FLOWERS Another Episode 会長の思惑   作:抱き枕50

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双子姉妹の憂鬱編

「ねえ、蘇芳ちゃん。ちょっといいかな? 」

 

林檎さんが図書室で片づけをする私に声をかけてきた。何か何時もと違うトーンに八代先輩が問うてきたことが頭を過る。

 

「まだ終わらないの。あとちょっとなんだけど、急ぐの? なら手伝ってくれると・・・・・・」

 

林檎さんをチラ見すると、そこまではしてくれないようで・・・・・・ちょっとため息。気を取り直して作業続行。今日は返却本が多くて普段よりも時間が掛かってしまった。

 

「林檎さん、お待たせ。話って? 」

 

エプロンを外し、林檎さんの座るテーブル席の対面の椅子を引き腰掛けた。今日は二人でなく林檎さんだけ。林檎さんは苺さんと違い、私から見てもかなりの読書家で図書室に一人で来ることも結構ある。だけど改まっての話とは今までそんなこと無かったので変に意識してしまう。

 

 

「蘇芳ちゃんはどう思う? 辞めちゃってるでしょクラスの子が・・・・・・。私的に何か有るんじゃないかって思う」

 

確かに、サッカーの試合の前辺りから、五人程のクラスメートが退学して行った。うち一人は家庭の事情での退学が判っている。しかしその他の四人はどうも理由がハッキリしない。

 

「そうね、理由が良く分からないのは変に思うけど、最初の中田さんみたいに家庭の事情とかじゃない? 親関係や、金銭的なものとか。あとはそう、ここでの生活がダメとか・・・・・・」

 

林檎さんは、差し障りのない中庸な答えに、少し苛立っているように見える。私をキッと見据えて乗り出してきた。

 

「それだったら、みんなに話して辞めたっていいと思うのですよ。蘇芳ちゃん。確かに皆お嬢様だからみっともないかもしれないけど、文託すとか先生に言付け頼むとかあってもいいでしょ。辞めた子たちはハブられてた訳でもないし。友達多かったし・・・・・・」

 

「友達だったら蘇芳ちゃんの方が辞めた子達よりも全然少ないもの。 蘇芳ちゃんって、辞めた子と話したことないでしょ」

 

苛立ってるのか、私のことを加えてきた。確かに私は、クラスでアミティエと沙沙貴さん達、それに教室に出て来ない『ドミトリーのメドゥーサ』と揶揄された八重垣さんとしか話をしてない気がする。

 

自分としては、部活や図書委員、この間のサッカー絡みで会話をさんざにしてるのでクラスでのことは少し虚を突かれた感じだった。

 

「そうね。その子達を直接知らないけど確かに私よりは皆社交的だったと思うわ。立花さんやマユリさんはどう思ってるのか聞いた? 林檎さん」

 

「聞いたんだけど・・・・・・。立花ちゃんは委員長だから色々探ったみたい、友人関係とか、いじめや部活や委員会での上級生とのことか。いくら色々聞いても真相は藪の中で。マユリさんも交遊関係がクラスで一番広いし聞いたけどダメだった。それに今は二人ともバカップル状態でてんでダメ。1+1が2じゃなくて、マイナス100くらいダメだわあの二人」

 

ことあることに、女性同士の恋愛関係に否定的な林檎さんらしく、容赦なく切って捨てる。

 

「だからこうして蘇芳ちゃんのとこに来たのです。今、苺姉が先生に聞き込み行ってる。三人で真相を調べて見ようよ。お願い・・・・・・」

 

 

段ボールに捨てられた子猫みたいな依願する目で、私を見続ける。三人か。ん、三人?

 

「ねえ、アミティエ三人で調べてみたらどう? より親睦深まるわよ? 」

 

瞬間、目を見開き驚く顔を見せ、すぐに下向いてグスグス泣き始めた。テーブルに伏せての号泣。もう私はパニック。

 

「蘇芳ちゃん、酷い酷い・・・・・・」

 

泣いてる林檎さんがうわ言のように繰り返す言葉に、こめんなさいを繰り返すだけの私。

 

 

「白羽、お前何やらかしたんだよ。酷い奴だな。妊娠でもさせて堕ろせとか言ったんじゃねえのかおい? 」

 

誰も居ない図書室だけど、空気が一瞬で変わった。声の主を見る。八重垣さんだ。何処のあたりから聞いていたのだろう。わたわたして言葉が出ない。かろうじて辞めた子の話をしていたことを伝えることが出来た。

 

 

「おい、沙沙貴。お前妹の方か? おまえんとこのアミティエ辞めたんだって? バスキア教諭に理由を聞かれたよ。何か知らない? ってさ。クラスに行かない私が知ってる訳無いってのにさ。

