相変わらず捏造過多。オリジナル多し。
苦手な人、無理な人はブラウザバックで。
ようやく伏線をいくつか回収できた……!
思い付いた時期が6:人間牧場を書いてた頃なので、なんとなく繋がってるようなないような。
竜が去った後、ロイド達は雷の神殿を出て、雷があまり降ってこない原っぱで夜営することにした。
神殿の仕掛け―――最後のブロックには手出しできなかった。
というのもブロックの回り、祭壇を囲むように雷の薄い膜のようなものが張られていたからだ。リフィルが言うには結界の一種らしい。おそらくあの竜が張っていったものだろう。
あれから竜は一向に戻ってこなかったし、結界はどうしようもない。日も遅くなったので、取り合えず今日の契約は諦めて夜営することにしたのである。
「あたしは昔………十二年前、ヴォルトと契約しにここまで来たことがあるんだ」
食事の後、しいなが覚悟を決めた顔で話し出した。
「頭領にヴォルトとの契約を命じられたあたしは、ミズホの忍びと一緒にここまで来た」
しかし契約は失敗し、里の忍の四分の一近くが死んだ―――。
「それで、ヴォルトと契約しろって言われたとき変な顔してたんだね」
「里でしいなが遠巻きにされてたのもそういうことか………」
その時の遺族が、その事件の原因となったしいなを恨んでいる可能性は高い。………ロイドがイセリアでそうなったように。
「あの時、ヴォルトの言葉がまるで分からなくて………また、またあの時みたいに皆に何かあったら………!」
しいなは両手で目元を覆う。
ずっとそんな事を考えていたのか。それで、ずっと様子がおかしかったのだろうか。
だが、ロイドも覚えがあった。自分のせいで人を死なせてしまったこと。自分のせいで、犠牲になってしまった人のこと。………忘れられないイセリアを出たあの日。
「馬鹿馬鹿しい。そんなことで悩んでいたのか」
「リヒター!」
アステルに咎められてもリヒターは続けた。
「この旅が危険なのは今に始まったことじゃないだろう。危険だとしても契約するところが見られるなら俺たちにとっては願ったりだ。それに、そもそも今のお前と昔のお前は同じなのか? 同じだというならこの十何年、お前はいったい何をして―――ぐっ」
「はいストップ!」
座っていたリヒターは後ろからアステルにのし掛かられて口を止めた。リヒターの頭に顎をのせ、肩に腕を回すなんてこと、アステル以外にはできない芸当だ。
「リヒター、言い過ぎ。………でもまぁ、そうだね。しいなはコリンだけじゃなくて、ウンディーネとも契約できたんだから、自信もって。ね?」
「アステル………」
「死なないよ。ていうか死んでられないよ。僕の研究はまだ完成してないからね。やることはまだまだあるんだから!」
シルヴァラントの精霊も研究したいし、この旅で思い付いたことも試したいし―――指折り数えるアステルは死ぬことなんてまるで考えていないように見える。絶対に死なない自信があるのではなく、何があっても生きてやる、とでもいうような。
「で、でもまた失敗してヴォルトの力が暴走したら………」
「その時はアステルに害が及ぶ前に、ヴォルトを斬って終わりだ。俺のすることに何も変わりはない」
リヒターはアステルの護衛役だ。それは相手が精霊であっても変わらないと。
余りに潔くて、思わずしいなも笑みを漏らす。
「はは、歪みないねぇ、あんたは」
「そもそも契約の結果など気にしていないからな。成功しようが失敗しようが、どちらであっても構わない」
一行が目を見開いて、誰かが行動するより先に、アステルが飛び上がってリヒターの頭をはたいた。
「もう、リヒターったら! 素直に『成功すると信じているから心配してない』って言えばいいのに」
「勝手に余計な副音声をつけるな!」
こうなると怒鳴り返すのも照れ隠しに見えてくる。………世界広しと言えどもリヒターをこんな風にしてしまうのはアステルだけだ。
「っ、それよりもだな! お前はとっとと立ち直れ! 契約が上手くいくか以前に、あの竜に認められなければ契約に挑むことすら出来ないんだぞ」
話題が変わると興味も関心もそちらに移る。
竜、と聞くやむすっとした表情で腕を組んだのはマルタである。
「ああ、あの偉そうな竜。何様のつもりか知らないけど、しいなに言いたい放題言ってくれちゃって!」
「お、落ち着きなよマルタ。あいつの言ってたことは、最もだし………」
「あんな奴の言うこと気にしない! それに、例えそうだとしても合ってたら何言っても良いって訳じゃないでしょ! なぁにが『契約は成る筈がないんだから召喚師は必要ないだろ』、よ! やってみもしないで―――!」
一瞬の白い稲光。
遅れて、頭上で何かが爆発でもしたかのような轟音。………いや、本当に、木々の向こうで何かが爆ぜた。
「! 何だ、今のは」
リーガルが腰を浮かせかけた、と同時。
―――今度は同じ方から、獣か何かの咆哮が響いた。
「この声は、あの竜の声です!」
「近いぞ!」
一行は顔を見合わせて頷き、手早く支度を整えると、竜がいるであろう場所に向けて、出発した。
夜だというのに、暗さには困らない。何故ならひっきりなしに落ちる雷が、稲光が辺りを照らしているから。むしろその眩しさに目を細め、光を直視しないように努めなければならなかったほどだ。
