とらなのVRMMO ~魔法はゲームの中だけなの~   作:戯言紳士

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ご愛読ありがとうございます。

昨晩よりも大分頭痛は治まりました。しかし続く微熱はやっかいですね。一気にガーッと上がって
治まって欲しいです。
その影響が文章に出ているか自分では判断できないのですが、投稿しちゃいます。

前回のあらすじ。
フィアッセ来日。刻也、フィアッセに抱き付かれながら高町家へ。美由希とフィアッセ邂逅。その
後すぐに、翠屋へGO!(完)



第28話   6月20日 土曜日②

 俺は現在、翠屋の制服に身を包んだフィアッセと一緒に厨房で、ランチに出すメニューの下拵え

を終え、開店までの空き時間にスイーツの創作をしている。

 

「トキヤって本当に料理出来たんだね。」

「何?疑ってたわけ?」

「ちょっとね。手紙には書いてあったけど、私の知ってる男の人って家事が全く出来ないから。な

 んか不思議な感じ。」

「でも、男の料理人とかは普通にいるじゃん。」

「身近にはいなかったの。」

「ふーん。よし、こんな感じかな。ほら、ちょっと味見してみてくれ。」

 

 俺が作っているのは、クリームチーズタルト。そのクリームチーズが出来上がったので、小さじ

で掬い試食させる。

 

「――美味しい。クセも強くないし、諄くもないからスーって馴染んで口の中に消えてく感じ。」

「そうか?じゃあ、俺も。」

 

 フィアッセの口にしたさじとは別のモノで掬い、試食する。誰であれ商品となるモノに一度口に

入れたモノで触れるなんて事はしない。

 

「フィアッセの言う通り味は問題ないな。桃子さんにも味を見てもらってくるよ。」

「いってらしゃい。でも、その間私は何をしてればいいのかな?」

「あー。一緒に来るか?」

「うん♪」

 

 そして、クリームチーズを少量小皿に取り分け、桃子さんの下へ持っていこうと思い後ろを振り

返ると、厨房の出入り口でこちらの様子を楽し気に見ている桃子さんと松下チーフが居た。

 居たんなら、声を掛けてくれてもいいと思う。桃子さんの笑顔は今日一番かもしれない。

 

「聞こえてましたよね?試食お願いします。チーフも是非。」

「それじゃあ、頂くわね。あっ、そうそう私の隣にいるのが松下さん。月曜日からここでフィアッ

 セちゃんの面倒を見てくれる人よ。」

「フィアッセです。よろしくお願いします。」

「よろしく。ちなみに喫茶店とか飲食店でのバイト経験は?」

「ないです。」

「了解。それを踏まえてこの土日でどれくらい出来るか判断させてもらうよ。」

「はい。」

 

「それと刻也。これもう少し甘みを出した方が受けが良いと思うけど。」

「そうねぇ。味は綺麗に纏まってるし美味しいけど、もう少し甘さが欲しいわね。」

「あぁ、カロリー抑えて作ったんで甘みが足りませんでしたか。」

「カロリーカットか。これだとどれくらいなんだ?」

「これをタルトにする予定なんですけど、通常がワンカット250カロリーだとしたら、これで作

 ると大体150~180カロリーになると思います。」

「30~40%は減るのね。だったらクリームはこれで、甘みはタルトの生地で補えそうね。」

「そうだな。それでどのくらい作れる量なんだ?」

「大体5,6ホールです。」

「場合によってはお昼の時間だけでなくなりそうね。」

「有りえるな。他に作るモノはないのか?」

「今日はこれだけですね。時間もあまりなかったので。」

「そうよね。それじゃあ、またタルトが出来たら持って来て頂戴。出来と状況次第じゃ、ティータ

 イム用に2,3ホール追加で作ってもらうかもしれないから。」

「了解です。それでは失礼します。」

 

「あっ、フィアッセちゃんはちょっと残ってね。」

「は、はい。」

「それじゃあ、俺は先に戻るから。」

「うん。頑張ってね。」

 

