とらなのVRMMO ~魔法はゲームの中だけなの~   作:戯言紳士

32 / 64
ご愛読ありがとうございます。

24話目にしてようやく、ルビ機能で文字を小さくみせる。呟きを表現出来る事に気が付きまし
た。ちらほらと文字の大きさを変えている方がいたのですが、どうやっているのかが分からなか
ったのですが、これで心の声と呟きの区別が付けられます。
まあ、会話のほとんどは声にしっかりしてるんですけどね。慣らしもかねてちょっとずつ使ってい
こうと思います。

前回のあらすじ。
御剣雪那が仲間に加わった。早速小恋がその犠牲に!羞恥のあまりに暴走して高町家に突っ込んで
しまったぞ!(完)



第24話   6月19日 金曜日②

 高町家到着後もひと騒動あり、先行して行った小恋は道場で待っていたと思われる美由希さんに

取り押さえられていた。

 

「ちょっとトキ君、お父さんから家の道場を使うって聞いたから待ってたんだけど、小恋ちゃんは

 どうして、家の庭を爆走してたの?」

「まあ、若気の至りってやつです。」

「そっか、まだみんな思春期真っ只中だもんね。懐かしいな。」

「それよりも小恋を解放して上げて下さい。たぶん熱も冷めてるし、なんか苦しそうなんで。」

「そうだった。うんしょ..はい。小恋ちゃん大丈夫だった?」

「ケホッ...な、なんとか。御陰で頭も冷えました。」

 

「そか、それで....君が今日トキ君とやるっていう。」

「はい。神咲楠葉と申します。この度は場所を提供下さりありがとうございます。」

「うん。やっぱり神咲家の人って礼儀正しいんだね。那美ちゃんも薫さんも礼儀正しかったもん

 ね。従姉妹だからかな?雰囲気も二人に似てるよね。」

「高町さんは二人を知ってるのですか?」

「うん。那美ちゃんは風芽丘で一緒になってね。薫さんとも何度か剣を交えた事もあるよ。あと、

 楠葉ちゃんも美由希でいいからね。」

「そうだったんですか。」

「小恋ちゃんのお姉さんとも仲良かったんだよ。一緒に遊んだりしてね。本当に懐かしいな。」

 

「美由希さん。思い出に浸る前にもう一人いるんで紹介していいですか?」

「おっと、ごめんごめん。それで..あぁその子だね。気配の消し方が上手いね。」

「やはり気付かれるのですね。失礼しました。私は御剣雪那と申します。刻也くんと小恋さんと同

 じ2年生です。本日は無理を言って付いて来てしまったのですが..。」

「当人が許可してるなら私は何も言わないよ。トキ君の友達なら悪い子じゃないんだし。」

「ありがとうございます。」

 

 一通りの挨拶を終えて、いよいよお互い準備に入る。楠葉先輩は道場で着替えるので、俺は元自

室まで行き、いつも鍛錬の時に来ているジャージに着替えた。

 そして再び道場へと戻ると同じくジャージ姿で準備運動をしている所だった。端には小恋と雪那

がその様子をお互い話をするわけでもなく見ていた。

 

「おっ、トキ君も来たね。使うのはこれで良いよね?」

「はい。問題ないです。」

 

 美由希さんから受け取ったのは、いつも使ってる小太刀サイズの木刀2本。その内の1本は腰に

巻いている小太刀を収める為に作られたホルダーに収め、俺も準備運動を始める。

 

 お互いに集中して気持ちを高めていき、道場には俺と楠葉先輩の闘気が充満し、ピリピリとした

心地の良い緊張感に包まれていく。

 

 準備運動を終えた俺は、木刀を片手に持ち、定められた型通りに身体を動かし木刀を振るう。想

像通りに動けているし、木刀も振れている。コンディションは悪くない。

 一通りの型を終え最後に、手にしていた木刀も腰のホルダーに収め、少し溜めを作ってから2本

同時に抜刀してイメージ上の先輩へと振るう。

 

 これも問題ないと判断し、今回審判も務めてくれる事になった美由希さんに、いつでも良いと告

げた。それに呼応するように、楠葉先輩も準備が出来たと告げた。

 

 そして、お互い距離をあけ対峙する。いよいよ開戦だ。

 

「お互いに準備は良いね。勝敗の判定は、己で負けを認めるか、私がこれ以上の継続は無理と判断

 して止めるまで。あとは自由に、武士道精神に則った試合を心掛けるように。では――。」

 

始め!!

