ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第六話「蜜罠」①

――戦闘後の数日間。被害を受けた駐屯地及び周辺の復興作業が行われていた。

 

日本に駐在する米軍の協力もあり、作業用SMBによる冷えて固まったマグマ、メカザウルスの残骸、瓦礫の処理。

シェルターに避難した民間人達の支援、及び仮設住宅の設置、提供、移住などほとんど終わらせてしまった。

普通は長い日にちがかかるこの作業をここまで早く進行したのはこれもSMBのおかげである――。

戦闘後にも残った駐屯地の人員で警戒態勢に入ったが、恐竜帝国のメカザウルスは姿を現さなかった。

 

その間、竜斗は何をしていたかと言うと艦内で、警戒態勢ということもあり、メカザウルスが出現するまでは自室休養するように言われ、代わりに早乙女とマリアが支援に赴いた。

自分なりにも手伝うと言ったのだが、これは自衛隊の仕事であり、まだ所属、階級すらもらっていない彼を使うのはいけないということらしく手伝わせてもらえなかった。

竜斗はその数日間の夜、エミリアと共に、座学室で予習に励んでいた――。

 

「まさかあんなメカザウルスがいるなんて……」

 

「恐竜にもアタシ達人間みたいに頭のいいのがいるってことなのかな……」

 

ラドラの乗る人型メカザウルス『ゼクゥシヴ』……。

はっきり言って自分の一つ、いや二つ三つ、それ以上の実力を持つ強敵だ。

よく自分は撃墜されなかったなと、そして増加装甲がなければ……と、彼はゾッと寒気が襲う。

 

「けどさ、もし俺達のように高い知能があるんなら……もしかしたら――」

 

「まさか話し合って戦いを止められるんじゃないかなって、こと?」

 

「うん――」

 

竜斗もどうやらラドラやゴーラと同様の考えを持つようである。

 

「それならアタシも大歓迎だよ。恐竜達と共存とか楽しそうだし――けど言葉が通じるかどうかの問題じゃない?」

 

「それなんだよなあ……」

 

「けどさ、もし恐竜達と仲良くなれたらどうする?」

 

「乗せてもらってどこか遠いとこいきたいな……ティラノザウルスとかプテラノドンとかに、てなっ」

 

「いいねそれ、背中に乗って旅したいなあ♪」

 

そう夢のまた夢のことを語り出し、笑う二人にドア越しでそれを盗み聞きしていた愛美は不機嫌そうな顔をする。

 

(ジョーダンじゃないっつうの!マナハチュウ類大っキライなのにあんなキモイのと暮らすなんて死んでもイヤっ!)

 

だが嫌悪感丸出しにして去っていった――。

 

数日間の作業が終わり、早乙女とマリアがベルクラスの司令室で、作業の終わりに一時を休息を味わっていた。

 

「司令、コーヒーをどうぞ」

 

「お、ありがとう」

彼は彼女の入れた特製コーヒーをまず匂い、そして少し口の中で入れ、ゆっくりと噛みしめるように味わい、珍しく満足げな表情をとる。

 

「やはり、疲れた時はマリアの入れたコーヒーは本当に最高だ。こんなふざけた世の中での私の数少ない楽しみの一つだよ」

 

「イヤですね司令……誉めても何も出ませんよ」

 

「君のは本格的だからなおさらだ」

 

そう言う彼女はまんざらでもない顔だ。

「マリア、この戦争が終わったら軍を辞めて母国、もしくは日本でオシャレなアンティークカフェテリアでも開いたらどうだ?

君はアンティークアイテムが好きで結構部屋に集めてるだろ?」

 

「……えっ?」

 

「もしそうしたら私はムリしてでも毎日通うんだがな?