 

お前の姉はそのことで聞き込み回ってるって、養護教諭が話してくれた」

 

だから、林檎さんはここに来て私に・・・・・・。彼女の身を案じてなのに、私は無神経な事を。

 

 

「分かったわ。私で良ければ協力するから。起きて林檎さん」

 

促しハンカチで涙を拭く。泣きぼくろが彼女を儚く見せる。八重垣さんも空気を読んだのか何も言わない。暫くして図書室のドアの開く音が・・・・・・。

 

「林檎、首尾はどうよ・・・・・・って、一体どうした? 」

 

 

苺さんが大きい声を上げて、どたどたと図書室に入って来た。誰も居ないとはいえ静粛が求められる図書室。八重垣さんはムッとしてる。そんな彼女に一瞥もくれず林檎さんの元に進む。そして抱きしめる。目は私をギッと睨む。

 

「貴女達のアミティエのことで。私が無神経なこと言ってしまったから。本当にごめんなさい。後で貴女達の部屋に行くから、今は林檎さんをお願いしていいかしら」

 

「判ったよ、蘇芳ちゃん。林檎、行くよほら」

 

手を取り図書室を出て行った。頭下げ二人を見送る。

 

「なんだよ、あいつら。私は無視かよ。腹立つなあ。お前もそう思わないか、白羽」

 

「ここは私のテリトリーなんだから、ゴタゴタ持ち込むなっての」

 

同意を求められたけど、曖昧に誤魔化す。

 

「でっ、双子はお前に何を? 」

 

私は経緯を説明し、アミティエ失踪、いやクラスメート失踪、いや辞めただけか。その調査に協力する話をした。

 

「また、トラブルに首突っ込むのかよ。お前は隙が有り過ぎだよ。し・ら・は・ね! 」

 

呆れて向こうにプィって視線を外す。

 

「八重垣さん、今日は何の用で図書室に? 」

 

「この間の、アレが戻ってきてないかって奴だよ」

 

待ってと席を離れカウンターの中に入り、図書カードの履歴を見る。未処理のとこも。

 

「The Great Escapeよね? まだ帰ってきてないわ。戻って来たら必ず知らせるから。ごめんなさい。わさわざ来てくれたのに」

 

「いいんだよ、無駄足は。何しろここに二つ有るし」

 

八重垣さんお得意の、自虐風ジョークだ。その言葉に彼女の脚に視線が動く。筋肉のあまりないほっそりした脚。車椅子に座っていることで、太股辺りはもとより、下着手前までかなり見えてしまってる。

 

学院の制服は結構ミニなんで座ると際どいとこまで見えてしまうのだ。

 

「八重垣さんの脚は白くてスリムで綺麗・・・・・・」

 

心の中で思ったのだけど、声が漏れていたようだ。

 

「おかげで上半身は意外とマッチョなんだよ、白羽。今更だけどさ、みっともなくても色が斑でも動く脚が欲しいんだ・・・・・・」

 

しまった。またやってしまった。謝らないと。

 

 

「なんだよ。今度はお前が泣くのか。そんなに涙こぼしたら図書室が湿気ちまうよ。脚の事なら気にするな、何時から動かないと思ってるんだよ。もう吹っ切れてるから泣くな」

 

「私、やっぱり使えない子なんだわ。八重垣さんごめんなさい・・・・・・」

 

「まあ、悪い思ってるなら、部屋まで押して行ってくれ。もう終わっていいんだろここ」

 

 

そう言い、壁の時計を指さす。確かに時間だ。慌ててカウンター回りを片づけ、メモに明日の引き継ぎを書く。そして廊下で日の落ちる様を、感慨深そうに見ていた八重垣さんと寮に帰った。

 

 

「沙沙貴さん、失礼します。白羽です。遅くでごめんなさい」

 

ギィっと、立て付けのよろしくない音の大きなドアを開け部屋に入る。沙沙貴さん達が私達の部屋に来る事は多かったけど、私がここに来るのは初めてだ。

 

 

いきなり目に飛び込んできたのは、大小色とりどりのカエルの置物だった。本物じゃないから平気だけど、本物だったら即、気を失う悪寒が沸く。

 

それはさておき、二人ともどことなく元気がない。確かに二人分の荷物しかないし、ベッドも然り。部屋を見回した私に問う二人。

 

 

「蘇芳ちゃん、私達はうまくやってたと思うんだ。オリエンテーリングだっていい成績だったし。いろんな事話したんだ。隠し事なんか無かった。それなのに何も言わないで辞めちゃうなんて・・・・・・」

 