 

 美由希さんの掛け声と同時に先手を取ったのは、楠葉先輩だった。先輩の手にしているのは、普

通の木刀よりも少し長めの木刀が1本。対して俺は様子見もあり小太刀サイズの木刀1本。

 その木刀を構え真正面から斬りかかってきた。向こうも勿論様子見だろうし、これが真面に当た

るだなんて思っていない。

 これに俺がどう対処するかというのを試しているに違いない。加えて事前に特注品でっという情

報を俺に与えているので、それを含めての事だ。

 

 まだ本気ではないにしろ、一息でここまで接近する脚力は大したモノだと言える。さて、いよい

よ木刀が振り下ろされるという場面な訳だが、まずは剣を合わせなければ分からない事もあるよな

っという事で、あえて正面から受け止めてみる事にした。

 

ガキン!

 

 ふむ、女性にしては中々の筋力だな。太刀筋は綺麗に洗礼されているし、元々の才能もあるだろ

うけど、自身にも相当厳しく修練を重ねてきたのだろう。

 

「まさか、正面から受け止めるなんて。事前に情報も与えたのになんで?」

「受けてみないと分からない事ってあるじゃないですか。それに初撃から折に来るなんて無いと判

 断したまでです。とても綺麗な太刀筋でしたよ。」

「そう...ありがとう。」

 

「それじゃあ、次は俺から行きますね。」

「次からは、わざわざ宣言しなくてもいいよ。」

「勿論です。では――。」

 

 再び開いた距離を一瞬で埋める。俺もまだ全力という訳ではないので、当然の様に先輩は俺に反

応して受けの体勢に入っている。徹はまだいい。貫はまだ先輩の事を把握し切れてないので完璧に

は無理。斬はこの戦闘には必要ない。結果、純粋に先ほどの先輩の様に振り下ろす事にする。

 

カン!!

 

 俺の振り下ろした木刀は先輩に受け止められてしまった。でも、これで終わりじゃありませんか

らね?

 受け止められたと感じ取った直後に、俺は身を屈め足払いを仕掛ける。受け止められる際に重心

を偏らせる様に仕掛けたので、不意を突かれた先輩の体勢を崩すことに成功したが、その後にリカ

バリーが早く追撃とまでは至らなかった。

 

「流れで足技使いましたけど、構いませんよね?」

「もちろん。今のはちょっと不意を突かれたけど、もう同じ手は食わないからね。」

 

「そうでなくちゃ、遣り甲斐がありませんから――っね!」

 

 会話中は攻撃しないなんて決まりもないので、立て続けに攻め立てる。上下左右何処をどの様に

責めると楠葉先輩はどの様に対処していくのか。時には攻撃後、次の動作への繋ぎを違和感がない

様に遅れさせ、自分がどのような体勢の場合、どこを狙ってくるのかといった情報を何合も打ち合

う中で、精密に把握していった。

 

 俺が先輩の情報を分析している間も、楠葉先輩が攻勢に出るケースも合ったが、比較的防戦を強

いられていた、かなりのフラストレーションが溜まって来ているのだろう。2,30合程打ち合っ

た当たりから、斬り返しや反撃時に先輩から受ける木刀の重みが増してきた。

 

「――刻也くん。」

「なんですか?――っと。」

「何時になったら、その腰の木刀を抜くのかな?」

「必要に応じて。別に手を抜いている訳じゃないですよ。1本だろうと2本だろうと、無手であろ

 うと臨機応変に対応するように、心掛けているだけなん――で!」

「――でも。二刀流の方が、刻也くんにとって一番しっくり来るんじゃない――っの!」

「そうかもしれません――っね!!」

「だったら。刻也くんの――抜かせてみせるから。もう小手調べは終わり――っね。ここからは私

 本気でいくから!」

 

 いつまでも腰に収めている木刀を抜かずに、木刀1本で相手にしていたから、手を抜いて相手を

されていると思われてしまったようだ。

 楠葉先輩は宣言通りに、剣速も太刀筋の鋭さも格段に良くなった。それでも躱せない程ではなく

しばらくは回避に専念する事にした。

 

 

