この話で隔日更新は終了となります。今後は多分月一くらいの不定期更新です。
それからスマホの調子が悪いので、しばらく更新出来ないと思います。
気長にお付き合い頂けると幸いです。
「………これは……また」
白い息を吐いて、それを見上げる。
氷の塊。
氷の神殿は、フラノール南の洞窟の奥にある。洞窟はセルシウスの影響か常に氷点下で、等身の氷塊など珍しくもない。中に住む魔物も、自然と寒さに強い性質のモノが多かった。
しかし今その洞窟は。
入り口どころか、洞窟の存在する丘もろとも氷に閉じ込められていた。遠くからみれば氷山かと思うに違いない。空中を飛んでいたのだろう鳥類の魔物は、羽を羽ばたかせたその姿勢のまま、全身氷付けになっている。
これでは最奥の祭壇に行くどころか、神殿にすら入れない。
「―――ホオリ」
地の神殿からついてきた魔物の名を呼べば、横に控えていたカマキリの魔物が進み出る。
ランバージャック、という種族だ。マンティス系の中では氷に強い特性があり、本来の生息地はこのフラノール大陸の筈だった。しかしマナの乱れによりフラノールにいられなくなり、地の神殿近くまで逃げてきたのだという。
任せろとばかりに胸を張り、前足のカマを閃かせる。が。
氷を切り裂く事は出来ず、表面に薄い傷をつけたのみ。その傷もみるみる薄くなる。ムキになってさらにカマを振るおうとしたホオリを制すると、今度はエルダードラゴンのコーラルを喚んだ。
「グォォォオァ……!」
胸いっぱいに空気を吸い込んで、炎を吐き出す。竜の炎はあらゆるものを焼き付くす煉獄の火炎。氷など竜の前では水と同じだ。
けれど流石は精霊と言うべきか、コーラルの火炎でもその氷は溶けなかった。コーラルはそれ以上むやみに炎を吐こうとはせず、申し訳なさそうに退いた。
「さて……どうしたものか」
竜の炎でも溶けないとなると、魔物の術程度では相手になるまい。イフリートの炎か、ここにいない眷族の力を借りればなんとか出来るかもしれないが。
数歩下がって、洞穴を見上げる。それで分かったことは上からも入れそうにない、ということだ。鋭い氷柱が何本も突き立っている。そして下は凍り付いた地面――
「!」
思い出す。とある魔物のこと。
地面に潜る、巨大なワーム種。その彼等の上に存在する、人間たちの間では伝説として語り継がれている存在。最も有名なのはトリエット砂漠のサンドワーム。シルヴァラントを旅していたとき噂を聞いたから、まだ生き残っているはずだ。
そしてマナの少ないシルヴァラントで生き残りがいたのなら。
「もしかしたら」
身を翻し、銀色の世界に躍り出た。雪に足を捕られながらもその足は緩まない。後を追って魔物たちも付いてきた。
並走するホオリが語りかけてきた。何か手伝えることはありますか。
「なら………―――避けろ!」
叫ぶと同時、後ろに飛ぶ。と地面が盛り上がった。声を聞いてなんとか間に合った魔物たちも皆無事だ。
長いシワが幾重にも刻まれた巨大な体。ワーム種とは異なり細い腕がないが、大きなギザギザした口はワーム種のそれと同じ。
巨大獣サンドワームの亜種。サンドワームが砂漠に生息するなら、彼等が生きるのは銀世界。
「シルルス……!」
咆哮するシルルスに向けて、魔物達はそれぞれに構え。
「取り合えず、大人しくさせるか!」
合図に会わせて一斉に突撃した。
テセアラにはロイド達が想像も及ばないようなものが存在した。
例えば、巨大な家。光り続ける街灯。それから―――大陸同士を結ぶ橋、グランテセアラブリッジ。
三千個ものエクスフィアを制御に使った、巨大な跳ね橋である。
「三千人の命か……」
薄暗い中、エクスフィアの赤い光が橋の輪郭を浮き上がらせている。巨大。ロイドが今まで見たもののなかで、救いの塔の次に大きい。
不思議がるゼロス達に、リフィルは話した。エクスフィアの作られ方を、エクスフィアが人の命を吸って出来ることを。
「それ……マジなのか」
「こんなうそ、つくかよ」
ゼロスは流石に青ざめていたが――プレセアはコレットのように表情に変化がない――リヒターとアステルはまるで驚いていなかった。
「“エクスフィアは、生きている”………か。まさかそんな意味だとはな」
