FLOWERS Another Episode 会長の思惑 作:抱き枕50
先輩の部屋から戻り、食堂で沙沙貴さん達と朝食を取っている時に後ろから近付く影。
「白羽さん、ごめん」
バツの悪そうな顔で匂坂さんが謝ってきた。松葉杖の彼女を支えるの立花さんも同じ様に謝罪をして頭を下げる。
「制服、誰の借りたの? サイズ合う人居ないでしょ? 」
「そんなことより、もっとちゃんと蘇芳ちゃんに謝って! 締め出しちゃうなんて酷すぎるよ」
「蘇芳ちゃんは優しすぎる。もっと本音出さなきゃダメ。友達なんだから。言うとこはビシっといかないと。二人の為にもならない」
苺さんの口調がかなりきつく戸惑う。林檎さんも二人を睨んで頷く。硬質になった空気が美味しい食事を無味にしてしまう。
「苺さん、林檎さんも、そこまでにしましょう。制服は八代先輩にお借りしたのよ。朝,部屋の前で会ってね。それで貸していただけることになったの」
「それより怪我は? まだまだなの? 先輩も気にしていたわ」
「後もう少し。腫れが引いてきたから、やっと足が動くようになったよ。迷惑をかけて本当にゴメン」
匂坂さんがそれはすまなそうに言う。
「今日のお昼、サプライズ有るの知ってる? 」
私が問うと皆、笑顔になった。こういう話はあっと言う間に広まっていく。
「早くお昼になって欲しい」
林檎さんの言葉に、立花さんが委員長の顔に戻って、叱責する。
「それは授業をこなしてからよ」
立花さんは笑顔でいなし、硬い空気は期待と共に消えて行った。
お昼の食堂は、笑顔120%と言った感じで終始した。私達一年も上級生も皆大満足の顔してる。もちろん食堂スタッフも。色々あったけどサッカークラブは大成功の船出となった。これから暫くは聖母祭もあり、試合が無いのが残念だけど。
そして放課後。沙沙貴さん達と八代先輩の元に行く。部室や執務室でなく二年生の教室を指定された。挨拶もそこそこに
「やあ、蘇芳君に沙沙貴君。話ってのは? 」
「実はクラスの子たちが何人も続けざまに辞めてしまって・・・・・・」
「しかもその理由が・・・・・・。誰も知らないのです。そんなことって変だと思いませんか? 」
「先輩はニカイアの会の会長でおられますから、何かご存じでないかと・・・・・・」
そこまで聞いて、何時もと違う神妙な顔つきに変わった。しまった地雷を踏んでしまったと焦る私達。暫し無言の時を過ごし先輩は問うてきた。
「君たちはどこまで調べたんだい? 」
「理由が判らないのは、四人だっけか。恒例の事ではないが、だからといって今年が最初ということでも無い。僕が一年のときにも当時の三年生が一気に何人も辞めたことがあったよ」
「その時は、僕とネリーが色々調べたんだ。今の君たちみたいに聞き込みしたりね。でも結局何も判らなかったよ。ネリーはオカルトチックな推理をしていたけど僕はその辺りで手を引いてしまったんで詳しく知らない」
先輩の発言が想定外だったので、リアクション出来ない。てっきり、プライベートを嗅ぎ回るなと一括されると思っていたから。親しい先輩とはいえ学院の生徒会たる、ニカイアの会の会長なのだ。風紀を乱すなと言ってきても奇怪しくはない。
「それは学院七不思議と関係あるのですか? 」
林檎さんは不思議なことを口にした。一体なんだろう。よくある怪談のことだろうか。苺さんは二人をずっとみつめているだけで、戸惑ってる風ではない。知らないのは私だけか。思案に暮れていると、八代先輩は
「おっ、そこまで知ってるのか。知ってるなら隠すことも無いか。七つあるといううち、今判っているのは三つ。そのうちの血塗れメアリーが・・・・・・ということになってる」
僕はここまでしか知らない。これから先はネリーに聞いてくれ。しかし知ったとこでどうする。オカルトと辞めた子の事とはリンクするかは不明だし、するならここだけの話ではなくなってくるぞ? 家庭の事情で辞めたと思われる事以外は判らないよ? 多分ね・・・・・・ 」
