とらなのVRMMO ~魔法はゲームの中だけなの~   作:戯言紳士

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ご愛読ありがとうございます。

前々回で描いていた物は打ち止めになったのですが、この3連休に小休憩を兼ねて、ツクールでギ
ルドホームの内装と外観のイメージと、大まかな全体マップを描いてみたので、今日含め3回に渡
り、また後書きで公開します。
新しくのマップチップを読み込んだりしていないので、表現に限界がありました。それをご了承し
て、興味がある方はご覧下さい。

前回のあらすじ。
奈々は爆睡。桃は耐えご褒美を得る!刻也と小恋、珍しく着飾る!サプライズ歓迎会の初期段階成
功!(完)



第51話   6月26日 金曜日②

 

「えっと、この椅子ってどこで調達したの?」

 

 玉座の様な椅子の前まで案内したのだが、やはりフィアッセも戸惑い、座るのを躊躇っている。

俺もこの椅子が目に付いた時には、同じ疑問が浮かんだので、気持ちは分かる。

 

「俺達、この準備にまったく関わってないから分からないんだ。」

「そうなんだ。」

「悪いな。」

「いいよ。久しぶりに会えただけでも嬉しいから。」

 

 その後に、躊躇いながらも玉座へ座る事にしたフィアッセ。一応、主賓席として用意された椅子

なので、座らない訳にもいかないのだろう。

 玉座に座ったフィアッセは、民に愛されている女王様の様にも見え、有名なバラエティーMCで

も下手に弄れないくらい、似合っていた。

 

 この椅子を座り熟せるのは、フィアッセ以外いないんじゃないだろうか?

 

「そのかわりに今日は目一杯、楽しませるよ。」

「期待して良いのかな?」

 

「...無茶ぶりは勘弁して下さい。」

「大丈夫。トキヤなら出来るから♪」

「何をさせる気なんだ...。」

「色々あるけど、今は内緒♪」

 

 そう言うと、フィアッセは俺の隣にいる小恋の方へ視線を向けた。

 

「それでさ、モモコにココちゃんって呼ばれてた、その子はトキヤのガールフレンド?」

 

「わ、私は陣内小恋と申します。そ..その、フィアッセさんの大ファンで、あの..その...。」

「少し落ち着けって。こいつが俺にフィアッセの曲を進めてくれたやつなんだ。」

 

 フィアッセに話しかけられた事で、極度に緊張した小恋に落ち着くように言い、小恋が以前俺に

フィアッセの曲を聴かせた人物だと紹介した。

 

「この子がそうなんだ。ありがとう、ココ。」

「い..いえ、その恐縮です。」

 

「こ..こちらこそ、私みたいなのとお話して頂き、ありがとうございます。」

「そんな事ないよ。ココは綺麗なんだから、もっと自分に自信を持たないとダメだよ。」

「いえ。フィアッセさんとは比べられないくらい、粗末n「ストップ!」へ?」

 

 このまま会話を続けても、小恋が自分を卑下していくだけになると感じたので、会話に割って入

り、流れを一旦区切るべく中断させた。

 

「小恋は自分を卑下し過ぎ。今はそんな事より、もっと他に話したい事とかあるだろ?」

「うぅ。緊張して、何話て良いのか分からなくなっちゃったよ。」

 

「とりあえず、本格的にパーティーが始まる前に、サイン貰っとけ。昨日色紙買ってただろ?」

「いきなり、そんな事お願いしたら、失礼じゃないかな?」

 

 前日に行った時に、アウトレットモールで小恋が色紙とサインペンを購入していたので、慌ただ

しくなる前に、貰っておけと助言した。

 

 その会話が聞こえていたのか、フィアッセから、

 

「サイン?ココは私のサインが欲しいの?」

「えっと...はい。お願いしても良いですか?」

「良いよ。久しぶりだから失敗しちゃうかもしれないけどね♪」

 

 この様なやり取りがあり、小恋はサインを貰うべく、色紙とサインペンを取りに少しの間、その

場から離れた。

 

