黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

過去最大のボリュームです。

それではどうぞ!



第88Q~卒業~

 

 

 

年が明け、2月某日…。

 

「よう、真崎」

 

「馬場か」

 

3年生で卒業間近の2人。本日は祝日であるが、2人共所用で学校に来ており、用が済むと早々に帰宅をしていた。

 

「受験の方はどうだったんだ、真崎?」

 

「本格的に受験勉強を始めたのが去年の年末だったから正直不安だったけど、無事、第1志望の大学に受かったよ。お前は?」

 

「俺も無事合格だ。4月から東京生活だ」

 

久しぶりに顔を合わせた2人は近況を報告し合った。

 

「にしても、花月での3年間はあっという間だったな」

 

「だな。…けど、最後の1年は、一生、忘れられないだろうな」

 

近況報告を終えると、思い出話を始める2人。

 

「まさか、インターハイで優勝出来るとはな」

 

「三杉と堀田には感謝しかないな」

 

インターハイ優勝の立役者である三杉と堀田に感謝の念を送る2人。

 

「その後のジャバウォックとの試合も、凄かったよな」

 

「2人の凄さは分かっていたつもりだったけど、改めてその凄さを思い知らされたよ」

 

「後は……ウィンターカップだな」

 

「…」

 

ウィンターカップという言葉を出すと、2人の表情が曇る。

 

「ホントに、惜しかったよな」

 

「ああ、勝っててもおかしくなかった」

 

2人の脳裏に最後の空の放ったシュートがリングから零れるシーンが浮かぶ。

 

「次の日の準決勝、俺達に勝った桐皇は予想通り準決勝も勝って決勝に行ったけど、結構危なかったよな」

 

馬場が青空を見上げながら言う。

 

桐皇は準決勝の相手は多岐川東高校。第1Q終了と同時に青峰がベンチに下がり、温存を計ったのだが、試合は点差が拮抗する展開となった。多岐川東も準決勝に残るだけの実力を擁するチームではある。だが、現状の桐皇ならば例え青峰抜きであっても食い下がられる相手でもない。

 

若松を除く選手達の動きが目に見えて重かった。原因は前日の試合。花月との激闘の疲労が抜け切れておらず、桐皇の選手達のコンディションは最低であった事だ。

 

第4Q残り3分で逆転を許し、桐皇はやむを得ず青峰を投入。再び逆転し、この試合を制した。

 

「桐皇も死に物狂いで俺達に勝ったんだな」

 

「そう思いたいな。…そっちも印象的だったが、それよりも衝撃的だったのが…」

 

「洛山と陽泉の試合だな」

 

もう1つの準決勝カードである洛山対陽泉。

 

試合は陽泉ペースで進められる。洛山の攻撃を陽泉のイージス盾がことごとく弾き返し、第2Q終了時には20点近くまで点差が開いていた。

 

このまま試合は陽泉が制すか……と、思われたが、ここで陽泉にアクシデントが起こる。突如、紫原が失速したのだった。

 

目に見えて動きが鈍くなる紫原。異変に気付いた陽泉の監督の荒木が紫原をベンチに下げた。紫原は膝を痛めていた。正確には、夏の堀田とのマッチアップで痛めて膝が再発したのだった。

 

兆候はあった。夏の敗退で辛酸を嘗めた紫原は痛めた膝が治りきる前に練習を行ってしまい、それが1回戦での海常の試合で黄瀬を相手にした折に再発してしまった。

 

この準決勝まで紫原を試合開始早々にベンチに……、紫原の不調に気付かれないように必ずスタメンのいずれかの選手と同時に下げ、紫原の交代の印象を少しでもなくす交代策を荒木は図っていたのだが、赤司だけはそこに疑念を抱いていた。第1Qからあえて根布谷に仕掛けさせた際にその疑念が確信に変わり、洛山は徹底して根布谷を中心に攻めていった。

 

第2Qまでは何とか根布谷を跳ね返していたが、第3Q早々に紫原の膝が限界を迎えた。

 

紫原を失った陽泉はその絶対防御に亀裂が入り、開いた点差も徐々に縮まっていった。第4Q中盤でそのリードもなくなり、遂に洛山が逆転。すると、ベンチに座っていた紫原が立ち上がり、オフィシャルテーブルに向かってコートに戻ろうとする。必死に止める荒木だったが、並々ならぬ決意を持った紫原を止める事は出来ず、コートに送り出した。

 

そこから陽泉が息を吹き返し、再び点差を逆転させる。洛山も意地を見せ、逆転されるとすぐに取り返す。互いに逆転を繰り返しながら試合は進んでいく。だが、残り1分を切った所で紫原が遂に限界を迎えてしまった。

 

やむを得ずベンチに下がる紫原。紫原を欠いた状況で洛山の猛攻を凌ぎきれず、試合は洛山が制した。

 

「あの時の紫原は凄かったな」

 

「ホント、正直、あの時の紫原は堀田でも勝てたかどうか…」

 

その時の紫原のプレーを思い出し、2人は背筋を凍らせた。

 

「そして最後は決勝だ」

 

「ああ。あの激闘は、去年の誠凛対洛山に匹敵…いや、それ以上の激闘だった」

 

決勝戦は洛山対桐皇、昨年のインターハイ以来の対決であり、何の因果か、同じ決勝の舞台でぶつかった。

 

