問題児とドラゴンと天使を従える精霊使いの少年が来るそうですよ?   作:ユンベルク

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一月振りです。
その割に話は全く進みません。

長いだけです。


7話

 

白夜叉との話を終えて、女性店員さんに‘‘ノーネーム”の居住区画の門が見える所まで案内してもらい別れた。門の前に誰かいるが暗がりでよく見えない。

きっと黒ウサギが言っていた案内してくれる子供なんでしょう。

近づいていくとだんだん姿がはっきりしてきた。割烹着を着た狐耳と二尾を生やした十歳ほどの女の子だ。多分この子が案内してくれるのだろう。俺はその子に声をかけた。

 

「君が‘‘ノーネーム”を案内してくれる子ですか?」

 

俺達が近づいてくるのに気づいた時に狐耳がヒョコんっ!と立ちそこから二尾が忙しなくパタパタと動き何度も深呼吸して緊張しているのが分かった。声をかけてからは更にパタパタと尻尾が動いている。

 

「は、はいっ!私はリリと申します!一ノ瀬悠弥様でございますか!?」

 

「はい。一ノ瀬悠弥です。そして後ろにいる二人がジブリールとティアです。リリ、ですか。よろしくお願いします」

 

俺はできる限り笑いながら手を差し出し握手を求める。後ろでは二人が軽く頭を下げて挨拶する。リリは慌てたように両手で手を握り返してくれる。

ちなみにエストとレスティアには戻ってもらっている。

 

「で、ではこれから案内します。こちらです」

 

リリは未だ二尾をパタパタさせながら案内を始める。一瞬、門を開けるのを戸惑うがすぐに門を開ける。

その瞬間、門の向こうから乾ききった風が吹き抜け、砂塵が舞う。それを防ぐために腕で顔を隠し収まった後、目の前に視線を戻し唖然とした。

視界には一面の廃墟が広がっていた。

美しく整備されていたはずの白地の街路は砂に埋もれ、木造の建物は軒並み腐って倒れ落ちている。要所で使われていた鉄筋や針金は錆に蝕まれて折れ曲がり、街路樹は石碑のように薄白く枯れて放置されていた。

リリは辛そうな顔をしてその景色を見ている。さっきまで忙しなく動いていた尻尾もしな垂れている。

 

「........リリ。魔王とのゲームは何百年前の話ですか?」

 

「さ、三年前です」

 

この完全に風化しきった街並みが僅か三年前?あり得ない。あり得るわけがない。

こんな何百年もの時間をかけて風化したような崩れ方を三年でするわけがない。

 

「......ジブリール」

 

「はい」

 

俺が声をかけると近くにあった木材を手にとる。その瞬間に木材はパラパラと崩れる。

 

「どう見ても僅か三年でこのような事になるのはあり得ません」

 

「......リリ。これを魔王がしたと?」

 

ジブリールの分析を聞いて俺はリリに問う。

リリは耳も尻尾も先ほどの元気はなく項垂れている。

 

「.......はい。黒ウサギのお姉ちゃん曰く魔王が二度と逆らえないように力の誇示として残していったのだろう、と」

 

「...........そうですか」

 

リリの表情から嘘を言ってるようには見えないので彼女の言ってる事は本当なのだろう。

それにしてもこれだけの力を持つ魔王.........相当な実力であるのは間違いないようですね。これは気合いを入れ直さないと。

俺は未だ俯いているリリの肩を叩く。すると彼女はパッと顔を上げる。

 

「早くみんなのいるところに行きましょう」

 

ここで「大丈夫、心配ない。俺達がなんとかする」と言うのは簡単でしょう。でも、それはこれ程の力を持つ魔王を経験したリリ達には簡単には言えない。言ってはいけない。それを言うのはもっと実力を示してからです。だからといって弱気になるのとは違いますけどね。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

門から一刻ほど歩いてやっと‘‘ノーネーム”の屋敷についた。月明かりのシルエットで浮き彫りになる本拠はホテルのような巨大さだった。

 

「すごく大きいですね........掃除とか大変じゃないですか?」

 

「いえ!子供達が手分けしてやっているのでそこまでじゃないですよ」

 

