FLOWERS Another Episode 会長の思惑 作:抱き枕50
「ねえ マユリ、次の土曜の午後サッカーの試合なんでしょ? 皆連れて応援に行っていいかしら? 」
立花が、夕食時に私、匂坂に訪ねてきた。
「そうだよ白羽さんと苺も出るから良かったら来てよ」
「蘇芳さんもなの? 怪我したりしないかな? 心配だわ」
「ちょっとぉ。私や林檎のことは心配してくれないのかい? 酷いなぁ」
「単にイメージの問題よ。蘇芳さんがボールを追って走るイメージが沸かないし、大体がスポーツしてる事自体が想像できないから」
「まあ白羽さんはキーパーだから、あまり走ったりしないよ。怪我の心配はそんなに無いと思うよ」
そうなの? といま一つ納得しない立花。まあ今回は初の練習試合。
「こっちもお初なら、相手もそう。どこまで試合らしくなるかわからないし、向こうだって無理はしないよ」
心配しないでと立花を諭す。
「審判は先生がするからやたらと笛吹きそうだしさ。7人制はオフサイド無いし審判も接触プレーに注視出来そうだから。まあ平気だよ立花」
ここまで話すと立花はいつもの笑顔になった。私も立花の前でみっともない真似は出来ないなと改めて誓う。
試合当日まで、個別に練習せざるを得ず合同で練習が不足している。僕が考えるような戦術云々はちょっと無理。
ボールを持ったらゴールを目指すようなサッカーになってしまうだろう。それでもいよいよアングレカム学院サッカークラブ"FLOWERS7"の初試合に心高ぶる。
ここまで来るまでに、折衝事がすごく大変だったし、メンバー集め、グランド確保、万一の怪我等のマニュアル作り、その他にも色々だった。思い出すと泣きそうになる。しかしやっと花開く時を迎える。
「こんにちは。八代会長はいらっしゃいますか? サッカーチームメンバーの皆様が来て下さいましたよ」
事務の方がニカイアの会の執務室まで来て知らせてくれた。すぐに校舎の入り口に向かい挨拶に出向く。
着替えは寮の施設を使う旨を伝えた。半分は寮のスタッフ、残りはその友人等なので勝手が知ってるとの判断だ。私たちは校舎で着替え、そしてグランドで落ち合う。彼女達に、練習時間を与え、私達も端の方でアップする。そうしていたら昔聞いた懐かしい声が聞こえてきた。
「お嬢様? 譲葉お嬢様ではありませんか。やっぱりそうですね。懐かしいです・・・・・・。私を覚えておいででしょうか? 」
声の先を目で追う。彼女は・・・・・・。昔の面影が残っている。懐かしい。彼女はかつて私の家にいた住み込みお手伝いさんの娘さんで、確か 三つ上だったか。小さい頃はネリーや弟たちと良く遊んだものだった。
「覚えてますよ懐かしいな。髪形は昔と変わらないんだね。えーと8年位降りかな。どうしてここに? 」
「母が学院御用達のクリーニング店のスタッフしていて、そこでお嬢様の対戦申し込みの封書を見た母が、行ってきなさいと教えてくれました・・・・・・」
「それにしても、お嬢様は相変わらずお綺麗ですね。身長も高くなりスラッとして。その綺麗な銀髪も昔のままで・・・・・・」
「お嬢様は止めてくれよ。もうあの頃とは違うんだ。あの屋敷は父が手放してしまったしさ。その後はマンション暮らしの一般人だよ。僕だけがここで寄宿舎で暮らししてる」
「わかりました。お嬢・・・・・・ごめんなさい。初めて出会った時みたいに、譲葉ちゃんでいいかしら? 」
そんな昔話に花が咲いていたら、試合開始間際になっていた。お互い並んでJリーグでお馴染みの記念写真を撮る。
