ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第二話「恐竜帝国」①

北極圏。一年中氷に覆われている極寒の地である。だがこの近海の海中では今では決して見ることのない太古の魚などが繁殖し、生態系に異変が起こしている。

そしてさらに真下の海底。暗闇で冷たい世界であるここにそれはあった――。

 

――世界人類連合イギリス海軍、最新鋭プラズマ駆動潜水艦『ユークリッドⅦ』。彼らイギリス軍は調査でこの海底を訪れていた。

 

「ここで膨大な熱源反応があったようだな」

 

「ええっ、こんな極地の海底でそんな反応が出るのは異常ですから」

 

「見ろ。海中の有り様を……」

 

彼らはスキャンモニターで周辺の様子を見る。まるで自分達が過去へタイムスリップしたかのような錯覚に陥りそうだ。

「もう少し詳しく調査しよう、『マジェスティック・アクア』スタンバイ」黒い潜水艦の艦首部分が突然切り離されて、変形。人型の機体へ移行した。

 

「これより深海調査を開始する。何かあれば直ちにこちらへ報告、そしてモニターに映像を送信せよ」

 

“了解”

 

イギリス軍の所有する深海探査用SMB「マジェスティック・アクア』は背部の巨大スクリューユニットを回転させて前進していく。白目をした眼部からライトを展開。

暗闇の前方を照らす。

 

「……これはひどい。辺りじゅうプランクトンの死骸が沈澱している。相当この層まで汚染している」

 

内部のパイロットもその現状に目を疑っていた。下降していく地面に沿ってどんどん進んでいったその時――。

“うわあっ!!”

 

「どうしたっ!?」

 

突然、パイロットの悲鳴が。異常を察知した乗組員と艦長がすぐさま応答を試みる。

 

“なんだあれは……っ”

 

“首長竜だ、巨大な首長竜の大群がこちらへ向かって……ギャアアアアっ!!”

 

……通信が途絶え、ソナーでの機体の反応が消失。潜水艦ユークリッドの乗組員全員はその場で凍りついた。一体何が起こったのであろうか……。

 

――そして、機体が消息を断った場所より遥か下には……大量の首長竜の大群がまるで何かを守護するように広範囲を散開しながら泳いでいるのを。

そしてその中央には謎の巨大建造物が確三基。それは幾つもの蛸壺のような突起物が突き出た卵の形状である。全長は裕に数キロは超える。

 

その不気味な三つの中でも中央に位置するそれの内部……そこでは。

 

「永き年月……我々爬虫人類は住みにくいマントル層近くに追いやられ、気がつけばあのサル共に地球を我が物顔で蹂躙されたこの屈辱。

今こそ奴らを殲滅し、地球をこの手で取り戻し我々爬虫人類の楽園を築くのだァ!!」

 

“帝王ゴール様、バンザーイっっ!”

 

ここは地球で別に進化したもう一種の知的生物である、爬虫類を祖先とした『爬虫人類』の軍団、恐竜帝国。

その本拠地である移動基地『マシーン・ランド』。

内部の巨大な集会場の中央台に立ち、約何千人以上集まるこの場で力強く演説するは爬虫人類の王族で統率者であり、現恐竜帝国総統である『帝王ゴール』こと、ゴール=ウ=ザーラである。

 

「再び我らが地上の光を手に!我が同胞よ、武器を持て!!そして自らの手であの下等生物から地球を取り戻すのだァ!」

 

集まった大多数の爬虫人類の兵士が手を振り上げて歓喜と士気を上げている。ゴールはこれほどまでの支持力を持つ人物であった。

 

そして彼ら兵士にとっても、ゴールの発言は絶対であり、そして尊敬の畏怖を両立した存在であったのだ。

 

演説が終わり、自身の玉座の間へ向かう。

歪で尖ったな岩と様々な太古の草木と花で覆われた飾りと紫色と血ような深紅のインテリアカラーで施されたここは、人類には考えられない美的感覚からのインテリアなのであろう。

 

「お父様……」

 

玉座の横に一人の女の子が立っていた。

緑色でウロコで覆われるそれは間違いなく爬虫類と同等であるが、顔は他のトカゲに似た爬虫人類ではなく、人類に近い、いや同一と言ってもいいほどの輪郭と各顔の器官が酷似し、十代前半の可憐で清純な雰囲気を持つ乙女であった。

 

 

ゴーラ=ブ=ライ。ゴールの愛娘であり、王女でもある。

 

 

「ゴーラか、どうした」

 

「……どうして私たち爬虫人類は地上の人々を迫害するのですか?」

 

「…………」

 

「共存という道もあるのでは……」

 

その問いに黙りこむゴール。玉座に座り込むと深く息を吐いた。

 

「……ゴーラよ、お前は今年で何歳になる?」

 

「十四歳と六ヶ月になります、お父様」

 

「そうか……」

 

彼女の頭を軽く撫でて、父親らしく優しい笑みを見せた。

 

「お前は何も気にしなくてもよい。もう少しで我々爬虫人類がこんな暗闇から光ある地上へ上がれる時が来る。その時は、わしは表舞台から姿を消し、お前自身の手で我らにとっての楽園(ユートピア)を築き上げるのだ。

なあに大体のことは側近や家来がしてくれるから心配するな」

 

「……」

 

だが彼女の表情は複雑である。

この質問は今日に始まったのではない、前にも同じ質問をしたが結果はもう判る通り、殆ど同じ答えしか返ってこないのでだった。すると、隅から家来が彼の元へ。

 

「ゴール様。ラドラ様がこちらへおこしいただいておりますが」

 

「ラドラか。通せ」

 

