「綾瀬大地。インハイでこそ五将の葉山を圧倒していたが、正直、体力が落ちた所を付いた形でもあるから総合的にはまだ五将には及ばないと思う。資質は確かにあるけど、この試合で緑間を圧倒出来る程開花する事はないだろうし、仮にしても時間切れは確実だ」

 

ポツリと伊月が呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

――バチィィッ!!!

 

 

巧みにフェイントを織り交ぜて大地が緑間に仕掛けるも、緑間の手がボールを捉え、弾いた。

 

「(もっと速く、鋭く!)」

 

ターンオーバーを食らい、ディフェンスに戻りながら大地は心中で叫ぶ。

 

「…っ」

 

緑間は微かに苦い表情をする。

 

その後も、花月はワンマン速攻以外のオフェンスは大地にパスを出し続け、ボールを貰った大地は何度も緑間に仕掛け続けた。

 

『おいおい、何度やっても同じだろ!』

 

『格が違うんだよ格が!』

 

観客からは心無いヤジもチラホラ飛び交う。

 

「(どうなってやがる…。あいつ(大地)の動きのキレがどんどん増してやがる。今のも結構やばかったぞ…!)」

 

勝負を重ねる度に余裕がなくなっていく緑間を見て表情が険しくなる宮地。試合は、大地と緑間の戦いに続いていた。

 

 

第3Q、残り17秒。

 

 

花月 77

秀徳 96

 

 

第3Q残り僅か。ボールは高尾がキープしていた。

 

「この1本は絶対に死守よ!」

 

「死守だ死守!」

 

ベンチから姫川、馬場が声を張り上げる。

 

現在、点差は19点。ここで決められてしまえば20点差。かなりの精神的ダメージを負ってしまう。そのダメージは勝敗を左右するには充分な要因となる。

 

花月は、緑間にボールが渡らないようにディフェンスをし、秀徳は、ここで1本決め、第4Qに繋げる為、パスを回しながらチャンスを窺っている。

 

「(…チラッ)」

 

「(…コクッ)」

 

高尾が木村にアイコンタクトを出すと、木村はコクリと頷く。それと同時にペネトレイトで切り込む。空も抜かせまいと並走しながら高尾の後を追う。

 

「…ちっ!」

 

だが、空は木村のスクリーンに捕まってしまう。ペイントエリアまで切り込んだ所でボールを掴み、シュート態勢に入った。

 

「ここは絶対取らせへんで!」

 

ヘルプに走った天野がシュートブロックをするべく、シュートコースを塞ぐようにブロックに飛んだ。

 

「さて、ここいらでトドメと行きますか」

 

天野がブロックに現れた所で高尾は掲げていたボールを下げ、ビハインドバックパスを出した。ボールの先、右サイドのスリーポイントラインの外側に緑間が走り込んでいた。

 

「っ!? あかん!」

 

一瞬の隙を付いた緑間がボールを受けるとの同時にシュート態勢に入った。

 

「くっ! ここで取らせる訳には…!」

 

少し遅れて大地もブロックに飛んだ。

 

 

「ダメだ。このスリーは決まる」

 

確信めいたかのように日向が呟く。

 

緑間真太郎。キセキの世代のシューターであり、コート上の何処からでもシュートを放つ事が出来、リズムが乱れたり、バランスを崩されなければシュート成功率100%を誇る。放たれるスリーは高弾道であり、そこに195㎝という身長と決して低くはないジャンプ力が加われば、ひとたびシュート態勢に入ってしまえばブロック出来るのは数少ない。

 

大地はそこらの190㎝台の者よりも高く飛べるだけの跳躍力を持っているが、やはり、13㎝もの身長差に加え高弾道が加われば、シュート態勢に入られてしまえば大地ではブロックは不可である。この事実がある為、ディフェンスでは常に高さを意識しなければならず、飛ばれてしまえば終わりなので、フェイク1つでも、高さで劣る大地からすればそれは三杉や氷室ばりの威力を誇る。

 

これらの要因がある為、大地では緑間を止める事は至難の業なのである。

 

「(…ですが、それでも……それでも! チームを勝たせる為にも、私は…!)おぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!」

 

咆哮を上げながら懸命に腕を伸ばす大地。

 

 

――チッ…。

 

 

「っ!?」

 

伸ばした大地の指先に僅かにボールが触れた。

 

「(届いた…!?)リバウンド!」

 

着地と同時に振り返り、叫ぶ。

 

「と、来れば、俺の戦場や!」

 

ゴール下。天野と木村。松永と支倉がリバウンド争いの為、スクリーンアウト、ポジション争いを始める。

 

「ぐっ!」

 

懸命に良いポジションを奪い取ろうとする松永だったが、パワーの差でポジションを奪われてしまう。一方、天野と木村は…。

 

「くそっ!」

 

木村が天野に絶好のポジションを奪われ、悔しさを露わにする。1年生ながら、兄直伝のリバウンドで秀徳1番のリバウンド力を誇る木村だったが、どれだけ押し出そうとどれだけフェイントを駆使しても天野からポジションを奪えない。

 

 

――ガン!!!

