問題児とドラゴンと天使を従える精霊使いの少年が来るそうですよ? 作:ユンベルク
日が暮れた頃、箱庭二一〇五三八〇外門の噴水広場で黒ウサギの怒号が響いていた。
「な、なんでこの短時間に‘‘フォレス・ガロ”のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」「しかもゲームの日取りは明日!?」「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」「準備している時間もお金もありません!」「一体どういう心算があってのことです!」「聞いているのですか三人とも!!」
「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」
「黙らっしゃい!!!」
三人とも綺麗にハモりましたね。
さて、今怒られているのは春日部さん、久遠さん、そして俺達が入る‘‘ノーネーム”のリーダーのジン=ラッセル君です。ダボダボのローブを着た十歳ぐらいの少年です。
「別にいいじゃねえか。見境なく選んで喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ」
「い、十六夜さんは面白ければいいと思っているかもしれませんけど、このゲームで得られるものは自己満足だけなんですよ?この‘‘
そういって黒ウサギは契約書類を俺達に見せてくる。
「‘‘
「でも時間さえかければ、彼らの罪は必ず暴かれます。だって肝心の子供達は.........その、」
黒ウサギがその続きの言葉を言い淀む。
子供達というのは‘‘フォレス・ガロ”に人質として捉えられた子供達の事である。人質の子供達はそのコミュニティのリーダーである....ガ.....ガ...ガイル=エスパー!(違う)によって全員殺されているのである。
「そう。人質は既にこの世にいないわ。その点を責め立てれば必ず証拠は出るでしょう。だけどそれには少々時間がかかるのも事実。あの外道を裁くのにそんなに時間をかけたくないの」
久遠さんが語気を強めながら言う。
「それにね、黒ウサギ。私は道徳云々よりも、あの外道が私の活動範囲内で野放しにされることも許せないの。ここで逃がせば、いつかまた狙ってくるに決まってるもの」
「ま、まあ......逃せば厄介かもしれませんけれど」
「僕もガルドを逃がしたくないと思っている。彼のような悪人は野放しにしちゃいけない」
ジン君も同調するように言うと黒ウサギは諦めたように溜息をつき、頷く。
「はぁ〜....。仕方ない人達です。まあいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。‘‘フォレス・ガロ”程度なら悠弥さんか十六夜さんのどちらか一人いれば楽勝でしょう」
その言葉を発した瞬間、久遠さんと十六夜は怪訝そうな顔をして、
「何言ってんだよ。俺達は参加しねえよ?」
「当たり前よ。貴方達なんて参加させないわ」
フン、と鼻を鳴らす二人。
「だ、駄目ですよ!御二人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」
「そういうことじゃねえよ黒ウサギ。いいか?この喧嘩は、コイツらが売った。そしてヤツらが買った。なのに俺達が手を出すのは無粋だって言ってるんだよ」
「あら、分かってるじゃない」
「ちょっ!?悠弥さんも何とか言ってくださいよ〜」
黒ウサギは十六夜達を止めてくれるように悠弥に懇願する。
「んー、別にいいんじゃないですか?こちらにデメリットはありませんし。まあ、メリットもありませんが。それに話を聞くだけじゃたいした事のない唯のデカい畜生猫みたいじゃないですか。本当は俺が思いつく限りのあらゆる拷問をした後に全身の毛皮を剥ぎ、足の先から原子レベルで徐々に切り刻んであげたいですが十六夜の言ってる事も分かりますからね。俺はノータッチでいきますよ」
最後に自分の中でのとびっきりの笑顔をみんなの方に向けるとドン引きしていた。
え?なんでそんなに引いてるんですか?何か変な事言いましたっけ?
あ、俺の笑顔がキモすぎてドン引きしてるんでね、分かります。(泣き声)
ここで悠弥の容姿について少し説明しておこう。
彼自身は自分の容姿は可もなく不可もなくだと思っているのだが周りから見たら十分にイケメンである。整った顔立ちにアッシュブロンドの少し癖のある髪。背も175センチあり優しげな雰囲気を醸し出している。
「あんな素敵な笑顔なのに内容がバイオレンス過ぎて怖いわ」
「........悠弥は怒らせない方がいい」
『お、お嬢。ワシ、あの兄ちゃん怖いわ』
「さ、流石にそれはガルドが可哀想ですね.....」
「あの笑顔であのセリフは似合わなさすぎなのですよ....」
「ヤハハ、俺でもそこまでしないぞ......」
全員がコソコソ喋っていてよく聞き取れない。
「ジブリール、ティア。俺何か変な事言いましたか?」
後ろにいる二人に聞くとティアは苦笑い、ジブリールは笑顔でそれぞれこっちを見ていた。
「いや、大丈夫だ。マスターの言動が過激だっただけだ」
「やはり私のマスターは最高でございますね♪いつでもマスターのお力になりますのでご遠慮なく申しつけてくださいませ」
「?.....まあ、そうですね。子供達を殺すようなクソ外道は嫌いですから少し口が悪くなったのかもしれませんね」
(((((((少しのレベルじゃねえ!!!)))))))
