黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

今回は短めです。

それではどうぞ!



第87Q~指先の差~

 

 

 

試合終了。

 

 

花月 114

桐皇 115

 

 

ブザーが会場に鳴り響き、試合の終了を告げる。最後、空の放ったシュートはリングに嫌われ、花月は逆転する事は出来なかった。

 

桐皇ベンチは歓喜に包まれている。だが、対称的にコート上の桐皇の選手達は勝利への歓喜より安堵の方が大きく、ただ溜息を吐いていた。それは、ベンチの原澤、桃井、若松も同様であった。

 

『…』

 

花月の選手達、生嶋はその場で座り込み、茫然とし、松永は両膝を付き、コートを叩きながら悔しさを露わにし、天野は天を仰いでいる。ベンチでは上杉が両腕を胸の前で組んで両目を瞑って俯き、姫川、相川は涙を流し、選手達は茫然としていた。

 

「(…負けたのですね)」

 

大地は自身の胸の中で呟く。電光掲示板に視線を向け、0秒と残り時間と花月より1点多い桐皇の点数を見て、歯をきつく食い縛った。

 

「(…っ、これが、敗北なのですね)」

 

ユニフォームの胸の箇所を握りしめながら心の中で呟いた。

 

大地の胸の中を鋭い痛みが走る。過去にも負けた事がなかったわけではない。三杉や堀田らには練習で数えきれない程負けたし、インターハイでも試合では負けなかったものの、キセキの世代達に惨敗した。だが、中学時代から遡って公式戦で負けたのは今日が初めての事だった。

 

胸に走る痛みを感じる事で大地は敗北を実感した。

 

「…」

 

リングの下で俯きながら両拳をきつく握りしめている空。そんな空の下に大地が歩み寄る。

 

「…整列です。並びましょう」

 

「…っ」

 

空は両拳を握り、歯を食い縛りながら大筋の涙を流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「115対114で、桐皇学園の勝ち!」

 

『ありがとうございました!!!』

 

センターサークル内に集まった両校の選手達が審判の号令の後に礼をした。

 

『…』

 

両校互いに声を掛け合う事はなく、ただ握手だけ交わし、健闘を称え合った。

 

ベンチに戻り、荷物を纏めると、花月の選手達はベンチを後にする。限界を超えていた生嶋は大地に肩を借りながら歩き、松永もまた、天野に肩を借りて歩いていた。だが、花月の皆、顔を下に向ける事なく、顔を上げ、堂々と歩みを進めていた。

 

『凄かったぞ!』

 

『来年も見に来るからな! 絶対に来いよ!』

 

コートを後にする花月の選手達に対し、観客達が割れんばかりの拍手と共に声援が送った。それは、試合に勝利した桐皇よりも多かった。

 

『…っ』

 

その拍手と声援を花月の選手達は悔しさで歯をきつく噛みしめながらも、胸を張りながらコートを後にしたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

「お前の予想通り、桐皇が勝ったな」

 

観客席の一角で観戦していた諏佐が今吉に話しかける。

 

「…何言うてんねん。こんなん予想外やわ」

 

話しかけた今吉は苦笑いを浮かべながらその言葉を否定した。

 

「確かに桐皇が勝つ言うたで。儂の予想では、少なくとも20点30点以上の点差を付けて勝つと思っとった。けど、結果はたった1点差……いや、指先の差や」

 

「? ……それはどういう――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

ベンチにて、自身の左手を見つめる青峰。僅かに赤くなった左手の人差し指の先。

 

空が放った最後のシュート。青峰が手を伸ばした際、僅かに人差し指の先に僅かにボールが触れていた。その結果、ボールの軌道が僅かに逸れ、ボールはリングの外に零れ落ちた。

 

「……ハッ!」

 

青峰は左拳を握ると、不敵に笑った。

 

「最高に楽しめたぜ」

 

自分より下の世代からライバルが現れた事に喜びを覚える青峰。

 

コートを去る花月の選手達に視線を向け、静かに呟くように言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「桐皇が勝ったか」

 

試合を見届けた火神が背もたれに体重を預ける。

 

「青峰っちが勝つとは思ってたッスけど、まさかここまでやるとは思わなかったッスよ」

 