「それは、それで価値が出そうだな。」

「そうだと良いね。どうする?」

「その...頂けるだけで十分なので、失敗とかそんな事は関係ありません。それに、売るとかそん

 な事は絶対にしませんから。」

 

 本当にすぐに戻って来た小恋。手には色紙とサインペンがあり、早速フィアッセにお願いします

と言い渡した。

 

「はい。これでいいかな?」

「ありがとうございます。一生の宝物にします!」

「うん。大切にしてくれると私も嬉しいな。」

 

 久しぶりと言いながらも、慣れた感じでサインを書いて見せたフィアッセ。こういう場面を見る

と本当に、俺の知らない世界で活躍していた人物なんだなと思った。

 

「折角だし、トキヤもいる?」

「サインをか?俺、色紙何て持ってないし、他に色んな物を貰ってるから。」

「そう?私の方が色んな物を貰ってる気がするんだけどな。」

「俺は今じゃないとダメって事もないから、今日はいいよ。」

「そうだよね。わかった。」

 

 小恋はお客さんとして翠屋に来ても、フィアッセは仕事があるので、今日の様な時間は取れない

だろうが、俺は今日以外でもフィアッセと会う機会はあるので、やんわりと断った。

 

 これで、とりあえず小恋とのフィアッセに紹介するという約束は果たしたな。

 

 こうして、話している間にもなのは達が桃子さんの用意したと思われる料理を運び込んでいるが

結構な種類と量を用意したのか、まだ全部運び終えていないようで、もう少しフィアッセとの会話

を続ける事になった。

 

「明日は朝から来るんでしょ?」

「まあな。朝から美由希さんとの合同鍛錬があるし。」

「それじゃあ、また見に行くね。」

 

「いいけど、面白かったのか?」

「うーん。打ち合ってる姿は凄いと思ったけど、それよりもトキヤの雰囲気が今と違ってて、その

 変化が何か、何度も見てみたいって思っちゃった。」

「俺にはよく分からないが、見たいなら見に来ればいいさ。」

 

「ココは見た事あるの?」

「..私ですか?刻也の鍛錬は見た事ありませんが、学校の先輩と手合せしている所なら見学させて

 もらいました。」

「それじゃあ、その時トキヤの雰囲気の違いを感じたよね?」

「雰囲気とかはよく分かりませんでしたが、顔は真剣で生き生きとしてたと思います。」

「なるほどね。」

 

 その後、配膳が整うまで、俺にも聞こえないくらいの声でヒソヒソと話していた。

 

 小恋は人見知りより今回は緊張が勝っているせいなのか、それともフィアッセの人柄からか、言

葉遣いは堅いが、フィアッセと打ち解けている様子だった。

 

 

 

 

 

「はーい♪みんな、飲み物は持ったわね?」

 

 料理が運び終わり、最後に桃子さんがフィアッセの前のテーブルにケーキを置いた所で、みんな

飲み物の入ったグラスを持ち、乾杯の音頭を待った。

 もちろん未成年の俺達のグラスにはジュースが入っている。酒が注いであるグラスは士郎さんと

桃子さん。それに美由希さんが手にしていた。フィアッセは俺達どうようジュースが入ったグラス

を手にしている。

 

「今日は無礼講よ!これを機にフィアッセちゃんとの親睦、そしてこの場に居る人達とより親しい

 関係を築けるように願いを込めて!」

 

―― 乾杯!!

 

「「「「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」」」」

 

 

こうして、桃子さんの音頭を持って、歓迎会が開かれた。

 

 乾杯をしてから、各々スタンディング・ビュッフェ形式、いわゆる立食パーティ仕様で用意され

た様々な料理から、取り皿に好きなように盛り付けて、それを食べながら談笑を始めた。

 

 小恋もすぐさま、アリシアに捕まり困惑気味ではあるが、会話にも加わっているようだ。

 今日の翠屋に入店前の躊躇いや、普段から接触を避けていたとは思えないくらいには馴染んでい

るように見える。

 

 

 今あの女子軍の中に飛び込むのは無理だと思い、俺は取り皿にがっつり系の肉料理を盛り、カウ

ンターで静かにその様子を見ている士郎さんと美由希さんの下へ向かった。

 ちなみに桃子さんは、違和感なく女子軍の中に溶け込んでいる。未だに中高生に紛れても違和感

がないのは凄いと思う。

 

