強くなくても恋姫へ   作:空けおめ

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相も変わらずの亀更新です……。そして、駄文……精進します。


どうやら黄巾党は俺の味方らしい

 今の俺は暇だ。いや、暇っていうのとは少し違う、俺はサボっているんだ。

 

「やるべき事がありすぎて何もやる気がしねぇ」

 

 俺は荒野に座りポツリと呟く。それはここに来てからの一番の悩みだった。いや、この世界に来てからか。

 

 やるべき事なら死ぬほどある、この世界の事、妹の事、これからの事。

 

 おっさん(ここでは戴倉は、おっさんと皆に呼ばれているので俺もおっさんと呼ぶことにした)と、黄巾の人達は俺を歓迎してくれた。しかも俺はグループの中での一番年下という事で仕事もやってない。この世界に来てから数週間、俺はだらだらと生活していた。

 

 だが、俺もさすがにそろそろ動き始めるべきだ、俺が今所属しているここは、あくまでも黄巾党であり、数々の英雄達の……当て馬なのだ。いずれおっさん達も彼女達と戦う事になるだろう。実際に最近、関羽、張飛が強いやら、ここ近辺の盗賊を公孫賛が討伐しただの、彼女らの勇名はたびたび耳に入ってくる。飯の時の会話なんかでは、ここもあぶねぇな、なんていう声もあって……。

 

 そう、おっさん達はあくまでも黄巾党なのだ。

 

 いい人達なんだけどな……

 

 俺は心の中でため息をつく、少なくともおっさん達は他の黄巾党の奴等のような悪人ではない。逆に、盗賊や他の黄巾党が襲った村を助けにいっているくらいだ。

 

と、まぁそれは置いといて。ともかく、重要なのは俺がこれからどうするか、だ。

 

「やっぱりこれかぁ」

 

 俺はそう呟いて、バッグの中から恋☆姫ノートを取り出す。ここは恋姫の世界、とすると、恋姫の知識があった方が便利なのは確実だ。これからの事もこれをもとにして考えればいい。

 

 今の俺には様々な選択肢がある。その一つは三国……つまり、魏、呉、蜀のどれかの国の勢力に入るということだ。この場合のメリットは簡単に負けないという事。

 で、重要なのはどの国に入るかだ。

 まず蜀はだめだ、一刀と関羽がいる時点でアウトだ。俺、あいつらに敵認識されたしなぁ……。

 次は魏だ、パラパラとノートをめくっていくと魏のページ、それに俺は目を通して、

 

「ハードモードだな」

 

 率直な感想を口にした。俺には曹操を満足させられそうにない。荀彧や、程昱なんていう個性的な人達ばかりなのもなぁ……。

 

 残る国は呉だけだ、俺は呉のページを見る。

 

「うーん、孫策と孫権がネックだな」

 

 孫権の性格はいわゆるツンデレというものらしい。信頼されたらいい人なんだろうけど……俺、孫権に信頼される自信がないなぁ。そして孫策だが、孫策のページの最後に、この人は危ないって書いてあるんですけど、どういう事ですか……羽翔さん。

 

 と、いうか。俺、三国のどこにも入れそうにないな。

 

 三国のどこにも入れなそうとすれば、俺はこれからどうすればいいのだろうか。と、俺が半ば無意識に恋☆姫ノートを投げだしそうになった時。

 

「おーい! 裕貴!」

 

 ふと、聞こえてきたのはおっさんの声だった。俺の今いる場所は、この拠点の端っこ。この場所は人が来ない場所だったので俺はここに居た訳だが、何か用だろうか、

 

「とりあえず、いつもの場所に行ってくれ! そこで皆に話がある!」

 

 いつもの場所というのは、拠点の中央にある広場の事だ。俺は状況を把握できずにいたが、

 

「分かった」

 

 とりあえず、おっさんの言葉に従う事にした。

 

 

 小広場に行くと、かなりの人数がいた。これは新参グループの全員が集まっているんじゃないだろうか? 確か、新参のグループの総数は約三千……とか言ってたな。

 見渡してみると、みんな列を作っている。いや、列……なのか? 列だとしたらすごく歪な列だ、所々に穴が開いてる。

 ともかく、何か入りづらい感じだったので、俺は少し離れた場所に立つ。

 

「皆、俺はここで伝えなくてはならない事がある」

 

 数分の間突っ立っていると、おっさんの声が聞こえた。声のした方を向けばおっさんが少し高い場所に立っている。まるで体育祭のような感じだった。まぁ、体育祭にしては空気が重いが、

 

「皆知っているとは思うが、最近公孫賛が義勇兵を募り、ここ周辺の賊を掃討している」

 

 あぁ、ついに……か。いくらバカな俺でもその切り出し方で分かる。

 

「そして、公孫賛がついに黄巾党討伐に、乗り出した。さらに、俺らを除いた黄巾党がそれを迎え撃とうとしている」

 

 ざわざわと、この広場が騒がしくなる。そりゃそうだろう、公孫賛の下には今、一刀……天の御使いもいるのだから。

 

「あと一日、二日でこの近くで戦いが起こる。そこで、俺らは……」

 

 そこで、一旦おっさんは言葉を止めた。戦うか、逃げるか。俺を含め全員がおっさんの言葉を待つ。

 

「俺らは、この拠点を放棄する」

 