頭の後ろで両手を組み、更に左脚の上に右脚を乗せる黄瀬。

 

「…」

 

ただコートを見つめる緑間。

 

「…あいつら、どうなるのかな」

 

ポツリと呟く火神。

 

「神城と綾瀬は中学からここまで公式戦では負け知らずなんだろ? このまま――」

 

「――要らぬ心配なのだよ」

 

2人を懸念する火神の言葉を遮るように緑間が割り込む。

 

「たった1度の敗北で挫折するような奴等に負ける程、秀徳(俺達)は弱くはない」

 

「…っ」

 

無意識に失言をしてしまい、火神は申し訳なさそうに視線を下に向けた。

 

「それに、人の心配をしている余裕など、お前にはないだろう?」

 

唐突に飛び出た緑間の言葉に、火神は顔を上げ、緑間の方へ顔を向ける。

 

「最上級生が引退して、お前の所は主力の大半がいなくなる。今のままでは、優勝はおろか、全国出場すら至難の業なのではないか?」

 

「っ!?」

 

緑間の言葉を受けて火神はドキリとする。

 

都予選で敗退し、誠凛は主将日向を始めとする現3年生は引退となった。誠凛の強さを支えるのはエースである火神と幻のシックスマンである黒子の存在があるが、それと同等…それ以上に現3年生達の力が大きい。その3年生がいなくなるという事は大きな戦力ダウンを意味していた。

 

「再び無様な姿を晒したくないのなら、他人の事より自分達に目を向けるのだよ」

 

「……分かってるよ」

 

「…」

 

耳が痛くなる程の緑間のきつい言葉。黄瀬も緑間の言葉が他人事ではないので思わず黙り込む。ただ、これは緑間の嫌味ではなく、緑間なりの不器用な助言であると分かっている為、2人は素直にその言葉を胸に刻んだ。

 

「…さて、勝ち残ったのはさっきの試合で勝った青峰っちと、後は赤司っちと紫原っちッスね。赤司っちと紫原っちが今日の試合を落とす事はあり得ないだろうから、注目するのは明日の準決勝と明後日の決勝ッスね」

 

今日の残りの試合、他にキセキの世代同士の激突はない。その為、番狂わせはあり得ず、予想通りの結果で終わると黄瀬は断定する。

 

「そうなると、明日の準決勝は、まず、桐皇と多岐川東…、インターハイの時にもあった対戦カードか…」

 

準決勝の対戦カードの1つは、さっきの試合に勝利した桐皇とその前の試合で勝ちあがった多岐川東…。

 

「そして大注目なのが、洛山と陽泉の試合ッスね」

 

もう1つが、洛山と陽泉の試合である。

 

「洛山と陽泉。事実上、高校では初の対戦になるのだよ」

 

「……そうだな」

 

洛山と陽泉は1年前のインターハイの準決勝でも戦っているが、その時は洛山は赤司、陽泉は紫原が欠場していた。その為、全力でぶつかり合うのは事実上初めてである。それを理解した火神は緑間の言葉に頷いた。

 

「勝ち上がった方が、青峰っちと決勝戦ッスね」

 

「洛山と陽泉。戦力的なものだけ見れば、どちらが勝ちあがっても桐皇の方が不利。だが、明日の準決勝、恐らく体力の温存を図る青峰に対し、全身全霊でぶつかり合う赤司と紫原の事を考えれば、どうなるかは分からないのだよ」

 

全く予想が出来ないウィンターカップの結末。3人の議論は結論が出ない。

 

「ま、何にせよ、明日明後日過ぎればその答えも分かる。見届けてやろうぜ」

 

「…そうッスね」

 

「…ふん」

 

締めくくった火神の言葉に黄瀬は返事をし、緑間は鼻を鳴らしたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

控室へと戻った花月の選手達と上杉とマネージャーの姫川と相川。

 

『…』

 

未だ、選手達は敗戦のショックもあり、静まり返っている。

 

「…そういえば、くーは?」

 

ここで、控室に空がいない事に生嶋が気付く。

 

「そういえば、おらへんな」

 

「さっきまで一緒だったよな?」

 