クラスで聞いても、先生に聞いても、理由を誰も知らないってのはどういう事なの? と訴えてくる。

 

「明日、八代先輩に聞いてみようと思ってるんだ。ニカイアの会の会長なら何か知ってるかもしれないし。蘇芳ちゃんになら、先輩も話してくれるかもしれないから」

 

「蘇芳ちゃんは先輩の一番のお気に入りだもの。嫉妬しちゃう。私達とは全然違うから・・・・・・」

 

 

淋しそうに話す苺さん。林檎さんは、小御門先輩にも聞くべきと進言する。色々話した後、暫くここに泊まる事にした。それくらい二人が落ち込んでいる。了承取りに部屋に戻ると私のアミティエも同意してくれた。まあ邪推すれば、今の二人にはお邪魔虫が居なくなるからというのも有るだろうけど。

 

 

消灯になり、二段目に上りおやすみの挨拶しようとしたら、下のベッドで何かもそもそしてる。覗くと二人一緒に寝るといい、小さい身体を幸いと狭いベッドに同衾していた。姉妹のせいかいやらしさは無い。仲のいい姉妹の寝姿にほっこりする。私は、その姿を母親の気分で暫く見ていた・・・・・・。

 

 

朝になった。少し早起きし、自室に忘れ物を取りにいくことにした。まだ寝ている二人を起こさないように気をつかいながらベッドの梯子を降りる。

 

ドアを開けたらこの時間に似つかわしくない大きな音にびびる。自室ではないけど直してもらうように具申しようかしらと思う。制服でない姿で廊下を歩くのは、誰も見てないとはいえ恥ずかしい。たどり着いた自室の前で思わず立ち尽くす。

 

 

「あれ? 嘘。鍵がかかってる。私持ってない・・・・・・。鍵は全員分無いから掛けないって言う事になっていたはずなのに。どうして」

小声で中の二人を呼ぶも、返事なし。昨日取りにいく事は仄めかしていたのに。

 

「誰だ! 動くな! 手を頭の上に! 」

 

戻ろうかと思ったと時に、突然の声を耳にして心臓が縮み上がった。

 

 

「幽霊の正体見たり、蘇芳君か。相変わらずの黒髪、とっても綺麗だよ。そうそう、なにしてるんだい? こんな早くに。そんな姿で。締め出されたのかな、君らしくない」

 

 

見なくても八代先輩と判る声。先輩こそ何してるんですかと問うと・・・・・・。

 

「僕はロードワークさ。この間の試合で痛感したんだ。まだまだ脚がレベルに無い事をね。それより君は? 」

 

全身黒ずくめの雨合羽姿に驚きながら、図書室の林檎さんの話から泊まった経緯を簡単に話した。それで鞄等は昨日のうちに持ち出したのに制服を忘れたと口にした。

 

 

「僕を貸してあげるよ。予備のがクリーニングから戻ってきたから。君ならサイズ無問題だろ? 」

 

「よろしいのですか? 」

 

「ああ。君が着てくれれば箔がつくというものさ」

 

「もう・・・・・・。でもこれで二人を起こさなくて済みます」

 

「匂坂君と花菱君か。あの二人に何を忖度しているのかい蘇芳君」

 

問い詰められた私が事情を説明すると・・・・・・。

 

「全く! 鍵なんて掛けて、中で何してたか推測するまでも無い。交際を否定はしないがこうまで周りが見えないのでは二人にはお仕置きが要りそうだ。要望があれば指導部屋の手配しよう、蘇芳君」

 

 

「この学校の地下に、そういう施設が有るんだよ。Tルームって言うんだ。Tはtortureの頭文字だ。僕はそこへの案内人も兼務しているんだ」

 

雨合羽姿が地下世界の人を思わせる上、あまりに淡々と言うので、心底懇願してそれは遠慮してもらったのだが、

 

「蘇芳君、冗談だよ。真に受けちゃって可愛いな。君は」

 

ホッとした隙を衝かれて、ギュッと抱かれた。豊満な胸の感触に顔が熱くなる。そしてキス。舌こそ入れられなかったけどとても情熱的に・・・・・・。愛撫の不意打ちに全く対応出来ないし。された後も受け入れている自分に驚く

 

 

「さぁ、僕の部屋に来て。制服貸してあげるから」

 

手を引かれ、後ろを歩く。汗だくな先輩の匂いに息が荒くなる。あまりの美形故、現実感の薄い普段と違い凄く人間味着言うか女を感じてしまったから・・・・・・。

 

部屋で起きたばかりの葉子さんに挨拶し、着替えてから部屋を出た。放課後あの件の話を聞く事を了承してもらって・・・・・・。

 

 

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