 おっさんはどうやら逃げることを選択したらしい、妥当な選択だと思う。関羽、張飛、趙雲、この三人が指揮する軍に、ついこの前まで農民だった黄巾党が勝てるわけがない。戦わないという選択肢に広場の緊張感も若干薄まる、それだけこの戦いをしたくなかったってことだろうか、

 しかし、おっさんの次の言葉は、とんでもないものだった。

 

「ここで一つ、提案があるんだが……逃げる前に、ちょっと人助け、していいか?」

 

 

 その夜は、みんなが目まぐるしく動いていた。もちろん、戦いの準備のためだ。

 まぁ、俺は突っ立っているだけだだが……。

 

 ただ、逃げればよかっただけの今回の戦。なぜ戦うのか……おっさんの話をまとめると。

 

 この前、黄巾党の新参グループにある村が襲われていたらしい、おっさん達はその黄巾党をフルボッコにした後、村人を逃がしたそうだ。しかし今回、黄巾党と公孫賛との戦場にその村人達の逃走ルートがぶち当たったらしい。つまり、このままいけば村人達は戦に巻き込まれる。

 逃走ルートを変えられないのか、村人達は戦に気づかないのか。そんな質問もあったが、どうやら村人達は黄巾党に今も追われているらしくルートを変えたり戦に気づくには無理がある、という事だった。

 村人達を助けたい、戦に参加するのはそのためだ。そして、誰もそのおっさんの提案に反対しなかった、おっさんはどれだけ信頼されているのだろうか、

 

「おー、いたいた」

 

 後ろから声がして振り向くとそこにはおっさんがいて。

 またこのパターンか、と俺は呟く。

 

「暇だったらちょっとこっちに来い」

 

 ぐいと俺はおっさんに引っ張られる。そして、俺はおっさんと共に数少ない天幕に入った。中には数人の見知った顔ぶれに、机、そして机の上には地図。それはまるで映画にでてくるワンシーン、さながら軍議のようだった。

 

「よし、じゃあ始めるぞ」

 

 ここに連れてこられたってことはここにいろ、という事だろう。別にやることもなかったので取りあえず俺も適当な場所に立つ。

 

 

「最初に状況を説明する。まず、この西にいるのが公孫賛軍だ、数は約八千」

 

 おっさんはそういって、地図の真ん中……恐らく俺たちの現在地から遠く西に小石を並べる。

 

「で、これを迎え撃つのが黄巾党、約八千だ」

 

 次に、地図の真ん中から少し西に小石を一つ置いた。

 

「そして、村人がここ」

 

 最後に二つの小石の間にもう一つ小石を置いた。

 

「明日あたりにはこれが……」

 

 おっさんはその小石を動かしていく。公孫賛軍と黄巾党はどんどん近づいていって……村人達が挟まれる。

 

「こうなる」

 

 状況を把握した一同は、しんと静まり返る。

 

 そしてしばらくの間があいて。やはり最初に口を開いたのはおっさんだった。

 

「俺の考える作戦はこうだ、まず俺達が公孫賛軍と黄巾党の間に陣取る。公孫賛軍を抑えつつ村人達と一緒に退却だ」

 

 どんだけ、アバウトなんだよ! と、その作戦に俺は心の中で突っ込む。

 しかし、周りの人達が一様に頷いて。えー、今のでいのかよ。と、俺は心の中で呟く、いや、実際に呟いてしまっていた。

 

「お、裕貴はなんか意見あるか?」

 

 おっさんが俺にそう尋ねて、やけになった俺はこの際言いたいことをいってしまっていた。

 

「そもそも、この村人達のルー……逃げる道どうして知ってるの?」

 

「逃がしたのが俺達だからな」

 

「じゃあ、なんで公孫賛が攻めてくるって分かったのさ」

 

「それは、元生に行かせてるからなぁ」

 

「げんせい?」

 

「あぁ、俺達なんかよりもずっと優秀だ、情報は確かなものだろう」

 

「まぁ、げんせいはいいとしてこの作戦、どうやって公孫賛を抑えるの?」

 

「こればっかりは力技だな、公孫賛も前方に村人がいたらそこまで全力で突っ込んでこないだろう」

 

「だったら、公孫賛に村人達の事を任せればいいんじゃない?」

 

「それは無理だな、俺達が行かなければ公孫賛が止まっても黄巾党に襲われるし」

 

 と、そこまで聞いて、あらかた質問も無くなった俺は周りを見る。おっさん以外の皆はポカンとしていた。ってか、なんで皆、俺でも分かるようなこんな質問しなかったんだろう? 俺は少しだけ考えるが、すぐに答えは出た。そう、この時代学校も何もないんだった。つまり、みんなそんなに頭がよろしくないのか、

 

「満足か?」

 

 おっさんの言葉に俺は頷く。

 

「俺の作戦が穴だらけなのは分かる、でも俺にはこれで精いっぱいだ、あとはその場その場でどうにかしていくしかない」

 

 くそっ。と、誰かが呟く、悔しいんだろう、この場で何もできない事が。彼らは農民だ、諸葛亮や曹操なんかとは違う。字も書けない人だっているだろう。

 唐突に、なんで俺はここに居るんだろうかと思った。俺の目の前には様々な選択肢があったはずだ。

 

 決戦は明日。そして恐らく俺がこの世界でどう生きていくか、決めなきゃいけないのも明日だろう。

 

  

 

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