FLOWERS Another Episode 会長の思惑   作:抱き枕50

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遂行編

今日は五月十五日。アミティエの花菱立花さんのお誕生日。放課後、何時もの東屋でお誕生日会が開かれます。普段のお茶会と違い、クラスの全員が参加するみたい。クラスメートと一線を引く、八重垣さんも来ると言うんで驚いてしまいました。

 

あの事件以来何くれとなく世話を焼く立花さんに絆されたみたい。今回は八代先輩の後ろ楯で、料理部の設備を貸与させていただいたのでケーキバイキングもかくやと思わせるほど色々な出し物が出来ました。当初は私と八代先輩、料理部仲間の沙沙貴さん達とアミティエのマユリさんが作る筈だったのに、実際はクラスメートが入れ代わり立ち代わり参加してくれました。

 

これには八代先輩も驚いてしまいましたね。何かちょっと当てが外れて? バツが悪そうにも見えましたけど・・・・・・。今、お昼休みの時間、最終の仕上げしてます。そこに昼食を終えた。八代先輩が。

 

「あっ、八代先輩。キッチン使わせて貰ってます。ご無理言って申し訳ないです」

私は先輩を見つけ、挨拶をした。。他の子も謝辞を口にする。先輩は気にしなくて良いからねと言いながら、ウインクして少しばかりつまみ食いをする。

 

私は、またいつもの・・・・・・といった感じだけど、マユリさんは本気で怒ってる様だ。くわばらくわばら。

「悪い、悪い。本番に参加できないんだから少しくらい良いだろ? 」

そういう先輩だけど、マユリさんとクラスメートがバリケードの様に立ちはだかり、次なるつまみ食いを実力排除してくる。

「だめかい? 連れないな」

私と沙沙貴さん達が、プっと吹き出す。

「先輩、普段の行いがこういうことになるのですよ」

と林檎さん。

 

「ユリーは立花ちゃんラブだから、私のクッキーで我慢して。先輩」

と苺さん。

 

「八代先輩の分は冷蔵庫にありますから。小御門先輩の分もありますんで忘れずに放課後持ち帰って下さい」

私はそう伝えた。

「流石我が師。弟子を想う気持ち痛み入る」

軽口を叩き私に近寄り、いきなりハグして先輩なりに謝意を伝えてくる。私は皆に冷やかされ、顔から首から真っ赤に照れてしまった。わたわたとハグを解き深呼吸して落ち着こうとしていると

 

「もー、蘇芳ちゃんばかりいい目見て。ずるい、ずるい」

「私にも感謝して」

「同意です。先輩」

ステレオで不満を訴える沙沙貴さん達に、八代先輩は相対し順番に二人の頭をなで,労をねぎらった。この扱いの差は、何だろうとも思うが、沙沙貴さん達はニコニコで一件落着の様だ。

 

「それでは、花菱君に宜しく言っておいてくれたまえ。特に蘇芳君、沙沙貴君。料理部の矜持がかかってるのだからね」

「そうそう、蘇芳君。胸、大きくなったんじゃないのかい? 」

「なっ、なにを、言うんですか先輩・・・・・・」

 

瞬間で赤らむ顔。私は片手で顔を覆い、片手で胸を押さえ、皆の好奇の視線に耐えきれず床に座り込む。

「胸を張って自慢したまえ、蘇芳君。自慢しないのは罪だよ。疑う輩は僕が成敗するから言って来なさい」

 

八代先輩は周りを見回して周知徹底させて、しゃがんだ私の腕を取り、引き起こしてしまうと私の腕時計を見て

「昼休みもそろそろ終わるので、教室に帰るよ」

後ろ手で右手を振りながら、八代先輩は何時もの様に私を弄ってさっそうと帰って言った。クッキーをつまみながら。

 

 

「いやー疲れた。ネリーもお疲れさま」

首をコキコキさせながらネリーを労う。聖母祭の折衝は、毎年大変とは聞いていたけど、案の定だった。動いてしまえば生徒の自主性に口出しは最小限と聞くが、それまでは大人の事情が複雑に絡み合う。予算を筆頭に外部からのゲストや衛生面、先生の宿直のシフトまで、そんなのそっちで詰めてよと何度も口に出そうとしてしまった。

 

「おっと、忘れるところだった。料理部に一年生の作ったお菓子が用意してあるんだ。寄っていこう君の分ももちろん有るよ、ネリー」

あの一件から前とは微妙に違うとはいえ、側に居てくれるネリーが愛おしい。

 