 それからも先輩の攻勢は続き、俺も掠りはするが未だに木刀1本で対応している。必要に応じて

受け流す様にして、接触時に掛かる負荷を減らしてはいるが、最初の様に正面から受け止めようと

いう気には、もうならない。

 恐らく今の状態で正面から真面に受け止めれば、木刀が持たないと何となく感じられる。

 加えて、いつ頃からか分からないが、気が付けば楠葉先輩の木刀には白い靄の様なモノが纏って

いた。集中して見なければ分からない程度にではあるが、先輩の全身も同じ様な感じになってい

た。

 

 戦闘中にそれが気になってしまったが故に、意図せず俺は隙を作ってしまった。もちろん、それ

に気が付かない楠葉先輩ではない。

 

 僅かに出来た隙に、この対戦で一番の斬撃が振り下ろされた。

 

 俺もその振り下ろされた木刀を素直に受け入れる訳にはいかず、多少強引に身体を動かし、この

一撃を何とか回避する事に成功した。少々背中の筋を痛めたが直撃するよりもマシだ。

 そんな事を思いながら、先輩の追撃を警戒しようとして時だった。

 

「――追の太刀 (はやて)。」

 

 おそらく流派の切り返し技だろう。今までとは一線違う自然な流れで最速の斬撃が襲って来た。

 

 あぁ..これはマジでヤバい。直感で理解した俺はほとんど無意識にもう1本の木刀を抜き、攻撃

とは反対の方向へ跳躍し威力を減らすようにし、2本掛かりで楠葉先輩の斬撃を受け止め吹っ飛ん

だ。

 吹っ飛んでいる間に先輩からの追撃はなかったので、壁に衝突する前に体勢を整え、壁を足場に

着地する事に成功した。

 力の余力がなくなれば壁に立つ事は出来ないし、また先輩の攻撃があるとも限らないので、すぐ

さま壁を蹴り、その場から退避する。

 

「やっと、刻也くんに抜かせる事が出来たよ。」

「俺は...おめでとうございます、と言った方が良いんですか?」

「要らないよ。抜かせる事は出来たけど、まだ一太刀も真面に決まってないもん。」

 

「出来れば、先輩の一撃は受けたくないですね。先輩がその白い靄みたいなのを纏ってから、感じ

 た事のない重圧もありますから。」

「.....もしかして、刻也くん。見えてるの?」

「白い靄の事ですか?集中すれば見えますよ。先輩とその木刀に纏わりついてますよね。」

 

(やっぱり...)(あの時に素質はあるとは思っていたけど...。)そっか..刻也くんには見えるんだね。」

「それが霊気ってやつですか?氣..闘気や剣気じゃ、ありませんし。」

「正解。霊気は生まれ持った素質がないと見る事も出来ないんだけどね。刻也くんには霊気を扱う

 素質があるみたいだね。」

「そうなんですか。」

「刻也くんにその気があるなら今後、霊気の扱い方を教える事も出来るよ?」

「それは、また後で考えさせて頂きます。」

 

「了解。それじゃあ、続きと行きましょう。霊気を用いた神咲一灯流の戦い方を見せてあげる。」

「それでは俺も、今持てる全力で挑ませて頂きます。」

 

 以前に薫さんと対峙した時は感じ取れなかった、霊気という概念。当時中学生1年生だった俺に

は使う必要もなかったのか、それとも俺が感じ取れなかっただけか分からないが、これが本当の神

咲一灯流という事なのだろう。

 

「ちなみに、これまで振るってたのは神咲一刀流。退魔剣術の剣術のみを取り出した古流剣術とし

 て本家が開いてる流派ね。発音は一緒だけど字が違うからややこしいんだけどね。」

 

 俺の心境を感じ取ったかのような先輩からの補足情報。つまり、退魔とか関係のない生活を送っ

ている表用の人達に向けた流派というわけだ。

 つまり、薫さんもあの時は神咲一刀流の方を振るっていたという事だな。もし、また機会がある

ならその時は、神咲一灯流の方で手合せ願いたい。全国を飛び回っているみたいなので難しいと思

うけど...。

 

 

 

