ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第三十六話「二人」⑦

「アルヴァインの反応が突然レーダーから途絶えました」

 

「何だとっ?」

 

ベルクラスにて、マリアからの方向に目の色を変える早乙女――二人の顔は一気に深刻になる。

 

「竜斗に通信をとれないのか!」

 

「どうやら機体自体が機能停止したようで繋がりません」

 

「…………」

 

と、いうことはこの高度から地上に墜落したことになるのか、もしそうなれば……二人の想定が次第に最悪の方向へと思い浮ぶ。

 

「ど、どうしますかっ?」

 

「……竜斗のことは確かに心配だが、だからとてこの任務を途中放棄するワケにはいかん、このまま継続する。

アルヴァインの落ちた位置の把握だけはしておいてくれ、早く済ませて地上に向かうぞ」

 

「りょ、了解!」

 

――早乙女はその事をすぐにエミリア達に伝える。

 

「な、なんですって……」

 

「イシカワが……っ」

 

二人は当然の如く狼狽し、特にエミリアに至っては顔色が一気に青ざめる。

彼の安否についての不安と心配でいっぱいになる二人に早乙女は、

 

「落ちたがまだ死んだとは限らない、万が一でも生きている可能性は十分あるわけだから希望をかけて気をちゃんと持て二人とも。

当然、私達は早くこの戦闘を終わらせて地上に降りるぞ」

「ちょっと待ってください、今リュウトを助けにいかないんですか!?」

 

と、エミリアの問いに早乙女は無情に頷く。

 

「一人のために任務を途中で放棄するわけにいかない。分かってくれ、これも軍人の仕事だ」

 

「そんなあ…………」

 

「私やマリアだって彼のことは勿論心配だ。

しかし今はそれよりも現状を打開しない限りはどうしようもない、君もそのコトを理解してくれ」

 

エミリアはヒクヒクと泣くかけている。

 

「これで遅れてリュウトにもしものことがあったら……ワタシはあなたを恨みますよ!」

 

そう言い切る彼女に早乙女は「甘ったれるな!」と一喝した。

 

“エミリア、君は一体ここに何しに来ているんだ?

観光か?旅行か?違うだろ、私達は戦うために来ているんだ。

それを承知した上で君はここまで来たのにいざとなればこうなるか……つくづく自己中で困った子だよ君は”

 

「くう…………」

 

二人の間に喧嘩一歩寸前な雰囲気に陥るも早乙女は一息ついてこう言う。

 

“私を恨みたいなら好きなだけ恨めばいいさ。

だがこれだけは言っておく、君が私を恨めるほどの実績と、納得できるほどの仕事をしているのならな――”

 

と、喧嘩口調で物申す早乙女についに。

 

「それよりも早くこの現状を何とかするのが先なんだったら今はこんな茶番をしてる暇なんかないでしょ!」

 

と愛美がそういうと二人はやっと我に帰る。

 

「ありがとう水樹。私達も早く戦闘を終わらせる努力をするから二人も素早く行動しろ。これは私からの命令だ――」

 

通信を切り、どことなく落ち着きなくソワソワしている早乙女にマリアは、

 

「司令、もしかして内心は竜斗君が心配でたまりませんか?」

 

「…………」

 

黙り込んでいるもその様子では彼らしくないくらいに焦っていることに彼女は気づいていた。

 

“エミリア、こうなったら早くカタをつけるわよ!”

 

「う、うん……!」

 

残りの敵の掃討に急ぐ彼女達。しかしエミリアには彼に対する心配と不安から焦っているのが一目瞭然で、幾度も攻撃を外すなど調子が狂い始めていた。

(神様、どうかリュウトが生きてますよう……お願いします!)

 

それを一心に今はただ死に物狂いで任務を遂行する彼女だった。

 

「竜斗君が……?」

 

“一応ゲッターロボには機能停止した場合、数分後にベルクラスへ救難信号を出すように設定しているがまだ確認がとれてない。

少佐達は今はとりあえずメカザウルスと敵母艦の掃討に集中してくれ”

 

「了解!」

 

早乙女からそれを伝えられたジェイドは他の者達にその事を伝え、全員が今まで以上に迅速でメカザウルス達の掃討に尽力する。

それはまるで時間に追われるように誰もが休みなく、そして急いでいた――。

――その頃、幾多の国を越えて連なるアンデス山脈の中間部。未だに雪の残るこの約数千メートル地点の山岳地帯の辺境にはこの山に似つかわしくない異形の巨人達の『傀儡』があった。

そう、アルヴァインとリューンシヴの二機である。

あの時、二機はそのまま機能停止し墜落したが雪がクッションの役割を果たして衝撃を抑えてくれたのだった。

そしてリューンシヴから発せられるマグマ熱が辺りの雪を溶かしていき、二機の周りは白いクレーターのような窪みを形成していた。

 

「…………っ」

 

アルヴァインのコックピットでは気を失っていた竜斗はふと目を覚ます。

 

「ここは……っ」

辺りを見渡すと真っ暗だ。手探ると操縦レバーを発見すると、自分の今いる場所はコックピットであるのは分かるが何かボタンを押しても全く反応がない。

 

(機能停止……か?)