リヒターが嘲るような笑みを浮かべた。それに気が付いたリフィルが顔をしかめると、アステルが苦笑し、解説した。
「テセアラではエクスフィアの研究が進んでいて、その研究結果によればエクスフィアは“無機生命体”なんです。他者に寄生し融合する性質を持った」
「なんですって!?」
「その寄生を制御するのが要の紋。だから要の紋なしでエクスフィアをつけるとエクスフィアに寄生され、体内のマナのバランスが崩れる、と言われている」
なるほど。だから要の紋なしのエクスフィアを引き剥がしたり、エクスフィアに適合しなければエクスフィアが暴走するのか。
と、そこでマルタが首をかしげた。
「ねぇ、ちょっと待ってよ。エクスフィアって石じゃないの? 鉱山から出てくる石とは違うの?」
そういえばマルタはエクスフィアをちゃんと見たことがなかった。……というか、マルタはエクスフィアを持っていない。
更に言うならエミルもそうだし、アステルとリヒターも、アリスとデクスもそうだった。……まあアステルの場合は戦わないからいらないのかもしれないが。
「どうだろう。実は僕たちはエクスフィアの原石を見たことがないんだ。原石を調べられれば何か分かると思うんだけど……」
「じゃあテセアラってエクスフィアをどう手に入れてるのさ?」
「えーと………鉱山から出てきて……あれ?」
よくよく考えれば、色々とおかしい。
シルヴァラントではエクスフィアはディザイアンが持っていて、人間牧場で作られている。しかしそのエクスフィアの原石が何処から来ているのかはわからなかった。
「まあ、そうは言っても今更死んだ人間が生き返る訳でナシ。人間、ポジティブに生きようぜ~」
「前向きなのか軽薄なのか……」
「なあゼロス、お前もプレセアもエクスフィアを装備してるけどさ、テセアラでは当たり前なのか? しいなの話だとそんな感じはしなかったけど」
もしテセアラでエクスフィアが一般的なら、テセアラにも人間牧場がないとおかしい。人間牧場でしか、覚醒したエクスフィアは作られないからだ。テセアラに人間牧場のような非人道的施設が他にあるなら話は別だが。
ゼロスは少し考えて、いや、と首を振った。
「これはレネゲードって奴等から貰ったのさ。しいなとか、教皇騎士団とか、結構な分分けて貰った筈だぜ」
「プレセアも?」
「さあ、どうなんだ? おチビちゃん」
プレセアは橋の向こうを見詰めたまま動かない。ゼロスが振り返って肩を竦めた。
「ダメだこりゃ。なぁ、アステルー」
「すみません神子様。僕最近はずっとサイバックの外にいたから、よく知らないんです」
以外にもあっさりとゼロスは引き下がった。
「んじゃ仕方ねぇな。ま、兎に角行こうぜ~!」
橋も半ばを過ぎると辺りが明るくなり始め、渡り終えたときには空は青く、明るかった。
「うーん、青い空は久しぶり~!」
マルタが気持ち良さそうに伸びる横で、リフィルがメルトキオがあるフウジ大陸の方を見ながら呟く。
「暗いのは向こうの大陸だけなのね」
「ボク、テセアラはずっとあんなもんなのかと思ってたよ」
「ずっとああだよ―――闇の神殿がある大陸はな」
以外にも暗いその声の主は、ゼロスだった。
さっぱり訳がわからないロイド達に解説してくれたのはリヒターだ。
「テセアラには精霊を祀った四つの神殿がある。フウジ大陸中央部に闇の神殿、北には地の神殿。フラノール大陸南に氷の神殿」
「そしてこのアルタミラ大陸、これから行くサイバックの近くには雷の神殿があるんだ。………って訳で、サイバックの“あれ”は見物だぜ~」
途中から急に明るい声で、ゼロスはニタニタと笑っている。アステル達が苦笑しているから悪いことではないのだろうが。
「何があるんだよゼロス?」
「でひゃひゃ、ついてからのお楽しみだよロイド君」
サイバックは雷の町だった。
というのはひっきりなしに雷が落ちているのだ。びくっと肩を震わせるジーニアスにアステルが微笑む。
「大丈夫。絶対に当たらないから。ほら見て」
アステルに示されたように上を見ると……町の一番上に、大きなカサのようなものがあった。じっと見ているとまた近くに雷が落ち――――そのカサに吸い寄せられた!