ジブリールと悠弥以外のメンバーの心の声が一致した瞬間だった。
* * *
その後、黒ウサギが久遠さんと春日部さんに謝罪したが、既にガモス=ヘクター(違う)に聞いていたのだと言う。
二人ともそこまで怒ってなかったみたいですね。
「それじゃあ今日はコミュニティへ帰る?」
「あ、ジン坊っちゃんは先にお帰りください。ギフトゲームが明日なら‘‘サウザンドアイズ”に皆さんのギフト鑑定をお願いしないと。この水樹の事もありますし」
「‘‘サウザンドアイズ”?コミュニティの名前か?」
「Yes。‘‘サウザンドアイズ”は特殊な‘‘瞳”のギフトを持つ者達の群体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」
「ギフトの鑑定というのは?」
「勿論、ギフトの秘めた力や起源などを鑑定する事デス。自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の出処は気になるでしょう?」
同意を求める黒ウサギに俺以外の三人が複雑な表情をする。
俺はほとんど分かってるからいらないんですけどね。でも‘‘サウザンドアイズ”には興味がありますね。超巨大商業コミュニティなんて面白そうですからね!
黒ウサギの提案に誰も拒否の意見を出さなかったので、黒ウサギ・十六夜・久遠さん・春日部さん・ジブリール・ティア・俺の七人と春日部さんの三毛猫の一匹は‘‘サウザンドアイズ”へ向かった。
* * *
商店へ向かう通りは石造で綺麗に整備されており、傍の街路樹は桃色の花を散らしながら新芽と青葉が生え始めている。それを久遠さんが不思議そうに見ながら呟いた。
「桜の木.......ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」
それに十六夜と春日部さんが反応する。
「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合の入った桜が残っていていもおかしくはないだろ」
「.........?今は秋だったと思うけど」
「「「.......ん?」」」
全く話が噛み合わない三人は顔を見合わせて首を傾げる。それを見て黒ウサギは笑って説明した。
「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」
「それはパラレルワールドとか言うやつですか?」
「近しいです、悠弥さん。正しくはーーーー」
「正しくは立体交差並行世界論といいます。要約すると『異なる事象が時間平行線で起きているのに、結果が収束する点』でございます。さらに詳しく話すとなると二、三日必要になりそうでございます」
「!ジブリールさんは知っていたのでございますね」
黒ウサギのセリフを横から奪う形でジブリールが説明する。
流石は
「マスターさえ良ければ私が手取り足取りナニ取り三日間かけてじっくりと、エヘエヘ、ジュル」
今のジブリールは瞳孔が軽く開き、手をワキワキさせ、ヨダレを垂らしながらハァハァと息荒く俺に迫ってきている。
「せっかく褒めてやろうと思いましたが、やっぱり腐れクソ天使悪魔ですね。とりあえず死んでください」
俺は絶対零度の視線でジブリールを見る。その視線を受けてもなお、俺に詰め寄ってくる
これ以上何を言っても意味がないのでアイアンクローをした状態で引きずっていく。
イタタタタ!?あ、頭がぁ〜!?と聞こえてきているが幻聴でしょう、うん。絶対そう。
「あ、あそこが‘‘サウザンドアイズ”の商店です!」
黒ウサギが無理矢理空気を変えるために大きな声を出しながら指をさす。
そこには蒼い生地に互いが向かい合う二人の女神像が記された旗を掲げている店がある。
その店の前で日が暮れてきたので看板を下げる割烹着の女性店員がいる。
彼女に黒ウサギが滑り込みでストップを、
「まっ」
「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」
かける事すらできなかった。
まさに、悪・即・◯!のスピードですね。あの女性店員さん牙◯できますかね?
その対応が気に食わなかったのか久遠さんが皮肉を言う。
「なんて商売っ気のない店なのかしら」
「ま、全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」
あー、ありますよね。閉店までまだ少し時間あるのに『すみません。そろそろ閉店時間なので.......』と言ってくる店員さん。その時の店員さんが可愛くて物凄く申し訳無さそうに上目遣いで言われたからさっき入ったばかりなのに『あ、ハイ』って出て行っちゃいましたよ。(作者の近況)
「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切出入りを禁じます。出禁です」
「出禁!?これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ!?」
キャーキャーと喚く黒ウサギ。それに対して女性店員は冷めたような眼と侮蔑を込めた声で対応する。
「なるほど、‘‘箱庭の貴族”である黒ウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」
「.........う」
入店許可とかあるんですねー。もしかして一見さんお断り的な何かでしょうか?
