夢物語(上)   作:患者

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お久しぶりです。

気づいてると思いますが、全話修正してます。


『結局は南の意見に落ち着くのだった』

041

 

 

 

今日もまた、朝練。どうせ明日も朝練。

はっきり言おう

正直、私はつまらなかった。

なんせ皆は走ったり踊ったりしてるから余裕がないのかもしれないが、私はそうもいかない。動かないし眺めるだけの私にやることはない。

暇というより、麻痺だった。逆さまである。

この場合逆さまというのは今現在進行形で地面に倒れ伏せている我が幼馴染みの視界のことを指すのかもしれないが、私の視界も逆さまだ。暇過ぎて首を車椅子に預けているからだ。

 

「あー…暇だ」

「夢ちゃん!?今サングラスの人に解散宣言されてたんだよ!?」

「起きたか高坂…あぁ、そうだな」

 

どこぞの見知らぬ詐欺師を連想させる動きで私は首を持ち上げる。

あぁ、しんどい。

しかもその宣言した人ってもしかしなくても矢澤にこ先輩のことだろう。変装してたが私にはわかる。

髪の色とか、胸の大きさで。

しかし、にこ先輩も遂に動き出したということか…

 

「夢ちゃん何か知ってるの?」

「知っていると言えば知ってるぜ南。だけど、プライバシーの問題もあるから教えるのはちょっと引けるな」

「フライバンジー?」

「確かにバンジーは跳ぶがフライのとぶじゃねぇよこのお馬鹿。私が言いたいのはプライバシーだ」

 

ナチュラルに言葉作ってんじゃねぇよ。

 

「ごめん!噛んじゃった」

「いやいや…ワザとだろ」

「え?普通に噛んだんだけど…」

「素だった!」

 

何だか楽しいぞおい。その矢澤…某先輩の話はどうした

 

「あ、そうだ!先輩と言えばね…」

「お?急に話の転換しやがったが、なんだ?その…某先輩に関係あるのか?」

「先輩って字は先の生まれた同列の仲間って意味なんだって!」

「関係なかった!しかも無駄な豆知識!」

 

お前がそれを知っていたことにも驚き…いや、こいつは数学が駄目なのであって、他は別にそれほどだっけか。

 

「せめて関係ある話をしないか?その……先輩に関係ある話」

 

某と言うのも飽きた。

 

「そういえば、その人が先輩だってよくわかったね夢ちゃん」

 

ギクッ。

 

「先輩ってことは同じオトノキの学生さん?」

 

ギグギクッ。

 

「夢ちゃんがわかりやすい反応してる…」

「夢ちゃん...」

 

しまった、これじゃポーカーフェイスの千里川の異名に傷ついてしまうぜ。

 

「そんな名前ないでしょー!」

 

素晴らしく話が脱線している。戻さなくては…何を、何を言えば…

 

「うーん…とりあえず、海未ちゃんにも言ってみよっか」

 

結局は南の意見に落ち着くのだった。

 

 

 

042

 

 

 

点呼で、高坂、園田、南、小泉花陽ちゃん、真姫ちゃん、星空ちゃん。あと一応私。合計七人。

うん、指定の五人はとうに越えている。これなら生徒会長も文句言うまい。

 

「くぅぅ…!こんなにメンバー増えたぁ!」

 

高坂も喜んでいた。うんうん、予てよりの目標は越えたし、可愛い後輩が三人も増えたしで、メンバー探しは文句なしの成功だ。…私が結末を見損ねた以外は。

 

「よぉし!今日も張り切って練習いこー!」

 

ってあれ?生徒会長の所に行くんじゃないのか?とりあえず練習して、そのあと行くのか?って、もう動き出してるし。

 

「一番乗り━━━」

 

 

ザ━━━━

 

 

「…」

 

星空ちゃんと高坂が屋上に着いたんだろう。

ただ、その直後に雨が降りだした。

狙いすまされてんな…

なんというベストタイミング、いやバッドタイミング。

結局練習は中止となり、皆で室内に戻ってきた。

 

「うぅ…雨が降るなんて…」

「冷たいにゃ…」

「元気出せ高坂、雨なんてもんはその内止んでまた降りだすもんだ」

「そうだよね…って降るの!?また降っちゃうのぉ!?」

 

心なしか小泉花陽ちゃんみたいな話し方になってるぞ高坂。

 

「雨止まないかなぁ…」

「……雨と言えば…」

 

珍しい、園田が話を振った。

 

「狼子供の雨と雪…という映画をことりに見せてもらったんですが…」

「あぁ、あの狼男と子供作っちゃった奴か」

「なんだか言い方に含みがありますね…ストーリーを全部言うのはあれですが…まぁ、あれの最後に雨の方が…」

「うん、見たことない奴の為に続きを言わなかったのは偉いけど、それがどうした」

「あのシーンで不覚にもうるってきてしまって…母親としての親心が表現されてていい映画だとは思いませんか」

「そうだな。母親ってのはああ有るべきだと私も思うが…それで?」

「はい、はい?いい映画ですね?」

「はっ?えっと…もしかしてオチないの?」

「オチ…?…はないですね。はい」

「…」

 