「ありがとう、譲葉。蘇芳さんが作ったの? 」

とボソッと問うてくる。表情も硬い。やはり心中は穏やかでは無い様だ。

「どうだろ。クッキーだったら沙沙貴君の可能性大だけど」

 

少し柔和になった気がした。耳に軽くキスをし、

「そう、そう辛気臭い顔ではお菓子が不味くなってしまうからね」

「一体誰のせいよ。全く」

 

そう言いながら僕の脚を蹴る。

「そんなに蹴るのが好きならサッカーやらないかい? 」

「そろそろ寮のスタッフ、教職員合同チームと練習試合を画策してるんだ」

「まだ人数が足りないから7人サッカーから始めないといけないんだ。ソサイチって名称なんだよ、7人サッカー」

 

そんな話をしてたら部室着。今日は買い出しに教職員の車で特別に外出中なので部活は休み。農家に直に買いに行くのだ。さて鍵を開けて冷蔵庫に。

 

「おおっ、ショートケーキの詰め合わせだよ。モンブラン入りのは君宛だなネリー」

二人して相好を崩す。すぐにお湯沸かして珈琲の準備にかかる。やはり僕達は珈琲だ。とっておきの豆を取り出す。今日はドリップでいくことにした。ネリーはサイホンより好きだと前に言っていたから。

誰も居ない料理部の部室に、珈琲の香りが漂う。

 

 

「二人が初めて互いを求め合った後、朝日の中ベッドで飲んだ珈琲を思い出さない? 譲葉」

「あの時もこんな薫りが漂っていたわ。あの時と今では二人の関係は随分と変わってしまったけど・・・・・・」

 

そうだねと無言で頷く僕。二人の汗の匂いしか無かったあの時と違い、今ここにはその時無かったスイーツの香りがある。

「ネリー、そんな事言わないで。あの頃二人は子供だったんだよ。お互い環境が変わって大人も友達も信じられなくなってた」

「信じられるのは君だけだった。家族ですら他人だったよ、あの頃は。誰も知らない秘密を二人で築いた。今でも大切に思ってる」

抱き合いながら言葉を繰る。

 

「今はそんな昔のことより、スイーツが僕たちを待ってる。一緒になりたがって待ってるよ、ネリー」

離れる二人。

「またはぐらかすのね。あなたって人は」

手を取り不満顔のネリーをスイーツの前にエスコートし,手にキスをする。

 

 

突然、外で物音がした。目を向けるとままの開けたままのドアの向こうに花菱君が真っ赤な顔して立っていた。音は手に持っていたラッピングされた小箱。

 

「そんなとこに居ないで中に来なさい。紅茶党の君には居心地悪いかもしれないけど、まあ赦してくれ」

落とした小箱を拾い上げ、下向きながらおずおずと僕たちの前に来た。真っ赤になった花菱君は普段の澄まし顔より魅力的に思った。そこで声色変えて

 

「どの辺りから見ていたんだい? 。正直に答えなさい。そうでないと・・・・・・」

花菱君は震えながら

「最初からです。ごめんなさい。誰にも言いませんから許してください。今日のお礼をしたくてお二人にお渡ししたいものがありましたので、 窓越しにお二人をお見かけしここに来たら・・・・・・」

 

泣き声になって最後は聞き取れない。ネリーが彼女をハグして慰める。

「譲葉、もういいでしょ。ごめんなさい、花菱さん。からかったのよ譲葉が。気にしないでね。叱っておくから」

ネリーに引き続き僕もハグする。

「すまない。君が魅力的だったんで、ついつい・・・・・・」

 

髪をなでながら謝る。刹那、僕が彼女の眼鏡を外す。驚く彼女。僕がハンカチ出し、彼女の涙をぬぐって問う。

「花菱君はコンタクトはしないのかい? 眼鏡もいいけどしない方が魅力的だよ」

「バレエの時にはするつもりで今用意してます。汗かきな方なので・・・・・・目に入れるのはちょっと不安で・・・・・・」

「それにずっと眼鏡でしたから、するのは儀式みたいなもので・・・・・・」

 

