問題児とドラゴンと天使を従える精霊使いの少年が来るそうですよ? 作:ユンベルク
「...........なんのことです?箱庭の話ならお答えすると約束しましたし、ゲームの事もーーーー」
「違うな。俺が聞いてるのはオマエ達の事.......いや、核心的な聞き方するぜ。黒ウサギ達はどうして俺達を呼び出す必要があったんだ?」
「それは.........言ったとおりです。十六夜さん達にオモシロオカシク過ごしてもらおうとーーーー」
「ああ、そうだな。俺も初めは純粋に好意か、もしくは与り知らない誰かの遊び心で呼び出されたんだと思っていた。俺は大絶賛‘‘暇”の大安売りしていたわけだったし、他の三人も異論が上がらなかったってことは、箱庭に来るだけの理由があったんだろうよ」
あのー、俺神様の身勝手な理由でこの世界に来たんですけど.......などと言えるはずもなく二人の話を黙って聞く。
そう、俺は空気なのです。I am Air !
「だからオマエの事情なんて特に気にかからなかったんだが、なんだかな。俺には、黒ウサギが必死に見える」
その時初めて黒ウサギは瞳が揺らぎ、動揺を顔に出す。
十六夜はこちらに視線を向け『お前も気づいてんだろ?お前も言え』と言ってくる。
「そうですね。箱庭の説明の時、十六夜がコミュニティに入るのを拒否した時の黒ウサギの反応がちょっと過剰でした。それに初対面の時の値踏みする視線。それを踏まえた上で黒ウサギは何か目的があって俺達を呼び出したということになります」
「っ!?」
更に動揺する黒ウサギ。
あ、別にそこまで怒ってませんよ?ちょっとイラっとして消し飛ばそうかな〜とかジブリールに『天撃』撃たせようかな〜とか思ってませんからね!
「これから言うのは俺の推論です。おそらく十六夜も似たようなものだと思うのですが........」
そっと十六夜の方を見ると首肯する。
「黒ウサギのコミュニティは弱小または衰退したコミュニティですね?だから俺達はそれを強化する為に呼び出された。それが初対面での視線と十六夜の言葉を強く否定した理由。更にコミュニティの現状を隠しているのは俺達がそれを聞いて他のコミュニティに行く事を恐れたから。そこから推測するに俺達には他のコミュニティを選ぶ権利がある........こんなところですかね。ちなみにこの現状を話そうとは思っていたのでしょうけどそれを話すのはコミュニティに入った後にしよう!......とかですか?どうです?当たらずとも遠からず、と言ったところでしょ?」
ニッコリ笑って首を傾げて尋ねる。
まあ、確かめるように言ってますがほぼ確信を持って聞いてますからね。
「................」
「沈黙は是也、だぜ黒ウサギ。ここで黙り込んでても状況は悪化するだけだぞ。それとも俺達が他のコミュニティに行ってもいいのか?」
「や、だ、駄目です!いえ、待ってください!」
「なら話してください。黒ウサギのコミュニティの現状。そして俺達をこの世界に呼び出した目的を」
* * *
「.........ふぅん。魔王から誇りと仲間をねえ」
黒ウサギから説明されたコミュニティの現状を簡単に説明すると、
・黒ウサギのコミュニティには‘‘名”と‘‘旗印”が無く‘‘ノーネーム”と呼ばれている。
・コミュニティには十歳以下の子供ばかりでギフトゲームに参加できるだけのギフトを持っている者がいない。
・それは‘‘魔王”という天災によって全て奪われた。
・その‘‘魔王”から奪われた‘‘名”と‘‘旗印”と仲間を取り戻しコミュニティを再建する為に俺達を異世界から召喚した。
その説明が終わると黒ウサギは頭を深く下げて謝罪と懇願をしてくる。それに対しての十六夜は先の言葉で気の無い返事。
ちょ、黒ウサギ肩震わしてますよ?泣きそうですよ?十六夜がもっとちゃんと返事してあげないから!