ヒョコんっ!と狐耳を立たせて言うリリ。

ここに来るまでの間、いろんな事を話して少しは仲良くなれたようで話す時にオドオドしなくなった。

視線を屋敷の脇にある別館に向ける。

 

「あそこも誰か住んでるんですか?」

 

「あそこは子供達の館です。一二〇人の子供に寝泊りしてます」

 

へえ。と返事をして屋敷に入る。

 

「あ、そういえばみんなはどうしてるんですか?」

 

聞いていなかった他のメンバーの状況をたずねる。

 

「確か、女性陣の方は湯殿へ。十六夜様はどこかへ向かわれました」

 

「なるほど、わかりました。部屋割りとかは決まってますか?」

 

「いえ。特に決まってないので好きなお部屋をお使いください」

 

「わかりました。わざわざ案内ありがとうございました」

 

「いえ!では私はこれで!」

 

手をブンブン胸の前で振った後、勢いよく頭を下げて何処かにパタパタと走っていく。

 

「とりあえず部屋を決めに行きましょうか」

 

「マスター。私達もマスターと同じ部屋なのか?」

 

「部屋の数も広さも分からないのでなんとも言えませんがあまり無駄に使うのも気が引けますからね。出来るだけ同じにしようかと思ってます。いざとなればギフトカードに入ればいいだけですし」

 

ティアの質問に今思っている事を話す。

でも、これぐらい大きな屋敷なら部屋もそれなりに広いと思うんですけどね。

 

「マスターと同じ部屋でございますか!?やりました!これで好きな時に好きなだけマスターの観察ができるのでございますね!?」

 

「クソ変態野郎の入室は許可してませんので違う部屋でお願いします。むしろ外で」

 

「すいませんごめんなさい冗談でございます。なので何卒ご慈悲を!マスター成分が欠乏して禿げてしまいます!!」

 

ジブリールは肩をグワングワンと揺らしながら涙ながらに懇願してくる。

ちょ、やば。てか首!首もげますから!!

 

「落ち着けジブリール。マスターの顔が真っ青になってきているぞ」

 

「おっと。興奮してしまいました。申し訳ございません。ですが!それほどの事なのでございます!お分りいただけましたか!?」

 

「あ、はい。分かりましたから。もうホント分かったっす。はい」

 

片手で口元を抑えながら反対の手をグイグイ迫ってくるジブリールに向ける。

もうやめて。これ以上俺を虐めないでください!

すると向こうの廊下を十六夜を引き摺ったジンくんが歩いていた。

 

「十六夜、ジンくん」

 

「おう、悠弥。帰ってきたか」

 

「悠弥さん!」

 

十六夜は引き摺られながら片手を上げて声をかけ、ジンくんは振り返り頭を下げる。だが二人の態勢は変わらない。

 

「何してるんですか?」

 

「丁度いい。悠弥も来てくれ」

 

「?.....わかりました。ジブリール、ティア。適当に部屋を選んでおいてください。後は自由にしていて構いませんから」

 

二人がそれぞれ返事をして離れて行った後、俺は二人に付いていった。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

最上階の大広間まで来た。その道中に十六夜からさっきあった事を粗方聞いたので、部屋に付いた瞬間のジンくんの大声に然程驚く事は無かった。

 

「どういうつもりですか!?」

 

「‘‘打倒魔王”が‘‘打倒全ての魔王とその関係者”になっただけだろ。‘‘魔王にお困りの方、ジン=ラッセルまでご連絡ください”ーーーキャッチフレーズはこんなところか?」

 

「全然笑えませんし笑い事じゃありません!魔王の力はこのコミュニティの入口を見て理解できたでしょう!?」

 

「勿論。あんな面白そうな力を持った奴とゲームで戦えるなんて最高じゃねえか」

 

「お、面白そう?では十六夜さんは自分の趣味の為にコミュニティを滅亡においy「ストップです。ジンくん」....悠弥さん」

 

今まで二人のやりとりを静観していた俺の止める声に少し落ち着いたジンくん。

 

「十六夜。もう少し言い方を考えて下さい。自分で気付かせてあげるのも大事ですが、少し今の言い方は不謹慎ですよ」

 

「なんだよ、もう気づいてたのか」

 

「気付かせる?」

 