キャプテン同士握手して自陣に別れ、円陣組んで気合を入れる。蘇芳君も声を出してる。良い表情だ。先生の笛で試合開始間際。匂坂君がFWでワントップ。僕は10番背負ってトップ下辺り、苺君は右ウイングで士の字の様な陣形だ。
試合は前半終了間際に匂坂君がゴールしてギャラリーは大盛り上がりである。一方蘇芳君も何度かピンチをしのいだ。なにしろやるとなったらやる子だからね。
黒蜘蛛レフヤシンならぬ、黒髪の蘇芳である? 1-0で後半に入ったものの、立ち上がりに失策が響き失点してしまう。落ち噛む蘇芳君に喝を入れ、僕なりに考案した戦術を指示した。
それは功を奏しカウンター仕掛けて逆転。そこからは一進一退。このまま終わるかという時、アクシデントが。匂坂君がヘディングで競った時、着地で足をひねってしまった。相手は僕の幼なじみ。痛がる匂坂君はうなり続け額は脂汗だ。協議して試合はここで終了とした。
心配して駆けつけたギャラリーとして見ていた委員長の花菱君、匂坂君と仲の良い苺君、責任者として審判の教員に匂坂君を託した。蘇芳君も駆けつけたいのだろうが、僕の判断を尊重してくれている。相手の彼女も心配なのか泣き顔でその様を見送る。
向うのキャプテンも慰めているが、どうにも落ち着かない様なので僕も声を掛けた。
「大丈夫だよ。そんなに心配しないでも。それより君も匂坂君と激しく当たったけど,怪我しなかったか? 」
「譲葉ちゃん、ごめんなさい。彼女があんなことになってしまって。私の事なら平気。ちょっと痣が出来ただけだから。折角の試合に水を差してしまって本当にごめんなさい」
泣き崩れる彼女を支え抱き留める。昔もこんな事をした記憶が甦る。あの時は犬に襲われた時だったか・・・・・・そんな郷愁に思いを馳せていると、向うから教員が手でまるを作って歩いてくる。大過ないようで皆がホッとした。
蘇芳君などは安堵して泣いている。話を聞くと軽い捻挫でしばらくは治療しないといけないが、後遺症等は気にしなくても良いらしい。ここで整列して終了の挨拶して試合終了。途中打ち切りとはいえ、結果の上では初陣を飾ったことになって安堵した。この先続ける為にも勝ち、勝利の二文字が欲しかったのだ。学院へのアピールとして・・・・・・。
「ねえ、マユリ。着替え持って来たわ。今から清拭するからユニフォーム脱いで頂戴」
立花は平然と言う。タオルをお湯に浸しながら。保健室には私たち二人だけだ。苺は林檎が心配して連れて帰った。
月曜朝まで保健室で寝泊まりし、その後は車椅子で寮暮らしになると聞かされた。それまでは立花と二人でここで生活する。その間、白羽さんは八重垣さんの部屋に行くという。書痴仲間として話が合うらしく、存外楽しそうに見えた。
「はいはい。お母さん。お願いします」
軽口で答え照れ隠しをする。準備出来たわ良いわよの声に、ベッドに腰かけ上半身裸になる。立花の手が私の身体を吹き清める。まずは背中、首回りから。普段ではあり得ない事態に戸惑う、私。お風呂では裸は見慣れてるわけだけど、洗いっことかはまだしていないから。
タオルを持ってるとはいえアミティエが私の裸を見て触っているのだ。普段は逆に、私が立花の着替えを手伝いと言うか全部してあげる形で、立花の半裸を見てはいるのだが。
「マユリの肌は綺麗ね。ホンと嫉妬しちゃうわ。どんなケアしてきたの。教えてくれない? 」
「ケアってほどの事はしてないよ。普通に石鹸使ってるだけだよ? 」
「それでこうならずるいわ。私と同じじゃない、やってることは! 」
立花がぶーっとむくれる。私に言わせれば立花の方が綺麗だと思うのだけど。そうこうしているうちに、胸を拭こうとしていることに気づく。
「そこは自分でやるよ。タオル貸して」
