塔城にいわれたとおり、俺は放課後にグレモリー眷属が所属しているオカルト研究部の部室へ向かった。
なんというか、薄気味悪いところだ。
旧校舎の一角でいかにも悪魔がいそうな雰囲気を醸している。
俺は委員会の集まりに顔を出していたため、塔城は先に部室へ向かい、後から合流するつもりだった。
オカルト研究部の部室の前につき、扉へ手をかけ開けた瞬間、炎の悪魔の大笑いした声が響いた。
「ダーハッハッハッハッ!!!
リアスゥ!これかよ!お前の期待してる人間とやらは!!
何の力も感じないじゃねーかよ!」
大笑いしているのは白いスーツに身を包んだ金髪の男、チャライオーラが全身からでている。
「よりによって、こんなガキに期待してるとか……
戦力不足も大概にしてくれよリアス!!」
「ライザー、あなた今私の下僕達をバカにしたのかしら?
あなたでもそれは許されないわよ。」
すると金髪の男は
「はっはっはっ。そいえばグレモリーは眷属を大事にするんだっけか?弱い眷属でもなんでも。
悪かった悪かった。」
明らかにバカにした口調で形だけの謝罪をする。
と、それに食ってかかった男がいた。
「テメー、黙って聞いてればさっきから部長をバカにしやがって!!!
ぶっ飛ばしてやる!!」
学ランを着たみたことない男が金髪に向けて怒鳴っていた。
どうしようか、俺の居場所がないな。
「まあまあ落ち着けよドラゴン君。
人間がビビって立ち尽くしてるじゃないか。」
ふふふと鼻で笑いながら金髪の男は学ランの男をなだめ、そして脇に立っている銀髪の女に
「グレイフィア様、リアスのいっていた人間も現れたことだし、説明をこのドラゴン小僧と共にしてさしあげてください。」
と声をかけた。
それから俺はこのグレイフィアと名乗る銀髪のメイド姿の女性から一通りの説明を受けた。
純血の悪魔が少なくなっていること、グレモリーとフェニックスが婚姻関係を築こうとしていること、リアスが大学を出るまでは待つという約束があったが、ライザーが早く結婚したがっていること、ライザーが極度の女好きでグレモリー眷属ごと自らの物にしようとしていること。
そして、レーティングゲームで全てを決めようとしていること。
そして、そのゲームにおいて、ライザーはすでにプロの腕前で事実上無敗であること。
さすがにこれはまだ公式のゲームを経験したことがなく、駒も足りていないリアスが不利ということで、何人かの助っ人を立てることが認められたことなど………
え?待て?俺もしかして助っ人……?
大体の事情を把握してきた時、ライザーが口を開いた。
「なぁ、リアス。
いくらお前が助っ人をたてようと、俺との力の差は埋められないだろうよ。
大人しくレーティングゲームなんかせずに俺の女になれよ。
こんな無益なことをする意味はないだろう?」
「黙りなさいライザー。
私の眷属達はあなたの眷属達に引けを取らない猛者揃いよ。それにここにいる八神という人間も悪魔に劣らない実力者、決して結果の分かりきったゲームにはならないわ!!!」
ライザーはしばらくとぼけた顔をした後、
「………ふふふふ……ふはーっはっはっはっはっは!!!!
面白い…面白いぞリアス!!
さっき俺の兵士に呆気なくのされたそこのドラゴン小僧が俺の眷属に引けを取らない!?
そこの何の力も感じない 低俗な人間風情が悪魔レベルの実力者!??
久しく会わないうちに君はギャグのセンスを鍛えてたみたいだな!!
面白い、面白いぞ!!俺の嫁にふさわしいぞ!」
そのままうるさすぎるような大声で笑い声をあげるライザー。
ほう、悪魔にもいろんな奴はいるんだなぁ。
貴族の三男ともなれば ここまで横柄な人柄になっちまうもんなんだなぁ。
勝手にレーティングゲームに参加する体になってるし、俺帰っていいかなぁ?
「テンメエエエェェェェ!!!
いい加減にしやがれ!!
赤龍帝の籠手《ブーステッド・ギア》!!!!」
すると、周りからイッセーと呼ばれていた男の腕に竜のような赤い籠手が装備された。
boostという機械音を上げると明らかに感じられる強さが変化、これは……力が倍化してるのか?
「うぉりゃぁぁぁぁああ!!!!」
イッセーはライザーに向かって殴りかかっていった。
「先程のでは飽きたらず、まだやりたいか雑魚の分際で。
……まぁいい……
今この場で殺してやる!!!
炎鷹の翼刃!!」
ライザーの右手全体が大きな炎の翼に変化した。
あれはまずい!!
離れている俺にも伝わってくる熱量、魔力!!
あれを食らったらイッセーとかいうやつ、死ぬぞ。
「おやめなさい、二人とも。
試合を行うと決定した時点で、現時点での戦闘は認められません。
これ以上戦闘の意志を示すようであれば、グレモリーの意志として私がお相手仕ります。」
グレイフィアと名乗る女性から圧倒的なオーラがほとばしる。
俺は瞬時に戦闘態勢をとる。
それほどに、ヤバい。
ライザーなんか比べ物にならないくらい強い。
俺が会ってきた敵の中で一番強いかもしれないその力は、容易にこの空間内のすべての悪魔を支配した。
直接殺気を放たれたライザーとイッセーは顔を絶望に染めている。
おそらく圧倒的すぎる力の差に、自分の死をイメージさせられたのだろう。
「……………!!!!