「おや?トキ君もこっちに来たのかい?」

「若いんだから、もっとガンガン攻めないと離れていっちゃうよ。」

 

「女性だけで盛り上がっている中に飛び込む度胸はありませんよ。それと美由希さんはもう酔って

 るんですか?」

「どれだけ私お酒に弱いのよ。こんな量で酔ってたらお仕事なんて出来ないよ。」

「そうですか。」

 

「僕もあの中に飛び込む位なら、銃弾飛び交う戦場に行く方が気が楽だよ。この世で一番恐ろしい

 モノは武器を持たなずに、結束した口の立つ女性だからね。」

「なるほど。」

 

「そんな事言っていいの?お母さんに言っちゃうかもよ?」

「そうなる前に、僕が美由希の口を塞ぐ事にするよ。物理的にね。」

「こわっ!」

 

「まあ、冗談さ。しばらくは、ここでゆっくりしていると良いよ。」

「どうせ強制連行されるだろうしね。食べれる時に食べとかないと持たないかもよ?」

 

「その口ぶりですと、この後に何があるか知ってるんですよね?」

 

「「シラナイヨ。」」

 

「2人ともカタコトなんですけど...。」

 

「それはお楽しみって事で良いじゃないか。ほら、もうお皿が空いているね。食べたい物を取って

 来て上げるから、何でも言ってくれ。」

「そうだよ!私もジュースも持ってきてあげる。何がいい?」

 

 明らかに態度が豹変したのだが、多分高町家のヒエラルキーである桃子さんに口止めをされてい

るんだろう。

 

 今は後の事を考えず、美味しい料理を堪能する事にし、折角の申し出なので士郎さんと美由希さ

んに料理を持って来てもらい、しばらく食事を楽しんだ。

 

 

 

「ちょっと刻也。何一人だけ料理堪能してんのよ。」

 

 強制連行されると思ったのだが、小恋が抜け出して、俺に小言を言いに来ただけだった。その証

拠に、手にはちゃっかり料理を持ってきている。

 

「小恋だって抜けて来たんだろ。どうだ、小恋の言う姫達とは仲良くなれたか?」

「仲良くっていうか、あっちは最初から友好度MAXだったから何とも言えない。ただ、その場の

 雰囲気かも知れないけど慣れたわ。フィアッセさんには、まだ緊張するけど。」

「そうか、頑張ったな。お疲れ。」

「ホントにね。」

 

「それで、刻也を探してみれば、こっちでのんびり食事してるじゃない。」

「俺はいずれ戦場に出る事になるからな、今の内に英気を養っているんだ。」

「なによそれ?」

「さぁ?俺もどんな戦場が待っているのか分からないからな。」

 

 俺も何が待っているのか分からないと言うと、小恋は隣に座り、持ってきた料理を食べ始めた。

 

まだメイン会場は、最初の勢いが治まる事無く、依然と賑やかだ。

 

「この前は言う機会がなかったけど、小恋ちゃん綺麗になったよね。」

「そうだね。啓吾から話は聞いていたけど、僕も小恋ちゃんが翠屋に来た時はびっくりしたよ。」

 

「その..ありがとうございます。お世辞でもそう言って頂けると嬉しいです。」

 

「お世辞じゃないよ。さっきもあの中にいて違和感なかったし。」

「そうだね。自信を持ってもいいと思うよ。」

「褒めても何もでませんから。」

 

「これなら、学校で告白とかされるでしょ?」

 

「「そうなのか(い)?啓吾(さん)に報告しないといけないから、名前教えてくれ(るかい?)」」

 

「いや、された事ありませんから。それと刻也と士郎さんはお父さんに何を頼まれてるの?」

 

「年頃に娘を持つ父親はね、自分の娘にちょっかいを出す男を見定める必要があるんだよ。」

「俺は、ただ小恋に近付く男がいたら報告する様に言われてるだけだ。」

 