「駄目よ。怪我人なんだから、介助の私に任せなさい。普段の借りを返さないとね」
「わかった任せるよ。お母さん」
「またそう言う。お母さんは止めて。誕生日は一月ちょっと私の方が早いけど」
「・・・・・・・・・・・・」
暫しの沈黙。淡々と胸の辺りを拭く立花。
「話変わるけど、今日は応援ありがとう。おかげで頑張れたよ、立花」
「・・・・・・・・・・・・」
相変わらず黙ったまま清拭する、立花。しかし、先程と違い顔が赤い。照れている立花が可愛過ぎる。閾値を超えてしまった。刹那強引に彼女を抱きしめて、ベッドに押し倒す。タオルが床に落ちる。
「立花、ごめん。もう我慢出来ない。私は立花が好きなんだ。入学式からずっと立花を、君だけを見ていた。今だけで良いから私を受け入れてくれお願いだ。立花・・・・・・」
強引に唇を奪う。立花は言い訳がましく弱々しい抵抗はしたものの、基本的に成すがままである。拒否はしてない。そこでいったん抱いていた腕を解いた。
「立花も脱いで。私だけ脱いでるなんて恥ずかしいよ。脱がないなら脱がせちゃうよ」
立花は制服なのでワンピース。脱ぐと下着の上下だけになってしまう。私はハーフパンツ履いてるけど・・・・・・。
それでも自分から脱いでいく、立花。この空気に麻痺しているのだろうか。清楚な制服を脱ぎ、子供っぽいながらも女を意識した下着姿になる。
そしてブラを外す。私より小さい胸が露になる。そして抱きついてくる。まるで見られたくないかの様に。胸の感触を互いに感じながらベッドに倒れる。そこから先はお決まりのコース。足を庇ってなのでそんなにDeepでは無かったけどしっかりと愛を形にした。
終わった後、私も入学式から気にしてたのよ、マ・ユ・リ。もちろん蘇芳さんもだけどね。といじわるな顔をする。
「私、強引な人に弱いのよ。マユリみたいな。蘇芳さんを落とすつもりだったけど、マユリに落とされちゃった。責任取ってね。王子様」
再び、キスをする。いわゆるフレンチキスだ。もうすっかり日が傾き、保健室の中は真っ赤に染まっている。その中の二人は炎の中のダダイストだったのかもしれない。
「八代先輩、ユリーは保健室で委員長と一緒に土日泊まるって。で、一人になる蘇芳ちゃんは一人部屋の八重垣ちゃんのとこ泊まるって決まりました」
「えっ、蘇芳君は八重垣君の部屋に泊まるんだって? 」
苺君の言葉に驚天動地である。オイオイなんて事だ。折角の偶然からのラッキーチャンスだと思ってたのにと消沈する。葉子にもお姫様がまた来るからと言ってしまったのに・・・・・・
先程お見舞いに保健室に出向いたら、18歳未満お断りの声がしていたので、そっちのペアは一線を超え固まったと意気軒昂だったのに・・・・・・画竜点睛を欠くになってしまった。あーあである。
幼なじみに会えたから良くないかって? 彼女はネリーが持ち去ってしまったのだ。ネリーも幼なじみなんだからと、待たせて合わせたのだよ。うん。昔と変わらないのはネリーも同じだ。あの頃から女性の中の女性であるネリーに彼女は理想を見ていたのだ。
その理想が今また出現したとなると、僕ッ子の出番は無いし、傷心のネリーには特別が必要なんだからと身を引いた次第。何でも文通から始めるらしい。ここはEメールは不可だからね。
そして夜、夕食後部屋でアミティエが小さなお祝いの会を開いてくれた。僕とネリーと葉子の三人。出来合いで悪いからと恐縮するが、そのスイーツとジンジャーエールは至福の時を与えてくれたのだ。
「"FLOWERS7"の初陣とその初勝利。そして幼なじみとの再会、交際に乾杯」
アミティエが音頭を取り、最後は僕が三本締めで〆た。今夜の事は決して忘れない思い出だ。