ほぼオリキャラ状態のキャラが出張ります。
無理な方はブラウザバックでお願いします。
コレットとエミルが拐われ、ほぼ反射的にそれを追いかけようとしたのは、マルタとロイドの二人。
が、それぞれジーニアスとしいなに引き留められて、先に当初の目的であったプレセアの要の紋をどうにかすることになった。
エレカーの中で既に作ってあった抑制鉱石を、プレセアのエクスフィアに合うよう微調整して取り付ける。
程無くして目に光が戻ったプレセアは、気が付くや否や家に飛び込み、ベッドに残された父親を見て、悲鳴をあげた。
落ち着くまでに、少し掛かった。
全員で手伝ってプレセアの父親の埋葬を終えると、墓に手を合わせていたプレセアが振り向き、まっすぐにロイドを見た。
「ロイド………さん」
「覚えてるのか?」
「大体は。皆さんに会ってから………いえ、ここ数日のことはかなりはっきりと覚えています。私、皆さんにご迷惑を………」
「良いんだ。エクスフィアと、あのロディルって奴のせいなんだから」
「どうしてあんなエクスフィアをつけていたの?」
「ヴァーリという人に貰いました」
「やはり………」
リーガルが唸った。
「病気のパパを助けたかったんです。パパの代わりに働きたくて、斧を使えるようになりたかった。そうしたらヴァーリがロディルを紹介してくれて、サイバックの研究院に連れていかれたんです」
その言葉で、アステルは分かってしまった。
サイバックは王立研究所だ。研究の全てはテセアラ王家の管理下に置かれ、通常一般人は入ることができない。付属学問所も特権階級の一部しか入学できないのだから、プレセアが関わる筈など無かったのだ。本来なら。
入れるとしたらロイド達のように王家からの許可を受けた者か、リヒターのようなハーフエルフの研究員か。
或いは―――人体実験のための生け贄。
アステルはその制度を使ったことなどない。だが研究というのはある意味果てなき実験の成果であり、時に命の危険も伴う。そういうときに『死んでもいい』実験対象に囚人を使う制度が、公にはされていないが、あることは知っている。
その対象は、禁じられているが時に貧民と呼ばれる者達が選ばれることがあることも。その制度を使うときにはテセアラ王家の許可が必要であることも、国王陛下はその非人道的な制度を本心ではあまり好んでいないことも。
そして、最終的に許可を出すサインをするのはテセアラ国王と、その娘であるヒルダ姫と、現国王の弟である教皇の三人しかいないことも。
「ケイトの研究は、教皇に命じられたことだと言っていたな」
「つまり、教皇もグルってことだ」
「………人のことを散々国賊だとか言っておいて、結局自分も裏切り者じゃないですか」
自分の為に、他人を蹴落とす。国益ではなく己の利益のために。そういう自分の保身の事しか考えていないような、その為にどんな相手でも犠牲にしてしまえるような奴が、アステルは好きではない。
リーガルが問う。
「プレセア。君には姉がいなかったか」
「いいえ。妹が一人。奉公に出てそれきりです。ママは私が子供のときに亡くなったから………」
「? 今でも子供でしょ?」
マルタが素で不思議そうに聞き返すと、聞き返されたプレセアの方が目を瞬かせる。が、すぐにああ、と小さく頷いた。
「………ああ、そうですね。そうでした」
その仕草はエミルに似ていた。
「あの、ロイドさん。私も連れて行ってくれませんか? コレットさんとエミルさんが連れ去られたのは私のせいです」
「プレセアのせいじゃないってば! エクスフィアと、あのロディルって奴のせいでしょ」
「いいえ、私のせいです。私がロディルに聞かれるまま、エミルさんのことも話してしまったから………」
否定するマルタの言葉も遮って、プレセアは頑なに自分のせいだと繰り返す。
エミルが拐われたのは不運にもコレットの側にいたからではなく、そうするように命じられたのだと。
「? エミルも狙われてたってこと?!」
「はい。ロディルはエミルさんに強い興味を持っていました。理由までは分かりません………私はロディルに何かを聞かれて………なんと答えたのか覚えていませんが、答えるとロディルは私に、余裕があればコレットさんと一緒に連れていくと言ったんです」
最優先はコレットであることは間違いなかった。だが出来るならエミルも、と。どちらになっても構わないような口振りではあったが、気にはしていたのだと。プレセアがリフィルとコレットを引き離すように斧を振るった時に、エミルには一切の手出しをしなかったのはそう命じられていたからだ。
エクスフィアの寄生が進んで命じられれば逆らえなくなっていたとはいえ、その時の意識は確かにあった。それをやったのは自分だ、という意識はあるのだ。
「お願いします。私にお二人を助けるお手伝いをさせてください」
リーガルがプレセアの隣に並ぶ。
「………ロイド、便乗するようだが、私も改めて同行したい。お前たちの敵は………私の因縁の相手でもあるようだ」
その更に隣に、意外なことにマルタが立った。
「ロイド、私からもお願い。リーガルさんは悪いひとじゃないし、プレセアがこの村の人にされてること見たでしょ? 置いていけないよ」
マルタの言う通りだ。
リーガルは多くを語らないが、少なくともミズホから行動を共にして、その僅かな期間でも誠実な人柄であることが知れる。
プレセアはオゼットの住人から化け物と罵られ、気味悪がられていた。このままはっきりと自我の戻ったプレセアがここにいても、辛い思いをするだけだろう。