ちなみに3位決定戦陽泉対多岐川東の試合。陽泉は紫原が欠場という形になったが、それでもチーム力で上回る陽泉が快勝した。

 

試合前の下馬評は戦力で上回る洛山有利だったが、やはり、先日の陽泉戦の影響は0ではなく、万全とは言えず、桐皇は青峰は準決勝で体力温存を計った為、コンディションは最高であり、更に陽泉戦の勝利する為、洛山は手札をかなり切った為、データもかなり取れていた。

 

序盤から攻める桐皇に対し、洛山は得意の横綱相撲で挑み、その猛攻を受け止める。試合は、第2Q終了時点で桐皇が僅かにリードで終わった。

 

しかし、ここから洛山が猛威を振るい始める。赤司が巧みにゲームを支配し、味方を生かしつつ自らも点を決め、更に青峰を封じ込め、ペースを握っていく。試合は瞬く間に洛山がリードし、点差をじわじわと広げていった。

 

第4Q、試合時間残り5分を切って点差は20点にまで広がり、この時点で誰もが洛山勝利を確信していた。…だが、試合はこのまま終わらなかった。ここで青峰がゾーンに入り、攻守にわたってその力を振るい始めたのだ。ゾーンに入った青峰は凄まじく、赤司でさえ手に余る程の勢いであり、点差は急速に縮まっていった。

 

このまま桐皇が逆転をすると思われたが、僅かに時間が足らず、洛山が逃げ切った。だが、20点もあった点差は3点にまで縮まっていた。

 

「結局ウィンターカップは洛山の優勝で終わっちまったな」

 

「ああ。だが、来年こそ…正確には今年か。後輩達がやってくれるはずさ」

 

「だな。あいつらならきっと…」

 

そう言って2人は空を見上げた。

 

「受験も終わって、後は卒業を待つばかりか。…来月まで暇だし、俺達もバスケ部に顔出して見るか?」

 

「それいいな! 早速顔出しに……っと、今日はいないんだったな」

 

踵を返そうとした馬場だったが、ある事を思い出してそれをやめる。

 

「今頃新人戦の真っ最中だ。確か、県予選は1位で突破したんだよな?」

 

「ああ。で、今は東海大会で試合をしているところだ」

 

「さて、あいつら、どうなってるかな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

場所は変わって愛知県某体育館。現在ここで、東海高等学校バスケットボール新人大会。通称新人戦が行われていた。

 

 

――ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

ボールをキープしているのは空。ゆっくりドリブルをしながらゲームメイクをしている。

 

ウィンターカップ終了後の年明けの翌月下旬。新人戦が開催され、それに参加した花月高校。県予選を順調に勝ち抜き、1位で突破した花月は、翌月の2月の東海大会に参加していた。

 

スタメンの入れ替えがないというアドバンテージは大きく、他校が新チームの形を完全に構築出来ていない中、花月は昨年と変わらず機動力を生かしたラン&ガンで着実に勝ち星を重ねていった。

 

そして決勝。花月と同じく勝ち抜いた愛知県の桜和工業高校と試合をしていた。

 

「…」

 

空の目の前には2人のディフェンスが。インターハイ優勝でその名を上げた花月高校、ウィンターカップではインターハイ優勝の原動力となった三杉と堀田を欠いた状態での秀徳撃破と桐皇の惜敗によって花月は完全に全国区のチームと認定された。

 

特に、あのキセキの世代のエースである青峰と対等に戦った空の情報は各地に伝わっており、ここに至るまでも各チーム空を要警戒でマークに来ており、この試合でも常に空にはダブルチームでマークしていた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「「っ!?」」

 

だが、空はそんなダブルチームを物ともせず、自慢のスピードと加速力で突破していった。

 

「くそっ! 行かせるか!」

 

中にカットインした空に対し、ヘルプで2人やってくる。

 

 

――スッ…。

 

 

目の前に立ち塞がる直前に空はボールを右へと放る。

 

「ナイスパスです、空!」

 

 

――バス!!!

 

 

ボールを受け取った大地がそのままレイアップを決めた。

 

「くっ、くそっ…!」

 

得点を決められ、悔しがる桜和高校の選手達。

 

花月は空を中心とし、空を起点に得点を重ねるのが1つのパターンとなっていた。空が中へカットインで切り込み、自ら決めるか、マークが集まればパスを出して他が決める。

 

「よっしゃ!」

 

空と大地がハイタッチを交わす。

 

4の背番号とキャプテンマークを付ける空。主将に任命された空は当初、試合に際し主将としてどうプレーすればいいか悩んでいた。監督の上杉に相談した所…。

 

『つまらない事で悩むな。お前はお前が思うがままがむしゃらにプレーすればいい』

 

と言われ、その言葉を聞いて空は吹っ切れ、本能の赴くままにプレーに没頭した。

 

「取り返すぞ! 止められないならそれ以上に点を取るぞ!」

 

失点が防げないと見ると、点の取り合いを挑む桜和高校。ウィンターカップでも花月は失点が多い。ならば、点の取り合いで活路を見出す。

 

 

――バチィィィィッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

スクリーンを駆使して上手く中でパスを貰ってシュートまで行った桜和だったが、大地にブロックされてしまう。

 

花月はオフェンス特化でディフェンスはさほど固くないと思われがちだが、天野を始め、花月の選手は各々ディフェンス能力は高い。その中でも、空と大地はスピードと運動量が尋常でなく、1人で2人分のディフェンスをする事など造作もない。例えノーマークでシュートに行っても気が付けばブロックされていたり、またはパスをスティールされてしまう。

 

相手からすれば7人でディフェンスされているようなものであり、かつての大仁田高校のように正確かつ的確なパスワークで陣形を崩したり、またはキセキの世代のように個による単独突破が出来なければ得点は困難。

 

 

――バス!!!