 

彼は何でこうなったのか、すぐに理解するととりあえず頭上にある赤いボタンを押してコックピット内有効の予備電源を入れてシステム起動させるとライトが入り明るくなる。

 

(外は……)

 

カメラアイを通じてモニターを映すと目の前には、白い雪に囲まれた、先ほどまで戦っていたはずのリューンシヴが力無くへたり込んでいる姿があった――。

 

「ら、ラドラさんは!」

 

ラドラに会おうとコックピットからすぐさま出ようと考えたが、踏みとどまった。

何故なら何も考えずに飛び出すのは危険以外の何事にもないからだ。

 

(どうしよう、いつまでもここでじっとしているワケにもいかないし。

それに向こうの動きも気になるしなあ……ケガしてたらどうしよう……)

 

――彼は悩みに悩んだ結果、外に出ることにしてコックピットのハッチを開けると肌寒い風が入り込み、くしゃみをした。

それに高い所にいるためか空気が薄いことに気づき呼吸し辛い――だが決めた以上は行くしかない、と彼は勇気を出してコックピットから降りていく。

ゆっくり、ゆっくりと人形のようにガクンとしているリューンシヴへ近づく竜斗。

ゲッタートマホークの深い斬り痕がその壮絶さを物語り、そして向こうも機能停止した理由の説得力もある。

「…………」

 

息を飲み近づいていく竜斗。そして機体の目の前に到着すると大声で「大丈夫ですか!」と叫び、辺りにこだました。

 

……しかし返事が全くない。もしかしたら何かあったのかと気になり、恐る恐る機体にもっと近づいていく――だが次の瞬間だった。

 

「え?」

 

突然、機体の胸元が開くとそこから何かが飛び出して、そのまま竜斗へ飛び乗った。

 

「うわあっ!?」

 

ゴロゴロ転がり押し倒される竜斗、目の前で自分にのしかかる謎の人物……ラドラだった。

彼は竜斗の口を右手で強引に押さえつけ、左手に持つ小刀で喉元に押し当てた。

「~~~~っ!!」

 

間近で見る爬虫類特有のトカゲのような鼻と口の突き出た顔、眼……そして押さえ込む手に感じる人間以上に熱い体温とザラザラした硬質の皮膚……彼から凄まじい殺気を感じて今にも殺されると絶対絶命の竜斗……ここでやられるのか、それも彼、ラドラによって――。

 

「………………」

 

しかしラドラはそのまま固まったように何もしなかった。

そして睨みつけるその表情から次第に殺気が薄れていく……ここまで追い込んだのに一歩先に踏み込めないのは、

 

『どうかリュウトさん達を殺さないで』

 

ゴーラのその言葉が脳裏に浮かんだからだ。

そしてついには口を押さえつけていた手を離して、小刀をも喉元から離してしまう。

 

竜斗自身もなぜここまで追い詰めておいてやめたのか分からずにポカーンとなり、二人はしばらく沈黙する。

 

「……確か、ラドラさんでしたよね。なぜ……」

 

「…………」

 

「もしかして僕の言葉が通じてないですか?」

 

――すると、

 

『……私はもう生きる資格はない……』

 

「えっ……」

 

翻訳機を飲み込んでいたおかげで竜斗にもちゃんと理解できる言葉を発する。が、先ほどの小刀を腹に押し当てる。

嫌な予感に駆られた竜斗はコトに及ぼうとする彼を止めに入った。

 

「何をしようとするんですか、やめて下さい!」

『止めるな!キャプテンである私が任務を果たせず撃墜され、さらに敵に情けをかけて殺せなくなるとは落ちぶれたものだ。このまま帝国に帰り生き恥を晒すくらいなら私に残された道はもはや、ここで命を断つのみ!』

 

手に力をギュッと入れて今にも切腹しようとするラドラ。

しかし竜斗は何を思ったか刃を両手で握り取った瞬間に着用していた手袋からおびただしい程の血が溢れ出て「ぐうっ!」と苦痛の声を上げた。

それに対しラドラは仰天し、そして狼狽した。

 

『ば、バカが君は!?なぜ敵の私にこんなことをする!!』

 

竜斗は痛みからか、身震いし息を乱しながらも途切れ途切れにこう言った。

「僕は……あなた達爬虫人類と仲良くできればと……だから」

 

その言葉がラドラの心に突き刺さり、唖然とさせた。ゴーラと同じことを言う彼に彼女と同じ面影を感じたのだ。

 

『き、君だって戦士の端くれだろ!そんな甘ったれたことを抜かすな!』

 

「僕は、本気です……僕はそうなれればいいなと頑なに信じてます、互いが分かち合いそして共存できるものだと……」

 

『何をふざけたことを…………君だって散々これまで戦ってきて私の仲間の命を奪ってきたのに……偽善者か君は!』

 

「偽善者だと思われても僕だって……これ以上誰かが目の前で死なれる姿なんか見たくないんです……それに……あなたが死ぬとゴーラちゃんが凄く悲しむと思います……あの子からあなたのことについて大切な人だと聞きました……」

 

『…………』

 

「お願いです、どうか自ら死ぬことだけはやめて下さい……っ」

 

……するとラドラの手から小刀をその場に落として茫然なるも、すぐに右腰のポーチから何やら緑色の液体の入った小瓶を取り出してそれを彼の両手のひらの切り口にかけて馴染ませる。

 

「……っ」

 

しみるのか苦悶の表情を浮かべる竜斗。

 

『……地上人類に効果があるかは分からないが我々爬虫人類が使用する傷薬だ、心配しないでほしい』

 

「ラドラさん……」

 

『まあ……ないよりはましだ』

 

先ほどまで殺そうとしていた相手が不本意で自ら傷を負ってしまった自分の治療をしてくれたことに竜斗は「ありがとうございます」と心からお礼を言うとラドラも照れているのか言葉を濁した。

 

『……やはり、私はまだまだ甘いな――』

 

そして彼は自身に対して皮肉をボソッと吐いたのであった。

 

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