まぁいい。レーティングゲームをやればいいんだろう。
勝ちの決まっているゲームをな。
無駄な時間を使うようなものだ、リアス。
お前とお前の眷属の醜態を貴族の前で晒すまいと気を使ってやったのによぉ。
修行期間を十日やるよ。せいぜい鍛えてくるんだな。
俺が勝った暁にはその日の晩からお前と眷属丸ごと手に入れて慰み物にしてやるよ。」
おい……
なんていった……?
眷属丸ごと、眷属丸ごと、眷属丸ごと……
姫島先輩もか……?
「おい、ライザーとやら。まだ結婚が確定するだけで、慰み物とやらにするのは早いんじゃないか?
それに眷属は関係ないだろう。」
「なんだ?ここにきて口を開いたかと思えばくだらぬ事を聞く人間だ。
この婚姻は子孫を残すための婚姻、子を為してなんぼだろう。ならば子を作るための営みをするのは悪魔の総意でもあるんだよ。
それに重婚なら認められている世界だ、眷属ごとかわいがってあげるのはむしろいい夫だろう?」
何を言ってるんだこいつは。
ろくに筋も通っていないじゃないか。
御曹司ともなるとここまで論理的思考ができないもんなのか?
「それは眷属の意志によるだろう。
主がお前の物になるからといって、眷属までお前の物にはならないさ。」
「うだうだとうるせぇ人間だなぁ。
文句があるならレーティングゲームで俺に勝てば良い話だろう!!
まぁ万に一つの可能性もお前らが俺に勝つことはないがな!!!
低俗な人間にこれ以上話すことはない、帰るぞお前ら。」
あぁダメだ。
完全腹立ってきた、こいつにかける言葉はこっちからもないさ。
こいつに姫島先輩が襲われているのを想像するだけで吐き気をはじめとするもよおす。
怒りがこみあげ、俺の体を震わせる。
握り締めた拳がぷるぷるとやり場のない怒りを表していた。
「……ん?
おい、どーした人間、お前まさか震えてるのか?
くはははは!こりゃいい!!
レーティングゲームに参加するのが怖いのか?
はーっはっはっはっはっは!!
怖がらせて悪かったなぁ!すまんなぁすぐ終わらせてやるから勘弁してくれよぉ!
くはははは!」
ライザーの眷属もくすくすと笑い声をたてている。
俺は自分の中にある何かが壊れたのを感じた。
「ライザーフェニックス。
今ここで死にたいか?」
指輪を外し、溢れんばかりのオーラを放出する。
今まで貯めにためてた鬱憤をいきなり放出したため、ライザーはおろか、グレモリー眷属も俺の変わりように驚いていた。
部室の小物などが、ガタガタと音を立てる。
「お前……ただの人間じゃなかったのか…?
なんだその力は!!」
「質問に答えろライザーフェニックス。
死にたいか?死にたくないのか?
死にたくないなら今ここで地べたに額をなすりつけ、今までの言動を謝罪、訂正しリアスグレモリーとの婚約を破棄しろ。
死にたいなら今ここで殺してやる。」
そういった俺の周りに英霊札が飛び回る。
すでに千の絆《アルフ・レガーメ》が出現し、戦闘準備は終わっている。
「戦闘準備を解きなさい、八神零。
これ以上の戦闘はグレモリーに対する敵対とみなし私がお相手仕ります。」
グレイフィアが先程と同じ、むしろ上回るほどのオーラを放出し牽制を図るが、俺はもう止めるつもりはない。
最悪、グレモリーと戦争かなぁ?
めんどくさいことになりそうだなぁ。
双方とも放出する魔力が凄まじいレベルになっていき、もはや部室が耐えられないくらい密度の濃い魔力に溢れていた。
グレモリー眷属、フェニックス眷属ともに顔面蒼白になり、意識を保っているだけで精一杯の様相が伺える。
一方俺は目の前のグレイフィアがどんな手段で来るかをシュミレートし、備えていた。
おそらく、この膠着状態は保たないな。
どうするか……ここで切り札を切る気はなかったけど仕方ないなぁ。
「最後の勧告をします。
今すぐ魔力を収め、戦闘準備を解いてください。」
「グレイフィア様、申し訳ないが自分はもう目の前のライザーフェニックスに対して憤りを隠せません。
例え、俺の身が滅ぼうが、この男だけは完全に滅さなければ気が済まないと思います。
すみません、少し気を失っていてもらいます
禁手《バランス・ブレ・・・》」
言い終わる前に目の前に赤く光り輝く魔法陣が出現し、紅色の長髪をなびかせて一人の男が現れた。
「グレイフィアを前にして一歩も引かない人間なんか初めて見たよ。
初めまして八神君。
私は魔王の一人であるサーゼクスだ。以後よろしくね。」