八代先輩はここまで話すと、特に私に自重するように促し去って行った。
私は彼処で調査打ち切ろうと思っていたのだけど、林檎さんの熱意が凄く、話しを聞くまでという事で妥協して小御門先輩を捜した。小御門先輩は聖堂に居るという。行きたくない場所だけど、お目付役としては行かざるを得ない。
扉を開けて見回すと、奥の方に豪著な金髪が見える。会議は終わっている様で、人影は疎らだった。先輩に挨拶するのに近づいたら、不意に聞き慣れた声が私達を呼ぶ。
「蘇芳さんに、沙沙貴さん。どうしたのこんな場所に。しかも沙沙貴さん達と揃って来て。珍しいわ 」
振り向くと長椅子に座っている立花さんだった。そして隣には匂坂さん。私達の視線を感じながらも握っている手を離さない二人。ご馳走様である。沙沙貴さん達は瞬間拙いと思ったようだけど、小声で二人をここに釘付けにしてお願いと行って進んでいく。
「私達級長会議の事でここに居たの。マユリさんは書記係なの。他意は無いわ。本当よ信じて蘇芳さん」
朝の一件を気にしたのか、言動不一致の態でどうにも締まらない二人だ。それはさておき、林檎さんは小御門先輩の所で聞き込みをしようとしている。苺さんもだ。私を防壁代わりにしている作戦は効果的に進行している。
「小御門先輩に何の用なの? 私達にも教えてくれない? 」
「・・・・・・・・・・・・」
なんとも言いにくい。委員長の立花さんも匂坂さんも、沙沙貴さん達に辞めた子の事で聞かれていた。その事と、オカルトチックな七不思議をどう絡めて良いのか・・・・・・。
「ほら、沙沙貴さん達のアミティエが辞めたり色々有ったでしょ。そのことでニカイアの会の会長、八代先輩に聞いたら小御門先輩に聞いた方がいいということでここに来たのよ」
ちょっとぼかして答えた。腑に落ちない顔の二人に話しを続ける。
「かつて上級生が一気に何人も辞めた事が有って、それを熱心に調べていたのが小御門先輩なの。で、この学院の七不思議との関わりがあるとか無いとかの話になって・・・・・・」
「えっ? 家庭の事情だろ、あの子たちが辞めたのって。他に何があるっての? 」
茶化したと思ったのか匂坂さんが語気を強めて言う。
「私もそう思うけど、かつての時は校内で禁忌な作為をしたらしいの。血塗れメアリーの儀式というものらしいわ。そのあと忽然と消えたと」
「それが今回も関係してるって言うのかい。消えたなんて信じられないよ。それだと親元に帰ってないってことになる。だとすれば今年のは警察沙汰だよ」
まさに正論。天涯孤独でないなら、消えたなら身内が騒ぐだろう。八代先輩が冷めてしまったのはこのあたりなのだろう。小御門先輩達はオカルト談義に盛り上がってるようで、こちらとの温度差は相当なものだ。
ふと気がつくと何か違和感が有る。立花さんの影が薄いのだ。先程から押し黙ったまま匂坂さんの手を握って固まってる。下を向き心無しか青い顔。
「立花は怖い話とかが、ものすごく苦手なんだ。怪我して保健室で二人の時に、怪談話したら夜トイレに一人で行けなくなっちゃったくらいダメでさ。そこが逆に萌えポイントなんだけどね」
話をしながら、頭をなでなでする匂坂さん。されている立花さんもムッとしつつも満足そう。全くこの二人は・・・・・・。
「蘇芳ちゃん帰るよ。長く居ると二人のバカップル菌が移るって。『そこの二人は馬に蹴られるまで放っておきなさい。蘇芳ちゃん』ほら早く」
強引に手を引かれて、聖堂を出た。今日も沙沙貴さん達の部屋に寝る。そこで彼女達から意外な提案を聞かされた。私達で血塗れメアリーの儀式をしようというのだ。場所と手順はかつて実践した小御門先輩に聞いたと。することによって手掛かりが得られるのではないと言うのだ。
「私達が消えたりしないの? 信じてるわけではないけど、万が一って事もあるでしょう? 」
