幻 作:とうたく
「仮に俺の寿命があと半年だったとして、何でそんな事を教えてくれるんだ? もしかして実はそういうものなのか? 死期を悟るっていうのは」
「もしかするとそうかもしれませんね。しかし、わたくしが今回貴方様のご自宅に訪問させて頂いたのは寿命をお教えするためではございません」
「じゃあなに?」
「はい、わたくしは、わたくし達悪魔と取引しませんか、という交渉に参りました」
「取引だって?」
素っ頓狂な声を出してしまい、喉を潤す為に少しだけ自分用に出したお茶を口に含む。口が乾いていたせいか分からないが、何だかいつもと違う味がした気がする。
「左様でございます。取引です」
「その取引ってのは何さ」
「はい、今からご説明致します」
男は鞄からファイルを取り出し、その中から一枚の紙を抜いた。普通のサイズの白い紙だ。
「これは契約書です。ここに記してある内容を今から端的に読み上げますので、よく聞いていて下さい」
「うん」
「まず、わたくし共は貴方様の寿命が半年以内に訪れるということを見越して、それを伸ばすお手伝いをさせて頂きます」
「そんなことできるのか?」
「病気や衰弱死等の内的要因ではなく、交通事故等の外的な要因ならば可能です。貴方様は半年以内に事故のような死因で亡くなられるので、我々がサポートすることにより回避することができます」
「へえ、そうなんだ?」
「はい。次に、貴方様は我々が寿命を伸ばすお手伝いをさせて頂く代わりに、魂の4分の1を我々に差し出します。これが取引の条件です」
「魂の4分の1だって? そんな事できるの? それをしたらどうなる?」
「出来るかどうかは言わずもがなでございます。また、貴方様がわたくし共に魂を差し出すことによって変わることはあまりございません。ただ少しだけ性格が変わる可能性はあります。ですが魂はその人の善人度によって大きさが変化しますので、善い行いをすれば簡単に元に戻すことが可能です」
「そうなんだ?」
「はい。ですので決して悪い取引では無いと思いますよ。中には寿命が伸びるのならお金をいくらだって払う等というように仰る方もいます。ですが我々が欲しいのは魂でございますので」
「なるほどなあ」
聞いた話だけだと判断はできないが、もし仮に……すべてが本当の話ならば悪い事ではないと俺は思った。寿命が本当にあと半年だけならば、藁にもすがる想いでこの話に乗ってもおかしくない。
「でも、悪いけど信じられないね。証拠も何も無いんじゃ始まらないよ」
「そうですか……。いえ、そういうとは思っておりました。ですが、こちらもそのように言われるのはなれておりますので、証拠とやらをお見せいたしましょう」
「できるのか?」
「悪魔ですから。少々お待ちを」
そう言うと悪魔は、かばんの中から今度は辞書のような分厚い本を取り出した。