精霊の世界再生   作:柚奈

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 捏造&オリキャラ状態のキャラが出張ります。
 ご注意!

※追記
 これまでの話の後書きに、設定の違いの欄を追加。ちまちま追記してますのでよろしければご覧ください。


13-2

 雷の神殿は、巨大な塔だった。

 マナの守護塔よりもずっと大きい。北の孤島にそびえる塔は雷雲に包まれ、絶えず落ち続ける雷に照らされて薄暗い空にぼうっと浮かび上がる。

 明らかに人工的に作られた塔の筈なのに、どこか荘厳ささえ感じるのは、それが現代ではあり得ないほどに高度な技術で作られた古代の遺産だからか、それともここが精霊の居る場所だからだろうか。

 塔の中は思っていたよりも広く、屋内だと言うのに外と同じかそれ以上に雷が落ちている。今も踏み出そうとしたロイドの数歩先に雷が落ちた。

「うおっ! ………このままじゃ進めないぞ。この雷を何とかしないと」

 入り口の辺りには不思議と雷は落ちてこないが、そこから少しでも奥に進もうとするとこれである。幸いにして自然の雷よりも遅いので、ロイドやしいなは反応できる。だがジーニアスやアステルは。

「これ、自然の雷じゃありませんね。落ちる直前に床が光りますし、多分、床や壁のマナに反応してるんだと思います」

 アステルの言葉にジーニアスが同意したので、多分そうなんだろう。

「神殿には簡単に入れたのになぁ。神託の石板も見当たらないし」

「テセアラは繁栄世界だ。封印としては機能していないのだろう。………だが、そうだな。ここも封印ならば、何かの仕掛けがある筈だ」

 シルヴァラントの神殿がそうだった。ここだって、きっとテセアラが衰退世界ならば神子の試練として使われる場所だ。乗り越えられるように出来ている筈なのだ。

「よし。じゃあまずは雷に気を付けながらその仕掛けを―――」

 

 気が付けたのは、ジーニアス、リフィル、リヒターの三人だけ。

 動けたのは一番近くに居たジーニアス。

 

 ジーニアスはだっと駆け出し、マルタに飛び付いて押し倒し―――直後、マルタが立っていた場所に雷が落ちた。

「あ、りがと、ジーニアス」

「お礼はいいから早く立って!」

 何故か、さっきまでほとんど落ちなかった入り口近くに、雷が落ち始めた。

 ロイドたちはさっきのアステルの言葉を思い出してそれを避け、避けられないジーニアスとリフィルは避ける代わりに術を展開して防御する。

 雷の次は突風。前方から強風が吹き付けてその場から動けなくなる。

「なんだこの風は………っ!」

「これ、マナを―――含んで―――!」

 前触れもなく吹き荒れた風は、同じように前触れなく止んだ。同時に雷も落ち着く。

 そして。

 

『立ち去れ』

 

 何処からともなく、声が聞こえる。

 直接頭に響くような声だった。人とは思えない、ゾクッとするような声。精霊を相手にした時と似ている。

「っ、誰だ?! 何処にいる!」

「ロイド! 上だ!」

 リーガルが示した先を見上げれば―――そこには、竜がいた。

 飛竜よりも一回りか二回り大きい。飛竜とは違って四足で、大きな翼と長い尾を持つ虎か獅子のような、しなやかな竜。

 それが、上階の手すりの上にいたのだ。まっすぐにロイドの方を見ている。

 竜は驚くほど軽やかに手すりや柱を跳び移り、ロイド達から少し離れた場所に降り立った。通路の先、ロイド達の行く先を塞ぐように。走れば届く距離だと言うのに、あの巨体が降り立った衝撃は伝わって来なかった。

『警告だ。立ち去れ』

「?! また! この声、お前か!」

 返事はない。だが竜の目が、値踏みするように細められた。

『この地に踏み入るものは、その命を保証しない。去れ』

「そうはいかないの! 私たちはヴォルトに用があって来たんだから!」

 声を張り上げたのはマルタだ。他の皆は固まって動けない中で、何故かマルタだけは何ともないらしい。ヴォルトの名が出た瞬間、竜の気配が鋭くなる。

『ヴォルト殿に? ………そうか、お前達が―――』

 一拍目を閉じ、竜は体を揺らした。笑ったようだった。

『答えは変わらん。何人もこの地に立ち入ることは許さない。どうしてもというなら、力を示してここまで上がって来い。来られるものならな』

「上等よ! 首洗って待ってなさい!」

 マルタが叫べば、竜はまた体を揺らして、―――また突風が吹いた。風が収まると、竜は何処にも居なくなっている。あの妙な威圧感も消えていた。

 