 

 

予想通り、スリーは外れ、リバウンド勝負となった。

 

『っ!』

 

4人が同時に飛ぶ。

 

「もろたでぇっ!!!」

 

リバウンドボールを天野が確保した。

 

「天野先輩!」

 

フロントコートに走る大地がボールを要求。すかさず天野が前方へ大きなパスを出した。

 

「行かせねえぞ、1年坊!」

 

大地がボールを掴んだの同時に宮地が目の前に立ち塞がる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

迷わず大地は宮地の左手側からドライブで仕掛ける。

 

「っ! やろ、抜かせねえ!」

 

ドライブを読み切った宮地が大地が動くのと同時に動き、大地を追いかける。左手を伸ばし、大地のキープするボールを狙い撃った。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

その直後、大地はバックロールターンで反転してその手をかわし、逆を付いて宮地をかわした。

 

「よっしゃ、行ったれぇっ!!!」

 

宮地をかわし、無人のリング目掛けて大地が突き進んでいく。だが…。

 

「っ!?」

 

そこへ、緑間が現れ、大地の進路を塞ぐように現れた。

 

「宮地が時間を稼いだ隙に…!」

 

目の前に立ち塞がった緑間を見て驚愕の表情を浮かべる松永。

 

『せっかくの得点をチャンスなのに…』

 

得点チャンスがなくなったと予想した観客からは溜息が漏れる。第3Q、残り数秒、味方を待っている時間はない。下手にボールを取られれば緑間にブザービーターを決められかねない。無難にボールをキープしてこの点差を維持して第4Qに向かえる選択肢が頭に過ったその時…。

 

「行け! 大地!」

 

後方から、空の声が響いた。

 

「お前ならやれる! 緑間を越えてやれ!」

 

「っ!」

 

この言葉を聞いて、大地の迷いは消えた。1度ボールを左に切り返し…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

自身の最高速をクロスオーバーで緑間に仕掛ける。

 

「…っ! だがこの程度で抜かせん!」

 

緑間もこれに対応。すぐさま大地の進路を塞ぐ。

 

「…ぐぅっ!」

 

ここで大地は歯をギュッと噛みしめ、バックステップを行う。

 

「下がるのだろう? そんなもの、読めて――っ!?」

 

バックステップを読み切った緑間が下がる大地を追いかけようとする。だが、視線を後方に向けた時、大地は既に緑間の後方、数メートルの距離を取っていた。

 

「(馬鹿な、あのスピードからのドライブであそこまで下がっただと!?)」

 

想定を超える大地のバックステップのスピードと距離に驚きを隠せない緑間。

 

『いっけえぇぇぇっ!!!』

 

花月のベンチからの声を背に、大地がミドルシュートを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングの中心を射抜いた。そして…。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで、第3Q終了のブザーが鳴った。

 

「っしゃぁっ! さすが大地だぜ!」

 

すぐさま空が大地に駆け寄り、抱き着いた。

 

「…ふん」

 

2人を見て鼻を鳴らす緑間。

 

「ドンマイ真ちゃん。なに、こっちの有利は変わらないんだ。気にすんなって」

 

そんな緑間を見て励ますように声を掛ける高尾。

 

「分かっているのだよ」

 

それだけ呟き、2人はベンチへと下がっていった。

 

「…」

 

ベンチへと下がる緑間と高尾の姿を大地は目で追い、その後に自身の左手に視線を向けた。

 

「? …大地、どうした?」

 

その場で自身の左手を眺めながら立っている大地を見て空が怪訝そうに声を掛ける。

 

「……もしかしたらですが、逆転の突破口が見つかったかもしれません」

 

「えっ?」

 

ボソリと大地が呟いた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

試合は4分の3が終わり、遂に最終Qを残るのみとなった。

 

首の皮1枚を繋ぎ、希望を残す1本を決めた花月。そして大地の一言。

 

花月と秀徳の試合は、クライマックスへと移行するのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





もっと早く投稿したかったのですが、自身のやっているソシャゲのイベントが忙しく、ここまで空いてしまいました。またイベントが始まったのでまた空くかもですOrz

過去の投稿を読み返してみると、結構誤字があってビビりました。たまに誤字報告を頂いては修正していたんですが、氷山の一角でした。いつか修正したいですね…(^-^;)

感想、アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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