家来が入り口へ向かうと扉を開ける。すると姿を現したのはきりっとした態度の、騎士道精神溢れる雰囲気を持つ爬虫人類の凛々しい若人。着込む金色の甲冑と兜がその地位を表している。

 

――ラドラ=ドェルフィニ。

平民出身でありながらキャプテンと呼ばれる恐竜帝国の誇り高き若きエリート戦士である。

 

「帝王ゴール様、私をお呼びしていただきありがとうございます」

 

「うむ。ラドラよ、そんな堅苦しくならなくてよい。

見る余も気疲れする、そなたの亡き父リージ共々親しい仲ではないか」

 

「……も、申し訳ございません。それで私にご用件とは?」

 

「配属の件についてだが、これから日本地区の北海道、大雪山地下で駐屯している第十二恐竜中隊と合流してほしくてな。

ラドラよ、そなたにはそこで中隊司令官としての権限を与える」

 

「それはありがたきお幸せでございます」

 

「そのことについてはすでに向こうとは連絡がついておる。ラドラよ。そなたのために、我が恐竜帝国の誇り高き開発兵器部門による最新鋭メカザウルスを用意しておいた。一刻も早く日本制圧を行ってくれ」

 

「御意!」

 

「では、行けラドラよ。幸運を祈る」

 

ラドラは自室に戻り、身支度する。

終えた後、中央の壁に飾る黄金の装飾がなされた長剣に向かって黙祷する。

 

(父さん……行ってきます)

 

そしてメカザウルス専用格納庫へ向かう通路へ向かう途中、

 

「ラドラ様!」

 

振り向くとゴーラが彼を追いかけてきていた。

 

「ゴーラ様、どうなされましたか?」

 

「……ラドラ様。どうして地上の人々と戦わないといけないのですか?」

 

「……ゴーラ様」

 

「わたしはおかしいと思います。人類も私たちも同じ地球に住む生物同士、和解し合い共に生きるという選択肢もあるはずです……なのに……」

 

ゴーラの悲痛な思いに彼も困惑した顔になる。

 

「……私はキャプテン・ラドラ。帝国に忠義を尽くす者。ゴール様の命令は絶対なのです」

 

「…………」

 

するとラドラは穏やかな顔をして、彼女を見つめた。

 

「ゴーラ様、あなたは心優しいお方だ。

わたしも地上の人間達と触れ合いたいとは思っているが……それが叶うことかどうかはわかりません。ただ今は、自分に課せられた使命を全うするだけです」

 

 

 

そう言い、ラドラは去っていく。

 

「どうして……地上の人々の……何がいけないの……っ。誰も傷つくのを見たくないのに……っ」

 

そして彼女も彼の後ろ姿を見ながら、瞳から一粒の涙を流したのであった――。

 

彼は格納庫へ向かい、すぐさま自分に与えられた最新鋭メカザウルスのドックへ。白衣を着た数名の開発スタッフであった。

 

「お待ちしておりましたラドラ様。あちらが貴方の専用機でございます」

 

「これが私の専用機・・・」

 

その姿は兜を被る人型の大トカゲともいえる姿、背には折り畳まれた翼竜の翼、背中に長剣が取り付けられ、そしてSMBやゲッターロボのように独特の形状をしたライフルを右手に携わっている。まるで悪魔の様でありつつもその凛々しく堂々とした出で立ちは騎士を思わせる。

 

「ガレリー様率いる我々開発チームが総力を上げて開発した試作機『ゼクゥシヴ』。新技術、兵器を搭載した新世代型メカザウルスでございます」

 

担当のメカニックマンから機体についての説明を受け、彼は機体の胸内に乗り込み、コックピット座席に座り込む。

同時に機体を乗せたカタパルトテーブルが動き、その真上にある外界への上部ハッチが開放する。

 

 

“『アルケオ・ドライヴシステム』稼働開始。

『ヒュージ・マグマリアクター』正常運転中。マグマの機体循環量、全て許容範囲内です。

耐水圧コーティングフィールド展開、パイロットは直ちに耐衝撃態勢に移行してください――”

 

オペレーターから発進態勢の通信が入るとコンピューターを動かして各システムを起動、左右の操縦レバーを握るラドラ。

 

“ヒュージ・マグマリアクター出力レベル1、2、3、4、5。『メカザウルス・ゼクゥシヴ』発艦スタンバイ”

 

「キャプテン・ラドラ、『メカザウルス・ゼクゥシヴ』発艦する」

 

瞬間、機体を乗せたカタパルトテーブルが急上昇。

そして長く垂直の通路を昇り、機体はマシーン・ランドの突起物から海中へ射出された。

そこから機体はさらに急上昇して海面へ向かう。

水しぶきを上げて海中から飛び出た機体『メカザウルス・ゼクゥシヴ』は海上数十メートル地点で背中の翼を展開、進路を日本の北海道へ進路を取り、巨大ブースターを点火し急発進。

ほぼ音速に近い推進速度で遥か上空を駆け抜ける。

 

「うぐぅ……なんたる出力……これが最新鋭メカザウルスか……」

キャプテンという恐竜帝国の中でも上位に位置する戦士であるラドラでさえ、そのパワーに翻弄されかける。

それほどこのメカザウルスは強力な機体である証拠である。身体が飛行速度になれた頃、彼はふとゴーラの言っていたことを思い出す。

 

(……確かにゴーラ様の言うとおりかもしれないな。

ゴール様はなぜあれほどまでに地上人類を敵視するのだろうか?

元はと言えば我々から攻撃を仕掛けたのだが……)

 

彼もまたゴーラと同じく、至上主義者が多い爬虫人類の中でも数少ない人類への理解、そして和平、共存を望む人物である――。

 

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