 ロイドは、詰めていた息を吐いた。マルタ以外は皆そうだ。

「何だよあいつ………あれがヴォルトか?」

「違うよ。あんなヤツ知らない―――あいつはヴォルトなんかじゃない」

「そうだね。あいつ『ヴォルト殿』って言ってたし」

 ヴォルト本人ならなら殿なんてつけないだろう。しいなとマルタの言う通り、あれはヴォルトではないのだ。

「何だったんでしょうか。魔物………では無いようですが」

「うむ、人の言葉を解する魔物など聞いたこともない。まして意思疏通が可能など」

「あの竜は魔物より精霊に近い存在よ。けれど精霊ではないわ。何者かしら」

 博識のリフィルとリーガルでも知らないらしい。魔物のようで魔物ではない、精霊のようで精霊ではないあいつ。

「さっきの雷と風、あれもあいつの仕業だった。あいつがマナを操ってたんだ」

「………来るなら来い、って言ってたね」

 それはつまり、妨害するのを抜けて見せろ、ということで。いつさっきのような雷が落ちるかわからないということなのだ。 

「行くしかない」

 リヒターはあっさり言った。

 ゼロスが笑う。

「ああ。ヴォルトと契約する為にも、まずはヴォルトに会わなきゃ話にもならん。そうだろ? アステル」

「ええ。大丈夫、来て見せろ、というなら行く方法はあります」

 一行を促すのは、しいなだった。

「………行こう、みんな」

 

 

 

 

 

 

 

 その後は、もう大変だった。

 遺跡の仕掛けならリフィルとジーニアスとアステルが居たので然程時間もかからなかった。力が必要ならプレセアとリーガルもいた。

 が、大変だったのはその他だ。

 まず魔物がひっきりなしに襲ってきた。時には謎解きに頭を使っているリフィル達を背に大量の魔物を相手しなければならなかったし、必要な機械の所に辿り着くまでには大抵魔物の山を乗り越えなくてはならなかった。………ある程度攻撃を加えれば逃げていくのだが、追いかける余裕もない。襲ってくるのを相手するだけで精一杯だった。

 次に、これは予想外だったのだが、仕掛けが壊れている場所があった。流石に長年の月日には敵わなかったのだろうか。リフィルたちが仕掛けを解くのに時間がかかったのにはこれもあった。というかよく解けたと思う。普通ならお手上げのはずなのに、壊れた機械で壊れる前の『正解』と同じ結果をもたらす。一緒にいたのがリフィルとアステルでなければ泣く泣く引き返す羽目になった筈だ。

 そして忘れた頃に来るのがあの雷と突風だった。マナによるものだから直前でリヒターかジーニアスが気付けるのだが、直前すぎて毎回苦労した。何度かジーニアスやプレセア、マルタが足を滑らせて下に落ちかけたときには肝が冷えた。

 そんな困難の数々を乗り越えて、ようやく辿り着いたのが、ヴォルトの祭壇らしき場所。最初にあの竜が居た、その場所だった。

「―――ロイドさん、ソーサラーリングであの最後のブロックを撃ってください。それで仕掛けは解ける筈です」

「ああ。………何度も何度も行ったり来たりしたけど、いよいよなんだな」

 ロイドは一行を見回した。そしてしいなに目を留める。

「しいな」

「大丈夫………大丈夫だよ、ロイド。―――やっとくれ」

 しいなが頷いたのを確認して、祭壇の上に鎮座する最後のブロック目掛けてソーサラーリングを構えて。

 

 瞬間、リヒター、ジーニアス、リフィルの三人がマナを紡いで、降り注いだ雷の束を防ぐ。そして見上げると目の前のブロックの上にあの竜の顔があって、ロイド達を見下ろしていた。

『やるじゃんか、お前ら』

 竜は面白そうに目を細め―――瞬き一つする間に。

 ジーニアス位の少年に姿を変えた。

「―――な、なななっ、なん………!?」

 驚きのあまり言葉も無くしているジーニアスやマルタをそっちのけにして、少年はブロックに腰かけて足をぶらぶらと揺らしながら、それはそれは楽しそうに愉快そうに笑う。

「この雷のマナの中で水のマナを操るその正確さ。そして瞬時にこの人数を守れるだけの強度と範囲を備えたバリアーを張れるその技術力と素早さ。そっちのお前らも魔物相手の動きは悪くない。ちょっと見くびってたな」

「お前さん、何者だ?」

 何時になく真剣な声でゼロスが問う。今のゼロスは本気だ。何時でも剣を抜けるように構えつつ、少年を睨んでいた。

 その視線を真っ向から受けて、少年はストン、とブロックから降りた。ロイド達の目の前に立ち、やや大仰な仕草で礼をする。

「俺は我が主の命により、この地とヴォルト殿を守るもの。お前達を試させてもらった」

「試すだと?」

「もしかして、あの魔物や雷は」

「うん、俺だね」

 あっさりと。白々しいほど、表情一つ変えずに。

 死ぬかも知れなかった。もし雷に当たっていれば、魔物にやられていたら、あるいは魔物をアステル達の所へ通してしまっていたら。そんなことは気にしていない。………もしそれで死んでいたとしても、きっと何とも思わないのだろう。