「あれ、どうなってるの?」
「ふっふっふ、あれはアステルの発明品なんだよ。この雷は神殿から漏れてる雷のマナでな、アステルはそれを効率的に回収運用する画期的システムを作り出したのさ」
何故か得意気なゼロスと、はにかむアステル。へー、とそれを聞いていたジーニアスが、ふと何かに引っ掛かった。
「マナ、なの? なら普通の材質なら壊れちゃうんじゃ」
「あ、それは大丈夫。紫精石が練り込まれたナビメタルを使ってるから」
アステルはさらっと言ったが。
ナビメタルというのは希少な鉱石で、長い時間をかけて回りの物質と結合する性質がある。別名成長する鉱石。
紫精石は雷属性の鉱石。雷を宿し、雷の力を付加させる力がある、不思議な鉱石だ。
………いや、材料は問題なのだがそれよりももっと問題なのは。
「か、加工できたのか……!?」
ロイドには分かる。ナビメタルも精石もとんでもなく加工が難しい鉱石だ。少なくともシルヴァラントに加工技術はない。精石だけならロイドの義父ダイクが加工方法を知っていたが、それはドワーフに伝わる秘伝だからだ。
それをアステルが、一人の研究者が成し遂げるなんて!
「メルトキオの街灯もアステルの技術を使ってるんだぜ」
それを聞いてマルタがぽん、と手を叩いた。
「じゃあエクスフィアを使わなくてもいいんじゃない? エクスフィアと同じことができるんでしょう?」
エクスフィアは、テセアラでは機械につけて制御したり燃料代わりに使ったりするのが一般的だ。しかしエクスフィアの真実を知るものとしては、エクスフィアを使うのはあまり歓迎できることではない。
が、アステルは目を伏せる。
「ううん、マルタ。まだダメなんだ。出力も弱いし、何よりもマナの変換効率が悪すぎる」
「それに加工に手間がかかる分、量産できないからな。まだまだやることは山積みだ」
リヒターもアステルも口ではそう言っているが、どちらも楽しそうだった。若く見えても、やはり学者らしい。
そうして、サイバックの入り口でゼロスが取り付けてくれた許可証を見せ、中央広場を抜けた頃。
アステル達が足を止め、顔の前で手を合わせる。
「えーと、ごめん。僕たち少し用事があるから先に行ってて? 王立研究院の本棟はあっちにあるよ。用事が終わったらすぐ行くから」
「分かった。じゃあ後でな、アステル、リヒター」
そのまま二人は広場の反対にある大きな建物に入っていった。示されたのは広場を抜けた更に奥の方向だ。
「よーしエミル! 早く行こう!」
「あっ待ってよマルタ!」
エミルの手を引いてマルタが走っていく。拍子にフードが外れているが、それに気がついていないほど先を急いでいるようだ。リフィルとジーニアスはやれやれと言わんばかりに微笑んで、少し足を早めた。
そしてアステルが示したらしい建物に入ると。
一瞬で、辺りが静まり返った。
「え? あれどうしたの?」
紙を、本を、ペンを、何かの機械を、落とす。
一番近くにいた研究員の青年がエミルに近付くと、震える手でエミルを指差す。
「……い」
「い?」
『生きてた――――っ?!』
とたん、一斉に回りの人たちがエミルに詰め寄った。
「おいアステル! お前《異界の扉》に行ったって聞いたから心配してたんだぞ」
「そうよ、それっきり連絡もないし、教皇の私兵があんたを探してくるし!」
「良かったよーっ! アステル弱っちいから魔物にでも襲われて野垂れ死んでないかってもう仮眠しかできなかったんだよ?」
力強く背中を叩く者、頭を掻き回す者、抱きついて泣きわめく者。反応は様々だが、皆一様に再会を喜んでいるのだろうことは窺える。
そういえばエミルと初めて会ったときのしいなも似たような反応をしていたのを思い出した。
「あ、あの―――」
「なんだよいっちょ前に剣なんかぶら下げて。使えもしないのに邪魔じゃないのか?」