 

 

ルーズボールを天野が拾い、ブロックと同時にフロントコートに走っていた空に大きな縦パスを出し、空がそのまま速攻を決める。

 

『ハァ…ハァ…!』

 

速すぎる空の速攻に追いかける事すら出来ず、桜和の選手達は茫然と空を見送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

第4Q、残り11秒。

 

 

花月 108

桜和  79

 

 

残り時間は僅か。点差は30点近くまで開いていた。

 

「最後の1本、絶対止めて終わらせるぞ!」

 

『おう!!!』

 

勝敗は既に決しているが、せめて最後は止めて終わらせたいと気合を入れ直す桜和の選手達。

 

「(ありがたい。やる気無くした奴等相手じゃつまらねえからな)」

 

戦意を失っていない相手を見て内心で感謝する空。

 

「(残り時間は後少し。試合はもう勝利が確定している。なら、ここは、行かせてもらうぜ!)」

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

1度ボールを左に切り返し、クロスオーバーと同時に加速して目の前の2人を抜きさる。

 

「絶対止めてやる!」

 

抜いたと同時に1人がヘルプにやってくる。空は視線を右に向け、パスを意識させ、そこからバックチェンジで左に切り返し、この選手をかわす。

 

「っらぁっ!」

 

次にやってきた選手をバックロールターンで抜きさり、そこからボールを右手で持ってシュート態勢に入る。

 

「させるか!」

 

そこへ、空の目の前にシュートコースを塞ぐようにブロックに現れる。

 

 

――スッ…。

 

 

空は右手で持ったボールをブロックの上を越えるようにふわりと放った。

 

「っ!?」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはブロックを越えてリングの中心を潜り抜けた。

 

『スゲー! 5人抜きだ!』

 

『キセキの世代と互角にやり合ったって言う噂は本物だ!』

 

空のプレーを見て観客が沸き上がった。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

同時に試合終了のブザーが鳴った。

 

「やったな神城」

 

「すごいよ、くー!」

 

空の下に松永と生嶋が駆け寄り、ハイタッチを交わした。

 

「こんの空坊! 何1人で張り切っとんねん! 俺ええポジション取ってたやろが!」

 

天野が駆け寄り、空の肩に腕を回し、そのまま首を絞めた。だが、表情は笑っていた。

 

「さすがです、空。初陣となる新人戦優勝、おめでとうございます」

 

大地が歩み寄り、右手を差し出す。

 

「大地がいてくれたからだよ。これからも頼むぜ、相棒」

 

右手を掴んで握手を交わし、そこから大地の肩に腕を回し、喜び合った。

 

「やったやった♪ 姫ちゃん、優勝だよ!」

 

「うん。良かった…!」

 

試合に勝利し、姫川に抱き着いて喜びを露わにする相川。笑みを浮かべる姫川。

 

「新チームの初陣としては上出来だ。よくやった」

 

監督の上杉も、ベンチに座りながら選手達の健闘を称えた。

 

ウィンターカップ終了後の翌月から開催された新人戦。花月の新世代の初陣は優勝で終わったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

そして翌月、3月…。

 

「馬場先輩、真崎先輩、卒業おめでとうございます!」

 

卒業式を終え、校内のロータリーにて、空を始めとするバスケ部員達がバスケ部からの卒業生である馬場と真崎に花束を渡した。

 

「わざわざありがとな、みんな」

 

「ったく、気を利かせやがって」

 

礼を言いながら馬場は花束を受け取り、真崎は照れ笑いを浮かべながら花束を受け取った。

 

「お前らも、新人戦優勝、おめでとう」

 

「当然ッスよ。俺達はキセキの世代と互角に戦ったチームなんですから」

 

先月の新人戦優勝の賛辞の言葉に、空は鼻高々に答えた。

 

「調子に乗らないの」

 

そんな空を姫川が窘める。

 

「だがまあ、ウィンターカップで秀徳に勝利して、桐皇を後一歩まで追いつめる事が出来たのは神城のおかげだ」

 

「いやまあ…そんな事は…」

 

面と向かって真崎に褒められると、空は頭を掻きながら照れる。

 

「主将は慣れないとは思うが、お前なら立派に努められるはずだ。花月バスケ部を、頼んだぞ、神城」

 

「…うす」

 

表情を改めた前主将、馬場の言葉に、空は表情と姿勢を改めて答えた。

 

「天野。チームを纏めるにはお前の力が必要になると思う。上級生として神城を…チームを支えてくれ」

 

「言われるまでもあらへんで。任せといて下さい」

 

真崎の頼みに、天野は笑顔で答えた。

 

「綾瀬、生嶋、松永。さっき、ウィンターカップの功績は空のおかげと言ったが、お前達も同様だ。花月の優勝はお前達にかかってる。頑張れよ」

 

「はい」

 

「もちろんです」

 

「任せて下さい」

 