 人間の姿をしていても、言葉が通じても、ヒトではないのだ。

 苛立ちながら、マルタが問う。

「じゃあ試練は合格ってことで良いの?」

「ああ。力も資質もある。頭も悪くない。十分及第点だな」

「なら、早くヴォルトに会わせてよ。私たちが用があるのはヴォルトであんたじゃないんだから」

 乱暴なマルタの言葉も気にしていないらしい。寧ろ何処かその反応を楽しんですらいるようで。

 

「良いぜ。―――そこの召喚士以外は、な」

 

 名指しされて、しいなの肩が跳ねた。

「お前をヴォルト殿に会わせるわけにはいかない」

 俯き黙りこくってしまったしいなの代わりに、ロイドは吠えた。

「何で、どうしてだよ!」

「神殿に入ってから戦ってるときも移動してるときもずーっと俯いて、雷が側に落ちる度に死にそうな顔するし。仲間に庇われてばかりだ」

 そこまでずっと笑顔だったのに、急に背筋が寒くなるような鋭い目に変わる―――竜の時、値踏みされるような心地がしたあの目に。

「今のヴォルト殿は大変に機嫌が宜しくない。昔色々あったから、ヴォルト殿は唯でさえ召喚士が嫌いなんだ。そこにヴォルト殿の機嫌をさらに損ねそうな奴を通す気はない」

 他の奴等は合格だから通ってもいい。ただ召喚士だけは通さない。

 端的にそれだけ告げてあっさり踵を返したそいつを、今度はジーニアスが呼び止める。

「ちょっと待ってよ! 召喚士が居なかったら契約が出来ないよ?!」

「ヴォルト殿は召喚士ではなくても、人と関わることそのものを厭うておられる。ヒトと契約することも、望んではおられない。どうせ契約なぞ成る筈がないんだから、召喚士は必要ないだろ。召喚士だけ置いて進むか、もしくは全員で帰るかだ。俺はどっちでもいいが?」

「それじゃ困るんだ!」

 符を取りだし構えて、しいなが悲鳴をあげるように叫んだ。声も体も震えている。ロイドには泣いているように聞こえた。

「あたしは、あたしは何としても、ヴォルトと契約しなくちゃ………!」

 

「黙れ人間!」

 

 大人しかったそいつが、目を見開いて大喝する。

「お前達はいつもそうだ。それはお前達の都合だろう! お前達のヒトの都合に我らを、我が主や御方方を巻き込むな!!」

 

「違うッ!」

 

 しいなの前で小さな四肢を踏ん張りながら、コリンが叫び返す。

「しいなはそういう奴らとは違う! しいなはコリンを助けてくれた。コリンを道具じゃないって言ってくれたッ! しいなは、しいなは自分勝手な臆病者じゃないんだからぁっ!」

「コリン………」

「―――ならば何故、貴方はそんな姿をしている?」

 今度はとても、静かな声だった。穏やかにも聞こえるほど。けれど確かに怒りの籠った、それを理性で抑えて表面に出ないようにしているような、そんな声。

 言われたコリンは心底何を言われているのか分からないというように戸惑った。

「え?」

「違うというなら何故だ。本体にも還れずそのような弱った姿―――人間達に無理矢理『引きずり出された』からだろう」

 コリンは精霊だ。ただし普通の精霊とは違って、メルトキオの精霊研究所で『人工的に作られた』精霊。

 アステルが働く、その施設で。

 ロイドはアステルの方を見たが、アステルの表情はいつも通りに見えた。

 誰も何も言い返せず、沈黙が流れる。

 しばらくして、そいつは不意に竜の姿に戻った。

『如何に貴方が彼等を庇おうと、俺の答えは変わらない。覚悟のない奴をヴォルト殿には会わせん。帰れ、人間。その御方に免じて命はとらない。帰れ』

 言うだけ言って、竜は翼を広げた。羽ばたきで風が起こる。―――それはそう、雷の前後で吹いた突風のように。

 風で目が開けていられなくなって、目を閉じる。目を開けるとやっぱり、竜は居なくなっていた。

 




 お久しぶりです。
 続きは書き上がっていないんですが、とりあえず投稿。

 続きはまたしばらくお待ちくださいませ。


※追記
設定の違い
・人体実験云々は捏造。王家の許可云々も捏造なので原作にはそんな描写はありません。
・雷の神殿について。シンフォニアよりも雷が酷いです。ラタ騎士のゲームのように、モタモタしてると雷に当たります。この雷の範囲はサイバックまで及んでいますが、サイバックの町はアステルの発明により守られているためサイバックでは雷には当たりません。
・雷の神殿の仕掛けについて。ゲームではリセット機能がありましたが拙作ではありません。さらに経年劣化か何かの影響で壊れている部分もあり、ゲームと同じ手順では仕掛けを解除できていませんでした。
・竜の少年について。少年の外見は考えてませんのでご自由に。ただ外見年齢はジーニアスくらいです。
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