と他人の所為にしているが悠弥の方もずっと腕を組んで黙りを決め込んでいた。もちろんジブリールやティアは自分の主人の決定に従うだけなので彼女らも同様である。
「いいな、それ」
十六夜は三分間黙り込んだ後に上の言葉を発した。
「....................................は?」
その反応、わかります。ここまで黙り込まれて興味無いような態度と返事された後にこれですもんね。わかりますよ、ええ。
「HA?じゃねぇよ。協力するって言ったんだ。もっと喜べ黒ウサギ」
呆然とする黒ウサギ。十六夜は不機嫌そうに言う。
「え.......あ、あれれ?今の流れってそんな流れでございました?」
「そんな流れだったぜ。それとも俺がいらねえのか?失礼なこと言うと本気で余所行くぞ」
「だ、駄目です駄目です、絶対駄目です!十六夜さんは私達に必要です!」
「素直でよろしい。で、悠弥はどうすんだ?」
「っ!......そ、その黒ウサギがこんな事を言うのは御門違いなのは重々承知なのですが悠弥さんは素晴らしいギフトをお持ちです。私達のコミュニティなんかより他のコミュニティに行けば高待遇で受け入れてもらえる事は間違いまりません。ですが!どうか私達にその力を貸してはくれませんか!どんな要求でも受け入れます。ですからどうか!」
そう言って更に頭を下げる黒ウサギ。
え、黙ってて十六夜より返事遅れたら黒ウサギからものすごい勢いでお願いされました。
「ああ、別に怒ってるわけじゃないですよ?少し考え事していただけですから」
「なに考えてたんだよ?」
俺の考え事が黒ウサギ達のコミュニティの事じゃ無いと思ったのか十六夜が聞いてきた。
「いや、その‘‘魔王”となって他の‘‘魔王”を狩りまくるのも面白いな〜って」
「「は?」」
二人は『何言ってんのこの人。頭大丈夫?』という目で俺の事を見てくる。
ああ、こういう反応になるの分かってましたけど実際されるのって結構辛いですね。
「俺は魔王候補なんですよ」
そう言うと二人は驚愕した後それぞれ違う行動をとった。
十六夜はギラギラと獰猛な目で見つめてくる。黒ウサギは咄嗟に距離を取り戦闘態勢に入る。
「そんな露骨に反応されると結構ショックですね。それに候補なだけですし、別に攻撃しようなんて欠片も思ってませんよ。それにそのつもりならこんな風に正体を明かしたりしませんよ」
そう言うと黒ウサギは少し考えた後警戒を解いて近寄ってくる。
「そ、そのスミマセン。失礼な態度を.....」
「別にいいですよ。黒ウサギの反応は間違いじゃないですし」
そう言って黒ウサギの頭を撫でる。
黒ウサギは少しびっくりした後目を細めて少し顔を赤らめながら撫でられてる。
『ちょっと悠弥。何してるの?』
『何してるのですか、ご主人様?』
おっと。俺の中の御二人と背後の御二人のお怒りがハンパないですね。(震え声)
しかも俺だけに向けられていて二人は気づいてませんし。
「それよりどういう意味だ?」
若干空気になりかけた十六夜がさっきの言葉の意味を聞いてくる。
俺は黒ウサギから手を離し少し離れてから左手の甲を二人に向ける。
「その模様は?」
「この刻印は俺が契約している精霊との契約の証のようなものです」
「精霊と契約してるんですか!?」
「で、それと何が関係あるんだよ?」
「ま、とりあえずは彼女を呼び出します」
そう言うと左手の刻印が光り出す。光が収まるとそこには闇色の髪に同じ色のドレスを着たレスティアが立ってた。
「彼女が俺の契約精霊の一人、レスティアです」
「こんにちは」
レスティアがニコリと笑って挨拶する。
「へえ、美少女精霊か。それに『契約精霊の一人』って事は他にもいるんだろ?」
「目敏いですね十六夜。ええ、いますよ。もう一人も紹介します」
そして右手の甲が光り出す。
レスティアの時と同様に光が収まると銀髪のおっとりした学生服にニーソックスの小柄なエストが現れる。
「彼女がもう一人の契約精霊、エストです」
「どうも」
エストは無表情でぺこりと頭を下げる。
「やっぱり悠弥は面白いな!契約精霊なんて初めて見たぜ!」
十六夜はキラキラした目でエストとレスティアを見る。
二人とも俺と手を繋ぎながら全く動じずに立っている。
「で、こいつらが魔王って事なのか?」
「違いますよ。レスティアの方は魔王を覚醒に導く導き手です。彼女はかつて魔王スライマンが使役していた最高位の闇精霊です。なので彼女と契約している俺はまだ魔王に覚醒してませんから魔王候補ってわけです。それとエストは『
「ようするに悠弥は魔王でありながら魔王を滅する役割も担ってるという事か......」
「す、すごいです.......」
おお!二人とも驚いてくれてるようですね!