俺の言葉に十六夜は感心半分不貞腐れ半分の態度である。ジンくんは俺や十六夜の意図を掴めないで困惑した顔になりさっきまでの怒りが無くなっていた。

 

「ジンくん。十六夜の考えは今のコミュニティの状況を合理的且つ最短で打破する為のものです」

 

「ど、何処がですか!十六夜さんは自分の娯楽の為だけにコミュニティを危機に晒し陥れるような言動をした!!魔王を倒すためのコミュニティなんて馬鹿げた宣誓を!そんな宣誓が流布されたら最後、魔王とのゲームは不可避になるんですよ!?そのことを分かった上で悠弥さんは十六夜さんの考えを支持するんですか!?」

 

十一歳の少年の悲痛な叫びが大広間に響き渡る。拳を壁に強く叩きつけ、視線に憤怒を込め悠弥を睨む。そんな視線を受けても悠弥は眉一つ動かさずに至極真面目な顔で真正面から正直に答える。

 

「そうです。今考え得る作戦の中で十六夜の考えが最高であり最短です」

 

その言葉を聞いてジンは悠弥と十六夜を今すぐコミュニティから追い出さなけばと思考する。黒ウサギにお墨付きを貰えるほどの実力者である二人であるが、そんな危険な考えならコミュニティに迎える事は出来ない。

そう思っているジンに悠弥は言葉を続ける。

 

「では聞きますが、ジンくんは俺達を呼び出した後はどうやって魔王を倒すつもりだったんですか?俺もあの廃墟を見てきました。あれ程の力を持つ者や白夜叉のような実力者を‘‘魔王”と呼ぶんでしょう?」

 

「まず.......水源を確保するつもりでした。新しい人材と作戦を的確に組めば、水神クラスは無理でも水を確保する方法はありましたから。けどそれに関しては十六夜さんが想像以上の成果を上げてくれたので素直に感謝しています」

 

「おう、感謝しつくせ」

 

ケラケラと笑う十六夜は背もたれに踏ん反りかえるようにもたれかかっている。それを無視してジンくんは続ける。

 

「ギフトゲームを堅実にクリアしていけばコミュニティは必ず強くなります。たとえ力のない同士を呼び出されたとしても、力を合わせればコミュニティは大きくできます。ましてやこれだけ才有る方々が揃えばどんなギフトゲームにも対抗できたはず」

 

そこでジンは言葉を止める。ここで彼の考えは終わりなのだろう。

悠弥はため息を吐いた後にジンへと声をかける。

 

「ジンくん。俺が聞いたのはどうやって魔王に勝つか(・・・・・・)なんですけど?」

 

「え?」

 

「今ジンくんの言ったのは大前提の話でそんなものは作戦でも何でもないです。それに今の言い方だと『前のコミュニティではギフトゲームに参加して力は付けていなかった』という風に解釈出来るんですけど?」

 

「そ、それは」

 

「それにコミュニティが大きくなったのはギフトゲームだけのおかげですか?」

 

「........。いえ」

 

ここで俺は十六夜に視線を向けて話の続きを託す事にした。そもそもこの作戦は十六夜が考えたものなので十六夜の口から説明するべきである。俺がしたかったのはジンくんを落ち着かせて話を聞く姿勢にしたかったのである。

 

「俺達には名前も旗印も無い。コミュニティを象徴出来る物が何一つないわけだ。これじゃコミュニティの存在は口コミでも広まりようがない。だからこそ俺達を呼んだんだろう?」

 

「...........」

 

完全に聞く態勢に入ってくれたみたいですね、良かったです。何だかんだで十六夜もちゃんと説明するみたいだったし余計なお世話だったみたいですけど。

 

「今のままじゃ物を売買するときに、無記名でサインするのと大して変わらねえ。‘‘サウザウンドアイズ”が‘‘ノーネーム”を客として扱わなかったのは当然だろうよ。‘‘ノーネーム”ってのは所詮、名前の無いその他大勢でしかない。だから信用すると危険なんだ。そのハンディキャップを背負ったまま、お前は先代のコミュニティを超えなきゃいけないんだぜ?」

 

「先代を.....超える.......!?」

 