だからロイドたちは、その光景をはっきりと見ることができた。
あの竜が、大量の魔物相手に戦っている光景を。
竜が吼える。同時に雷が大量に落ちて、辺りの魔物たちを焼いた。それでも雷に当たらなかった魔物が他の魔物の焦げた死体を乗り越え竜に飛びかかり、竜は尻尾や前足でそれを叩き落とす。
が、一向に魔物は減らない。
「あの魔物、変だよ」
様子をうかがっていると、ジーニアスが呟く。
「あれ、魔物じゃない………?」
「いいえ。あれは魔物の中になにかが………」
ジーニアスの目が、不思議な色に光って見えた。リフィルの目も同じだ。
エルフの血族の目は、マナを視る。
ジーニアス、リフィル、リヒターの三人が、一斉に振り向いた。
「っ!? マルタ、伏せて!」
「え?」
戸惑いながらもマルタの体が先に動く。言われた通りしゃがんで頭を下げ、その頭上をリヒターの剣が走った。
どさり、と音をたててマルタの横に転がったのは。
「きゃ―――っ!?」
狼の死体である。それも目を剥いて、口のはしには泡立った唾液がついている、そこから長い舌がだらりと伸び、心なしか瞼や前足がピクピクして―――眼球がぎょろりと、マルタを見た。
マルタは後ろに飛び退き、スピナーを構える。
「こいつ、まだ生きてる!」
「何!?」
死体だ。それは間違いなく死んだはずだ。リヒターの剣は間違いなく急所を切り裂き、仕留めた筈だ。
なのに、まるでゾンビのようなふらふらとした動きで、その狼は確かに立ち上がる。
動く度に傷口から血が吹き出し、血が地面に染み込むほどに大量に流れ出ているはずなのに、意に介した様子もなく。
「陽流・丙!」
リヒターが手斧でそれの頭を叩き斬った。振りかぶった上段から叩きつけられる斧と、立ち上る火柱。頭蓋骨を陥没させるほどの攻撃を受けてからだを焼かれては、流石に息絶えたと見えてそれも動かなくなる。
「あ、りがとリヒター」
「早く立て! 次が来る!」
全員が、戦えないアステルを中心に構えた。そして。
竜の方から、森の中から、次々に襲ってくる魔物に、立ち向かった。
「あーもうこいつらしつこいっ!」
「ホントだよ―――イラプション!!」
叫びながら、マルタがまた魔物を蹴り飛ばし、その魔物をジーニアスの魔術が焼いた。灰になるまで燃やし尽くし、それで魔物は動かなくなる。
向こうではロイドが闘気をぶつけて木々に打ち付けたり、リーガルやプレセアが頭を砕いたりした魔物を、リフィルとリヒターの術が焼滅させている。
しいなと、そしてゼロスは前衛と後衛のフォローに走り回りながら、アステルを庇って魔物と渡り合う。
辺りは一行が倒した魔物の焦げたりぼろぼろになったりした骸で埋まり始めていた。
相変わらず少し先で竜も魔物を倒し続けているのに、だ。
「あーくそ埒が明かねぇぞ!」
「文句を言う暇があったら手を動かせ神子! ―――ネガティブゲイト!」
大声で叫びながらも、一行は目の前の魔物を相手する。
しかしただの魔物ではなく、不死身かと思うほどにしぶといのだ。嫌になるのも無理ないこと。
「おーいジーニアス! こいつら纏めて魔術でなんとか出来ないのか?!」
「エアスラスト! 無茶言わないでロイド! 魔力が保たないよ―――スプラッシュ!!」
ジーニアスの術で産まれた水が、魔物を飲み込む―――。
それを見たマルタが、はっと閃いた。
「しいな! 精霊を喚んで! ウンディーネに頼んで、こいつらまとめて押し流して貰おう!」
「それだ!! しいな!」
「任せな!」
しいなは一枚の符を取り出した。
「おじいちゃん………」
一枚はオサ山道で骨の魔物を退けるのに使い。
もう一枚はバラクラフ王廟でのロイドたちとの戦いに使い。
使わずにこれまでとっておいた、最後の一枚。
「最後の一枚、使わせてもらうよ」
水の眷族に当たる、式神・蒼雷。それを術の核にして、しいなは契約の証、アクアマリンの宝石を握りしめた。
「清廉より出でし水煙の乙女よ」
しいなは、目を閉じたまま、集中する。
「契約者の名において命ず―――出でよ、ウンディーネ!!」
名を呼ぶ。喚ぶ。編まれた術が収束し、弾けた。力の奔流。その中から、その奔流を道にして。
「………お呼びですか、契約者しいな」
しいなの目の前に顕現したのは、水の精霊ウンディーネ。
「ウンディーネ! こいつらまとめて、押し流しとくれ!」
「お任せを」
ウンディーネはしいなに向かって微笑み―――魔物たちを見渡した。
「哀れな………歪んだお前たちを、我等では救うことが出来ません。せめて、苦しまぬよう葬送って差し上げます!」
ウンディーネが手をかざせば、ジーニアスやリヒターのそれとは比べ物にならない力が渦巻いた。
「! 何かに掴まれ!!」
リヒターの声になんとか全員が従った、次の瞬間。
辺りを、凄まじい水が飲み込んだ。
飲み込まれ、マルタは意識が飛びかける。
港町パルマコスタ出身のマルタは、海と共に育った。水の力強さと恐ろしさは、よくよく知っている。
だって、あの時も。“あの日”の津波は、あっという間に街をのみ込んで―――。
「………?」
今、何を。
今のイメージは、パルマコスタが、何かに―――いや、それよりも………“あの日”って、何時?