「愛されてるみたいだけど、大変だね。」

「そうみたいです。その本人は滅多に帰ってこないんですけどね。」

 

 美由希さんの発言で、士郎さんと言葉が被るという初めての事態になった。

 世の娘を持つ父親はみんなこんな感じらしい。

 

「それで?本当にいないのか?」

「いないわよ。て言うか、学校じゃほとんど一緒にいるじゃない。」

「そうなんだけどな。体育で着替える時とかあるじゃん。」

「女子更衣室前で出待ちするような男の誘いなんて乗らないわよ。」

 

「いや、でも放課後があるだろ。俺がSLO始めてから見送る事も少なくなったし。」

「仮に告白するような男子がいて、それを受け入れてたら、刻也と一緒にいないでしょうが。」

「それもそうか。」

「納得したわね。」

 

 念のためにもう一度、小恋に問いただしたのだが、俺は学校でほとんど小恋と一緒にいた。

 小恋の言う通り、交際しているやつがいるなら、俺と一緒にいないな。

 

「それと美由希さんも変な事言わないで下さい。」

「ゴメンね。ちょっと気になったから。」

 

「でもこの感じじゃ、小恋ちゃんがどれだけ綺麗になっても、近づく男子はいないね。」

「トキ君が近くにいる限り、啓吾も安心出来そうだね。」

 

「「???」」

 

 今のやり取りの何処に啓吾さんが安心する要素と、小恋に近付く男子がいないと言い切れるのか

俺達は分からず互いの顔を見合った。

 そして、その理由を聞こうとした時、俺と小恋を連行するためにやってきた、桃子さんとフィ

アッセの従順なる僕が現れ連行されてしまったので、理由は聞く事が出来なかった。

 

 

 

「ちょっと、トキヤ。私を楽しませてくれるんじゃなかったの?」

 

 メイン会場へ来るなり、そう言って俺の腕を絡めとるフィアッセ。明らかに最初の時と様子が違

う。それに、僅かにアルコールの匂いがする。

 

「桃子さん。フィアッセにお酒飲ませました?」

「えぇ♪だってそっちの方が本音が聞けるでしょ?」

 

 確かにそういう話を聞くし、年齢的にも法律が許しているけど...。

 

「もう!モモコじゃなくて、私に聞いてよ!4日間放置してた癖に!」

「いや、俺学生だし。平日は学校あるからって言ったよな?」

「知らない。良いから、トキヤも飲みなさい!」

 

 フィアッセはアルコールが入ると厄介なタイプの絡み上戸だったらしい。未成年の俺に酒を飲ま

せようと、完全に腕をロックして離そうとしない。

 

 というか、何故この状況になっているのに、誰も助けようとしないんだ。

 

「なのは達は今お勉強中なのよ♪」

「どういう勉強ですか!」

「一種の社会勉強かしら?」

 

「トキ君もこういう席なんだから、飲んじゃいなさい♪」

「いや、法律的にですね。」

「そんな事言ってると、フィアッセちゃんの口移しで飲ませるわよ?」

 

 桃子さんのこの発言にも、なのは達はぴくっとするだけで、止めようとしない。そして一緒に連

れてこれらた小恋も、気付けばなのは達の方へ退避していた。

 

「いくら桃子さんが言っても、フィアッセがやるはずないでしょ?」

「それはどうかしらね♪」

 

「えっ!?」

 

 ふと、フィアッセの方を見ると、絡めていない方の手でグラスを持ち、中のお酒を口に含もうと

していた。

 

 この時、俺は本気でやるだろうと直感したので、

 

「分かりました。自分で飲みますから、フィアッセはそのまま口に含んだ分は自分で飲め。」

「ゴクン。...もうちょっとだったのに。」

 

 何がもうちょっとだ。あと数秒気付くのが遅れていたら、とんでもない事になっていた。

 

「はーい♪それじゃあ、みんなでトキ君のお酒を作るわよ。」

 

「ちょっと待って下さい。中学生に何させる気ですか?」

「大した事ないわ。ただグラスに氷をいれて、このブランデーを割って貰うだけよ。」

 