ジンくんはその言葉に呆然とした様に言葉を紡ぐ。

いきなり十一歳の子供に百人余の命を背負わせてしまった弊害でしょうね。現実から目を逸らしたくなるのも分かります。

 

「その様子だと、ホントに何も考えてなかったんだなオマエ」

 

「...っ」

 

様々な感情で顔を俯かせているジンくんに十六夜は立ち上がり近づく。そして彼の肩を力強く握りしめて悪戯っぽく笑い、

 

「名も旗もないのなると他にはもう、リーダーの名前を売り込むしかないよな?」

 

ハッと顔を上げるジンくん。

やっと十六夜の考えに気づいたみたいですね。

そこからも十六夜が作戦を説明する。ジンくんは十六夜の事を先程とは違った視線で見つめ直し、その作戦について真剣に考え始める。

 

「今のコミュニティに足りないのは人材だ。俺並みとは贅沢言わないが俺の足元並みは欲しい。けど伸るか反るかは御チビ次第。他にカッコいい作戦があるなら、協力は惜しまんぜ?」

 

作戦を全て話した後に十六夜はニヤニヤと笑いながらジンくんに問いかける。

 

「一つだけ条件があります。今度開かれる‘‘サウザウンドアイズ”のギフトゲームに、十六夜さん一人で参加してもらっていいですか?」

 

ん?それって.....

 

「なんだ?俺の力を見せろってことか?」

 

「それもあります。ですが理由はもう一つあります。このゲームには僕らが取り戻さななければならない、もう一つの大事な物が出品される」

 

あ、それ完璧俺が出るギフトゲームですね。

 

「まさか.....昔の仲間か?」

 

「はい。それもただの仲間ではありません。m「元・魔王だった仲間ですよ」...はい、って!何で悠弥さんが知ってるんですか!?」

 

ジンくんは相当驚いた顔をしていて相当マヌケですね。ププッ!

 

「白夜叉にそのゲームに出るように言われましたからね。そのゲーム、俺も出ますよ」

 

「悠弥も出るんなら盤石だな。余程の事がない限りは勝てる。それにしても元・魔王様が昔の仲間か。コレの意味する事は多いぜ?」

 

「は、はい。お察しの通り、先代のコミュニティは魔王と戦って勝利した経験があります」

 

「そして魔王を隷属させたコミュニティでさえ滅せる仮称・超魔王とも呼べる超素敵ネーミングな奴も存在している、と」

 

「そ、そんなネーミングで呼ばれていません。魔王にも力関係はありますし、十人十色です。白夜叉様も‘‘主催者権限”を持っていますが、今はもう魔王とは呼ばれていません。魔王とはあくまで‘‘主催者権限”を悪用する者達の事ですから」

 

なるほど。主催者権限を所持=魔王という訳じゃ無いんですね。

 

「ゲームの主催は‘‘サウザウンドアイズ”の幹部の一人らしいです。ジンくん達のコミュニティを倒した魔王からなんらかのルートで手に入れたんでしょうね」

 

「僕もそう思います。相手は商業コミュニティですし、金品で手を打てればよかったのですが......」

 

「貧乏は辛いってことか。とにかく俺達はその元・魔王様の仲間を取り戻せばいいんだな?」

 

「はい。それが出来れば対魔王の準備も可能になりますし、僕も十六夜さんの作戦を支持します。ですから黒ウサギにはまだ内密に....」

 

「あいよ」

 

「わかりました」

 

十六夜が席を立つ。俺もそれに続いて大広間から出るために扉の方へと向かう。そこで十六夜がふと閃いたようにジンくんに声をかけた。

 

「明日のゲーム負けるなよ」

 

「はい。ありがとうございます」

 

十六夜にしては珍しい。そんな事言うようなキャラじゃnーーーー

 

「負けたら俺、コミュニティを抜けるから」

 

「はい。.........え?」

 

無いですよね。うん、わかってましたよ。確かに足掛かりとして明日のゲームは確実に勝たないといけませんが脅しが過ぎるでしょう。ジンくん固まってるじゃないですか。

俺は苦笑いをしながら十六夜と一緒にその場を後にする。その後十六夜と別れて部屋に向かうが、

 

「あ、部屋わからないんでした」

 

その後一時間ほどウロウロしてティアに見つけてもらって部屋に連れていってもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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