 フィアッセを桃子さんの下へ残し、俺は再び厨房に戻りスイーツ作りを再開した。俺が去った後

でこの様な会話があった事は知る由もない。

 

「それでね、フィアッセちゃん。」

「は、はい。」

「あぁ、そんな畏まらなくて良いわ。さっき聞けなかった事を聞きたいだけだから。」

「えっと...何を?」

「家の№1がどうだったかって事♪」

「はい?」

「諦めろ。こうなった桃子さんは話を聞くまで付きまとう。」

 

「良いじゃない。親睦を深めるためのガールズトークよ。」

「私と桃子さんはガールって歳でもないけどな。」

「まっちゃんは態々醒める事言わないの。」

「業務中はそれ、止めてよ。」

「分かってるわ。」

 

「それで、どうだった?手を繋いで入店して来たんだから何かあったんでしょ?」

「ほう。それは興味深いな。刻也はどんな手口を使ったんだ?」

「何かもどんなも、空港まで迎えに来てくれて、会話をしてお願いを聞いてもらっただけです。年

 下の男の子なのに、気付いたら頼りにしてるし、今まで会った事のないタイプでした。

 ちょっとからかうと面白い反応するのに、仕返しされて今度は私がからかわれたりして、トキヤ

 って不思議な感じ。あと、トキヤが私の歌を褒めてくれた時は凄く嬉しかった。たぶん一番欲し

 かった言葉を言ってくれたからだと思うけど。それに――――。」

「はい、ストップ。もうおなか一杯だから。」

「効果抜群だったみたいね。流石、私が小さい頃から教育していた一番弟子だわ♪」

 

「もういいや。私も持ち場に戻るから。それともうすぐ開店時間だぞ。」

「あらホントね。それじゃあ、フィアッセちゃんもトキ君の所に戻って良いわよ。」

「はい。失礼します。」

 

 

 

 

 

 時刻は13時30分。昼のピークを終えてようやく一息つけるひと時を迎えた。俺達はずっと厨

房で料理を作っていたのだが、思いの外フィアッセの料理スキルのレベルが高く、俺は普段よりも

余裕を持って注文を捌くことが出来た。

 その反面。いくらスキルレベルが高くても普段処理しないレベルで料理を作っていたフィアッセ

の方は疲れた様子だが、それでも洗い物を片付けている。

 

「はーい、お疲れ様♪フィアッセちゃんはもう最前線で戦力になりそうね。」

「そんな...まだまだです。私以上に働いてるトキヤはまだピンピンしてるし。」

「俺はもう慣れてるし今日はフィアッセも居たからな。フィアッセならその内、俺を軽く超えてい

 くと思う。」

「ダメ。全然想像出来ない。」

 

「また、15時あたりから客足が増えるから今の内にフィアッセちゃんは休憩しなさい。」

「分かりました。」

「トキ君はフィアッセちゃんに何か作って上げて。お腹空いてるでしょ?」

「了解です。フィアッセは何が食べたい?」

「えっと...私だけ良いの?トキヤは?」

「言ったろ作ってやるって。それに俺は体力にも自信があるからな。飯もちょくちょく味見してる

 から満たされてる。」

「良いの?モモコ。トキヤつまみ食いしてるって言ってるけど?」

「トキ君はそれ以上の働きをしてくれてるからね。それに今に始まった事じゃないし、厨房スタッ

 フの暗黙の了解ってやつよ。」

 

「残念だったな。ほら何でも良いから食べたい物をリクエストしてみろ。」

「何でもいいんだね。じゃあ、執事様の特製オムライスが良いな♪」

「...桃子さん、翠屋のオムライスってそんな名前だったの?」

「お客さんの間ではそう言われてるみたいね。メニューにはほら、普通にオムライスって書いてあ

 るわよ?」

「本当だ。普通にオムライスって書いてある。...まあいいか。ちょっと待ってろ。直ぐ作る。」

「はーい♪」

 

