~男女あべこべな艦これに提督が着任しました~   作:イソン

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前回の話を見返した自分→( 'ω').。o0(何かいてたんだ俺……)
   感想欄を見た自分→( 'ω')……
            ( ^ω^)



【公式】<可愛い「衣笠」と「間宮」の五周年記念イラスト!!

            ( 'ω')!!
            ( 'ω')……       


(   ^ ω ^   )




第二十一話 あべこべ艦これ~百貨店へ~

 肌を撫でるような、まとわりつくような。そんな風が、海から音を鳴らしながら流れ込んでゆく。

 

 「明日は雨が降るかもしれません」

 

 穏やかな海の様に優しく、けれども気丈な声。瀬戸内海から吹く風、小さくて花びらの様に薄い唇が水分を含んでいくのを感じそう呟いた。

今日はいつもより早いけれども、昼前には取り込んでおいたほうがいいでしょうか。そう考えながら、最後の洗濯物を物干しざおに掛ける。とても大事な作業が終わったことに緊張を口から吐きながら、額に浮き出た汗を軽く拭く。目の前に広がる、洗濯したことによって純白に輝く服達が、海の中を泳ぐ魚の様にゆらゆらと風の流れに沿って生き物のように揺れ動いていた。

その光景に、万が一があってはいけないと、支持台が固定されているかどうかを確認し。

 

 「固定……よし! 後は乾いたら畳んで、大淀さんにお渡しするだけです」

 

 そう言って、空になった洗濯かごを持ち上げた。

屋上の扉を開け、そして閉める。瞬間、ピーっというやかんがお怒りの時に出すような音とともに、自動で扉が施錠された。その光景に、相も変わらず妖精さんの科学力は凄いものだと感心しつつ、駆け足で階段を下りる。

一歩一歩、陽気な足音を響かせるたびに、彼女の銀色の髪――足首まで届きそうな一本の三つ編みが気分に合わせて跳ねていく。きっと、その光景を見たら普段の彼女とは違う姿に、困惑するかもしれない。自身でさえ、この姿は妹達には見せられないなと思っているぐらいだ。

 

 階段を下りた先、朝の始まりを告げるお日様が廊下を照らす中をただひたすらに、駆け抜ける。向かう先は大好きな場所、司令室。

 

 

 

 

 「おはようございます、提督!」

 

 「あぁ、おはよう海風。今日も元気だな」

 

 

 

 

 改白露型一番艦、海風。元気な挨拶と共に、提督の洗濯物が干し終わったことを告げる。彼女の波乱万丈な一日は、こうやって始まりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「提督、本部より通信が来ております。そちらに繋いでもよろしいでしょうか?」

 

 外堀を埋められていくというのは、こういうことを言うんだろう。

日本語というものは、外国語と違い多様化している分、いろいろな表現で現状を表すことが出来るものだと考えつつ、海風が淹れてくれたお茶で口の中に水分を補給させる。

 

 口の中に広が渋みと甘み。紅茶も嫌いではないが、やはり緑茶が一番だなと、金剛型が聞けば紅茶妖怪になりそうな考えを浮かべる。その金剛型の一番艦が、食堂で大暴れしていようなどとは、今の正海には知る由もない。

そういえば、つい先日に大淀からの高速修復材の申請があったのを思い出した。対象は金剛型一番艦金剛で、申請理由は食堂内での大破。申請書の備考欄には、給糧艦の一撃により大破したと書いてあったが、一体何があったのだろうか。

 

 

 「構わない、繋げてもらえるか?」

 

 了承しつつ、きっと今朝方届いた手紙の内容だろうとあたりをつける。手触りのいい、茶色の封筒に入っていた手紙を思い出し、休みという単語には縁がないなと日本の勤務体制に異を唱えた。

 

 「畏まりました。少々、お待ちください」

 

 プツンという糸が切れるような音ともに、黒電話から音が消える。そして、数秒の間と共に聞き慣れた声が黒電話の向こうから聞こえた。

 

 

 

 『やぁ、久しぶりだね。正海』

 

 「米内さん?」

 

 その言葉に、秘書艦として書類の補助を行っていた海風の手が止まる。聞いたことがある、着任式直前に叢雲が説明していた提督の素性。男性でありながら海軍に入った理由の一つ、確か――。

 

 『いやいや、違うだろう? 私の事を呼ぶときはなんていうんだい?』

 「誰もいないところでならともかく、公の回線を使用してる場で大臣を気安く呼べるわけないでしょうに……!」

 

 その言葉に驚愕した。今この場で提督に電話をかけてきているのは『軍人は政治に関与してはならない』という伝統があった海軍内でも唯一政治に関わることが許された役職を持つ人物だ。そして、提督のお母さん……!

