夢物語(上)   作:患者

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『あぁ、残念無念である。精々である』

012

 

 

 

『悪いですけど…そういうのはお断りします』

 

簡潔に、そして完結に結果を話そう。

結果は失敗であった。

余りにも簡単に、余りにも激烈に、お断りを頂いてしまった。一年生に、正面から拒否されてしまった。

とても傷付いた、とてもとても…私なんて所詮はこの程度なんだと、遠回しに告げられてるようでもあった。幼馴染み三人と比べたらお前なんかタダのモブキャラなんだと、暗黙に言われている気分だった。私の精神だだ折れである。

あぁ、無念である。精々である。

 

『prrrr』

 

心無しか、携帯の音も弱く聞こえた。

それは気のせいだろうけど。

 

『あ、夢ちゃん?』

 

おや、高坂かと思った南であったか。珍しい。

電話自体が珍しいが、高坂以外の奴からなど、もっと珍しい。

 

「どうした」

『屋上、大丈夫そうだったよ』

「そいつは上々」

『あとね…曲のことなんだけど…』

 

さっき交渉を失敗したのがバレてるかの如くのベストタイミングだった。

この場合はバッドタイミングなのかもしれないけれどら、

 

「あぁ、こっちは駄目だったよ」

『うーん……あ、今日穂乃果ちゃんの家で会議あるから、そこでそれも話そっか』

「good ideaだな。いいよ、そこで話そう」

『うん』

 

ピッ。と通話をきった。

どうやら私の失敗を話す約束になってしまったようなのだが、世の中は上手い具合に出来ていて、なんと失敗からでも成功は生まれるらしい。

何が言いたいかと言うと、こんな私でもその例には外れず、失敗から少々学んだ。失敗は成功の母様様である。

そして、学んだことというのが、勿論あの一年生のことである。

簡単に言えば、あの子のようなのタイプは、高坂みたいな奴が一番効果的なのだろうとわかった。

高坂みたいに、真っ直ぐで熱い奴が。

馬鹿な奴が。

 

「どうりで私は無理なわけだ」

 

今となっては、おそらく言い訳にしかならないのだろうけども。

 

 

 

013

 

 

 

高坂の家は和菓子屋である。

その和菓子は絶品で、厳格そうな親父さんが作る和菓子は、園田の奴にも好評である。

かくいう私もよく買いにくるのであるが、お薦めは団子である。

上手いよな、団子。

高坂の奴は食べ過ぎて飽きているだとか、学校でよくパンを食うのはそのせいだとか。贅沢な奴である。

話を少し戻して。

てなわけで、私は高坂の家へやって来たわけだ。

入り口から入り、高坂の母親に挨拶を交わしつつ、店の裏の和室へ。

 

「すまないな、本当は二階でやったほうがよかったんだろ」

「いえ、別に此処でも特に変わりはありませんから」

「そうだよー。それに、もっと寛いでいいよ!」

 

珍しく車椅子から降りた私は、高坂の家の、つまりは和菓子穂むらの、裏の一階和室にて座っている。

高坂の部屋は二階にあるのだが、不甲斐ない私のせいで二階まで一人でいくのは少々無理がある。苦労を掛けてしまうものだ。

 

「穂乃果のほうが迷惑掛けられてますよ」

「それもそうだ」

 

それを思うと気が楽になった。高坂がえー!?とお馬鹿しているが、無視して、話…いや、会議が始まった。

 

「曲がないよー!」

 

高坂が全員の気持ちを代弁した。

私が失敗したばっかりにだ。

そして、私の予想は西木野真姫一年生で間違ってなかったが、どうも私には説得は無理なようだ。ということを、私はこと細かに説明した。

 

「真姫…って、どんな子?」

「歌が上手い、ピアノが弾けて、クールで冷静沈着っぽいAB型みたいな感じを晒しながらどことなくツンデレっぽい雰囲気をかもしだしている一年生だ」

「…うん?見た目はどんな感じ?」

 

やけに高坂がつっかかってくる。もしかして何か知ってるのだろうか。

 

「赤みがかった癖毛、目は少し鋭く。私の見立てでいいなら3サイズは上からバスト70後半、ウェスト55…いや、56か。ヒップ…80…2、3…ぐらいか。身長は見た感じ私より少し高かった」

「…あの子だ…」

 

この反応を見るに、高坂は多少なりとも西木野真姫一年生と面識があるようだ。

何時何処で知り合ったかは知らないが、もしかして高坂も彼女に声掛けていたのだろうか。だとすればダブルブッキング。いや、意味も使うタイミングも違うが、語呂がよいので使った。

深い意味など特にはなかった。

 

「あの音楽室にいた子だ!」

「穂乃果ちゃん知ってるの?」

「うん!すっごく歌が上手でね!ピアノも上手いんだよ!一回アイドルに誘ったんだけど…断られちゃって」

 

どうやらスクールアイドル云々を言ったあの日のあの後、私と南が園田探しに行った一瞬の間に出会っていたらしい。巡り会ったとも言っていい。

とても行動的な奴だと、改めて思った。

だが、面識があって顔も知り合っているなら話は早い。

 

「それなら話が早い、そのことをお前にしてもらおうとしてたんだ」

「何を?」

「西木野真姫一年生は、お前がスカウトしてこい。ああいう奴は、お前みたいな奴が一番効果的だ」

「私が?」

「元々してたことを曲作りに変えるだけだ。そもそも、お前も勧誘、するつもりだったんだろ?西木野真姫一年生」

「…うん」

「なら、より一番だ。西木野真姫一年生の件はお前に任せる、高坂。お前が、あのプライドの高そうな一年生を引っ張ってこい」

「…うん、わかった!…よぉし!頑張って西木野さんをスカウトするぞー!」

 