馬場の激励に、3人は真剣な表情で答えた。

 

「さて、そろそろ行くか」

 

「そうだな」

 

言いたい事を言い終えた2人は手荷物を持った。

 

「それじゃあな。優勝の報告、待ってるからな」

 

「俺も、東京から応援してるからな」

 

そう言って、馬場と真崎は校門へと歩いていった。

 

「先輩!」

 

校門へ歩みを進めている途中、空が2人に声を掛ける。その声で2人は足を止める。

 

『ありがとうございました!!!』

 

バスケ部の在校生達が一同に礼をした。

 

「頑張れよ」

 

「…ちくしょう、泣かないって、決めてたのによう」

 

在校生一同の礼を受け、馬場は目元を拭いながら呟き、真崎は頬に涙を伝わせた。

 

『…』

 

卒業生達の姿が見えなくなるまで見送った在校生達。

 

「……よし! それじゃ、練習しようぜ!」

 

空が皆に指示を出す。

 

「ですね。戦いはもう始まっています。時間は僅かでも無駄には出来ません」

 

「せやな。今度こそ頂点取ったるわ!」

 

「うん。行こう!」

 

「おう!」

 

空の言葉を聞いて表情を変えた在校生達は、体育館に向かっていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――花月高校…。

 

 

馬場高志

 

真崎順二

 

 

卒業…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

京都、洛山高校…。

 

「実渕さん、葉山さん、根布谷さん、卒業おめでとうございます」

 

「ありがと、征ちゃん」

 

「ありがと、赤司」

 

赤司の言葉に、実渕と葉山が笑顔で答える。

 

「おう! …しかしな、赤司に敬語で話しかけられるとどうもこの辺がむずがゆいぜ」

 

と、喉元を掻く仕草をする根布谷。

 

「今はただの先輩後輩ですから」

 

苦笑いを浮かべる赤司。

 

「にしても、3年なんてあっという間だったなぁ」

 

「そうね。…けど、濃密な3年間でもあったわね」

 

3年間を懐かしむ葉山と実渕。

 

「苦い思いもしたが、最後の最後で有終の美を飾れて終われたんだ。良かったじゃねえか!」

 

3人にとっての最後の大会であるウィンターカップを制した事で最高と言える形で終われた事に喜ぶ根布谷。

 

「けど、征ちゃんにとって本当に大変なのはこれからかもしれないわね」

 

「ああ、そうだよね。主力だった俺達が抜けちゃうし」

 

実渕と葉山はこれからの赤司及び在校生達を心配する。

 

洛山高校は3年生の卒業により、無冠の五将である実渕、葉山、根布谷が抜ける事になる。これは大きな戦力ダウンを意味する。

 

「確かに懸念はあります。ですが、心配には及びません。例え、先輩達がいなくなっても、来年度は今年度と同等…いえ、それ以上のチームにしてみせます」

 

3人の心配を他所に、赤司は真剣な表情で宣言した。

 

「ま、俺は何も心配してねえけどな!」

 

「そうね、征ちゃんの心配するなんて野暮もいい所よね」

 

赤司の表情を見て、懸念を払拭する根布谷と実渕。

 

「と言うか、俺達も人の心配してられなくない? 大学に入学したらまた1からレギュラー争いしなきゃならないし」

 

在校生達の心配をする中、自分達に心配をする葉山。

 

3人は来月から大学に進学が決まっている。当然、いずれも強豪校である。無冠の五将と称された3人と言えど、楽観視は出来ない。

 

「それもそうね。征ちゃん達の心配してる暇なんてなかったわね」

 

葉山の言葉に同意する実渕。

 

「先輩達の、大学での活躍を期待しています」

 

「ありがとな! 俺達も応援するからよ。頑張れよ!」

 

赤司の激励に、根布谷も激励で返した。

 

「さて、そろそろ行きましょうか。征ちゃんはこれから練習でしょ?」

 

「はい」

 

「なら、これ以上私達が時間を無駄にしちゃ申し訳ないわ」

 

ここらで実渕が締める。

 

「それもそうだね。じゃ、赤司、これからも頑張れよ!」

 

「俺は何の心配もしてないぜ。後は任せたぜ!」

 

「征ちゃん達の活躍、陰ながら応援してるわ。頑張って」

 

3人は最後の激励をし、その場を後にした。

 

「ありがとうございます」

 

そんな3人の背中に向け、赤司は感謝の言葉と共に頭を下げた。3人の姿が見えなくなると…。

 

「さて…」

 

踵を返した赤司は、体育館へと足を運ぶ。

 

「次の戦いは始まっている。今は、練習あるのみだ」

 

表情を改め、次の戦いへと足を踏み入れたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――洛山高校…。

 

 

実渕玲央

 

葉山小太郎

 

根布谷永吉

 

 

卒業…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

秋田、陽泉高校…。

 

「室ちん、劉ちん、卒業おめでとうー」

 

「ありがとう、敦」

 

「ありがとうアル、紫原」

 

卒業式を終えた氷室と劉に紫原が祝いの言葉を贈る。

 

「室ちんはこれから東京だっけ?」

 

「向こうの大学から推薦を貰ったからね。来月からは都内だ」

 

「俺は中国に帰国アル」

 

来月から、氷室は東京の大学、劉は母国である中国に帰国し、国内の大学に進学予定である。

 

「そっかー、頑張ってねー」

 