 そして再び開戦した楠葉先輩との手合せは、当初のモノとは大分変った展開になっている。

 まずそれ程の射程はないが、先輩が斬りかかる際に剣気..いや、霊気が打ち出される様になっ

た。俗に言う飛ぶ斬撃。ゲームで言うと魔人剣をまさか現実で体験する事になるとは思わなかっ

た。

 その打ち出された霊気自体にどれ程の威力があるのかも未知なため、掠る事も躊躇われ間合い

が取り難い。打ち出す時とそうでない時のモーションも変化がないのが、また面倒。剣が纏って

いる霊気の動きに注視しなければ判断が付かない。

 

 もちろん、俺も防戦一方という事もなく、多少戦法の変化が見られたが、先輩の戦い方、癖と

いうモノを把握出来たので、要所要所で斬撃に全身が痺れる程度の徹を籠め、先輩の防御をすり

抜ける様に確実に斬撃を当てていく。

 霊気を纏う事でどのような効果があるのか、俺には分からないが何合も打ち合う事で確実に効

き始めている。

 

 これまでの疲労に加え、体が重くなり握力も低下してきているのだろう。徐々に鋭さが衰えて

来ている。

 このまま続ければ、木刀を握るのも不可能になり勝敗は決するだろうが、楠葉先輩がこのまま

で終わるはずはない。

 

「ハァ..ハァ...。――刻也くん。どういった技なのか分からないけど、これ以上続けても私が消

 耗して終わると思う。だから次、私の出した技を刻也くんが防いだら、私は負けを認める。だか

 ら、刻也くん。私の全力を受け止めてくれないかな?」

 

「構いません。どんな技だろうと攻略して見せます。」

 

「...カッコいいね。本当に。――それじゃあ、いくよ!」

 

 楠葉先輩の放つ最後の技でこの試合の勝敗が決する。今、先輩の木刀には、今までとは比べられ

ない密度の霊気が集結している。集中せずとも目視出来るレベルで、その重圧は半端ない。

 次の瞬間、木刀に集結した霊気が炎へと変化し、木刀の刀身部分が炎で包まれた。その炎はどう

やら、霊気を扱う素養を持っていない人にも見える様で、今まで黙々と見学していた小恋がこの光

景を見て騒ぎ立てている。

 美由希さんもこれには中断するべきか決めかねている様子だったが、先ほどのこれで終わりにす

るという宣言もあった為、とりあえず事の成り行きを見届けるという感じで、警戒しつつ試合は継

続という事になった。

 

「これから放つのは、"神咲一灯流 真威・楓陣刃"。この霊気の炎"燐光"を纏った刀身から霊気の塊

 を放つ技。人に対しても十分な威力が発揮されるから、気を付けてね。」

 

 気を付けてね...って、加減はしてくれるだろうけど、そんな危険な技を放つのはどうなんです

か?とツッコミを入れたい所だが、霊気の炎―燐光と言ったか..その燐光が放つ重圧で上手く口が

動かない。

 

 楠葉先輩は俺が無言でただ刀身を見ていた様子を見て、受け入れる態勢が出来たと判断したのか

燐光を纏った木刀を振るい、先ほどの説明の通り、俺に向かって高密度の霊気の塊が放たれた。

 

 これは、今までの飛ぶ斬撃とは比べ物にならない。

 これが、楠葉先輩の全身全霊を掛けて放たれた技なんだ。

 

 俺には神速もあるので、今なら回避を選択する事も可能だ。だけどそれでは、先輩の全力を受け

止めた事にはならない。

 正面から真っ向勝負で打ち勝たなければ、これほどの技を放った先輩の意に反する。..と、色々

と建前を述べているが、自称御神の剣士―鏡刻也個人として、ただこの未だかつて見た事もない技

に真っ向から打ち勝ってみたいという気持ちが全身を駆け巡っているだけだ。

 

 こうなると、今まで飛ぶ斬撃を回避のみで対処していた事が悔やまれる。素人目で言ってしまえ

ば、この真威・楓陣刃という技は、飛ぶ斬撃の上位互換だと思う。

 あの時に、もっと情報を仕入れておくべきだった...今そう思っても仕方のない事だが、果たし

てあれは斬れるのだろうか?

 

 こうして思考している間にも、霊気の塊は俺に向かって迫って来る。この土壇場でごちゃごちゃ

と考えているより、ただ愚直に、本能のままに動いた方が俺らしい...そう思った瞬間に、全身に

新たな力が巡るのを感じた。

 これがなんなのか?そんな事はあれを何とかしてからで良い。不思議と今なら、あれを斬れる気

がする。

 

 ――そう感じた時には、もう目前まで斬撃が迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そこまで!!この試合、勝者"鏡刻也"!