 慣れた手つきで、直ぐにとろふわ熱々のオムライスを作り上げた。出来上がったオムライスにケ

チャップで"Welcome! 翠屋"とメッセージを書き、フィアッセの下へ持って行った。

 

「ありがと♪メッセージも嬉しいけど、これじゃあ食べるのが勿体ないね。」

「自然にこんな事も出来る様になって桃子さんも嬉しいわ♪」

「そんな事言ってないで食べろよ。あとこれは喉に良いように配合したハーブティーだ。食後にで

 も飲んでくれ。クセは強いかもしれないが、不味くはないはずだ。」

「うん。これもモモコがトキヤに教えたの?」

「違うわよ?これはトキ君が自分で勉強して身に付けたの。」

「珈琲もスイーツも士郎さんと桃子さんには敵わないから、紅茶とかハーブティーなら負けない様

 に技術を磨いたんだよ。」

「ね♪こんなこと言ってくれるのよ。女の子ならときめいちゃうでしょ?さり気ない気遣いも出来

 るし、凄いでしょ?家の№1は。」

「………。」

「まだそんな事言ってるんですか。フィアッセも困惑してるじゃないですか。」

「これは困惑とはちょっと違うんだけどね。」

 

「それじゃあ、私は戻るからこの後もよろしくね。」

「了解です。ほら、フィアッセもいい加減食べないと冷めるぞ?」

「えっ...。そうだね。それじゃあ頂きます。」

 

 

 

 

「トキ君。いつものお客さんがご指名よ。接客の方をお願い。」

 

 フィアッセが食べ始めたのを確認し仕事に戻ったのだが、数分もしない内にさっきフロアへ戻っ

ていった桃子さんの声が聞こえた。

 

「トキヤ。常連になると指名出来るの?」

「そんな訳あるか。なのはとその友達が来たんだ。フィアッセはそのまま休憩してな。まだ食べて

 る途中だろ?」

「あっ。うん。ちょっと冷めちゃったけど、美味しかったよ。」

「そいつはどうも。それじゃあ、いってくるから。」

「いってらっしゃい。」

 

 フィアッセを置いて厨房からフロアへ出ていくと案の定、なのはといつものメンバーが指定席と

化している場所で俺を待っていた。

 

「いらっしゃいませ。お嬢様方。翠屋に指名システムはないって知らないのか?」

「そんな事より、なのはから聞いたよ!」

「住み込みで翠屋で働く新人ってどんな人なんや!」

 

「気になるのは分かるけど、あんた達はもう少し声のボリュームを落としなさい。他のお客さんに

 迷惑でしょうが。」

「それで、刻也さん。その人って綺麗なの?」

「もう落としたんか?」

「どんな事してた人何ですか?」

「年は私達に近いの?それとも刻也より年上?」

 

「一度にみんなで聞いても刻也さんも答えられないよ?」

「フェイトの言う通りよ。一人ひとり聞いて行きなさい!」

 

「じゃあ、私から聞くの!刻也さんが見てその人はどんな人だったの?」

「良い人だと思うぞ。フェイトと桃子さんを足したような感じだ。」

「えっ!私?」

「つまり金髪美人でスタイル抜群で魔性を含んでるわけやな。」

 

「次はアタシ!歳は?私達に近いの?」

「年齢は聞いてないが、俺より上で美由希さんより下だと思う。」

「更に、年上のお姉さん属性が付かされるわけや。」

「さっきから、はやては何を言ってるんだ?」

「いつもの事じゃない。スルーで良いでしょ。」

「それもそうか。」

 

「それじゃあ、私も。何か仕事をしていた人なんですか?それとも大学生?」

「光の歌姫って呼ばれてる歌手だな。今は休業してるみたいだけど。」

「それ本当ですか?」

「本人から聞いたからな。嘘じゃないだろ。」

「私は知らないけど有名なの?」

「お姉ちゃんがSEENAの大ファンなのは知ってると思うけど、そのコンサートに2年前くらいから

 前座で歌ってた人がそう呼ばれてたんだ。」

「てことは海外じゃ結構な有名人って事だね。」

「金髪美人でスタイル抜群で年上で魔性を含んでいて歌姫って、どう攻略したらええねん!」

 