ロイドがにっと笑って、答えた。
「ああ。二人の力を貸してくれ」
良いよな? と振り返るまでもなく、他の面々はロイドの答えを受け入れている。
「はい。必ず!」
「ありがとう。感謝する。我が力の全てを以て、お前の信に応えよう」
二人が頷き、しいなは笑って、しかし腕を組んでうなる。
「って行っても、何処に連れていかれたか………検討もつかないよ。どこを探せばいいのか……―――!」
その時真っ先に反応したのは、やはりと言うかロイドであった。次いでゼロス、しいな、リフィル。ほかの面々も次々に気付く。
全員がその茂みを睨み付けていると、影からゆらり、と人影が表れる。
「神子を奪われたか」
一緒に旅をしていた頃の姿そのままで、クラトスはそこに立っていた。警戒するロイドたちに構えてか、一定の距離からは近付いてこないし片手は常に腰の剣に添えられている。
「クラトス………! コレットたちを何処へやった!」
同じく刀に手をかけて、こちらは抜きかけているロイドが怒りも露にクラトスを威嚇する。
「ロディルは我らの手を離れ暗躍している。私の知るところではない」
「内部分裂と言うわけ? 愚かね」
リフィルの言葉には答えず、クラトスは視線を左右に走らせ、心なしか何時もよりも濃いシワを眉間に寄せた。
「………エミルはどうした?」
「コレットと一緒に、浚われて」
ロイドが答えないので、マルタが代わりに答えた、瞬間に。
「何?!」
クラトスはシルヴァラントを旅していた時にも見たことがないほどに大きく目を見開き、ゆっくりと目を閉じる。少ししてまたゆっくりと目を開いたときにはいつものクラトスに戻っていて、そのまま踵を返した。
「おい、何処に行くんだ! まだ話は終わってない!」
「急用が出来た。お前たちと遊んでいる暇はない」
「なんだと………?」
我慢の限界に達したのだろう、ロイドが一呼吸のうちに剣を抜き、クラトスに切りかかる―――が、やはりというか、容易くクラトスの剣で受け止められていた。そのまま押さえ込まれたか、ロイドの動きが止まる。
「言った筈だ。冷静になれと」
「ぐっ」
ロイドが剣を引けば、クラトスはあっさりとロイドを解放した。
「神子は捨て置いても、問題なかろう。あのままでは使い物にならん。ヤツも放棄せざるを得ないだろう」
「そんな言い方!」
今度はマルタが一歩踏み出す。
クラトスはそんなマルタを一瞥して、オゼットの外へと足を向けた。
………数歩歩いて、立ち止まる。
「レアバードを求めろ。そして東の空へと向かうがいい。………だが、二人を助けたいなら急ぐことだ。あまり時間は残されていない」
こちらに背を向けたまま、言うだけ言ってクラトスは去っていった。
気配が完全に消えてからようやく、各々が体の力を抜いた。
「なんなんだ、あいつ………くそっ」
「ロイド、今はエミル達を助けないと」
「ええ。クラトスはああ言っていたけれど、コレットが無事だと言う保証もなくてよ」
そして、エミルも。
「一度ミズホの里に戻ろう。もうレアバードを見つけているかもしれない」
「今のところ手掛かりはそれくらいだしな」
マルタの言葉にゼロスが同意し、方針は決まった。それでもロイドは動かない。動けない。
だって、目の前に居た。手の届くところに。コレットの時とは違って、エミルは手を伸ばしてくれたのに。
―――何も、出来なかった!
「ロイドさん、落ち着いて。今は出来ることを一つずつやりましょう。―――大きな事をしたいなら、小さな事こそを丁寧にやらないとダメなんです」
論文だってそうなんですよ。
笑うアステル。………その顔を見て、ようやくロイドは少しだけ落ち着けた。アステルの笑顔に、エミルとコレットのそれが重なったから。
二人なら、きっとアステルと同じことを言う。
「………ああ。しいな、案内頼む」
「任せときな!」
ミズホの忍は流石と言うか、すでにレアバードを見付けていた。場所は分かったがそこに行くためにはまだ準備が足りず。けれどそれも数日のうちに完了すると。
ああこれで二人を助けに行けるとホッとしたのもつかの間。
「その前に―――しいな。お前に試練を与えねばならぬ」
ミズホの副頭領タイガが、居住まいを正してしいなに向き直る。
「あたしに?」
「レアバード奪取の前に、ヴォルトと契約せよ」
空気が張り詰めるのが分かった。
特にしいなの狼狽えようは尋常ではなかった。後ろから見ているだけでも震えているのが分かるほど。
「副頭領、あたしは―――あたしには」
しいなの手にアステルが触れた。しいなの手を両手で包み込み、笑う。
「しいな」
名を呼んだだけ。
しいなの震えが止まって、一つ大きく息を整えてから、真っ直ぐに前を見る。
「分かり、ました。やってみます」
「………そうか。レアバードの所在は追っておろちを神殿に向かわせる。詳しくはおろちから聞くがよい」
「はい」
やはり声が堅い。マルタはしいなに尋ねる。
「しいな、大丈夫?」
「ああ。………準備をしてくる。皆は里の入り口で待ってておくれ」
しいなが出ていってから、タイガはアステルに向かって目礼した。
「アステル殿。すまないが………しいなをお頼み申し上げる」
「はい。しいなはきっと、大丈夫です」
その言葉にタイガがもう一度礼を返し、アステルは笑顔で応じた。ロイドが二人を見て戸惑う。
「? 何かあるのか?」
「ちょっとね。さ、行こう」
笑うアステルに促されて、ロイドたちは頭領の家を出た。