続いて空がいない事に気付いた天野と松永が周囲を見渡す。

 

「…私、探してきます」

 

そう言って、姫川が控室の扉に向かう。

 

「私も――」

 

「――ううん、綾瀬君はここで待ってて。私1人で大丈夫だから」

 

一緒に行こうと名乗り出た大地だったが、姫川はそれを制し、1人で控室を後にした。

 

「…まさか空坊、最後のシュートの事で責任感じてんちゃうやろな?」

 

「……感じているでしょうね。空は、自分のせいで負けたと思っているはずです」

 

天野の懸念に大地が首を縦に振った。

 

「そんな、くーがいなかったらここまで戦えなかったのに…」

 

「ああ。あいつは青峰と対等に戦ってみせた。むしろ、足を引っ張ったのは俺達の方だ」

 

大地の言葉を聞き、それは空の責はないと生嶋と松永は唱える。

 

「我々では空も気にするでしょうから、今は、姫川さんに任せましょう」

 

そう言って、大地は姫川が出ていった扉を見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「何処に行ったのかしら…」

 

控室を出た姫川が空を探し回って早10分。未だ空の姿が見当たらない。

 

「………あっ」

 

会場内に備え付けてある人気ないベンチで空がジャージを肩から羽織りながら自販機で買ったと思われる缶ジュースを両手で持ちながら座っていた。

 

「こんなところにいたの? 皆控室で待ってるわよ?」

 

「…」

 

空の傍まで歩み寄った姫川が声を掛けるも空は一切反応しなかった。

 

「…」

 

「…」

 

その後、2人は無言になり、その場を沈黙が支配し、やがて、姫川が口を開いた。

 

「…もしかして、試合に負けたのは自分の責任だとでも思っているの?」

 

「…っ!」

 

そう姫川が尋ねると、空は表情を歪めながら缶を持っていた手に力を込めた。

 

「あなたのせいではないわ。あなたはとても頑張った。だから――」

 

「――違う!」

 

「っ!」

 

優しく声を掛ける姫川の言葉をかき消すかのように空が声を出した。

 

「最後、今吉を抜いた後、俺はリングしか見てなかった。だから、青峰がブロックに現れた時、動揺して対応に一瞬遅れた。その結果、ボールに僅かに触れられてしまった」

 

「…」

 

「三杉さんだったら、そんなヘマは絶対にしなかったはずだ。俺がブロックに対して警戒を怠ったから最後決められなかった。だから…!」

 

グシャッと缶を握りつぶす。

 

「この試合に負けたのは俺のせいだ」

 

「…っ」

 

悲痛な表情で自分を責める空。そんな空を見て、姫川は表情を曇らせた。

 

空はポジティブなで何事も前向きな性格をしているが、熱くなりやすく、それが試合でも悪い方向に運ぶ事もあった。だが、勝利対して執着心も責任感も人一倍持っている事も姫川は知っていた。故に、ラストシュートを外してしまったという事実に空は責任を感じずにはいられない事だろう。

 

「…」

 

責任を感じて悔しがる空。そんな空に姫川は…。

 

 

――スッ…。

 

 

「っ!?」

 

隣に座り、そっと空を抱きしめた。

 

「あなたはよく頑張ったわ。三杉先輩や堀田先輩に負けないくらいに…」

 

「…」

 

「あなたはあの秀徳に勝って、今日も桐皇を相手に後一歩の所まで戦って見せた。そして、私との約束を果たしてくれた」

 

「………っ」

 

抱きしめていた空が震え始める。

 

「あなたはよく頑張った。――お疲れ様」

 

そう優しく包み込むように姫川は空に語り掛けた。

 

「……ちくしょう。…ちくしょう…!」

 

試合終了後に枯れる程流した涙。姫川の腕に抱かれながら、空は再び涙を流したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

ひとしきり涙を流し、気分を落ち着けると、空は姫川と一緒に花月の選手達と監督が待つ控室に戻った。

 

『…っ』

 

戻ってきた空に何か声を掛けようと考えていた選手達だったが、赤く腫れあがった空の瞳を目の当たりにすると、それを断念した。

 

『…』

 

