「いやーこうも自然だらけってのは気持ちがイイもんだ」
現在垣根が歩いているのは人里から紅魔館までの道である
周囲は学園都市では見ることができないほどの自然が広がっていた
一応学園都市にも景観維持の観点から植物庭園などの施設は存在するが
やはり本物の自然と比べると見劣りしてしまうのは否めない
「こう、マイナスイオンっつーか綺麗な空気っつーか
これだけのモン学園都市じゃ味わえねぇよな」
時間は少し遡り、昨日射命丸と別れ二度寝した後のことである
「さて、見てみっか」
借家に戻り、先ほど射命丸から受け取った招待状の封を破り中の手紙を取り出す
(…微かだが血の匂いがしやがる、こりゃ行くっつったのは失敗か?)
「ふんふん…長ったらしく書いてあるが、用は晩餐に招待しますってことか」
(俺が晩餐ってオチじゃねぇだろうな…多少情報を集めとくか)
紅魔館は考えていたよりも物騒な場所らしいということが分かり
人里で情報収集をし、紅魔館へと向かうことにしたのであった
そして現在へと時間は戻る
「にしても吸血鬼ねぇ、そんなモンが本当にいるんだな」
人里で収集した情報で最も多かったのが
『紅魔館の主は人を喰らう吸血鬼だ』というものだった
(吸血鬼の弱点といえば十字架だとか流水、後は日光…本物に効くのかね)
そんなことを考えながら歩いていると目の前に霧に覆われている湖を発見した
「これが霧の湖か、文字通りって感じだな」
湖伝いに歩いていけば着くか、と思い歩き出そうとした時
横の茂みから声が聞こえてきた
「ねぇねぇ、やっぱりやめようよ」
「何言ってるのさ!さいきょーのあたいの実力見せてやるんだから!」
その声とともに茂みから女の子が飛び出してくる
(なんだコイツは、ありゃ羽…だよな。それにコイツが飛び出してきた瞬間
明らかに周囲の温度が下がりやがった)
「あたいはチルノ!人間があたいのナワバリに入るとはいい度胸ね!」
「いや、ナワバリなら目印くらい立てとけよ…」
「うるさーい!くらえー!」
「っつ!?、いきなりかよ!」
問答無用とばかりに氷の矢を空中に作り垣根に飛ばしてくる
(水が無ぇ場所から氷を形成しやがった、さしずめ氷の妖精ってか?)
未元物質を発動し純白の翼を出現させる、そのまま翼を振るい氷の矢を叩き落とす
しかし、翼が氷の矢に触れた瞬間に垣根は気づく
(当然だが、超能力の類じゃねぇな。俺が今までに感じたことのねぇ力だ
これが魔法ってやつなのか?)
「なかなかやるわね!ならこれ!凍符『パーフェクトフリーズ』!」
そうチルノが叫ぶとカラーボールのように色鮮やかな弾丸が連射される
「チッ、面倒だっつの!」
対して垣根は先ほどと同じように翼を振るい弾丸を叩き落とそうとする
しかし、翼の射程圏内に入る直前で弾丸が突然停止した
(っつ…あんだけの数の弾丸を瞬間的に凍結させたってのか?
見た目の割にゃ強え力持ってやがるな)
「くらえー!」
チルノの掛け声と共に停止していた弾丸が再び動き出し、垣根に襲いかかる
「チッ!面倒だっつの!」
弾丸を迎撃するため翼を大きく振るい、烈風を発生させる
しかし、ここで垣根にとって予想外の出来事が起こる
「うわあああ~」
発生させた烈風によってチルノが吹き飛んでしまったのだ
「ああ!チルノちゃーん!」
茂みに隠れていたもう一人の妖精らしき人物?も飛んでいったチルノを追っていった
垣根は静かになった湖畔で一人呆れていた
「妖精ってのはああも弱いモンなのか、なんつーか期待はずれだな」
(この分だと人食い吸血鬼とやらもそこまで強ぇ訳じゃないのかね)
再び歩き出し、しばらくすると霧の中に赤い影が見えてくる
「あれが紅魔館か、でけぇ建物だな」
もちろん学園都市に建つビルや研究施設などと比べれば
単純な大きさでは敵わないだろう
しかし、目の前に建つ赤い館には得体の知れない威圧感というものがあった
「さて、入口は…あそこだな」
垣根の眼前には館を取り囲む壁と、大きな門がある
そして門によりかかるような形で一人の人間がいた
(門番…か?ま、こっちは客だ。声掛けてみっか)
門に近づいていくと、門番らしき人物も垣根に気がついたのかこちらへ視線を向ける
(いきなり攻撃されるって事は無えよな…?)
警戒をしつつ歩き、その門番の近くへと向かった
「招待状を貰ったんだが、ここ紅魔館で合ってるよな?」
そう垣根が尋ねると、門番は柔和な笑みを浮かべた
「ええ、お待ちしておりました垣根様」
(いかにも洋風って屋敷の門番がチャイナ服ってどうなんだよ)
整った顔に、華人服とチャイナドレスを足して二で割ったような緑色の服装
腰まであるロングヘアーは対局に赤色をしており、服との色合いが映えている
端的に言えば美人ということなのだが
垣根の視線はスリットから見える脚に向いていた
(脚の筋肉の付き方がどう見ても素人のモンじゃねぇな
こんだけでけぇ屋敷の門番をやってるつーことを考えると当然か?)
「あ、あのーやっぱり脚気になりますか?」
脚に視線を向けたのはほんの少しの時間であり、それも暗部仕込みの観察だ
故に垣根は相手がそれなりの手練なら気づかれることもないと踏んでいた
「うーん、私としては動きやすくていいんですけど
男性に会うたびに目線が向けられるのはちょっと考えものですよね…」
「あ、ああすまねぇな美人だから思わず見とれてた」
「あはは、ありがとうございます」
(流石、っつーべきなんだろうな)
「自己紹介が遅れてしまいましたね、私は紅美鈴
この屋敷…紅魔館の門番をしています」
「おう、俺は垣根帝督…そういやもうご存知だったんだな」
ええ、と薄く笑いを浮かべ答える美鈴
「ちっとばかし早く着きすぎたか?」
「いえいえ、お嬢様からおもてなしをするよう言われていますので
むしろ、ちょうど良い時間ですよ」
「…ッハ、やっぱりそういう趣向なワケだな」
腰を落とし、構えの姿勢をとる美鈴
(お嬢様とやらは人を餌としてしか見てねぇのか…俺も対して変わらねぇか)
「私に勝てないようでは屋敷の中にお通しするわけにはいきません」
「オーケィ、こっちも餌扱いされてムカついてんだ
テメェこそ簡単に壊れてくれるなよ?」
こうして紅魔館に到着した垣根であった
紅魔館には到着しましたが、戦闘は次回に持ち越しとなりました