問題児とドラゴンと天使を従える精霊使いの少年が来るそうですよ? 作:ユンベルク
「「「「ど.......何処だここ!?」」」」
俺は上空へと投げ出された後重力に従って落下している。俺の他にも三人いるが見たところ俺と同じように投げ出されたのでしょう。
「ジブリール!」
「了解です、マスター」
ジブリールは声をかけるとすぐに俺とティアマットを捕まえるとそのまま飛んで支えてくれる。ちなみに俺はお姫様抱っこでティアマットはジブリールの服の帯の様なものが腹の辺りを捕まえてる状態だ。
俺はとりあえず安全を確保できたので辺りを見回してみる。
そこには見た事もない風景が広がっていた。
視界の先に広がる地平線は、世界の果てを彷彿とさせる断崖絶壁。眼下に見えるは、縮尺を見間違うほどの巨大な天幕に覆われた未知の都市。
俺が見て来た中で一番綺麗と言わざるおえない景色が広がっていた。少しその景色に感動しているとジブリールから声をかけられる。
「マスター。他の方はどうするのですか?」
「........あ」
気付いたが遅し。他の三人は俺が下を見た瞬間にボチャンと着水した。
.........ボチャン?
おかしい。この高さから落ちてボチャンはおかしい。普通は人体が木っ端微塵になるか高い水柱ができるものなのに。
俺は一人でウンウン考えていると
「湖に落ちる前に緩衝材のような薄い膜が何層にもなっていて衝撃を緩めていたぞ」
「なるほど、ありがとうございます。ティアマット。それとジブリール。湖の岸辺へ下ろしてください」
「わかりました」
そう言ってジブリールはそれなりのスピードで飛ぶ。というか今もお姫様抱っこの状態だしなんかハァハァ言ってヨダレ垂れてるし。
「ハァハァ、マスターの匂い.....。最高でございます!」
「死んでください。このクソ天使悪魔」
「ああん!その罵倒ですら快感に変わりそうでございます〜!」
更に光悦とした表情でギュッとしてくるジブリール。ティアマットもキャーキャー文句を言っているし俺の中の契約精霊達も呪詛の様なものを唱えてる。
「とりあえず下に降りたらお仕置きです」
「マスターからお仕置き!?それは一体どんなプレイなんでしょうか!?私、マスターにならどんな事をされても嬉しいでございます!!」
ダメだ。逆効果だった。俺とした事がミスをしてしまいました。ヤバい。流石にティアマットもエストもレスティアも引いてますよ。
そうこうしてるうちに岸辺に着く。俺はすぐにジブリールの腕の中から離れる。貞操の危機を感じますからね。
「マスター!もうあの天使モドキに近づいてはならんぞ!マスターが喰われてしまう!」
「ティアマット、落ち着いてください。流石にジブリールも俺を食べるなんて......」
「マスターを食べる?........なるほどっ!性的な意味で、でございますね!?」
「そうですね。これからは極力近づかない様にしましょうか」
ジブリールの言葉に全身が氷水をかけられたような寒気がしたのですぐに言葉を改める。
そんな殺生なっ!?、と嘆いてる天使悪魔なんて無視です、無視。
とりあえずジブリールを無視して上がってくるであろう三人を近くの岩に腰を下ろして待つ。ティアマットはその岩に軽く腰を下ろす感じで俺の隣にいる。
「そういえば、ティアマットって名前。咄嗟に呼ぶ時に長いんで変えてもいいですか?」
俺はさっきから思っていた事をティアマットに聞いてみた。ジブリールとレスティア、エストは言いやすいんだけどティアマットだけは他の三人より言いにくい。
「ん?別に構わんぞ」
許しも得ましたし、どうしましょう?ここは無難なやつでいきましょうか。
「では、ティアでお願いします」
「了解した」
俺のつけた名前がそんなに嫌じゃなかったのかすんなり許してくれた。これで全員呼びやすい名前になったな。
すると湖から二人が上がってきた。
「し、信じられないわ!まさか問答無用で引き摺りこんだ挙句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
「........。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
二人の男女はフン、と互いに鼻を鳴らして服を絞る。
いきなり仲悪すぎですよ.....。なんでそんなに喧嘩腰なんですか。
俺はその言い合いを聞いてちょっとゲンナリする。
その後に続く形で最後の一人が岸に上がってくる。その女の子は猫を抱えており猫は岸に上がると女の子から離れて全身を震わせ水をはじく。
女の子は服を絞りなから、
「此処........どこだろう?」
「さあ。でも世界の果てみたいなものが見えましたし意外と大亀の背中の上だったりすんじゃないですか?」
「お前も見えてたのか。てか始めにそこの天使みたいなのに助けてもらってたよな?」
「ああ、すみません。そこの天使モドキは俺の仲間でして空を飛べるので助けてもらったんですよ」
「!ヘェ〜。面白そうな奴だな」
そう言って金髪の少年は髪の毛を掻きあげながら獰猛な目をジブリールに向ける。ジブリールは俺の足元でorzで負のオーラを出している。
「てか、まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずオマエって呼び方訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後は気をつけて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」
「.........春日部耀。以下同文」
「そう。よろしく春日部さん。次に野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」
え、俺ですか?自分の中では俺の容姿は可もなく不可もないごく普通の容姿のつもりなんですけど見る人によってはやっぱり印象が.......
