「うっ」
疼くような肩の痛みで総司は目を覚ます。軽く包帯が巻かれて止血の処置はされていたが、包帯に滲む血はまだ乾いていない。どうやらザビーとの戦いから、まだそう時間は経っていないようである。
だが、状況はどう考えても良いとは言えなかった。どこかはわからない薄暗い檻の中で後手に手を縛られて寝転がされている。もちろんのごとくベルトは回収されて丸腰だ。
「さて、“今回は”どうやって逃げたものかな…」
ゆっくりと息を吐き総司は一人呟いた。
※
「うう…痛い…痛い…」
「可愛いそうに、私のオータム、カブトにやられたのね」
「あいつ、あいつ、絶対に絶対にぶち殺す」
「ええ、その時は私も手伝ってあげるから。今は泣き止んで」
カブトの攻撃により顔中包帯だらけになってむせび泣くオータムを抱きしめ、スコールは優しい声をかける。
「情けないことこのうえない。俺の命令を無視して人質なんて取るからこうなるんだ」
「矢車…!」
そんなオータム達を見下ろし、イラついた様子の矢車がオータムを叱責する。
「誰のせいでこうなったと思ってる!あのまま行けばカブトに負けてたのはお前だろうが!」
「黙れ!」
オータムの言葉が矢車の逆鱗に触れた。矢車は壁を殴り、鬼の形を浮かべる。
「俺は負けちゃいない!お前が邪魔しなければ俺は勝てていた。チームの力が無くとも、ましてや人質など取る必要もない。俺一人の力でな!」
「落ち着きなさいオータム、矢車。カブトとザビーのどちらが強いかなど今は関係ないわ。カブトは捕獲した、その結果だけで充分よ。早く社長の元にベルトの解析データを送りなさい。それさえできれば計画が次の段階へ進む」
「わかっていますスコールさん。今、俺のチームが全力をあげています」
「それならいいわ」
※
「やべえよ、どうすれば…」
蘭を連れて一旦自宅に戻った弾は、自室で頭をかいていた。妹の蘭の手前、俺がなんとかするだとか、天道なら自力で抜け出せるとかなんとか言ってはみたが、どれも可能性は低い。自分の独力ではIS部隊を持った集団には敵わないし、第一、誘拐犯の居場所がわからない。肝心の総司もザビーの攻撃で怪我を負っている。警察に言おうとも思ったが、あれだけの戦闘を街中で行って野次馬の一人すら現場へ寄せ付けなかった手際の良さから見て無駄骨だろう。そもそもISを相手にするなら軍を動かさないとならない。
だめだ…詰みだ。
そう思った直後、ふと昼時の総司との会話を思い出した。
「そう言えば、鈴が転校して来た。中国に帰ってからあいつもIS操縦者になったそうだ」
これだ!
弾は携帯を取り出し、電話帳を起こす。凰鈴音の名前はまだ入っていた。
「頼む、番号変えてるなよ」
ボタンをプッシュして呼び出すと、拍子抜けするくらいすぐに繋がった。
「弾じゃない、久しぶ…」
「天道がさらわれた!力を貸してくれ」