前向きだな、と私は切実に思った。今日、断られたという話を聞いたばかりだというのに、諦めるという言葉を知ってるのだろうか。

いや、この場合は知ってようと知ってなかろうと関係ない。彼女ならどっちにしてもやっただろうから。

そして、好都合でもある。これで曲のほうは安心出来た、後は作詞と衣装である。

と、言うけど衣装のほうは問題ないだろう。

 

「あ、そうだことりちゃん、衣装出来たの?」

「うん、ちょっと書いてみたの」

 

南の差し出したスケッチブックには、まさにアイドルが着るようなヒラヒラした可愛い衣装が色鉛筆で描かれている。

これは出来たら凄いだろうが…

 

「出来るのか、南」

「うん、ここのカーブがちょっと難しいけど、頑張って作ってみる」

「すっごく可愛いよ!頑張ってことりちゃん!」

「うん!」

 

と、やはり問題はなかったようである。

南は昔から衣装を見るのも好きだったが、裁縫とかも上手かった。私も時々服を着せられたこともあった。

メイド服とかは流石に断ったが。

しかし、その分衣装に関しては人一倍熟知している。任せておけば大丈夫だろう。

 

「…ことり…このスカート短くありませんか?」

「え?そうかなぁ」

 

……訂正、少し問題があるかもしれない

 

「スカートの丈は膝より下、ですからね?」

「えぇー!?」

「わかってますね?ことり」

「海未ちゃーん、アイドルなんだからさー。攻めていかないとー」

「アイドルだからって…別に膝より上じゃないといけないなんて決まってないでしょう!?」

 

あーだこーだ。園田は少々のところでしつこい。脚ぐらいなんだと言うのだ、別に人に見せて困る脚なんてしてないだろうに。むしろ見せれるだけありがたいと思え。私なんか動かせないんだぞ

 

「それはそうですが…ですが、少々ではありません!脚ですよ!?脚が出るんですよ!?破廉恥です!」

 

はいはい…そうですかっと。

そんで、最後に作詞だが

 

「夢!?話はまだ…」

 

これも嬉しいことに、出来そうな奴を私は知っている。しかも此処にいる

 

「な、何故無言で此方を見るのです…?夢…?」

 

私が園田のほうを見ていると、高坂と南も理解したのだろうか、全員で園田のほうを見つめた。

ある意味、園田にとってはホラーだろう。

 

「み、みんなして何ですか!?」

「そういえばさぁ、海未ちゃんって詩を作るの上手かったよねぇ」

「うんうん、小学校のころ、先生にも誉められてたよねー」

「中学の時にポエムとかも書いてたな」

 

私達の言葉を受け取って海未の顔がどんどん青ざめていく。

だが、これもアイドル活動の為だ、許せ園田。

 

「かかれ」

「うわぁぁぁ!!?」

 

なんだか園田が不憫に見えてきた。

止めないけど。

 

 

 

014

 

 

 

おそらく、園田海未の詩を作る才能は私達四人で…下手するとクラスの中で、一番上手いだろう。

次点に南で、高坂は論外である。あいつ、国語大丈夫なのだろうか。国語で赤点云々は聞いてないが、大丈夫なのだろうか(大事なことなので二度言った)。

私は、まぁ可もなく不可もなくといったところである。

それでだが、園田海未が小学生の頃に書いた詩はクラスの中でもとびきり凄まじく、先生すら感心していたほどだ。だから、作詞にしてもこの四人の中なら園田がやったほうがいいのだ。西木野真姫一年生に頼むのも手だが、流石に一年生に任せっきりは先輩としてどうだろうか。

なので

 

「無理ですぅ!?」

 

なんて、また言っているこの臆病者を再び説得する。南、任せた

 

「海未ちゃん、おねがいっ…!」

「うっ…そ、その手は…」

「……海未、ちゃん…」

「海未ちゃん…」

「園田…」

「あぁもう!!またこれですかぁ!?止めて下さいぃ!!」

 

はっはー。勝てばいいのだ勝てば。

 

「うぅ…卑怯です……もう…はい、わかりました、引き受けましょう」

「やったー!」

「さっすが海未ちゃん!」

 

えらく聞き分けがいい。これは何かあるな、と早めに予想ついたけども。あえて口にはしない

その方が楽しいから

 

「ですが、

その代わり、これからの練習メニューは私が決めます。それに、朝と晩にそれぞれダンスの練習とは別に練習をします」

「えぇー!?」

 

まぁ、そんなとこだろう。なんせ、園田から見れば高坂と南は体力がない。園田が練習メニューを考えてくれるなら万々歳だ、そうでなければ私が考える予定だったし。私はしないからいいのだが

 

「夢は私と一緒に練習メニューの発案と、二人の練習の付き合いです」

 

関係なくはなかった。

まぁ、その程度なら付き合えるかな。夜は少しキツそうだが、あいつらに比べればマシだろ。付き合えるだけ付き合ってやろう。

さて、これで一応ライブへの問題は大体目処がついた……あ、聞き忘れてることが

 

「講堂は大丈夫だったのか?」

「あ、そうでしたね。はい、大丈夫です。無事借りれました。一度生徒会長に怪しまれましたが、副会長のおかげでなんとか」

「ふむ、バレなかったのならいい。無事借りれたようだし」

 

副会長には心の中だけで感謝しておいて。

では、本当に問題はこれで全部解決か。名前も…人任せだが解決した筈だ。

これであとは高坂が説得出来ればokである。本当に任せるぞ、高坂。頼むぞ

 

「うん、任せて!」

 

不安もあるが、自信が沸いてくるのは気のせいではないだろう。

なんて高坂だ、あの高坂だ。やるときはやってくれるさ。

私がやるよりかは確率は高い。

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