もし本気で店を開きたいなら私がその資金を出してやってもいい」

「司令……っ」

 

瞬間、彼女の顔はポッと赤くなる。

普段は能面のような表情で破天荒かつ、そして不思議で冷徹で、そしてどこか中二病気質な早乙女から思いがけないことを言われて心から感激したのだった――。

 

「――考えておきます。もしその気でいた時はよろしくおねがいし――」

 

しかし彼女が見たのはなんと指で鼻をほじりながらバカ面の、人を小馬鹿にするようなふざけた態度で仕事用のコンピューターをいじっている早乙女……今までの話がなかったかのように淡々としていた。

一瞬でいい気分を台無しにされて落胆するマリア。

そうだ、早乙女というこの男は、人をおちょくるような面も持つのだ。ゲッターロボとこのベルクラスを開発するだけの、天才科学者というのはこうもマトモな神経してないのか。

 

――次の日、竜斗とエミリアには、ついに階級と所属が与えられた。

階級は二人共『三曹』、成果次第で昇級もありえるという。

所属は早乙女の指揮下で行動する遊撃部隊『ゲッターチーム』という名の部隊に所属になった(ちなみに発言者は早乙女)。

 

だがエミリアはこの名前が気に入らず、彼とチーム名で口論するという意外な事態が起こった。

ちなみに彼女の考えたチーム名はどれも人前で言うのを躊躇してしまうほどのナンセンスさで、竜斗とマリアの二人は顔の筋肉が引きつるほど引いていた。

 

そして二人はこの日、駐屯地内の広場で着任式が行われた。

これまでの度重なるメカザウルスとの戦闘で駐屯地内隊員数が少なくなっており、集まった人数も数えるぐらいにしかなかったがそれでも神聖かつ厳正な着任式が行われた。

濃い緑色の制服に着込んだ竜斗とエミリアは、短い時間で無理覚えさせられた式の一連の行動をぎこちなく行い、そして式の最中は緊張からか顔色が恐ろしいことになっていた。

 

今まで高校生として暮らしていた自分達がまさか、本当に軍属(建て前上)になるとは……。

これからの不安もあっただろうし、何よりもそんな二人を後ろから、不動の姿勢を取りながら見る自衛隊員達のどこか猜疑心を持つ目が、寒気となって襲いかかっていた。

まあおそらく、『なんでこんな子達が自衛隊なんかに……』がほとんどだろう。もっとも、早乙女が上層部にはそこを上手く丸め込んで話したらしいが――。

 

それでも無事に終わり、早乙女から許可が許されて駐屯地内を歩く。

駐屯地内は広く、看板が立っているものの歩きでは迷いやすい。

連隊棟や隊員の住む寮。武器庫、整備工場、倉庫、運動するための運動場や体育館、武道館など、二人は歩きながら各施設を見回る。

デジャヴのように高校でも見たことのある風景があちこちに写る。

 

「……ある意味、ここってとてつもない巨大な学校みたいだな」

 

「うん……っ」

 

歩き疲れた二人は近くの売店に立ち寄る。早乙女からもらったお小遣いで買ったアイスクリームをペロペロ舐めながら買い外のベンチに座り、ゆっくり味わいながらボーッと眺めていた――。

 

「――君達は竜斗君と、確かエミリア君だっか?」

 

「あ、あなたは確か……」

 

現れたのは黒田であった。

スーツのような縦線がぴっちり入った迷彩服を着込み、逆立った短髪頭の若々しく自衛官らしく精気と元気溢れる彼は彼の隣にスッと座り込む。

 

「着任おめでとう。どうだ自衛官になった感想は?」

 

「……実感ないです。式でも緊張とかでほとんど記憶がなかったですから」

 

「……だろうな。あの時の二人のガタガタの動き見てたら最中で吹き出しそうで本当に困ったよ」

 

「「…………」」

 

笑い話を入れて茶々を入れる彼は近寄りやすい人物と言える。

 

「ええっと……」

 

「オレは黒田、階級は一尉だ」

 

「黒田一尉……って呼べば?」

 

「普段はそれでいい。だけどオレの前では気楽でいい。堅苦しいのは好きじゃない、部下達でもそうしてきた。これからよろしく」

 

「分かりました、よろしくお願いします」

 

すると黒田は二人に、

 

「両親には伝えてあるのか?」

 

「……それが、早乙女司令がしばらくは会うのもダメだと言ってました。反対するからと」

 

「……そうか。一佐らしいな。あの人、いつも何考えてるか分からないし、君達にもあの人によく振り回されてないか?」

 

 

 

「……え、いやそんなこと……なあエミリア」

 

「え、ええ……っ」

「図星だな――」

 