「ああ。ありがとう。…敦も、これから大変だろうけど、頑張れよ」

 

氷室は紫原にそう声を掛ける。

 

ウィンターカップを3位で終えた陽泉。そして、氷室と劉はウィンターカップを最後に引退…そして卒業である。それはつまり、攻守の要がいなくなる事を意味する。

 

「健司、主将はいろいろ大変だろうけど、お前ならきっと立派に努められるはずだ。任せたぞ」

 

「はい。……正直、不安の方が大きいですけど」

 

そう言って、永野はチラリと紫原の方を見た。

 

「紫原、あまり永野に我が儘言って迷惑かけるなアル」

 

「…そんな事しねーし」

 

劉の忠告に、紫原はそっぽを向きながら返す。

 

「では先輩方、そろそろ自分達は練習に行きます」

 

「まさこちんがうるさいからねー」

 

「そうか。わざわざありがとう。…敦、分かっていると思うが、お前の怪我はまだ完治していないんだ。くれぐれも治るまで無茶はするなよ」

 

「……分かってるよ」

 

氷室が忠告すると、紫原は表情を曇らせながら返す。

 

「紫原は今は別メニューです。何でも荒木監督は、膝が完全に治るまでは膝に負担をかけないように上半身の強化をさせているみたいで…」

 

永野が氷室に伝える。

 

紫原はウィンターカップ終了後、膝の完治に努めつつ、荒木に上半身強化の別メニューを課せられていた。これは、この機に上半身を強化させると事が主な目的だが、目を放すとまた治りきる前に無茶をしかねないという荒木に判断の下、紫原の監視の意味合いもあった。

 

「それなら心配はいらないな。それじゃあ、俺達はここで、2人共、頑張れよ」

 

「俺も、中国から応援するアル」

 

そう言って、2人は踵を返し、歩き始めた。

 

「じゃーねー、室ちん、劉ちん」

 

「氷室さん、劉さん、ありがとうございました!」

 

紫原はぶっきらぼうに別れの言葉を伝え、永野は2人に頭を下げた。紫原と永野は2人の姿が見えなくなるまでその姿を見送った。その時…。

 

「紫原、永野! いつまで油を売ってるつもりだ! もう練習は始まっているんだぞ!」

 

2人の背後から荒木の声が響き渡った。

 

「ととっ、紫原、監督がこれ以上爆発する前に行こうか」

 

「だねー。あーあ、またつまらないトレーニングかー」

 

永野がそう促し、紫原はめんどくさそうな表情をしながら体育館に向かっていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――陽泉高校…。

 

 

氷室辰也

 

劉偉

 

 

卒業…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

神奈川、海常高校…。

 

「早川先輩、中村先輩! 卒業、おめでとうッス!」

 

「おう! あ(り)がとな、黄瀬!」

 

「わざわざありがとう、黄瀬」

 

祝いの言葉を贈った黄瀬。早川と中村が礼を言う。

 

「今までお世話になったッス。中村先輩は進学で、早川先輩は確か就職したんスよね?」

 

「ああ。来月から隣町の大学に進学だ」

 

「そのとお(り)だ。だ(れ)よ(り)も早く社会人だ!」

 

隣町の大学を受験し、見事合格した中村は4月から大学生。早川は就職活動をし、4月から社会人である。

 

「3年間お疲れ様ッス。…にしても、ホントに良かったんッスか? 俺がキャプテンで。正直、柄じゃないって言うか、自信ないッスよ」

 

ウィンターカップ終了後、次の主将に任命されたのは何と黄瀬だった。任命された際は何度も断りを入れた黄瀬だったが、早川と監督の武内に押し切られ、渋々引き受けていた。

 

「お前だからこそ、監督や早川は指名したんだ。笠松先輩や早川を誰よりも近くで見てきたお前だからこその指名だ」

 

渋る黄瀬に対し、中村がフォローを入れた。

 

「正直、最後までお前には慣れる事は出来なかったが、それでも、お前と一緒に試合が出来て良かったと思っている」

 

「中村先輩…」

 

「自信を持て。もし、主将として悩む事があったら、笠松先輩と早川の姿を思い出せ。そうすれば、前に進めるはずだ」

 

「……了解ッス。中村先輩。ありがとうございます!」

 

中村の激励を受けて。黄瀬は礼と共に頭を下げた。

 

「もうお(れ)達の事はいい。早く(れ)んしゅうに行け! こんなとこ(ろ)で時間を無駄にす(る)な、黄瀬!」

 

「りょ、了解ッス! っと、最後に、早川先輩、中村先輩、卒業おめでとうッス! では!」

 

早川の言葉を受け、黄瀬は最後に祝いの言葉を伝えてそのまま体育館に走っていった。

 

「まったく、そそっかしい奴だ……早川?」

 

足早に去る黄瀬を見送った中村。その時、黄瀬を遠い目で見つめる早川の姿があった。

 

「…お(れ)は、黄瀬にとっていいキャプテンであっただろうか…」

 

突如、早川がそんな言葉を口にする。

 

「インターハイとウィンターカップ。負けたのはお(れ)の責任だ」

 

「っ! そんな事は…」

 

「黄瀬1人に頼りき(り)になってお(れ)はキャプテンとして、チームメイトとして何もしてや(れ)なかった」

 

そう、悲痛な表情で言う早川。

 