「なるほどね。それでその人は今何してるの?」

「ランチタイム乗り切ったばかりだからな、休憩してる。」

「あぁ...初日に休日の翠屋のランチタイムはきつそうですね。」

「まあ、詳しい話は後で本人にも聞けばいいさ。」

「それはまた心の準備が必要ね。」

 

「あと今日は16時上がりだから。」

「その事はさっき士郎さんから聞きました。」

「SLOの公式サイトで昨日聞いたことの発表もされてました。」

「あと、新規プレイヤー加入前に月曜日から1週間運営主催のイベントをやるみたいだよ。」

「そうか。まあ、その話は後で聞こうか。」

 

「それじゃあ、そろそろご注文の方をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

「「「「「「いつもの!!」」」」」」

 

「かしこまりました。それではしばらくお待ち下さい。」

 

 

 何時までも話している訳には行かないので、キリの良い所で注文を取って厨房まで戻って来た。

 

「お帰りなさい。あの子達がトキヤの言ってた子達だね?」

「見てたんなら分かるだろ?」

「途中からだけどね。綺麗な子達じゃない、やっぱりトキヤは隅に置けないね。」

「何を言ってるんだか。それよりも、人数分のチーズタルト切り分けてくれ。」

 

「それが、あの子達の"いつもの"ってやつなの?」

「それも聞こえてたのか。」

「結構響いてたからね。」

「後でまた注意しないとな。あいつらの"いつもの"は俺の手作りスイーツと紅茶だよ。なのはとア

 リシアって言っても分からないか。髪を結わいている茶髪の子と金髪の双子の活発な方はミルク

 たっぷりで、お淑やかな方とあいつらを取り纏めてるのと紫髪のお淑やかな方がストレートで、

 関西弁の騒がしいのが砂糖入りだ。」

「好みも把握してるんだね。」

「もう長いからな。」

 

「でも"いつもの"って憧れがあるよね。」

「そうなのか?」

「なんか分かりあってるって感じがしない?」

「そういう事か。つまりフィアッセはいつもので通じているなのは達が羨ましいと。」

「あ、憧れるって言っただけで、そんな事は言ってないよ。」

「動揺してるのモロバレだから。フィアッセって自分がからかってる時は自然なのに、掛けられる

 時は分かりやすいな。」

 

「もう知らない!ほら切り分けたから、早く持っていきなよ。あの子達待ってるよ!」

「どうも。まあ、その内フィアッセにも"いつもの"が出来るさ。」

「えっ!?」

「なんならさっきのオムライスを"いつもの"にするか?」

「それは...まだ。他にもトキヤの料理食べてみたいし。」

「料理人冥利に尽きる言葉だな。まあ、俺はまだ学生だし料理人でもないけどさ。」

 

(なんでかな。)(さっきまでの感情がもう和らいでる...。)不思議だね。トキヤは。」

「ん?何がだ?」

「何でもない。それよりも早く持っていこう♪私にもあの子達紹介してよ!」

「はいはい。それじゃあ、タルトの方持って行ってくれ。落とさない様にな!」

 

 

 なのは達の注文の品が出来上がったので、今度はフィアッセを連れてなのは達の所へ行く。今日

初めてフィアッセがフロアへと出る訳だが、やはり目を惹かれるのだろう。

 馴染のお客さんもそうでないお客さんも会話や作業を中断して、フィアッセに注目しているん

じゃないかと錯覚するほどの視線を隣にいる俺も浴びている。

 