では更に驚かしてあげましょう。(ゲス顔)
「あと後ろの二人の説明もしますね。まずジブリールは
「なっ!?龍の純血種をですか!?」
箱庭には『最強種』と呼ばれている種族が存在する。生来の神霊・星霊・龍の純血である。
その中の龍の純血は幻獣の頂点にあり系統樹が存在せず「誕生」するのではなくある日突然何の前触れもなく強大な力が集結して形を成し「発生」した種である。龍の純血はいずれも想像を絶する巨躯を誇る。巨龍の力は絶大で彼らにとって「ただ動いただけ」の飛翔は嵐風を起こし全ての生物を天空へ巻き上げ、疾走すれば暴風を、雷雨を、地鳴りを引き起こす。また彼らの鱗の一枚一枚からは巨亀や大蛇などの新種を作り出す。龍の純血種が残す遺骨や遺物は、その存在そのものが強力なギフトとなる。
それほど絶大な力をもつ龍を撃破、しかも単独でなんて箱庭に住んでいるものなら不可能な話であった。
「ええ、それまでに何度も負けましたが」
ジブリールは自慢する事もなく淡々と答える。それに黒ウサギは絶句、十六夜は更にギラギラした目をジブリールに向ける。
「そしてもう一人のティアは
「えっ!?で、でもティアさんは人型ですよ?もしかして亜龍ですか?」
「いや、私は純血の龍だが今は人型になっているだけだ」
「人型になれる龍の純血なんて聞いた事ありません!それにティアさんからは龍の気配が全くーーーー」
「なら、論より証拠です」
そう言うとティアが青く光り出すとその姿を変える。初めて会った時と同じ青と銀色に輝く美しい鱗をしたティアが現れた。
「龍の純血種なのに小さいですね......ですがこの存在感。確かに龍の純血種と遜色ないレベル.....」
「すげえ!本物のドラゴンか!?」
黒ウサギは顎に手を当てブツブツ言っており、十六夜は初めの俺と同じ反応をしている。
「彼女は五大龍王の一角でその実力は相当です」
「龍王.......。カッコいいな!それ!」
「でしょ!」
男二人でキャッキャッと騒ぐ俺達は黒ウサギの考察が終わるまで騒いでいた。
* * *
「て事で俺は黒ウサギのコミュニティに入りますよ。元々行く宛も無いですしね」
「ありがとうございます!悠弥さん達が来てくれたらすぐ再建できるのですよ!」
黒ウサギはピョンピョン跳ね回って嬉しさを表現する。
まあそのせいで彼女の豊満な胸が上下に揺れて眼福ものですね。
「..........むー」
「くっ!」
エストとレスティアは自分の胸に手を当てて黒ウサギを恨めしそうに睨む。
いや、君達まだ成長途中なんで大丈夫ですよ。それに女性の価値はそこだけじゃ無いですし。まあ、精霊が成長するかどうかは別問題ですけど。
「じゃ、蛇神を起こしてギフト貰ってきてください。その後‘‘世界の果て”を見に行って黒ウサギのコミュニティに行きますよ」
そして帰るまでの間に黒ウサギがルールを破れば盛大に爆死するやら、ジブリールが隙を見て襲ってこようとして撃退したり、十六夜の‘‘世界の果て”を見たい理由が感動の補充のためだったり、ジブリールが襲ってきて撃退したり、箱庭の世界の作りを教えてもらったり、後の二人にちゃんと説明する事を約束したり、ジブリールが襲ってきて撃退したりと合流する場所まで帰るのであった。
ていうかジブリールに襲われすぎじゃ無いですか?撃退するたびに『マスターからのお仕置き.......クセになります〜♪』と言っているのを聞いてゾッとしました。