空が椅子に腰かけると、再び静まり返る控室。

 

「…今日の試合」

 

静まり返った控室。上杉がその沈黙を破った。

 

「負けた責任は全てこの俺にある」

 

『っ!?』

 

上杉の言葉に選手達はハッとした表情で顔を上げ、上杉の方に顔を向けた。

 

「確かに地力の差はあった。だが、お前達にはそれを補って余りあるポテンシャルを持っていた。それを生かせなかった俺の責任だ。すまなかった」

 

そう言って、上杉は選手達に頭を下げた。

 

「監督!? 監督の責任ちゃいまっせ! 監督やなかったら俺らここまで戦えてませんわ」

 

頭を下げた上杉に天野が慌てながら言う。

 

「僕も、監督の指導がなかったらここまで戦う事はおろか、最後までコートに立てていませんでした」

 

「俺も、秀徳の支倉さんや桐皇の若松さんと競えたのは監督のおかげです」

 

生嶋と松永も続いて上杉に感謝の言葉を述べる。

 

「私も、監督の御指導があったからこそ、今の自分があると思っています」

 

「俺も、上杉監督が監督で良かったです。これからもよろしくお願いします」

 

大地、空も続いて感謝の言葉を述べた。他の選手達も同様の考えであり、一様に頷いていた。

 

「お前ら……」

 

敗戦の責任を取って監督の席を降りる事も考えていた上杉だったが、選手達の言葉を聞いてその考えを飲み込んだ。

 

「…分かった。これからはこれまで以上に厳しく指導してやるからそのつもりでいろよ」

 

『はい!!!』

 

選手達は控室中に響き渡る程の声で返事をした。その後、主将である馬場が監督の横に歩み出た。

 

「皆、お疲れ様。1年生と2年生には感謝の言葉しかない。不甲斐ない俺達3年をここまで連れてきてくれて、ありがとう」

 

3年生達は一斉に頭を下げた。礼を言いたいのは寧ろ1年生と2年生達であった。

 

花月はスタメンは1年生4人と2年生の天野であり、3年生はベンチウォーマーである。花月は夏のインターハイを制している為、ここで1つの区切りとして引退を決める選択肢もあった。先の進路の事を考えればそうするのが賢明だ。だが、3年生達は選手層の薄い花月の弱点を埋める為、冬まで残る事を決めたのだった。

 

「それじゃ、次の主将の事だが…」

 

『…っ』

 

馬場がそう切り出すと、1年生、2年生達が表情を歪ませる。

 

「…何か、突然ですね」

 

「ああ。次の戦いはもう始まってるんだ。切り替えは速い方が良い」

 

余韻に浸る事無く次の代への引継ぎを始める馬場。ウィンターカップが終わった今、3年生達はもう引退。その事実を目の前に、下級生達の間にこみ上げるものがあった。

 

『…』

 

ここで視線が天野の方に向いた。

 

2年生唯一のスタメンであり、実力も実績もあり、面倒見も良く、信頼も厚い。主将を担うには相応しい人物である。

 

「3年生で話し合って決めたんだが、次の主将は……1年生から任命する事にした」

 

『っ!?』

 

馬場の発表に下級生…1年生達は驚愕する。2年生達は事前に3年生から聞いていた為、表情に変化はない。

 

「昨日と今日の試合を見て、改めて確信した。主将に相応しいと。次の主将は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――神城、お前だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………えっ!?」

 

任命された空はその言葉を理解出来ず、暫し茫然とした後に思わず声を上げた。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい! 俺ですか!? 正直、そういうの向いてないですよ! 俺より大地か、それこそ天さんの方が…」

 

突然の任命に空は自信が持てず、大地と天野の2人を推した。

 

「俺達もウィンターカップが始まるまでは迷っていた。だが、ここまでの試合を見てきて迷いはなくなった。次の主将は神城が相応しいとね」

 

「……けど」

 

強く空を推す馬場。それでも自信が持てない空は渋る。

 

「それとこの決断はな、三杉の考えでもあるんだよ」

 

「えっ? 三杉さん?」

 

突然三杉の名前が出てきて思わず疑問の言葉を浮かべる空。

 