「お待たせ致しました。本日のスイーツはクリームチーズのタルトになります。」

「お初にお目に掛かります。本日より翠屋でお手伝いをさせて頂く事になりました。フィアッセと

 申します。以後お見知りおきのほど、よろしくお願い致します。ってこれで良いの?」

「むしろ丁寧過ぎるくらいだな。砕けすぎるのも問題だが丁寧過ぎるのも問題だ。」

「難しいね。」

「まあ、このお嬢様方はお客さんの様でそうでもないから、存分に付き合ってもらうと良い。だけ

 どその前に注文の品をテーブルに乗せないとないけないけどな。」

「そうだった。ごめんね、すぐ並べるから。」

 

「急がなくても大丈夫です。むしろゆっくりやって下さい。」

「えっと...。かしこまりました。」

「あとそこの執事。ちょっとこっち来なさい。」

 

 言われるがままに引っ張られ、フィアッセがタルトを並べている最中に一同はテーブルの隅に集

まった。うん、狭いな。

 

「それで、なんだ?」

「なんでいきなり連れて来るのよ!」

「言いましたよね。心の準備が必要だって。」

「突然、ホールにあんな綺麗な人連れてこられても困るの!」

「また、様になってたから余計に困るよ!」

「でも、凄く綺麗な人ですね。」

「あれはアカンで。ウチらじゃ太刀打ち出来へん!」

「何でさっきから、はやてはフィアッセを倒そうとしてるんだ?」

 

「「「「「「フィアッセ!?」」」」」」

 

「呼びましたか?」

「い、いいえ。何でもないです。」

「?」

 

「そうだった。お前らの声、厨房にも響いてたみたいだぞ。もっと周りの事考えろよ。」

「そんな事より、もう名前で呼んでるの?しかも呼び捨てで!」

「海外じゃ当たり前なんだろ?ファーストネームで呼び合うのは。」

「そうだった。いつの間にかアタシも日本文化に染まってたのかな。」

 

「まあそういう事なら納得するけど。」

「なのはは今日からあの人と一緒に生活するんだよね?」

「そうなの。なんかずっと緊張してしばらく落ち着けそうにないの。」

「話すと結構フランクだし、すぐに仲良くなれるんじゃないか?」

「分かっとらんな。一線を超えた美女相手となると同じ女性でも気後れするんや。」

「そういうもんなのか?俺にはよく分からない世界だな。」

 

「あの...、並べ終えたよ?」

「ありがと。悪かったな全部やらせて。」

「私は別に構わないけど、そっちはもう大丈夫なの?」

「平気だろ?ほら、お前達も自己紹介くらいは出来るだろ?」

 

「女は度胸よ!さあ、一番手なのは。行きなさい!」

「にゃ!私が一番手なの!?」

「当たり前でしょ。あんたが一番長く居る事になるんだから。」

「わ、わかったの!た、高町なのは。私立聖祥大附属中等部3年生です。フィアッセさんの様な綺

 麗な人と一緒に生活出来るなんて光栄です。これからよろしくお願いします。」

「なのは...、その言い方はなんか違うと思うよ。」

「まるで、お見合いでいきなり同棲する事になってテンパっとるみたいな自己紹介やな。」

「にゃ!!ち、違うの。あの...その..えぇーっと。」

「ふふ。ナノハは弄り甲斐が有りそうで面白い子だね♪」

 

「なのはの犠牲を無駄にする訳にはいかないね。みんな続くよ!死ぬなら諸共だ!」

「私、死んだわけじゃないの!」

「あと、死ぬのもあんただけにしなさい。」

「ちょっと、ノリ悪いよ!もう!」

「いいからさくっと済ませましょう。こっちまで注目されてるわ。」

 

「仕方ないなぁ。アタシはアリシア・テスタロッサです!」

「フェイト・テスタロッサです。姉さん共々よろしくお願いします。」

「八神はやてや。絶対フィアッセさんの攻略法を見つけるんで、待っといて下さい。」

「あれは本当に無視してもらって結構です。アリサ・バニングスです。」

「月村すずかです。姉と一緒にSEENAさんのコンサートで貴方の歌を聞きました。御会いできて光

 栄です。」

 

