幻 作:とうたく
「だれだいこんな時間に」
「夜分遅く申し訳ありません。わたくし悪魔と申します」
俺がドアを開けると、スーツ姿男が目の前に立っていた。声をかけると礼儀正しくお辞儀をする。
「貴方様に用事があって本日参りました」
「どういうことだい。呼んだ覚えはないが」
「お話だけでもお聞き下さい。すぐに終わりますので」
自分のことを悪魔と言った男はそういうと、玄関に足を踏み入れた。俺は躊躇なく立ち入ろうとする男から少し離れると、首を傾げる。
「はて、セールスにしても宗教にしても、こんな夜遅く来なくてもいいではないか」
「それには理由があるのです。とにかく失礼致します」
少しばかり強引に来るこの男を部屋に招き入れ、お茶を出し座らせた。丁度退屈していたのだ。話があるというのならば聞こうではないか。
「さて、なんの用なんだ。さっさといってくれ」促すと彼はうなずき、話を始める。
「はい。先程も自己紹介致しましたが、わたくし悪魔と申します。あなた方の世界でも一応は認知されていると思いますが」
「悪魔ってあの悪魔? 悪い奴……ってくらいしか分からないけど」
「そうです、その悪魔でございます。説明する手間が省けで有り難いです」
「じゃあその悪魔が何しにきたんだい?」俺は半笑いでそう言った。彼の言っていることが冗談なのかは何なのかは不明だが、まともに捉えても良いことはなさそうだった。
「はい。大変申し上げにくいのですが……」
「うん?」俺は首を傾げた。それは彼が少しだけ口籠り、本当に言い辛そうにしたからである。
「別になんだっていいよ。生活音がうるさかったかな?」
「いえいえそんな事ではございません。驚かないで頂きたいのですが……今日こうして遅くに訪れたのは、貴方様の寿命を知らせるためなのです」
「寿命だって?」
「はい、そうです。実は……貴方様の寿命はもう残り少ないものとなっておりますのでそれをお伝えに参りました」
「どういうことだ?」
「そのままの意味でございます。わたくしは悪魔ですので、すべての人間の寿命がわかります。貴方様は後半年以内には亡くなられる事になっております」
そんな事は初耳である。勿論自分の寿命を誰かから聞かされるなんてことほぼ無いだろうが、しかしあまりにもそれは突然の話だった。
「意味が分からないよ。お前は誰なんだ? 悪魔ってなんだよ。なんで俺の寿命が分かる?」
「それは私が悪魔だからと言うしかありません。そして、悪魔というのは亡くなっていく者の魂を食料として生きながらえる亡者の総称です」
「お前がその悪魔だという証拠は」
「それは後々になって分かってくると思います」
この男の言っていることは非現実的で滅茶苦茶だった。説得力の欠片もないが、私は凄く暇な事もありもう少しだけこの男の話に付き合うことにした。