夏と冬の大会、ここ1番という所で黄瀬に頼り切りなってしまう場面は多々あった。記者の中には、海常は黄瀬1人のワンマンチームと言う者もいた。

 

「本当に、黄瀬には申し訳ない事をしてしまった」

 

悔しそうに歯を噛みしめる早川。

 

「お前は、立派にキャプテンを務めていたさ」

 

そんな早川に肩に手を置きながら言った。

 

「黄瀬はお前に1度も不満も文句も漏らさなかった。キャプテンを引き受けたのだって笠松先輩や、お前の姿を見ていたからだと俺は思うぜ」

 

「…」

 

「だから、胸を張ってくれ、早川」

 

「…っ! あ(り)がとなぁ、中村ぁ…!」

 

両目から涙を溢れさせながら感謝の言葉を伝えた。

 

「…さて、この後時間あるか? 景気付けにカラオケに行かないか?」

 

「…グシュッ! ああ! づぎあっでぐでぇっ!」

 

「…とりあえず、涙拭けよ」

 

涙で顔を濡らす早川に対し、中村は苦笑いを浮かべながらハンカチを渡し、2人は海常高校を後にした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――海常高校…。

 

 

早川充洋

 

中村真也

 

 

卒業…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

東京、桐皇学園高校…。

 

「若松さん、卒業おめでとうございます!」

 

「おめでとうございます。若松さん」

 

「おう! ありがとな! 桜井、福山!」

 

卒業の祝いの言葉を贈った桜井と福山に、若松は礼の言葉を言った。

 

「来月から大学生ですか。にしても、若松さんよく大学受かりましたね」

 

「うるせーよ。俺は青峰と違って成績はそれほど悪くねーんだよ!」

 

福山の皮肉に若松がこめかみに血管を浮かび上がらせながら返す。

 

「にしても、まさかお前がキャプテンになるとはな」

 

「当然じゃないですか。俺以外に務まる奴なんていないんですから」

 

「言っとくが、お前がキャプテンに指名されたのは消去法だからな」

 

「うわっ、それ酷くないですか!?」

 

福山の皮肉の意趣返しとばかりに皮肉を言う若松。

 

「桜井はどう見てもキャプテンには向いてねえし…」

 

「すいません、すいません!」

 

頭を下げながら謝る桜井。

 

「青峰なんかにキャプテン任せたらそれこそチームは纏まらねえだろうしな」

 

「それには同意です」

 

溜息を吐く若松と福山。

 

「ま、青峰の手綱を掴むって意味じゃ、お前はあいつに物怖じしないから、そう意味じゃ、この選択は間違ってねえかもしれないな」

 

「その辺りは、桃井と協力してどうにかしますわ」

 

げんなりした表情を福山はした。

 

「ところで、青峰の奴はどうしたんだ?」

 

「えっと、卒業式が終わったらフラッと何処かに、今、桃井さんが…」

 

「まあ、あいつがノコノコ祝いの言葉を言いに来る玉じゃねえか」

 

桜井の言葉を聞いて何処か納得する若松。

 

「そんじゃ、俺は帰るわ。…福山、桜井」

 

「「はい!」」

 

「後は、頼んだぜ」

 

「「お疲れ様でした! 卒業、おめでとうございます!」」

 

2人が頭を下げて祝いの言葉と礼の言葉を聞くと、若松はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「大ちゃん!」

 

「なんだようっせーなさつき」

 

屋上で寝ていた青峰に桃井が大声で呼ぶ。

 

「んもう、卒業式の後に若松さんにお祝いを言いに行くって言ったでしょ!?」

 

「何で俺がそんなめんどくせー事しなきゃなんねーんだよ」

 

めんどくさそうに答える青峰。

 

「そういう事言わないでよぉ」

 

口を尖らせる桃井。

 

「さて…」

 

青峰が身体を起こし、立ち上がると、その場を後にしようとする青峰。

 

「ちょっと大ちゃん、何処行くの!?」

 

「んなもん、体育館に決まってんだろ?」

 

それだけ言って青峰は歩き出した。

 

「大ちゃん、待ってよ!」

 

青峰の言葉を聞き、慌てて追いかける桃井。その表情は、さっきより晴れやかであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――桐皇学園高校…。

 

 

若松孝輔

 

 

卒業…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

同じく東京、秀徳高校…。

 

「宮地さん、支倉さん、卒業、おめでとうございます!」

 

「おう、わざわざわりーな」

 

「ありがとな」

 

校門の前で高尾が宮地と支倉に花束を渡した。

 

「どーゆう風の吹き回しだぁ? お前からな花束贈られるなんざ気味がわりーな」

 

「いやいや、これは俺からじゃないッスよ? うちの新キャプテンからッス」

 

「…あぁ? 緑間?」

 

高尾から新キャプテンという言葉を聞き、次の主将に指名した緑間を思い出す。

 

「真ちゃん曰く、何でも、今日のラッキーアイテムが花束らしくて、ついでに先輩達の分も用意したらしいですよ?」

 

「……緑間の奴、味な真似しやがって…」

 

フッと笑みを浮かべる宮地。

 

「…ん? 今日のおは朝は偶然見ていたが、確か今日は――」

 

「まあまあ支倉さん。そこにツッコミを入れるのは野暮って奴ですよ」

 

ふと、疑問に気付いた支倉だったが、高尾が言葉を割り込ませる。

 