ていうか何を言い渋ってるんですか?‘‘ノーネーム”だっていえばーーーー
「俺達は‘‘ノーネーム”ってコミュニティなんだが」
十六夜は何の躊躇いもなく名乗る。
「ほほう。ではどこの‘‘ノーネーム”様でしょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか」
更にぐ、っと黙り込む黒ウサギ。
なるほど。‘‘名”と‘‘旗印”がない障害はこんな感じなんですね。
ま、黒ウサギ達には悪いですけどこの対応は普通ですよね。店側としては名前も分からないしどんな人かも分からないような人に自分とこの商品を売ってそれに悪評を流されたら最悪ですもんね。さらに『超』巨大商業コミュニティとなると名前がブランド。箱庭では旗印もですね。それに傷が付くような事は極力避ける。だから客を選ぶ。当たり前の対策です。
ここにいる全員の視線が黒ウサギに集中する。黒ウサギは心底悔しそうな顔をして、小声で呟いた。
「その.........あの..........私達に、旗はありまs」
「いぃぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギイィィィィ!」
「きゃあーーーーー...........」
黒ウサギは店内から爆走してくる着物風の服を着た真っ白い髪の少女に抱きつかれ、少女と共にクルクルクルクルクと空中四回転半ひねりして街道の向こうにある浅い水路まで吹き飛んだ。
そして遠くなる悲鳴。騒然とする俺達。痛そうに頭を抱える女性店員。この後の展開はどうなるのか!?そして黒ウサギの運命は!?
次回、『黒ウサギ死す!』
「何勝手に死なせてくれちゃってるんでございますか!?」
その叫びと共に黒ウサギにタックルした少女を引き剥がし、頭を掴んで俺の方に投げる黒ウサギ。
くるくると縦回転した少女を受け止めようと思ったが片手にはアイアンクローをし続けて屍のように動かない
流石にあの回転している物体を片手では受け止められないのでーーーー
「よいしょっ」
「ゴハァ!」
踵落としをして地面に叩きつけた。
え、鬼畜?悪魔?何それオイシイノ?
「お、おんし、飛んできた初対面の美少女に踵落としとは何様だ!」
「一ノ瀬悠弥です。よろしくお願いしますね」
微笑みながら首を傾げ自己紹介する。
それを見ていた周りの人達は
((((((行動とのギャップハンパねぇ〜......))))))
と心の声が一致するのであった。
この一連の流れの中で呆気にとられていた久遠さんが思い出したように少女に話しかける。
「貴女はこの店の人?」
「おお、そうだとも。この‘‘サウザンドアイズ”の幹部様で白夜叉様だよご令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年齢のわりに発育のいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」
「オーナー。それでは売り上げが伸びません。ボスが怒ります」
真っ白い髪の少女ーー白夜叉のオッサンみたいなセクハラ発言に冷静なツッコミをする女性店員。
その間に濡れた服やミニスカートを絞りながら水路から黒ウサギが上がってきた。
「うう.......まさか私まで濡れる事になるなんて」
「因果応報......かな」
『お嬢の言う通りや』
悲しげに服を絞る黒ウサギ。
それに対し、白夜叉は濡れた服など全く気にした様子もなく俺達を見回してニヤリと笑った。
「ふふん。お前達が黒ウサギの新しい同士か。異世界の人間が私の元に来たという事は........遂に黒ウサギが私のペットにーーーー」
「なりません!どういう起承転結があってそんなことになるんですか!」
白夜叉の発言にウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。
「まあいい。話があるなら店内で聞こう」
「よろしいのですか?彼らは旗も持たない‘‘ノーネーム”のはず。規定ではーーーー」
「‘‘ノーネーム”だと分かっていながら名を尋ねる、性悪店員に対する詫びだ。身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任を取る。いいから入れてやれ」
む、っと拗ねるような顔をする女性店員。彼女にしてみればルールを守っただけなのだから気を悪くするのは仕方ないだろう。
俺以外は女性店員に睨まれながら先に暖簾をくぐった。
俺は女性店員の方に近づくと嫌悪感を隠しもしない眼でこちらを見てくる。
「.............まだ何か?」
「いえ、気分の悪い思いをさせてしまったので謝罪を、と思いまして」
「.............オーナーが決めた事なのでお気になさらず」
否定はしないんですね、と思い苦笑いが出てしまう。
「次来た時は面白いものを売りに来ますんで、よろしくお願いしますね?」
女性店員に精一杯の笑顔でお願いすると若干顔を赤らめながらそっぽを向きつつ、
「う、うちは‘‘ノーネーム”はお断りですので」
と返事をする。少し吃ったのが恥ずかしかったのか顔を赤くする。(実際は悠弥の笑顔に照れたのだが本人は気づかない)
けど、と続ける女性店員。
「『貴方』になら、考えておく事もない.......事はない........です」
だんだん尻すぼみになる言葉だがちゃんと聞こえてきた。
「ははっ..........一ノ瀬悠弥です」
「は?」
「俺の名前ですよ。貴方じゃなく一ノ瀬悠弥です。考えておいてくれるなら名前ぐらいは覚えておいてくださいね?」
「.............気が向いたら」
素っ気なく返す女性店員にまたも苦笑いをすると、また今度と言って駆け足でみんなのところに戻る。
『...........節操のないご主人様です』
『...........全くね』
と悠弥の契約精霊が呟いたのは悠弥には聞こえなかったのであった。
語りの視点がめちゃくちゃになった気がします。
読みにくいなどがあれば遠慮なく言ってください。
できるだけ訂正します!