「ああ。三杉と堀田がアメリカに発つ前日――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

渡米の準備を進めている三杉とその手伝いをしている馬場。

 

『次の主将を誰にするか決めているのか?』

 

荷物を纏めながら三杉が馬場に尋ねる。

 

『突然だな。まだ冬の大会前だから深く考えてないが、天野になるんじゃないかな』

 

2年生の唯一のスタメンの天野の名前出す馬場。

 

『無難な選択だな。性格的にも天野は主将にはうってつけだ』

 

馬場の考えに三杉も同意する。

 

『…ただ、もし俺だったら、空を指名するかな』

 

『神城をか? あいつはまだ1年だぜ?』

 

2年生ではなく、1年生の空の名前を出てきた事に疑問の言葉が出た。

 

『あいつを主将にしたら花月は面白いチームになると思うんだけどな』

 

『その根拠は?』

 

『あいつのプレーはチームを巻き込む。まあ、これは良くも悪くもだけどな。それと、例えどんな状況、どんな相手だろうと物怖じせず、常に前を向いて戦い続けるあいつの性格は、主将を任せるには面白い』

 

『…』

 

『冬の大会、勝ち抜く為には空がキーマンになるはずだ。あいつが、キセキの世代を倒すきっかけになる。……ま、俺はもう花月を離れる人間だ。参考程度に留めてくれ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「三杉さんが、そんな事を…」

 

馬場の口から語られた言葉を空は噛みしめる。

 

「この大会、お前はプレーでも言葉でもチームを引っ張った。キセキの世代相手にここまで戦えたのは、神城のおかげだ。だから、俺は…俺達3年は、神城、お前を次の主将に指名する」

 

「……天さんや他に2年生達はどうなんですか?」

 

深く考えながら空は2年生達に尋ねる。

 

「俺は文句ないで。正直、主将とか堅苦しいんは苦手やしな。空坊なら異論はないわ」

 

天野は不満の言葉を漏らす事無く、馬場の提案を受け入れた。他の2年生達も同様に頷いた。

 

「僕も、くーが主将になるのは賛成だよ」

 

「秀徳を倒し、桐皇をここまで追いつめられたのはお前がいたからだ。俺も賛成だ」

 

生嶋と松永も空の主将任命に好意的な意見を示す。

 

「中学時代のあの観客席で交わしたあの誓い。その一部をこの大会で果たせたのはあなたのおかげです。あなたには感謝の言葉しかありません。ですから、自信を持って主将の指名を受けて下さい」

 

大地も空の肩に手を置きながら主将任命を祝福した。

 

「…」

 

チーム全体の言葉を聞いて目を瞑り、深く深呼吸をする。

 

「…分かりました。俺に主将が務まるかまだ不安しかありません。けど、来年こそ花月の全国制覇を果たす為、全力でやらさせていただきます」

 

覚悟を決めた空は主将の指名を受け入れたのだった。同時に、選手達、マネージャーに2人から拍手が贈られた。

 

「だがまあ、神城だと部長業務は出来ないだろうから、副主将…部長業務代理として天野と綾瀬を指名しておく、2人共、頼むよ」

 

「ま、そこは空坊じゃ出来ひんやろうから仕方ないな」

 

「失礼ながら、そこは同感ですので、勤めさせていただきます」

 

「うっ…そこは頼むわ」

 

頭を掻く空。天野は笑いながら、大地は申し訳なさそうに副主将の指名を受け入れたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

ベスト4をかけた花月と桐皇の試合は指先の差によって桐皇に軍配が上がった。

 

3年生が引退し、空が主将として新たな新体制が布かれる。

 

花月の、次の戦いのスタートが今、始まったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





ウィンターカップの結末とその後の各校の新体制まで書きたかったのですが、長くなりそうだったのでここで一旦切ります。空の主将任命は正直強引かなとも思ったんですが、まあ、原作でも赤司は入学と同時に主将やってますし、やりたかった事なので、願望を押し切りたいと思います…(^-^;)

次話とその次くらいでこの年代の話が終わればなと思います。それを今年最後の目標に出来たらなぁ…(>_<)

感想、アドバイスお待ちしております。

それではまた!


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