そんな考えにちょっと驚いた。落ち着いてきた彼女に、お渡ししたいものってと再び問う。

「今日は私の誕生会に贈り物をありがとうございます。そのお礼です」

気にしなくていいのにと言うと、

「いえいえ義理が廃ればこの世は闇夜」

「これは先輩の座右の銘と聞きます。私もそう思いますので」

 

先程と違い、満面の笑みである。ありがたく頂戴することにする。誕生会はどうだったかを問うと、何故か真っ赤でもじもじしている。具体的にスイーツの出来を問うと最高でしたと答えた。 まあ詳細は蘇芳君にでも問い直そう。先程の話を口外しない様に、念押しし確約を得る。感謝を改めて伝えて僕たちもお開きにする。

 

 

翌日、以前から打診していたサッカーの試合の予定が決まった。次の土曜の午後である。一年から、匂坂君、林檎君、蘇芳君、二年からは僕他三人、三年生から一人確保した。ギャラリーは相当居そうだけど、お嬢様学校だからか、接触プレーの多いスポーツは尻込みしてしまうようだ。

 

相手は、寮のスタッフに出入り業者,それに教員の混成である。何しろ初試合故、ルールやら周知徹底の慣熟試合なので、まっとうな相手は先の話だ。一年の教室に出向き、匂坂君達を呼び出してプリントを配布。花菱君が目に入る。手を振る僕に照れる彼女。席を立ちこちらにきて、昨日のお礼を再度口にする。僕も花菱君からのお礼の謝礼をする。僕はシュシュでネリーは髪止めだった。

 

「早速使わせて貰ってるよ、花菱君。ありがとう」

蘇芳君、苺君に今日は料理部出てきてくれと伝え、花菱君には合唱部はちょっと間が空くからと伝えた。刹那表情が曇る。察し昨日の事とは関係ないよと小声で話す。ぎこちないながら笑顔になった。

 

放課後、料理部で師の指導を受け、揚げ物に挑戦中。サッカーの時のお弁当のアイテムとして、特別に予定変更である。苺君林檎君はパスタを挑戦中。エネルギーの吸収活用にパスタは良いらしく、テキストと首っ引きである。出来上がって試食の段階で、匂坂君が来た。

「廊下まで良い匂いしてますよ。先輩こんにちは」

「絶妙のタイミングだな。こういう感覚に長けているのは試合でもいろいろ期待できそうだ」

 

僕が作ったのはともかく、蘇芳君や沙沙貴君達の作ったものはさすがの出来で、皆も太鼓判を押す。いじける僕を蘇芳君がフォローしてくれる。さすがに師だ。

 

「匂坂君達に渡すものがあるんだ。ちょっと待っててくれ」

各自に紙袋を渡す。中を見て表情が緩む。

「ユニフォーム! かっこいい」

早速身体に合わせてみる。ブルーベースにライン入れて学院の花のワンポイントと名前から取ったりした各自の花のワンポイントが袖に入る。蘇芳君が何か悲しそうな顔をした。

 

「わっ、私だけデザイン違うのはどうしてですか? 」

「あー、それは君がゴールキーパーだからだよ。手袋も入ってるだろ? 」

「えっ、キーパーってシュート止めないといけないのですよね? 」

そうだよ。と僕。それが仕事だもの。

 

「無理です。出来ません。先輩・・・・・・」

涙目の蘇芳君だけど、ここは鬼になってユニフォーム出来ちゃってるし、変更は無理だから。キーパーは大きい人がするのが基本だし。僕たちが攻めまくるから暇だよ多分。言いくるめるのは大の得意。蘇芳君はしぶしぶ同意した。そうなれば切り替えは早い。相手の事を聞いてきた。

「相手は寮のスタッフさんとかと聞きましたけど、同世代の人いますか」

 

「基本は皆年上だね。一番上で27だったかな。若いのも連れて来るとは言ってたけど、どうかな? 」

「怖い人じゃないと良いのだけど・・・・・・」

不安がる蘇芳君を匂坂君がフォローする。

 

「大丈夫、年増になんて負けないよ。若さで圧倒してみせるから」

「苺ねえは、とにかく怪我しないで。怪我させてもいいから」

林檎君は相変わらずの発言で笑いを取る。

 

「シューズ、ボールを各自分用意したから、後で届けるよ。試合までに馴染んでくれたまえ以上だ! 」

と場を〆る。皆と同じように蘇芳君も右手を高く掲げ気合を入れる。難題山積みの聖母祭前に、スポーツでストレス発散だ。

 

 

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