 もう何を言っても無駄だとは悟っていた。それでも突っ込まざる負えない発言だったので、指摘

したわけだが、まさか度数の高いブランデーを飲む事になるとは思ってもいなかった。

 

 うん...。諦めよう。安西先生どうやら俺の試合はここで終了のようです。

 

 その後、なのは達は誰一人桃子さんに逆らう事なく言われた通りにブランデーを作り、俺の目の

前に持ってきた。

 

 

「2度目の乾杯ね。これも社会勉強よ。」

 

 諦めた直後だが、桃子さんのこの発言は俺に向けられたモノじゃないと直感した。

 

 なのは達のグラスには一見ジュースの様に見えるが、もしかして......。

 

「あの...、桃子さん。」

「なぁに♪」

「なのは達のグラスに入ってるのって、」

「チューハイよ♪まあトキ君のモノに比べればジュースみたいなモノよね♪」

 

 それはそうなんだが.........、もういいか。完全に諦めた瞬間だった。

 

「はーい♪それじゃあ、かんぱーい!!」

 

「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」

 

「「...乾杯。」」

 

 未体験の飲み物に興味があるのか、それとも実は既に桃子さんに一服盛られている状態なのか、

分からないが、俺と小恋以外のテンションの差が非常に激しい2度目の乾杯をした。

 

 なのは達同様、俺も酒は生まれて初めて飲むので、ゆっくり飲もうと思ったのだが、

 

「トキ君は男の子なんだから、これくらい一気で飲めるわよね。」

「トキヤの一気見てみたいな。」

 

 完全に両サイドを確保されて逃げ場がなく、断る事が出来ない両名にこんな事を言われてしまい

氷と少量の水で割られたブランデーを一気に飲み干した。

 飲み干した途端に、喉の奥は熱く、後頭部を軽く鈍器に殴られたような衝撃を受けた。

 

「これ、一気する様な割り方じゃないだろ。」

「あら?これでちょっとタガが外れる程度なのね。」

 

「トキヤ。フェイトがおかわり持ってきてくれたよ♪」

「あの...頑張って下さい。」

「あぁ。ありがと。」

 

 そして続け様に、2杯目のブランデーを飲み干す事になったのだが、意識はちゃんとしている

が、何か考える事が面倒になってきた。

 

「なかなか強いみたいね。とりあえずこのくらいで良しとしましょう。後はフィアッセちゃんの好

 きに飲ませて良いわよ。」

「はーい♪」

 

「私は次の準備してくるわ。」

 

 そう言って桃子さんがホールから姿を消すと、なのは達も多少酒が入っているのか、テンション

は高めだが、何時もと変わらない感じで、今も腕を絡め俺にしな垂れてきているフィアッセを、引

きはがそうと懸命に間に割って入ろうとした。

 

 しかし、その努力も空しく、むしろ絡める力が増し話す素振りを見せないフィアッセを諦め、空

いているもう一方の腕を誰が取るかという、酔っている事が明らかな討論が始まった。

 

 そこにしれ~っと小恋が俺の隣を陣取ったのだが、なのは達は気付く様子はない。まあ、小恋は

腕に絡む事はなくただ横で食事を摂っているだけなので、一番安全と言える。

 最初の乾杯で一口飲んだだけで、それ以降は飲んでいないみたいだし。

 

 

「トキヤは人気者だね~♪」

「みんな酒に酔ってるだけだろ。」

「ん~、そんな事ないと思うけどな~。」

「フィアッセも大分酔っぱらってるみたいだぞ?」

「まだまだ、イケるよ♪」

 

 明らかに呂律が回らなくなってきているが、そう言いながらもチューハイを飲むフィアッセ。

 

「俺も、ブランデーよりそっちの方が度数低いし良いんだけどな。」

「チューハイ飲みたいの?」

「少なくともコレよりは。」

 

 再び作られた3杯目のブランデーを見せた。

 

「じゃあ、ハイ。これ上げるから、そっち頂戴♪」

 

 すると、今フィアッセが飲んでいたチューハイのグラスを俺に渡し、俺がちびちびと飲んでいた

ブランデーの入ったグラスを自分の手に収め、一気に飲み干した。

 