「アリシアとフェイトにハヤテ。アリサとスズカね。トキヤに私の曲を聞かせたのはスズカ?」

「違うぞ。小恋っていう同級生だ。」

「その子も女の子なんだ。」

「そうだけど?」

「どんな子?」

「言いたい事をズバズバ言うと、極度の人見知りだな。」

「矛盾してない?言いたい事は言うのに人見知りなの?」

「言葉が足りなかったな。気を許した相手にはズバズバ言う、極度の人見知り。」

「警戒心の強い猫みたいな感じ?」

「まさにそれ。小恋にぴったりな言葉だ。」

「その子にも会ってみたいな。」

「その内連れて来るよ。なのはとの約束もあるし。」

「楽しみにしてるね♪」

 

 その後は、「もうこれ以上落ちる事はないの」と開き直ったなのはを皮切りに、他のメンバーも

フィアッセと躊躇いはありつつも少しずつ会話をするようになった。

 

「さてと。注文の品は以上でお揃いですね。それでは、ごゆっくりお寛ぎ下さい。ほらフィアッセ

 いい加減業務に戻るぞ。」

「そうだった。ナノハ、また家でお話しようね♪」

「はい!」

 

 

 厨房に戻る頃には、ティータイム突入間際の時間で、すぐに翠屋は混雑し始めた。ランチタイム

と違い、ティータイムは適度にフロアに出て接客もするので、また違った仕事が待っていたが、特

に問題なくフィアッセは接客の仕事も熟していた。

 それでも激務である事は変わりないので、客足が落ち着く時間になると桃子さんに言われるがま

まスタッフルームに戻り、椅子に座り込んでしまった。

 

「お疲れ様。トキ君も時間だから今日はここまでね。フィアッセも疲れたでしょうから家で休んで

 良いわよ。部屋は恭也が使ってた部屋を片付けておいたから、そこを使って。美由紀にもそう伝

 えてあるから、家に戻れば案内してくれるわ。」

「了解です。お疲れ様でした。」

「お、お疲れ様でした。」

「はい。あとトキ君。今日のタルトかなり好評でね。もしかしたらお店のメニューに加えるかも知

 れないから、また今度作って貰える?」

「分かりました。」

「それじゃあ、私は戻るわね。2人共、気を付けて帰るのよ。なのは達もまだ居るから一緒に連れ

 て帰ってくれると助かるわ。」

 

 そう言い残し桃子さんは再度フロアに出ていった。スイーツ作って、料理の仕込みもして開店後

はずっと接客を熟しているのだが、桃子さんは全く疲れを見せないんだよな。

 

「帰りますか。家まで送るよ。着替え終わったら、なのは達の所に来てくれ。」

「うん。わかった。」

 

 相当疲れたのだろう。思えば空港から直で来て働いたようなものだ。時差ボケとかもあるだろう

し結構酷な事をさせてしまったな。.....もうひと働きしてから着替えよう。

 

「はい。俺が淹れたミルクティーだ。疲れが多少和らぐぞ?」

「私のために態々淹れてくれたの?」

「初日から頑張ってくれたからな。当店からお嬢様へのサービスで御座います。」

「ありがとう。優しい執事さん♪―――あぁ...美味しいなぁ。」

 

「...ねぇ、トキヤ。」

「どうした?」

「私やっていけるよね?」

「今日全う出来たじゃないか。」

「それはトキヤが就いてくれてたから。月曜日には私一人で――イタっ!」

「ここには桃子さんやチーフ。他にも頼れる人が沢山いるだろ?」

「ふふ。そうだったね。私がやるって言ったんだもん。ちゃんとしなきゃだよね。」

 

「最初っから完璧にこなせる人間なんていないしな。一人で無理してたら、いずれ限界が来て自滅

 していくだけだ。」

「トキヤにもそんな経験があったの?」

「いや?全然?全くこれっぽっちもないぞ?」

「じゃあ、今の言葉はなんなの?」

「それっぽい事を、それっぽい雰囲気で言っただけだ。」

「トキヤの冗談は分かり難いね。」

「分かり易かったら相手が引っかからないじゃん。」

 