「ようやくリヒターの苦労が報われたのですね? 護身用に武器を持てと再三言われてましたもの」
「そうねそうだよね、今のご時世武器の一つもないとねぇ」
「すみません、僕は―――」
「もうっ、申請だけしてさっさと行っちゃうんだもん。リリーナが気にしてたわよ」
「ったく心配させやがって。お前の思い切り良いとこは嫌いじゃないが、ひやひやさせられるぜ」
「そうですよ、よりにもよって《異界の扉》に行くなんて。黄泉の国に引きずり込まれなくて本当に良かったです!」
「んで研究はどうなった? 陛下の御依頼は?」
「精霊の神殿を見に行ったんだよな。魔物の様子はどうだ。確かついでに魔物の王を探しに行くとかなんとか………」
質問の嵐と腕の拘束が緩んだ一瞬で、エミルは人々の輪を脱け出した。
「あのっ! ぼ、僕はアステルさんじゃありません!」
「―――――へ?」
ぽかん、とした表情になった後、研究員達は猛烈に否定し始める。
「いや、いやいやいや。そんなわけあるか。アステルだろ、お前。だって見た目も同じだし声も同じだし」
「だから違うんです。顔とか声とか見た目とかは同じでも、僕はエミルです、アステルさんじゃないんです別人なんです!」
「お前らその辺にしてやれよ。エミル君が困ってるじゃねーの」
エミルが半泣きで説明しても一向に分かってくれそうにない研究員達を見て、ゼロスが助け船を出した。その隙にエミルはフードを被り直す。ゼロスの声を聞くなり彼らは姿勢を正した。
「神子様?! いらしてたんですか!」
「おうよ。で、だ。そいつはエミル・キャスタニエって奴で、シルヴァラントの人間だ。アステルとは別人。アステルならさっき図書館の方に向かったぜ。もうすぐ………」
と、ちょうどその時研究所の扉が開いて、アステルとリヒターが入ってきた。
「ただいま―――ってみんなどうしたの?」
不思議そうに小首をかしげるアステル。……確かに自分を見て全員固まっていれば誰でもこんな反応を返すだろう。
誰も動かないなか、誰かがぽつりと呟いた。
「アステル……? 本物?」
「少なくとも偽物ではないけどそれがどうした………うわあっ?!」
「アステルーっ!」
飛び掛かられ、エミルと違って耐えられずに倒れこむ。起き上がろうにものし掛かられていて動けないアステルの首根っこを掴んで、リヒターがアステルを猫のようにぶら下げた。
それでようやく、他の研究員達もリヒターに気が付いたようだ。
「や、やあ、リヒター………か、帰ってたのか」
「……俺はアステルの護衛だからな」
「あー、リヒター、ありがとう………とりあえず、下ろして?」
リヒターが手を離すと、アステルは見事に姿勢を立て直し着地、近くで呆けている研究員に声をかけた。
「―――もう連絡は来てるよね? 担当者は誰?」
「あ、えーっと、第三研究室にいる」
「だそうです、神子様」
「さんきゅー、アステル。んじゃ行こうぜ」
颯爽と立ち去るゼロス達に自然と誰もが道を譲る。
心なしか不機嫌そうなアステルを先頭にして、ロイドたちは研究院に足を踏み入れた。
クルシスの輝石。
神子が生まれたときに握っている石。神子が神子たる証。
それが――――エクスフィアだという。正確には“エクスフィアの進化系”らしいのだが、細かいことは置いておく。
重要なのは、エクスフィアならば要の紋で制御できる、ということだ。
「まじないを刻むくらいなら俺にも出来るよ」
要の紋をバザーで見つけ、少しばかりお話(脅迫とも言う)して。ゼロスの協力もあってそれを譲り受けた後、ロイドが研究室に籠って作業を始めた。
以外なのは、アステルがそれに興味を示したことだ。
「ねえねえっ、作業するところ、見ててもいい?」
「良いけど………なにも面白いことなんかないぞ?」
「ううん! 要の紋はこれまで完成品しか見たことがないんだ。それを作る過程を詳しく見られるなんて、ああ夢じゃないかな!」