「えへへ。トキヤと関節キスしちゃった~♪」

「...いや、それより一気に飲んで大丈夫だったのか?」

「だいじょ~ぶ!これくらい大した事ないよぉ~。」

 

「余計に呂律が回らなくなってるよね。」

「そうだな。」

 

「小恋は好きなアーティストのこういう姿見てどう思うんだ?」

 

 ふと、そう思ったので聞いてみた。

 

「う~ん。レアな姿見れてラッキー、かな。別に幻滅とかしないわよ。同じ人間だったんだって、

 逆に親近感が湧いてくるくらい。」

「そういうものなのか。」

「少なくとも私はね。」

 

「トキヤ、ココと話してないで、私のチューハイも飲みなさい!」

 

 ほんの少し小恋と話しただけでこの有り様。絡み上戸の人って怖いな。

 促されるまま、手渡されたチューハイを飲み干したのだが、最初にガツンとやられたせいか、本

当にジュースの様に感じて、一切酒を飲んでいるとは思えないくらいだった。

 

「どう?美味しかった?」

「あぁ、本当にジュースみたいだな。これならいくらでも飲めるだろ。」

「そうじゃなくて、私との関節キスは美味しかった?」

「いや、意味わかんないから。」

 

「刻也、今の状態でその解答は間違いよ。」

「はっ?」

 

「じゃあ、次はちゃんと味わってよね。」

 

 そう言うと、グラスに新しいチューハイを注ぎ口に含むフィアッセ。その口に含んだ状態で、顔

が俺に近付いて来る。

 

「だから言ったでしょ。間違いだって。あそこで多少なりとも感想を言えば良かったのよ。」

「じゃあ、そう言ってくれよ!」

 

 こうしている間にも、じわじわとフィアッセとの距離は近くなっている。

 

「私もまさか、ここで被せてくるなんて思ってなかったわ。良いじゃない、他のファンに見られた

 ら確実に刺されるけど、私は許すわよ。」

「変な寛大な心は要らないので、止めてもらえませんか?」

「もう手遅れだと思うわ。」

「へっ?」

 

 絡まれていた腕が解放されたと同時に、両手で顔をホールドされフィアッセの方を向かされた。

 すると目の前にはフィアッセの綺麗な瞳があり、唇にはしっとりとした感触が、そして口内には

さっき飲んだチューハイと同じ味のする液体が入って来た。

 

「「「「「「あぁぁぁーーー!!!!」」」」」」

 

 それを俺が自覚しフィアッセの唇が離れたのと同時に、なのは達の叫び声も店内に響いた。

 

 

 仮想現実ではさくらに捧げたファーストキスだが、現実ではフィアッセに捧げる事になったみた

いだ。過程はどうあれ、フィアッセの様な綺麗な人に捧げられたのは幸いだと思う。

 ちなみに、初めてのキスはレモン味だった。

 

「あらあら。少し遅れちゃったわね。一番面白い場面を見逃しちゃったわ♪」

 

 この騒ぎを聞きつけたのか、それとも準備が整ったのか、再びホールに戻って来た桃子さんの手

には外側からは何が入っているのか分からない、籤ボックスの様なモノを持っていた。

 

「みんな、言いたい事があると思うけど、これからゲームを始めるわよ♪」

 

 桃子さんのこの言葉でとりあえず騒ぎは一時的に治まったのだが、どうやらまだ、俺の戦場は激

しい展開を迎えるらしい。

 

 




如何でしたか?

まあ言いたい事は、お酒は20歳になってから飲みましょう。
そして、酒癖の悪い人には極力関わらないようにしましょう。
本当に酒を飲むと豹変する人はいますからね。
一番最悪だったのは、関係のない人を巻き込み、筋の通らない説教を永遠と繰り返すヤツです。
そういう訳なので、どうか穏便に寛大な処置をお願いします。

次回は、桃子さん主催のゲームで、なのは達の気を晴らそうと思います。ぐだぐだ展開はまだまだ
続きます。

※観覧注意(ギルドホーム内装:いつぞやの図を基に。)

【挿絵表示】

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