「んで? その緑間は何処行ったんだ?」

 

「真ちゃんなら、一足早く体育館で自主練に行きましたよ。何だったら呼んできましょうか?」

 

「……いやいい。水差すのもわりーしな。…ほら、お前ももう行け。これだけで俺達は充分だからよ」

 

花束を見せながら高尾に促す宮地。

 

「……分かりました。宮地さん、支倉さん、卒業おめでとうございます。大学でも頑張って下さい! では…」

 

そう伝え、高尾は校内へと走っていった。

 

「…ありがとな、高尾」

 

その場で囁くように宮地が礼を言った。

 

「後は任せたぜ。……緑間」

 

空を見上げながら言い、宮地と支倉は秀徳高校を後にした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

スリーポイントラインから数メートル程離れた所から放たれたボールが高い軌道を描きながらリングの中心を潜り抜けた。

 

「…ふう」

 

一息吐くと、緑間はバスケットボールが入れられている籠に掛けていたタオルを手に取り、汗を拭った。

 

「…」

 

額の汗と手の汗を拭うと、緑間は体育館の窓から覗く青空に視線を向ける。

 

「……卒業、おめでとうございます。今年こそ、俺達の手で秀徳を優勝させます」

 

青空に向けて、そう宣言した。その傍らで、今日のラッキーアイテムの手鏡がキラリと陽光を跳ね返したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――秀徳高校…。

 

 

宮地裕也

 

支倉桂太郎

 

 

卒業…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「先輩! 卒業おめでとうございます!」

 

「おめでとうございます」

 

『おめでとうございます!』

 

「おう! わざわざわりーな」

 

卒業証書が入った筒を持った誠凛バスケ部の3年生達に火神と黒子を始めとしたバスケ部の在校生達が祝いの言葉を贈り、日向が筒を掲げながら礼を言った。

 

「それにしても、長い卒業式だったなー」

 

「全くだな。まあ俺達が卒業第一期生だからな。その兼ね合いもあるんだろ」

 

両手を後頭部に当てながら小金井が溜息を吐くと、伊月が同様に溜息を吐いた。

 

「――」

 

「いや、しょうがないじゃん。来賓やら何やら代わる代わる話しが長いんだもん」

 

小金井の肩に手を置きながら水戸部が首を横に振ると、小金井は目を細めながら反論する。

 

「…小金井先輩と水戸部先輩はあれでどうして会話が成り立つんだ?」

 

「俺に聞かれてもな」

 

「ていうか、俺、最後まで水戸部先輩とまともにコミュニケーション出来なかった気がする」

 

2人のやり取りを見て、降旗、河原、福田は苦笑いをした。

 

「…それにしても、あっという間の3年間だったよな」

 

部員同士で談笑する中、ふと、土田がポツリと呟いた。

 

『…』

 

その言葉と同時に静まり返る誠凛の部員達。各々、思い出に浸る。

 

「木吉とも、一緒に卒業式を迎えたかったな」

 

沈黙を破るように土田が続ける。

 

 

――全ては、木吉鉄平から始まった。

 

 

誠凛高校バスケ部は、木吉鉄平によって設立され、1度はバスケを辞めた日向も、木吉の説得によってもう1度バスケを始めた。

 

「木吉先輩は…」

 

「鉄平は誠凛の姉妹校のアメリカの高校で卒業式を迎えたわ」

 

「そうですか…」

 

火神の疑問に、リコが答える。

 

「膝が完治していないからまだ帰国はしないけれど、もうすぐメドが立つらしいから、今年の夏頃には帰国出来るらしいわ」

 

「…もう1回木吉先輩とバスケは出来るんですか?」

 

「日本に帰国してリハビリが終わればまた出来るらしいわ」

 

「っ! そうですか。良かったです」

 

リコからその言葉を聞いて黒子は微笑んだ。

 

「木吉が創ったバスケ部。ここからはお前達後輩に託す。後は頼んだぞ」

 

『はい!!!』

 

伊月の激励に、在校生の部員達が応える。

 

「火神。正直、お前を主将なのはまだ少し不安が残るが、お前なら努められるはずだ。任せたぜ」

 

「うす。任せて下さい!」

 

最後の大会が終わった後、日向は新しいバスケ部の主将に火神を指名した。理由として、黒子は影が薄く主将には向いていないし、何より黒子の武器である影の薄さに影響を及ぼす可能性がある為、断念。降旗、河原、福田は実戦経験不足の為、断念。結果、残った火神が主将となった。

 

「新海」

 

「はい」

 

伊月が新海に話しかける。

 

「先輩として適切な指導は出来たかどうかは分からない。けど、教えられる事は教えた。お前はきっと、俺より優秀なポイントガードになれる。頑張れよ」

 

「伊月先輩の指導のおかげで俺はさらに成長出来ました。今日までご指導ありがとうございました」

 

肩に手を置きながら激励する伊月。新海は誠心誠意頭を下げて礼の言葉を言った。

 

「――(コクリ)」

 

田仲の前に立った水戸部がコクリと頷く。

 

「ええっと、君はきっと優秀なセンターになれる。だから頑張れ…だってさ」

 

小金井を通して水戸部は田仲に激励する。

 

「ありがとうございました。誠凛に貢献出来るよう頑張ります!」

 

水戸部の激励を受け、田仲は頭を下げた。

 