何でも要の紋はエクスフィア諸ともレネゲードに分けてもらったものらしい。そうでなくても要の紋の加工技術はドワーフしか知らない。確かにテセアラでは珍しいものだろう。
アステルがロイドと研究室に入ると、他の面子は暇になってしまった。
といってもリフィルとリヒターはエクスフィアや魔物について議論しているし、ジーニアスとマルタはコレットに付きっきりだ。
「じゃあ、僕は少し外を見てくるね」
「あ、なら私も……」
「ううん、一人で大丈夫。町の外には出ないから。行ってきます」
マルタの申し出をやんわり断り、先程よりもしっかりとフードを被って研究院の外に出た。外にも研究員らしき白衣の人が大勢いる。全員人間だ。
少しだけちからを解放し、気配を探ろうとして――――妙な気配をとらえた。町の中。それほど遠くない。それはそう、丁度さっきアステル達と別れた、図書館の方。
フードを被ったまま、誰に呼び止められる事もなく、その気配を追って辿り着いたのはやはり図書館で、妙な気配の正体は一冊の本だった。
「………ああ、そういえばそんなこともあったなぁ………」
そういう本があったのは覚えている。封印のとき力を貸したから。
腰の剣に手を伸ばす。やれるか。……いや、ダメだ。力が足りない。それにあまり目立ったことはしたくない。ただでさえこのマナの乱れで力が出ないのだ。
後で知らせるだけ知らせておくことにして、ほんの少しばかりその封印に力を注いでおいた。今出来ることはこれくらいだ。これをどうにかする力は、残念ながら、ない。
大人しく図書館を出て、研究院に戻る。
すると丁度ロイドがコレットに要の紋を加工したペンダントをつけているところだった。……が、コレットの目に光は戻らず、紅い瞳は感情を映さない。
「………ダメ、だったんだね」
「エミル! ………ああ、やっぱり俺の腕じゃ……」
エミルが後ろから声をかけると、ロイドたちは意気消沈していた。
やはり、間に合わせのまじないではダメらしい。こうなれば本職にお出ましいただくしかないだろう。リフィルがダイクに力を借りたらどうかしら、と言えば、ゼロスが慌てた。
「おいおい、俺様はお前たちの監視役なんだぞ? シルヴァラントに戻るなんて許すわけないだろーが」
元々テセアラで勝手をさせない、シルヴァラントに戻らせないためについてきている監視役、それがゼロスだ。テセアラを衰退させないために。
「なら、ついてくればいいじゃない? シルヴァラントまで」
「え? ………マルタちゃん、それマジ?」
「要は私たちが世界再生をしなければ良いんでしょ? ならシルヴァラントについてきて監視すれば解決。ね?」
マルタがリフィルに目配せすると、リフィルもマルタに加勢した。
「あなたはフェミニストなのでしょう? 協力して下さるわよね、慈悲深い神子様?」
「そうそう、コレットを救うためだもん。黙っててくれるよね?」
「うわぁい……」
アステルが横で顔をひきつらせていた。……凄い言い方。これでは女性に優しく野郎に厳しくをモットーにするゼロスは引き下がれない。
「………そこまで言われたらチクる訳にはいかないでしょーよ」
と、その時。
「聞きましたぞ、神子様!」
武装した兵士達が、研究院に雪崩れ込んできた。
「テセアラの滅亡に手を貸した反逆者として、神子様とその者達を反逆罪に認定します」
兵士の鎧の紋様を見て、ゼロスとアステルはすぐにそれが何処の者か分かったらしい。
「―――ちっ、随分とタイミングが良すぎるじゃねぇか、教皇騎士団さんよぉ」
「どうせ教皇の命令で監視していたのでしょう。神子様に王家への反逆の疑いありとかなんとか、言いがかりをつけて」
「ふん、どちらが反逆しようとしているのやら」
リヒターがそう言うと、あからさまに騎士達が殺気立つ。