……。

なんてこった...今回ネタにオチが無さすぎるぞ…これじゃオチがないのがオチみたいじゃないか…

オチじゃなくてネタの質が落ちてるよ…

 

「…それはいいんだけど、雨、止んでない?」

 

真姫ちゃんが発した言葉に全員が窓の外を眺める

 

雨は止んでた。

 

「やった!止んだ!屋上へ行こう!」

「ちょ…また何時降らないともわかったことでは…」

 

ザ━━━━

ものの見事にフラグが回収された。

高坂と星空ちゃんの二人は雨の中でも━━━!と言って練習しようしたが、滑って転んで帰ってきた。

もはや回収ではなく頭を改修すべきだな…(流石に言い過ぎ)

 

「バカね…」

「バカなんです…」

 

そのあとは言うまでもなく、雨が止む前に下校時刻となったのだった。

狼男の雨と言ったが、この雨は雨は雨でも雨男だった。

 

瞬きを三度。

 

 

 

043

 

 

 

某バーガー店。

結局、雨で練習出来なかった我々はバーガー店でポテトとかを食べているのだった。

高坂の顔は凄い不機嫌。

ちなみに、私はポテトとバーガーのセットだ。

 

「結局練習出来なかった…」

「…明日も雨だって」

「むむむぅ…」

「仕方ないさ、空の機嫌は空次第なんだから」

「むぅー…あれ?」

 

高坂が何やら困惑している。

 

「どうしたの?」

「ポテトが…無くなってる…」

「自分で食べたんじゃないですか?」

「違うよ!確かにまだあったのにぃ!」

 

高坂の視線が皆に向かう。

 

「真姫ちゃん!食べたでしょ!」

「なんで私なのよ!」

「じゃあ夢ちゃん!?」

「バカ言え、流石に自分の食べるっての」

 

しかし、高坂が食べてないなら高坂から食べ物を奪ったのは誰だ?高坂は食べ物のことには少し煩いのだ。誰だか知らんがちょっと恨むぞ。

そんなやり取りしてる内に、高坂はイライラを発散するように呟き始めた。

 

「そもそも何でこんなことに…」

「雨が…降ったから…?」

「それだよ!練習場所がないからこんなことに…」

 

……あれ、もしかして、私だけが考えてたのか。もしかして、こいつ━━━忘れてる?

 

「部室があればね…」

「五人いれば部活の申請出来るんだけど…」

「五人…?」

 

私を除く全員がメンバーを見渡す。

一人、二人、三人、四人、五人、六人…一応七人。

 

「いるじゃん!?部活の申請出来るよ!?」

 

高坂がそう言った直後、忘れてたんかーい!と何処かで聞いた声で何処かで聞いたツッコミが聞こえた。

…にこ先輩いたんすか…どこにいるかはわかんないけど…

 

「駄目かもしれない…」

 

真姫ちゃんがそう呟いた。

安心しろ、私は常日頃から思ってる。

って、あれは…

 

「あはは…明日申請しにいこ…」

 

高坂や私や全員を含めて、高坂のトレイの上のバーガー…もとい、そのバーガーに壁一枚隔てた向こうの席から伸びる手と腕が見たのだった

 

「…」

 

……。

手はスッと引かれ、その手の主であろうサングラスを掛けた奇抜な帽子の人物がそっと席から立った。

 

「ちょっと!?」

「ひぃ!?」

 

サングラスを掛けた人物は高坂に声を掛けられ、怯えた声を出す。

 

「って貴方今朝の…」

 

声の主は咳払いをして、ふんっと声を鳴らした。

 

「解散しろって、私言った筈だけど?」

 

間違いないってか、確信。確信よりも核心をついている。

━━━絶対この人にこ先輩だ…

 

「そんなことより!私のポテト返してよ!」

「ソッチ!?」

 

そっちかよ!

思わず真姫ちゃんと同じツッコミしちまったじゃないか!

 

「ふ、ふん!貴方達はなってないの!色々と!スクールアイドルとして、さっさと止めることね」

 

まるで都合の悪い話は無視して言いたいことだけ行ってにこ…いや、サングラスの人物は外へ飛び出して行った。

子供に下品な言葉浴びせられてる…

 

「なんだったんでしょうか…あの人…」

「変な人だにゃー」

「穂乃果のポテトは!?」

 

散々な言われようだ…

星空ちゃんに至っては『変』呼ばわりだし…

 

「ポテトなら買ってやるから黙っとけ。ポテトでもジャガイモでも買ってやるから」

「ジャガイモ!?調理前!?」

 

しかしですねサングラス……にこ先輩。多分、貴方の言うことは聞かないと思います。いや、聞こえないと思います。残念ながら…と私は『変な』格好のにこ先輩を思い出して、静かに手を合わせた。

特に意味はないのだった。

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