「高圧的な自己紹介ありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」
あ......やっぱり俺じゃなかったんですね。良かったです。初対面の女の子に野蛮で凶暴そうなんて言われたら部屋に篭ってから濃塩酸と濃硝酸を3:1の割合で混ぜた液体を頭からぶっかかる所でした。
「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
さっきからなんでそんなにお互い食ってかかるんですか?実は本当は初対面じゃないでしょ?
「それで最後に岩の上に座ってる貴方と横にいる女性。それと.......落ち込んでる貴女は?」
「初めまして。俺は一ノ瀬悠弥です。逆廻君みたいに取扱説明書は作りませんが野蛮で凶暴でもないので気軽に話しかけてください。それと俺の隣にいるのはティア。そして足元にいるのはジブリールです」
「うむ、マスター共々よろしく頼む」
「マスターにお触り禁止......死にます。死んでしまいます!こうなったら夜這いでもなんでも......ぐへへへへ」
「クソ天使悪魔。自己紹介をちゃんとしないと今後一切俺への接触を禁止しますよ?」
「私、ジブリールと申します。悠弥様をマスターとしております。何卒よろしくお願いします」
ジブリールは俺と初めて会った時よりも恭しく礼をする。変わり身早すぎでしょ。
「え、ええ。こちらこそよろしく......」
久遠さんめちゃくちゃ引いてますね......。
まぁ残念美少女ですからね。その気持ちは分かりますよ。
「てかマスターって事は一ノ瀬はこいつらを従えてるって事なのか?」
「悠弥でいいですよ、俺も十六夜と呼びますし。それとその質問にはYesですね。ただ形式上は主従の関係ですけど実際は対等な関係ですよ?」
「ヘェ〜」
十六夜君はさっきジブリールを見ていた目と同じような目で俺の事を見てくる。
獰猛な目をしている逆廻十六夜。
ジブリールに引いている久遠飛鳥。
我関せず無関心を装う春日部耀。
獰猛な視線をニコニコ受け止める一ノ瀬悠弥。
そんな彼らを物陰から見ているのは十五、六歳ほどのウサ耳の少女。彼女は扇情的なミニスカートとガーターソックスで包んだ美麗な足に豊満な胸を強調するような服。そして幼さを感じるベビーフェイス。彼女の名前は黒ウサギ。その黒ウサギは思う。
(うわぁ......なんか問題児ばっかりみたいですねえ......)
この四人を召喚したのは何を隠そうこの黒ウサギであるのだが、彼らが協力する姿を客観的に見ても想像できない。彼女は陰鬱そうに溜息を吐くのであった。
* * *
「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状にかかれた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」
「...........この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」
「そういう春日部さんもかなり落ち着いてますね」
(貴方も大概です!)
黒ウサギはツッコミをいれる。
もっとパニックになってくれれば飛び出しやすいのだが四人とも落ち着き過ぎており、彼女は出るタイミングを計れないでいた。
(まあ、悩んでいても仕方ないデス。これ以上不満が噴出する前にお腹を括りーーー)
「では、そこに隠れている方にでも説明してもらいましょうか?」
ジブリールは黒ウサギの隠れている物陰に殺気を飛ばしながら言う。
黒ウサギはビクッと飛び跳ねた。
「ジブリール、気づいていたんですか?」
「勿論です♪もし、マスターに攻撃でもしようものなら細胞の一片も残らない程に消し飛ばして差し上げてました」
「うむ、それには同感だな」
「ティアまで.......。俺がそんな簡単に殺られると思ってるんですか?」
「なんだ、お前らも気付いてたのか?」
「あら、貴方も?」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの猫を抱いている奴も気づいてたんだろ?」
「風上に立たれたら嫌でもわかる」
「........へぇ?面白いなお前」
軽薄そうに笑う十六夜君の目は笑っていない。三人は理不尽な招集を受けた腹いせに、二人は主人に害を為す者を排除するために殺気の籠った視線を。最後の一人は同情の視線を黒ウサギに向ける。
黒ウサギはやや怯みながら物陰から出てくる。
「や、やだなぁ御五人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「無理だ」
「だが断る!」
「あっは、とりつくシマもないですね♪」
黒ウサギはバンザーイ、と降参のポーズをとる。だが眼は冷静に値踏みをしていた。
その視線に少しイラっとした悠弥だが、多分呼び出したのは彼女ですし何か理由があるのでしょう、と流す事にした。
そんな思考をしていると春日部さんが出てきた彼女の隣に立って彼女のウサ耳を根っこから鷲掴みし、
「えい」
「フギャ!」
力いっぱい引っ張った。
「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」
「好奇心の為せる業」
「自由にもほどがあります!」
すると十六夜と久遠さんも近づいていき、
「へえ?このウサ耳って本物なのな?」
「........。じゃあ私も」
十六夜は右を久遠さんは左を掴んで引っ張る。
「ちょ、ちょっと待ーーーー!」
黒ウサギは目の前にいる悠弥に視線を向けるが悠弥は黒ウサギに合掌していた。
黒ウサギの顔は絶望に染まり更に強く引っ張られる。彼女の言葉にならない悲鳴が近隣に木霊した。