「このっ……!」
「よせ! それより検査しろ。天使には手を出すな。殺されるぞ」
偉そうな騎士が命令を出すと、他の騎士達が一斉に動いた。皆の腕を捕まえ―――ロイドだけはコレットを恐れてかおっかなびっくりで―――何かの機械を数秒押し付ける。
ロイドとマルタとアステル、ゼロスは何も起こらない。
しかしジーニアスとリフィルに向けられた途端、その機械はけたたましい音をたて始めた。
「照合しました! 間違いありません、ハーフエルフです!」
「お前ら、ハーフエルフだったのか?!」
ゼロスが思わず身を引いた。騎士団も同じだ。
「違う、そんなはずない! 先生もジーニアスも……」
「ええ、私たちはハーフエルフよ。……今更、隠しても仕方のない事だわ」
「待てよ、ハーフエルフだから何だってんだ。お前らより二人の方が、よほど―――」
その後ろで、エミルとリヒターが検査を受けていた。しかしエミルを検査していた騎士は動きを止め、リヒターの方はリフィル達と同じように音がなる。
「ん? お前は……?」
「貴様もハーフエルフか!」
「待って!」
アステルが、リヒターと兵士の間に滑り込む。
「彼は僕のモノだ! 連れていくのは許さない」
「何だと……?!」
アステルにまで槍を振りかぶろうとした兵士は、寸前で他の兵士に止められた。
「おい! よく見ろ、こいつは……」
小声で何かを話している。あからさまに舌打ちし、兵士は槍を下ろしてリヒターから手を引いた。
「ハーフエルフ二名を連行しろ!」
手錠をし、ジーニアスとリフィルが連れていかれる。アステルとリヒター、エミルの前に他の兵士が立ちはだかり、槍を突きつけた。ロイドたちは別の一団に囲まれている。
「神子達は地下に来てもらうぞ」
槍に脅されながらもこちらを心配そうに見てくるロイドに、エミルは穏やかに微笑んで見せた。
「アステル。貴様は研究室で大人しくしていて貰おうか。ハーフエルフも一緒にな………おいお前、フードをとれ!」
兵士はエミルのフードを乱暴に毟り取った。その顔を見るなり、兵士は固まってしまう。
「双子がいたのか? ――まあいい。念のため別室にご案内しろ」
エミルもまた、乱暴な手つきで連れていかれる。
彼等の後ろ姿を見ながら、アステルは小声で繰り返していた。
「ごめん、ごめんね………」
ごめん。
リヒターしか助けられなくて。
分かっているのに動けなくて。
何も出来なくて。
「ごめんなさい、ロイド、エミル、神子様―――ジーニアス、リフィルさん……っ!」
魔物の名前はラタトスク攻略本から。
実はまだプレイしてて見たことのない名前もあって、へーそうなんだと感心することしきり。語源は分かっても「イス」とか「バルバトス」とか見つけてニヤニヤしてました。「クンツァイト」とか「ヒスイ」とか「ヴィクトル」とかとか。
テセアラでのエクスフィア流通は、というかエクスフィア流通の全ての原因は、エクスフィアを掘り出すレザレノにあるんじゃなかろうかと思ったり。
シンフォニアのEDで「もう新たなエクスフィアが掘り出されることはない」とかなんとか言っていながらふつーに発掘されてるし。いや、地の神殿からトイズバレーまで掘り抜いた誰かさんを誉めるべきか?
禁書や検査機器については捏造です。
本来禁書はこの時期ユミルにあります。検査もこんなに簡単にすむものではありません。
………因みに検査機器に関してはアステルの研究成果を下地にしてたりする。
カスタマイズでナビメタルを使えるのはフラノールなどテセアラの都市だけ。精石を使えるのはダイクとアルテスタだけ。
つまりナビメタルの加工技術はテセアラのみ、精石の加工技術はドワーフの秘伝と見た!
………という妄想からの設定ですので、本編にそのような事実は存在しません。ナビメタルも精石も本編には一切説明が無かったので、捏造盛り込みました。