ウンディーネはきちんとロイドたちを守った上で水流を呼び起こした。
アステルはマルタに呼び掛ける。
「マルタ、マルタ?!」
「………大丈夫、気を失っているだけよ」
マルタだけが驚いたのか気絶してしまったが、ロイドたちはなんともなかった。ただ魔物だけが、竜が戦っていたものも含めて全てが綺麗さっぱり消えていた。
『………水の、御方?』
竜がウンディーネをそう呼ぶ。ウンディーネは竜に向き合った。
「貴方は“彼”の眷族ですね。安心なさい。あの魔物たちは皆、私がおくりました。海が彼らの骸を受け止め、やがて大いなる流れへと還すでしょう」
『ありがとう、ございます』
竜がウンディーネに向かって頭を垂れると、ウンディーネはしいなに向き直る。
「では、しいな。私はこれで」
「あ、ああ、ありがとう、ウンディーネ」
ウンディーネがマナに溶け、消える。
と、竜はしいなを見下ろす。
『………お前は、水の御方と契約を交わしていたのか』
「そうだよ! しいなはちゃんと、精霊と契約してるんだから!」
起きていたらマルタが言ったであろうことを、ジーニアスは叫ぶ。ジーニアスも、竜の言葉には頭に来ていたようだったから。
が、ジーニアスの言葉に怒るでもなく、謝るでもなく、竜は何かに納得したように何度も頷く。
『………そうか。………そうか』
しきりに頷いて、ロイド達を見回して、しいなを見て。
『明日、そろって神殿まで来い。………ヴォルト殿に会わせてやる』
「あら、良いのかしら?」
ヴォルト殿の機嫌を損ねそうな奴を通す気はない、と明言していたでしょうに。そんなリフィルをしいなが嫌そうに見た。ほんと、性格悪いと呟くのが聞こえる。
竜も心なしかうんざりしたような、むすっとしたようは、そんな雰囲気だ。
『今も正直言えば会わせたくない。が、水の御方と契約を交わしたのなら、お前は“楔”を抜けるかもしれない』
「“楔”??」
アステルは首をかしげた。ジーニアスもリフィルも知らないらしい。竜が気まずげにそっぽを向く。
『………なんでもない。こっちの話だ』
「もう一つ。あの妙な魔物は何?」
『あれは当てられて“歪んだ”魔物だ。殺してやるのが一番良い。安心しろ、水の御方がほぼ全て祓われたから、お前たちが寝込みを襲われることはない』
またも意味がわからない答えを返されたが、アステルははっとした。顔をあげる。
「! まさか、ガオラキアと同じ―――」
『深入りするな、人間』
竜が、アステルを見下ろしている。
『それは、お前たち人間は知らなくても良いことだ。人間が関われば命を落とす。………それを、我が主は望まないだろう』
アステルは押し黙った。警告だ。それもアステルを巻き込まないがための警告なのだ。
言うだけ言って、竜は翼を広げる。
『じゃあな。明日神殿で待ってるよ』
姿勢をぐっと低め、反動で空に飛び出し。
竜が見えなくなって、ロイドが聞いた。
「………どうする?」
答えたのはしいな。
「行く。行くに決まってるだろ。やっと契約に挑めるんだ。―――早く、コレットとエミルを助けてやらないと」
相変わらず、手は震えていた。それでも目に力が戻っていた。
だから。
その夜、皆が寝静まってから。
アステルは持ってきていた荷物から、とある機械を取り出して、調節を始めた。
・しいなの符について
三枚のうち、一枚はソードダンサーから逃げるのに使用(式神壱、ゲームではオサ山道戦で使用)。
一枚はエミルとは別行動してたバラクラフでロイドたちと戦うのに使用(式神参、ゲームではアスカード人間牧場からの離脱に使用)。
なので、一枚は使わずにとってありました。