「平気だと思うよ。だって実践した小御門先輩は、今でも現世で元気だよ。一度やってみようよ蘇芳ちゃん。友達でしょ。ねえったら、ねえねえ・・・・・・」
抱きついて揺すってくる二人。友達という言葉がこそばゆい。夜仲間うちの秘め事、こういうのに憧れのある私は同意した。友達の居なかった私はずっとずっと想像の中だけだったけど、やっと実体験出来ると舞い上がっていた。
夜の校舎に入るのは小御門先輩からこっそり入るルートを伝授してもらった。見回りの時間も。雲が出ていて暗いのは幸いなのだろう。
場所は階段のキリストを抱く聖母マリアの絵の前だ。時間は午前二時ちょうど。行くのは沙沙貴さん達と私白羽、それに匂坂さん。立花さんは置いてきたという。まあ来たところであの怖がり方では醜態を晒すだけだろうから。
午前二時、絵の前で鏡を持ち、皆で覗き込み呪文を三度繰り返す。"血塗れメアリー"、"血塗れメアリー"、"血塗れメアリー"と。しかし特段何も起こらない。しかし苺さんが放った言葉に場が凍る。
「変な声が・・・・・・」
続いて林檎さんも、鏡の中にもう一人見えると呟く。その時、突然私達は視界を失った。と、同時に声が聞こえた。
「動くな。夜間校内侵入違反で捕縛。午前二時二分。四人確保」
「全く、思慮のない行動すると破滅する見本だな。バレバレなんだよ、君たちは。捕まえたのが私達で感謝したまえ」
やっと何が起きたかを理解した。超まぶしい5眼のLEDライトが消え、間を置き赤い光の小型懐中電灯の明るさに目が慣れてきた。と同時に違和感にも。
「もしかして貴女達は天文部の? 」
「そうだよ。私達は天文部の二年二人と三年三人だ。うちの副部長に八代会長から依頼があってね。そこで学院には偽りの臨時夜間観測申請をして待っていたのさ。たまたま部分月食が有ったんで名を借りたわけだ。厚い雲で全く見えないけどな」
「まさか、会長の読み通り今日儀式するとは思ってなかったけどね。まあ、これで会長に一つ借りを返せた」
「寮に戻るぞ。ほら、ほら。泣くのは後で部屋で泣く」
天文部の人は、一応部活なんで学校に残って仮眠する。私達は寮に強制送還の態だ。沙沙貴さん達は本当に怖かったのだろう。未だにぐすぐすしてる。匂坂さんは落ち着いてるように見えるけど、一言も口をきかない。
私は何故か落ち込むでも無く、イベントの余興の気分といった感じで現実感無いまま校舎を出た。外は雨が降り天も水入りを示しているようだ。しかし出直す機会は有るのか自問する。
傘など無く急ぎ足で寮に向かうもかなり濡れてしまった。寮生の風呂はこの時間は入れない。でも小御門先輩の口添えで寮のスタッフ用のユニットバスを借りれる事になった。私が入寮の時に入ったお風呂だ。また使う事になるなんて・・・・・・
皆で頭下げて一緒に入って身体を温める。普段なら恥ずかしいとか色々有るのだろうけど、この時はお互いに裸を見やりながらも全く意識せずに、淡々と一緒に洗い合いった。
お風呂出て着替える時、苺さんが私に囁く。
「蘇芳ちゃんの身体を初めて見たけど、凄すぎて参ったよ。ほんとに同じ歳なのかってさ落ち込むよ。実はダリア先生より年上だったりしない? 」
林檎さんもそれに続けた。
「あの絵みたいに赤子を抱いていても違和感無いお胸だよ。蘇芳ちゃん」
匂坂さんも・・・・・・。
「私も立花も蘇芳さん位大きくならないかな。牛乳欠かさないんだけど・・・・・・」
先程と変わり笑みが出るようになった。午前三時、遅くなったけど八代先輩の部屋に行き謝罪する。学院には報告せずお尻を平手で三回叩かれて水に流す事になった。ここで沙沙貴さん達と別れ久しぶりに自室に帰る。
深夜なのに電気を点けて立花さんが待っていた。怒った顔が事の顛末を知ったという事だろうか。
三人で抱き合い、無事を喜んだ。寝つけない私達はこっそりお茶会をして時間をつぶす。今度は、発覚しない様にこっそりと・・・・・・。