 

 

 気が付けば、美由希さんが勝敗が決したとコールしていた。

 もう、先ほど感じた力は身体から抜けている。手にはそこらじゅうに亀裂が走っている木刀の

み。そして、神速を使った後の様な気だるさが身体に残っている。

 

 ――俺はあの後、なにをしたのだろうか?

 

「お疲れ様、刻也くん。」

 

 戦闘の余韻に浸る訳でもなく呆然と立ち尽くしていると、先ほどまで戦っていた楠葉先輩が俺の

直ぐ近くまで来て話しかけてきた。

 

「...はい。先輩もお疲れ様でした。」

「その様子だと、自分が何をしたのか分かってないみたいだね。」

「その通りです。楠葉先輩、俺最後どうやって先輩の技を破ったのですか?」

 

「刻也くんはね、最後に霊気を...違うね、たぶん"神咲無尽流"を使ったんだよ。」

「...俺、神咲流は嗜んでないんですけど?それに無尽流ってなんですか?」

「それは分かってるけど、あれは"神咲無尽流 真威・洸陣刃"だったと思う。それで、無尽流って言

 うのはね―――。」

 

 楠葉先輩から受けた無尽流の説明をかみ砕くと、消霊用に編み出された神咲の秘術らしい。何故

俺がその秘術を使えたのかは不明だが、一灯流よりも消費する霊力が大きい分、攻撃力が高く、消

霊に特化している流派との事だ。

 俺の木刀がボロボロなのは、この流派の特性上普通の武器では耐え切れないため。この無尽流を

自在に扱えるのは霊剣"御架月"だけらしい。他の霊具でも耐えられないらしいので、むしろ木刀が

原型を留めているだけでも、凄い事らしい。

 俺の付け焼刃で放った未熟な技だったからかも知れないけどっと先輩は冗談目に話したけど、間

違いなくその線で間違いないと俺も思う。

 ちなみに、無尽流の真威・洸陣刃とは一灯流の真威・楓陣刃に相当する技で、結構高位な技という

事だ。飛ぶ斬撃も正式名称は弧月と言う技だったらしい。魔人剣ではなかったようだ。

 

「――って感じで、私の放った真威・楓陣刃と、刻也くんがとっさに放った真威・洸陣刃がぶつかり

 合って相殺されたの。」

「なるほど。まだ不明な点がいくつもありますが、大体理解出来ました。」

「そう?でも、流石だね。初めてで、しかも結構な量の霊気を消費したはずなのに、意識もしっか

 りしてるし、立ってられるんだもん。」

「普通は違うんですか?」

「私だって、初めて弧月を放っただけで気を失ったんだから。」

「それは、先輩がまだ幼かったからでは?」

 

「そうk「はい、2人で話すのお終い!一般人の私にも分かる様にさっきの説明して!」そうだ

 ね。この場には小恋ちゃんと雪ちゃんも居たんだったね。」

「出来れば、私にも説明して欲しいな。」

「美由希さんは那美さんから聞いてないんですか?」

「詳しくは聞いてないよ。それに私は素質がなかったから。でも、トキくんが片足突っ込んじゃっ

 たみたいだから、姉弟子としても聞いておかないとね。」

「分かりました。それでは、まず―――。」

 

 その後、試合の疲労は残っているだろうが、先輩は小恋に雪那、美由希さんを加えて解りやすく

中盤から何が合ったのかを説明しながら、霊気と概念を説明していった。

 

 

「なるほど。つまり、刻也も楠葉先輩も人間を止めたって事ですね。」

「阿保か!お前は何をどう聞いていたんだ。400年続いている先輩の流派まで、それで終わらせ

 るつもりか?」

「だって、何もない所から炎を出して、気弾をぶっ放すなんて人間には無理だよ。」

「受け入れろ。先輩は紛れもなく人間だ。」

 

「その言い方では、刻也くんは人間ではないと自白している様に聞こえますね。」

「雪那も小恋と同じ扱いをされたいみたいだな。」

「冗談です。ちょっとは良いかも知れないと思いましたが、それは小恋さんだけの特権の様ですか

 ら。大丈夫ですよ。そこは貴方のポジションです。」

「全然嬉しくないから!」

 