「その通りだね。はぁ...私の方がお姉さんなのにトキヤには敵う気がしないなぁ。」

「バイクの移動中あれだけ弄っといて良く言うな。俺はあの時にフィアッセには敵わないって思い

 知らされたんだけど?」

「立場が逆転しちゃったね。」

「諦めなかった俺の勝ちだな!」

「良いよ。私だって諦めないから。すぐにトキヤに敵わないって思わせてあげる♪」

「勝負だな。」

「勝負だね。」

「俺、言っとくけど負けず嫌いだから。」

「分かってる。でも、私も結構負けず嫌いだから、絶対このままじゃ済まさないよ。」

「楽しみにしてる。」

「その余裕絶対なくして見せるんだからね!」

 

 

「それじゃあ、帰るか。多分なのは達も待ってる。」

「了解。私も着替えたらすぐ行くね。」

 

 

 そして、先に着替えを終えた俺がスタッフルームから出ていくと、「やっぱり若いって良いわ

ね。」と、フロアにいるはずの桃子さんが聞き耳を立てていたらしくそんな事を言って、本日何度

目になるか分からない、今日一番の笑顔で再びフロアに戻っていった。

 

 俺はそのまま、なのは達の所へ行き、フィアッセが加わるまでSLOの話で時間を潰した。

 帰りにアリサの執事の冴島さんに家まで送りますと言われたのだが、歩いて帰るのでと断りを入

れ、なのはとフィアッセを連れて高町家まで徒歩で帰った。

 他のメンバーが車に乗り込む別れ際に、なのはがなにかを言われていたが何だったのだろうか?

監視だの見張りだの聞こえたが気のせいだよな?

 その帰り道では、特に取り上げる様な話題はなく、フィアッセが士郎さんや桃子さん。美由希さ

ん、もちろんなのはの事を、なのはに聞いている間に到着した。

 

「それじゃあ、フィアッセはまた明日な。なのははどうせすぐログインするだろ?」

「もちろんなの!月曜日からのイベントに向けてみんなでレベル上がるって事になったの!」

「俺も後で詳細を見てみないとな。んじゃ、なのははまた後で。」

「私にはなんの話か分からないけど、今日はありがと♪」

 

 そう言って、頬に軽く唇を当てる程度のキスをしてきたフィアッセ。

 

「にゃ、にゃにしてるの!刻也さん!」

「お、俺かよ!そこはフィアッセだろ。」

「刻也さんならその程度、避けれるの!!」

「無茶言うなよ。想定外過ぎたわ!」

 

「ふふっ。まずは一本取り返したからね。トキヤ♪」

「やっぱ勝てねぇよ...。」

「ちゃんと聞いてるの?大体、刻也さんは――――。」

 

 なのはの言葉は頭に響かず、やっぱり敵わないと思い知らされた俺は高町家を後にし自宅へと

帰った。

 家に帰った後は、気分を落ち着けるため、鍛錬で汗を流し、シャワーを浴び終え、昨晩は遅く

なって送れなかった、なのはが合わせろと五月蠅いというメッセージを小恋に送り、SLOの

ヘッドギアの電源を入れた。

 

 




如何でしたか?

まあどんな人でも不安になる時はあるでしょう。異国の地に一人で来たのなら尚更。
フィアッセの年齢は20~21くらいかな。美由希は20代後半になりかけてる位になります。
口調もお堅い感じですが、馴染んでいけば士郎さんや桃子さんに対しても砕けた感じになっていく
ので、今回は軽く受け流して下さい。

次回は、次章で書くストーリーの大筋みたいな発表から始まり、それに向けての強化回になると思
います。作風上、作中にステータスが多く開示される可能性がある事だけはご了承下さい。

※今回もスキル説明&ステータス公表はありません。

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