インフィニット・ストラトス ~獄炎の覇者~ 作:六甲山のココア
「………ッ」
目が覚めると見覚えのない天井が視界に広がっっていた。
辺りを見渡すと、棚にある薬品等から保健室であることが伺える。
(そういえば、途中で意識が……)
・・・思いだした。
確かあの時、縦ロールにブチ切れちゃったんだっけ。それで千冬さんが俺を止めるために意識を落とした、と……。
マジか…。なんかいろいろとマズイな。
また千冬さんに迷惑かけちゃったし…。何よりクラスのヤツらにはドン引きされていることだろう。小・中と同じようなことがあったが、それ以来誰も近づいてはこなかった。
短気なのは昔からだ。おかげで周りに迷惑をかけすぎている。千冬さんには特に。
そこで、保健室の戸が開く音が聞こえた。
「馨、目が覚めたのか」
千冬さんだった。
「ええ。おかげさまで」
「それはなによりだ。……で、いくつかお前に伝えることがある」
なんか嫌な予感がする…。
そう例えば、俺が気絶してしまっている間に勝手に話が進められていたり…とか。
「お前が気を失っている間に、クラス代表の選抜戦をすることが決まった」
「お、おお……」
マジかよ。
こんな予知できても何も嬉しくない。
「選抜戦って、俺とあの縦ロールとですか!?」
「そうなるな」
冗談じゃない…ッ。
いや、待てよ。これは堂々とあの女をボコボコにできるいい機会なんじゃないか?
ああいう女は一度その鼻っ柱を折ってやるべきだ。そうだ。彼女のためにも必要なことなんだ。
「わかりました。その勝負、引き受けましょう」
「やけに聞き分けがいいな。…まさか、オルコットを殴るいい機会だとか思っていないだろうな?」
ぬっ…。
さすが勘は鋭い。
「まさか。僕がそんなことを考える訳ないじゃないですか」
「考えてたな。考えていただろう、馨」
そう言って千冬さんが俺の頭を鷲掴みにする。
「痛いッ! 暴力はよくない!」
「どの口が言う。……まぁいい」
なんとか千冬さんに離してもらえたが… この数秒でこのダメージ…。相変わらずこの人は恐ろしい……!
「選抜戦はお前の容体が戻り次第、第一アリーナで行う。ゆっくり休んでいろ」
「いえ、その必要はありません」
ベッドから降り、自信満々といった表情で言う。
「今すぐやりましょう。その試合」
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第一アリーナへ着くと、すでに縦ロールが待機していた。
そして俺が来ていることに気付いた後、得意気な顔で近付いてきた。
「逃げずに来たことは褒めてさしあげますわ」
「御託なんて鬱陶しいだけだ。さっさと始めよう」
縦ロールの言葉を適当に流し、パイロットスーツに着替えるため、更衣室へ向かう。
「よ、よう桐谷」
更衣室の中にはなぜか一夏がいた。
…そういえば、一夏もさっきのアレを見られたんだっけ。道理で警戒っていうか避けられてるっていうか。
「ああ…、うん。どうしたんだ、こんなところまで」
「いや、その…、こんなことになったのは俺にも原因があるしさ…」
どうもぎこちない様子の一夏。
「そのことなら気にしなくていい。結果的に俺に都合のいいようになった」
「…? よくわかんねぇけど、そう言ってもらえるんなら助かる」
と、話している間に着替え終える。
「さて、ISを展開する。熱いから少し離れてろ」
そう言うと、一夏は?を浮かべたような顔で俺から離れる。
訳がわからずとも素直に従ってくれるあたり、コイツは良いヤツだと思うよ。
「焼き尽くせ… イフリート」
体から出た炎が全身を覆う。
そして炎が消えた時、赤黒いISが展開していた。
一夏が信じられないものを見る目で俺を見る。
無理もない。こんな手品紛いのISの展開の仕方なんて普通はないだろうからな。
「じゃ、行ってくるよ」
そう言い、更衣室を後にしてアリーナへ出た。
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アリーナの観客席は多くの生徒が埋めている。
入学初日にIS戦が行われるなんてそうそうあったもんじゃないだろう。物珍しさで来ているのがほとんどと思う。
先にいた縦ロールが俺に気付き、驚いた目を向けてくる。
「あなた、専用機持ちでしたの!?」
「うるさい。早くやるぞ」
縦ロールがまだ何か言ってるがそれを無視して、位置につく。
『これより、桐谷馨とセシリア・オルコットによるクラス代表選抜戦を始める!!』
千冬さんによる試合開始の合図が出る。
「武装は持っていないのでしょうか…。とりあえずは様子見で…」
セシリアのISから何かが6つ飛んでくる。
そしてその「何か」から、レーザーとミサイルが発射された。
「チマチマと…… 小賢しいんだよぉぉぉッ!!」
あの女が何をしようが何を飛ばそうとしったことか。
正面から叩き潰す。 それだけのこと。
イフリートから散布した炎を纏い、セシリアへ突進する。
もちろん正面から堂々と。
「な…ッ」
俺が突進していっているにも関わらず、セシリアは避けようとしない。
おそらくあのビットを動かしている間はそっちへ集中がいって動けないんだろう。
馬鹿なヤツだ。多数戦ならまだしも、サシでの勝負に使うなんて。
様子見だと? そんな甘っちょろい考えだから候補生止まりなんだよ。
「早いっ!」
ビットへの集中を切ったのだろう。持っていたデカいライフルをこっちへ向ける。
…だが遅い。イフリートの元々の機動力、そしてイフリートから出している炎をブースターのようにして射出することで得たその速さは尋常ではない。
あっという間にセシリアは俺の接近を許してしまう。あのデカいライフルもここまで近づけば意味がない。
俺はそのまま突進し、セシリアへ突っ込んだ。セシリアはそのままアリーナの壁に打ち付けられる。
「ぐあッ…!」
「ぶっ潰れろぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
壁に衝突したセシリアへ間髪入れず炎を纏った手でラッシュを仕掛ける。
数十発の炎拳を叩き込んだ後、とどめの一撃を……
「そこまでだ」
ブチかまそうと思っていた俺の右手を、ISを展開した千冬さんが掴んでいた。
「離せよ! あとちょっとで!」
「すでに勝敗は喫している。オルコットを見ろ」
千冬さんに言われて、セシリアの方を見る。
するとそこには、シールドエネルギーはすでに尽き、本体へダメージがいって、倒れてしまっていたセシリアの体があった。
「わかるか? やりすぎたんだよ。お前は」
「………」
何も言えなかった。
やりすぎてしまっていることはラッシュを仕掛けている時に気付いていた。
だが、それでも止められなかった。
言い訳がましいが、自分を抑えることができなかったんだ。なぜかは知らない。あの状態になった時、感情の制御が効かない。
ただ自分の怒りの発散として、無差別に殴ってしまうのだ。
「さっさとそれをしまえ。模擬選は中止だ」
「わかり…ました…」
イフリートの装甲部分が燃え、煙になって消えていく。
ひどい脱力感と疲労感が体を蝕んだまま、アリーナを後にした。