「今のでトキくんの学校での様子が分かったんだけど、真面目な話、トキくんは無尽流っていうか

 霊気の扱い方を学んでいくの?」

「刻也くんにその気があるなら私が教えるよ。」

「教えるって言っても簡単に身に付くものだんですか?」

「それこそ刻也くんの才能次第だけど、一度は使えてるし意外とすぐかも知れないね。」

 

「どうすんの?霊気を学んでチート級の格ゲーキャラ目指す気はあるの?」

「流石、小恋さん。その言い方は称賛に値するかもしれませんね。」

「言い分はこの際スルーするが、まあ、興味はある。けど...。」

「けど?」

 

「今、ゲーム(SLO)する時間が削れれるのは...辛い。」

 

「「「「………。」」」」

 

「そうだったわね。あんたはそういう奴だったわ。」

「予想外の回答でしたが、小恋さんの反応を見る限り本気で言っているみたいですね。」

「トキくん。せめて、もっとオブラートに包んだ方が良かったかな。そりゃあ、なのは達の様子を

 見れば、気持ちは分かるけど。」

「美由希さん、それは刻也を過大評価しています。絶対、あいつ自身がやりたいだけです。」

 

「えっと、それじゃあ、昼休みの時間に教えるのはどうかな?それなら、放課後に影響はでないで

 しょ?」

「確かにそうですけど、それだと先輩の負担が大きいですよね。それに場所も。」

「場所は生徒会室が使えるし、実際に武器を振るう訳じゃないからスペースは十分確保出来るよ。

 それにお昼もそこで食べればいいし、雪ちゃんしか昼休みに生徒会室来ないから。」

 

「必死ですね、会長。それではなにか裏があるのではないかと勘繰られてしまいますよ?」

「えっ嘘!そんな事ないからね。刻也くんが神咲流を使える様になってくれれば、一灯流の奥義の

 練習が出来るなんて、少しも思ってないからね。」

「流石、それでこそ会長です。」

「もう...。という訳で、刻也くんが協力してくれる様になると私も助かるの。だからね?」

 

「私もお父さんも、たぶん恭ちゃんも反対はしないよ。トキくんの好きなようにすれば良いよ。む

 しろ、習得したトキくんにお父さんなんか嬉々として模擬戦を挑んでくるかも。」

「ここまで、楠葉先輩が言ってんだからやりなさいよ。もちろん、私も付いていくから。」

「当たり前の様に付いて行くと宣言するあたり、小恋さんもやりますね。」

 

「分かりました。それじゃあ、これからよろしくお願いします。早く楠葉先輩の力になれる様に、

 頑張ります。」

「うん!よろしくね。月曜日までに刻也くん用の霊具(木刀)も用意するから。」

 

 

 こうして、楠葉先輩との手合せは終了した。

 

 

 その後、楠葉先輩は美由希さんに付き添われシャワーで汗を流し、制服へ着替えて戻って来た。

それを確認し、俺も汗を流すためにシャワーを浴びに行った。

 その間に、美由希さんは楠葉先輩と雪那にも馴染んだようで、戻って来た時には女性4人で姦し

くお喋りをしていた。

 俺が戻ってきた所で、明らかに話題が変わった風に感じたが、突っ込んではいけない。どうせ、

碌な目に合わないのだから。この辺りは年齢に差はあれどなのは達との付き合いで学んだ。

 

 ただ、戻って来てから楠葉先輩と雪那から妙な視線を受けるのは何故だろう?

 それで目が合うと逸らされるんだが...どこか可笑しいのだろうか?

 

「はいはい。トキくんはYシャツのボタンちゃんと締めようね。多感な女の子には刺激的みたいだ

 から。」

「はぁ...。」

 

 別段、鍛錬を終えた後もこんな感じだし、こっちでも同様にシャワーを浴びた後は胸元を開けて

いるが、美由希さんは勿論、桃子さんもなのはですら反応しないというのに...。

 一応指摘された通りに、しっかりとシャツを着ると、まだ顔に火照りが残っているようだが、妙

な視線は感じなくなった。しかし、2人と小恋の反応の違いはなんだ?