「……池永」

 

「…」

 

表情を険しくした日向が池永に話しかける。

 

「率直に言って、俺はお前の事は今でも嫌いだ。先輩に対しての口の利き方もそうだが、試合での身勝手なワンマンプレーを繰り返してチームに何度も迷惑をかけた」

 

「…」

 

「正直、お前を入部させた事を後悔した事もあった」

 

現1年生の中では1・2位を争う程の実力を誇り、単純な身体能力とテクニックなら3年生をも凌ぐ程のものを持つ池永。だが、その身勝手な性格故、試合に出場させるにはリコも難色を示した。試合が苦しくなってやむを得ず池永を出すも、無謀な1ON1を繰り返し、チームに迷惑をかけた。誠凛がウィンターカップ本戦に出場出来なかった要因の1つに池永のワンマンプレーがあった。

 

「…だが、俺達がいなくなった誠凛が再び全国大会に出場し、勝ち抜くにはお前の力が必要だ」

 

今まで視線を逸らしながら話しかけていた日向がここで池永に目を合わせた。

 

「よく聞け。これが元主将として…先輩としてお前に掛ける最後の言葉だ。お前の為にチームがあるんじゃない。チームの為にお前がいるんだ。この事、よく頭に叩き込んでおけ」

 

「…」

 

先輩として最後の言葉を池永に伝えた日向。だが、池永は言葉を発せなかった。

 

「…これで分からなきゃ、お前はただの馬鹿野郎だ。これで説教は終わりだ。ま、後は頑張れ」

 

その言葉を最後に日向はぶっきらぼうに話を終わらせた。

 

「……日向先輩」

 

話を終わらせた日向だったが、今度は池永が話しかける。

 

「その……スゲー迷惑掛けた。それはマジですいません。後、今までいろいろありがとうございました」

 

視線を逸らし、顔を赤くしながら池永が頭を下げた。

 

「……ハッ! まさかお前の口からそんな殊勝な言葉が聞けるとはな。今日は雨が降るんじゃないか?」

 

「…ちっ、茶化すんじゃねえよ」

 

口を尖らせる池永。

 

冬の大会の敗戦、池永は池永なりに責任を感じており、日向の言葉を真摯に受け止めたのだった。

 

「後は頼んだぜ。俺達の無念を…そして、もう1度、誠凛を優勝に導いてくれ」

 

『はい!!!』

 

日向の願いに、在校生達は大きな声で返事をした。

 

「全員、整列しろ!」

 

火神が号令を掛けると、在校生達が1列に並んだ。

 

「ありがとうございました!」

 

『ありがとうございました!!!』

 

火神が頭を下げると、在校生達が続いて頭を下げた。その声は、学校中に響き渡った。

 

「……ありがとな」

 

そう呟き、日向は目元を拭った。他の3年生達も、瞳を濡らしたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――誠凛高校…。

 

創部2年で全国制覇を果たした立役者。

 

 

日向順平

 

伊月俊

 

水戸部凛之助

 

小金井慎二

 

土田聡史

 

相田リコ

 

そして、木吉鉄平

 

 

卒業…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、4月から監督って、どうするんですか?」

 

『…あっ!?』

 

おもむろに、黒子が疑問を口にすると、思い出したかのように在校生達が声を上げた。

 

誠凛の監督はこれまでリコが担っていた。そのリコが卒業する為、新しい監督を据える必要があった。

 

「えっ? 引き続き私がやるけど?」

 

リコが淡々とそう言った。

 

「…監督が? けど、卒業しちまうし、何より大学が…」

 

「何言ってんのよ? 私が通う大学は誠凛高校から目と鼻の先よ? 講義が終わったらすぐに向かうわ」

 

リコが進学した大学は誠凛高校の隣の駅の大学。原付自転車を使えば20分足らずで行ける程の距離であった。

 

「これまでどおり、練習と試合の指揮は私が取るわよ。…ただ、レポートとかあるからどうしても行けない時は臨時で別に頼むつもりだから、まあ、あなた達は心配しなくても大丈夫よ」

 

片目を閉じて、ウィンクをしながらリコは在校生達に言ったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

卒業式を迎え、3年生達は高校を卒業した。

 

翌月の4月、各校が新たな戦力を迎え、始動する。

 

キセキの世代とキセキならざるキセキ。彼らの最後の年の戦いが、始まるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





ウィンターカップの残りの試合はダイジェストでお送りしました。理由としては、試合展開を書ききる自信がなかったのと、細かく描写を試みてしまうと、多分、ウィンターカップが終わるのは早くて来年の夏か、下手すると来年いっぱいかかる可能性があるので…(^-^;)

これにて各校の現3年生が卒業、新たな世代に変わるわけですが、誠凛に関して、高校バスケの監督を高校に所属していない部外者が努めて大丈夫なのか、分かりませんが、最悪ゴリ押しします。

ここからですが、とりあえず、新年度を迎える前に1話程話を盛り込む予定です。後、当然ながら、ここから各校オリキャラが大半を占める事となります。正直、これが今から頭を悩ます1つです。とりあえず、キセキの世代以上の選手と、キセキの世代と同格の選手は現状出すつもりはありません。ただ、無冠の五将や氷室レベルの選手。条件次第でキセキの世代とまともに戦える選手は出すつもりです。ご了承を…m(_ _)m

感想、アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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