……今度は竜斗が彼にこう問いかける。

「黒田一尉、あの――」

 

「どうした?」

 

「僕は……どうすれば強くなれますか?」

 

「……竜斗君?」

 

彼は話す。イジメられていたこと、甘えている自分、そして先日の戦闘に対しての未熟さについて――黒田は腕組みをして口を開いた。

 

「……なんともいえない。冷たい答えになるが、結局自分を変えないといけないからな」

 

「…………」

 

 

 

「その、きっかけさえあればな」

 

「きっかけ?」

 

「実はオレも子供の時はスゴく気弱でイジメられてた。

学校に行くのもイヤでね、外に出るとまた地獄の一日が始まるかと思うと道端で吐いてしまうぐらいだった。

ある日、公園でいつもみたいにイジメっ子に絡まれて泣きそうになった時、ちょうど通りかかったとある男の人がイジメっ子を追っ払ってくれた。

その人は帰省中の自衛官だったんだ。

安心して泣き出したオレを優しく抱いてくれて「男なら強くなれ、負けるな」と言ってくれたんだ。

それからオレは将来自衛官になると決めて、入隊するまでサッカーとか色々やって体力と精神力をつけた。

ここまで来るのに色々な苦難とかあったけど、凄く充実してるよ。

あんな弱かったオレが国を守るなんて、夢のようだよ」

 

竜斗達の胸中は何か熱くなるものに満たされていた。

 

「その、黒田一尉を助けてくれた人は今何をしているんですか?」

 

しかし彼の答えは首を横に振ったのだった。

 

「分からない……あの時名前も聞かなかったし、顔もうろ覚えなんだ。聞いておけばよかったなあ……ははっ」

 

「…………」

 

「もしかしたら竜斗君。早乙女一佐、いやゲッターロボとの出会いが君を変えるターニングポイントになっているのかもな。昔と比べて今はどうだ」

 

「昔と比べて……あっ!」

 

彼は気づいた。前のように勇気は多少ついたのかも知れない。現にあの愛美に刃向かい、今はいつ死ぬとも知らぬメカザウルスとの戦いに、自分なりにも勇敢に立ち向かっている。これでもう二、三度のメカザウルス達を撃退しているのだから――そういう所で自分の気づかない内に成長しているのかもしれない。

 

「どうやら心当たりがあるようだな。あと、なんでもいいから色々経験しておいた方がいい、恋愛とかかな――」

 

「れ、恋愛……ですか」

 

竜斗とエミリアはドキっと心が反応する。

 

「早乙女一佐から聞いたが二人は仲がいいらしいな、付き合ってるのか?」

 

「い、いえっ!!」

 

「違いますっ!!ただ住んでいた所からお互い近くに家があって、小学校からの付き合いで……」

 

 

 

しかし、彼らの関係を見ていてはそう思われても仕方ない。

 

「竜斗君にエミリア君、互いに好きかどうかは知らないがもしそうなら――気が変わらない内に思いを伝えるべきだぞ。恋愛だけじゃなく、何にしても自分から行かなきゃチャンスはまわってこない」

 

「「………………」」

 

「なんてな。オレも付き合った人数なんざ、そんなにいないから言えた口ではないんだがな――ハハっ」

 

黒田が深く言ったつもりではないのだろうが、二人にとってはズシリとくるものがあった。

彼は、突然真剣の表情となり二人を見る。

 

「竜斗君、これからの事で数日前の戦闘後の通信で聞いたかもしれないが、早乙女一佐からの命令でオレが君にゲッターロボの操縦訓練の教官を務めることになった。

エミリア君は引き続き早乙女一佐とマリア助手の二人で行うらしい。明日から開始する」

 

「「はいっ!」」

 

二人は元気よく返事をする。

 

「いい返事だ。しかし未だに君達をこんな目に遭わせるのはオレは大反対なんだが……」

 

「…………」

 

「……竜斗君、君にゲッターロボだけじゃなく、SMBパイロットとしてのイロハを、そして応用技術を全て教え込む。

色々厳しく指導することになるが分かってくれよ、君がこれから生き残るためだ」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

すると黒田は空を見上げ、

 

「これがオレの部下に対する一番の供養だ。見ててくれよ、お前たち」

 

――そう呟いた。

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