 

 『そうか、それはなにより。私の息子はちゃんと公私混同せず、役職にふさわしい態度をしている。安心したよ』

 「……そちらから振っておいて」

 『それはそれ、これはこれだ。世間知らずな息子を持つ身としては、成長具合を確かめたくなるんだよ』

 「そうですね……」

 

 何を話しているのだろうか。いつもは凛々しく、見ていて安心するような提督が見る影もない。まるで、母親に手玉に取られている子供の様だ。

 

 しかし、お母さんとはなんとも甘露な響きではないだろうかと海風は筆を止め、考える。

 

普段、姉として気丈にふるまう立場ではあるが、鳳翔さんの様に『お母さん』と呼ばれる立場に興味があるかないかと言ったら、とってもある。

朝になったら艦隊に総員起こしをかけ、提督の朝餉を用意する。朝は胃にも優しいようにお魚、アジの開きにしよう。傍らでお茶を入れながら、提督が食べ終えるのを見守るのだ。その後は提督の洗濯物を干しつつ、編成と遠征の確認。出来るお母さんは貴重な時間を有意義に使わなければいけない。

 

 『それより、仕事は順調かい? 陸軍と少々揉め事があったときは、どうしてやろうかと思ったものだが」

 「貴方が言うと、洒落にならないです。仕事に関しては順調に市長との交渉は進んでおります。早ければ来週にも、人員配置の打ち合わせを行う予定です」

 

 お昼は何にしようか? やはり提督という立場は体力を使うと聞く。となれば、カレーはどうだろうか。あ、カレーうどんも良いかもしれない。

 

 『そうか、それはなにより。初めての事ばかりだ、わからないことも出てくるでしょう。何かあったら遠慮なく言いなさい』

 「ありがとうございます…………母さん」

 

 小気味よい音と共に提督の口の中へカレーうどんが吸い込まれていく。その時、吸い込まれる瞬間に汁が提督の胸元へ落ちてしまった。一面の白に一滴、存在感を強く放つ茶色の汚れが出来上がる。それを見た私は、居てもたってもいられず布巾を持って提督のもとへ歩み寄った。

大丈夫ですよ、すぐ綺麗にしてあげます。そう言って、提督の胸元へ手を伸ばし――、

 

 『お母さん! んふふ、お母さんかあ!』

 

 受話器から響く大きな声に、海風の意識は連れ戻された。私はいったい何を考えていたんだろうか、今しがた自分が考えていた破廉恥な妄想に、こんなことを考えるなんて秘書艦失格だと項垂れる。姉として、一番艦として妹の手本になるような存在でなければいけないのに。

 

 (海風、米内さんに遊ばれてるな……。秘書艦がいるとわかっていてやってるんだから質が悪い)

 

 せっせとお仕事をしていた海風の表情がころころと変わっていくのを電話で受け答えしながら見て、部屋に戻ってから話すべきだったかと正海は反省した。

 

 『まぁ、まだまだ話したいことはあるけれども次に回しておこうか。きっと、提督殿は混乱している秘書艦を立て直すのに必死になるだろうから』

 

 その言葉に、

 

 「やっぱり確信犯じゃないですか……」

 『当り前じゃないか。例え昔の記憶があったとしても、人というのは現在に対応する生き物だ。男性がいない、飢えてる肉食動物や草食動物の中に餌を放り込んだらどうなると思う?』

 「やっぱり確信犯だこの人……!」

 『ふふっ、精々頑張るといいさ。良い娘がいたら連れてきてくれたまえ。……しかし、青春だねぇ。私も若いけれども、ここに立っている以上はそっちにいけな――』

 

 「えっ、若――」

 

 『あっ?』

 

 「はい」

 

 はいじゃないが。しかし、はいと言うしかあるまい。これ以上言ったら黒電話から腕が出てきてとっ捕まえられそうな、そんな感じがする。

 

 『おほん! まぁいい。それより、大淀に聞いたが呉服がいるんだって?』

 「え、えぇ……」

 

 大淀は一体どこでその情報を入手したのだろうか。あの時の会話は事前に龍田と口裏合わせをしているはず、開催間近になったら近場の呉服屋でお手頃なものを用意しようかと考えていたはずなのに。

 

 『情報は、私にとって戦略の一つだからね。隠し事はしない方が身のためだよ』

 「……ちなみにこの情報はどちらからで?」

 『鈴木さんとは仲良しでね?』

 「もう切っていいです?」

 

 遊ばれている、ものの見事に。男女が逆転している世界なのだから、男性の方が口がうまくて女性は口が苦手であるべきではないのだろうか? いや、そもそも自分がこの世界の男性に該当していないのだから口が上手いわけではなかった。

 

 『まぁまぁ。それより、呉服の事なんだけどね。男性用の服となると買う場所が限られてくるんだけれども、何かあては?」

 「いえ、今の所特には……。近くなった時に、近場の呉服屋で見繕おうかなと」

 

 その瞬間、盛大なため息が聞こえた。

 

 『君の常識に当てはめて考えてはいけないよ? 一般の呉服屋にそんな物は普通置かない。あらかじめ事前に予約するぐらいじゃなければいけないんだからね』

 

 やれやれと、頬に手を当てて肘をついてるようなそんな光景がありありと目に浮かぶ。

 

 「その口ぶりだと、どこか知っているようで?」

 『あぁ、お勧めがあるよ。うちのもそこで買ったりするんだ、そこを紹介してあげる』

 

 父親代わりでもあるコマさんが行きつけのお店という言葉に、やはりこの人は最初からこうなることをわかっていたのかもしれない。目を落とし、茶色の封筒に入っていた手紙――それを再度広げ、

 

 「そこは?」

 

 

 

 

 

 

 『百貨店、広島三越だよ』

 

 

 

 

 『広島三越』から届いた招待状に、やっぱり確信犯じゃないかと今日の仕事をキャンセルしなければいけないなと、ため息をつく正海だった。

 

 

 




文字数少ないですが、二話投稿するので許してください。

そして、いつもたくさんの感想と評価、誤字脱字報告。本当にありがとうございます。

皆様の優しさで支えらておりますので、今度からは前回のような話を書いたこと深く反省し、定期的に発作を起こしていこうと思います←

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