 

「なによ?」

「いや、小恋は平気なんだなと思っただけだ。」

「あんた、体育の授業がある時、私が近くに居ても平然と着替えはじめるじゃない。もう慣れたの

 よ。」

「つまり、小恋さんは見慣れるほど、刻也くんの上半身を見ていたと言っています。」

「ちがっ...。ちょっと刻也も距離置かないでよ。てか絶対ワザとやってるでしょ!!」

 

「凄いな、雪ちゃん。今日まで話した事もなかったはずなのに。」

「えっ、あの子ってずっと一緒に居たんじゃないの?」

「はい。私は同じ生徒会なので付き合いは合ったんですけど。」

「今日だけで小恋ちゃんがあそこまで遠慮しないで付き合えるなんて、雪那ちゃんって何者なんだ

 ろう?」

「国が認めている忍者ですよ。」

「そっか..忍者なら人心掌握術も長けてるだろうし、そのせいかな。」

「やっぱり存在は知ってるんですね。」

 

「知り合いにいるk「ちょっと、年配組の2人も呑気に話してないで、雪那を取り押さえて下さい

 よ!刻也はセクハラ怖いって戦力にならないんですから。」年配組って..確かに年上ではあるけ

 ど、その響きは嫌だね。私だってまだ20代なんだから!」

「私なんて1歳しか変わらないんだよ。確かに遠慮は要らないって言ったけど、ちょっと小恋ちゃ

 んとはお話しないといけないかな?」

「ちょっ、なんで2人共、怖い顔して私の方に向かってくるんですか!あっちですよ、あっち!」

 

 

「やはり面白い方ですね、小恋さんは。」

「まあな。こんなやりとりも、この前やった気がするけどな。」

「これが、お笑い業界で言う天丼というやつです。」

「なるほどな。」

「だいたい2回までが鉄則と言われているので、次はどういった切り口で来るのか、今から楽しみ

 ですね。」

「本人の知らない間にハードルだけが上がっていくな。」

「えぇ。ですが、ハードルを上げ過ぎては、気付かずに潜り抜けられる可能性もあるので、気を付

 けなければなりません。」

 

「小恋の奴、大変だな。」

「本当ですね。」

 

「そこの2人。そう思うんなら何とかしてよ!元々は雪那、あんたのせいなんだから!!」

 

「仕方有りません。刻也くんも手伝って下さいね。」

「まだ、気怠いんだけどな...仕方ない。小恋のために一肌脱ぐか。」

「良かったですね。小恋さんのために、刻也くんが脱いでくれるみたいですよ。」

 

「私はそんな事、要求してないから!あれ?楠葉先輩、顔あk――ふがっ。」

 

「これで解決ですね。」

「雪那。後で真面目に謝っとけよ。」

「致し方ありません。後で小恋さんの好きなモノを教えて下さい。一緒に渡します。」

「あぁ、分かった。」

 

 こうして、いつも通りといえばそうなのだが、試合中の雰囲気はどこへやら、和気あいあいな雰

囲気で道場を後にし、3人を駅まで送り解散となった。

 道中、雪那は小恋に謝り許しを得たが、後日翠屋で俺の淹れたミルクティーを奢ると約束させて

いた。何気に俺も巻き込まれているが、まあそれ位の事は喜んでやって上げよう。

 

 

 

 さてと、かなり濃厚な時間を過ごして疲れは残っているが、今日はまだ終わっていない。家に帰

ったら、軽めに夕方の鍛錬をして、その後はSLOへログインだ!

 

 




如何でしたか?

刻也、目には目を霊気には霊気をという感じで、何故か無尽流をぶっ放しました。御架月じゃない
ので木刀はボロボロ状態になってしまいましたが、防いだら勝ちという事なので刻也の勝ちです。

それと、父親が風呂上がりにパンツ一丁で出て来る事に嫌悪感を覚える娘の話は良くありましたが
同級生や気になる男性が風呂上がりに上半身肌蹴てやってきたら、今の女子はどういった態度にな
るのでしょうね?ガン見するのか、恥ずかしがるのか。一番有りえそうなのは写メ撮ってSNSに
流しそうですね。夢も希望もないです。
皆さん、現実の女性に幻想を抱くのは程々にしましょうね。傷付くのは自分ですよ!

次回は、ギルド結成の話になるかな。ギルド名まだ考えていないので、その影響で多少遅れが出る
可能性があります。ご了承下さい。

※今回もスキル説明とステータス更新はありません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告